渡我被身子は救われていました。   作:imuka

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甘め&先輩の渡我被身子。
彼女のヒーローとしての特殊な立場が漸く全面に出る感じ。
今回は被身子のヒーロー活動がメインです。




期末テストから林間合宿まで

 

エピソード:期末テストお疲れ様&ご褒美タイム

 

ご褒美を上げようとは思ってるけど疑問もある渡我被身子

 

 

期末テストが終わった夜。

部屋に帰ってきた出久は、クタクタに疲れていた。

 

「ただいま……もう、身体がバッキバキだよ……」

 

「おかえり、出久くん。」

 

キッチンから顔を出した被身子は、温かいハチミツミルクを持って、笑顔で迎える。

 

「はい、頑張ったご褒美、第一弾。」

 

「ありがとう、被身子ちゃん。」

 

ホッとする出久の表情。それを見て、被身子も安心する。

 

「それでさ。」

 

「ん?」

 

「爆発太郎クンとまさかの共闘だったって聞いたけど?」

 

「あはは……まあ、うん……」

 

「わたしはてっきり、どっちかが先に殴り倒して終わるかと思ったけど。」

 

「そ、それは……オールマイトに“協力しなきゃ勝てない”って言われて……」

 

「へぇ〜?あの爆発太郎クンが協力なんて単語を理解できるんだ。」

 

「まあ……なんとか、ね。」

 

「すごいよ、出久くん。」

 

被身子は、隣に座りながらポンポンと出久の頭を撫でる。

 

「爆発太郎クン相手にキレず、ちゃんと協力して、今回は自損もしないで、それでオールマイト先生から勝ちを取ったんだもん。これはもう……特別なご褒美、あげなくちゃね。」

 

「え、えっ?」

 

「好きにしていいよ。わたしのこと、君の好きなようにしていい。」

 

「なっ!?!?」

 

「……って、言いたいところなんだけど。」

 

「え?」

 

「わたしからも言わせてもらっていい?」

 

「な、なに?」

 

「……君さ、思春期真っ只中の男の子なのに、わたしに全然手出してこないの、なんで?」

 

「へ?」

 

「こないだだって、わたし、ステイン事件後にかなり攻めたよね?」

 

「あ、あれは……!」

 

「……わたしの身体じゃ、出久くんは興奮しないの?」

 

「ち、違っ——!!」

 

「じゃあさ。」

 

被身子は、膝立ちになって、出久の顔をじっと覗き込む。

 

「どこで処理してるの?わたしじゃダメなら、誰を思い浮かべてるの?」

 

「し、してないよ!?!?」

 

「嘘。わたし、血の巡り見れば、君が何考えてるか、ある程度はわかるんだから。」

 

「ひぃぃ!!?」

 

「ふふ、動揺してる♡でも本気で知りたいの。」

 

「だ、だから……僕は……」

 

「わたしで足りないなら、もっと頑張るから。君が好きな身体になるから。」

 

「ち、違うよ!!被身子ちゃんが好きで……その、可愛すぎて……

逆に、手を出したら止まらなくなりそうで……だから我慢してるだけで……!」

 

「……は?」

 

「……え?」

 

「可愛すぎて我慢してるってこと?」

 

「……うん。」

 

「バカじゃないの???」

 

次の瞬間、全力のハグ&押し倒し。被身子の顔は、耳まで真っ赤。

 

「可愛すぎるなら、ちゃんと可愛いって言いなさいよ!!

こんなに好きで、こんなに頑張ってるのに!!」

 

「ひゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「もういい!!

わたしが今から“わたしがどれだけ可愛いか”全部教えてあげる!!」

 

「ちょ、待って!!」

 

「待たない♡だって“好きにしていい”って言ったの、わたしだもん。」

 

「わぁぁぁぁ!!」

 

出久の叫び声が、夜の部屋に響き渡る。

それはもう、期末テストよりも濃厚な夜の始まりだった——。

 

 

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エピソード:もっと好きになってもらう計画、始動。

 

満足した被身子は出久をさらに魅了するために新たな決意をする

 

 

「えへへ……♡」

 

シャワーを浴びながら、被身子は昨夜のことと、今朝のことを思い出して、ひとりにやけていた。

 

(だって、出久くん……)

 

最初は真っ赤になって戸惑ってたのに、途中からは自分から抱きしめてくれたり、

ちゃんと触れて、キスして、何より、ああなってたんだもん♡

 

(ちゃんと、わたしで“そうなる”んだなぁって思ったら、すっごく安心したし、嬉しくて……♡)

 

実は少しだけ、不安だった。

 

出久が無茶しないよう、我慢しないようにって強く言ってきたけど、

逆に「女として魅力が足りないから我慢できるのかな?」って、どこかで気にしていた。

 

でも——昨夜も、今朝も、ちゃんと反応してくれた。

 

(わたしの身体でも、ちゃんとそうなるんだ♡)

 

シャワーのお湯が少し熱く感じるほど、心がぽわぽわして幸せで満たされる。

 

(でも、もっともっと……わたしのこと好きになってほしいなぁ。)

 

「よしっ!!」

 

被身子は勢いよくシャワーを止め、鏡に映った自分を見ながらニコッと笑った。

 

(もっと可愛く、もっと魅力的になって、出久くんが“我慢できなくなるくらい”夢中にさせてやるんだから♡)

 

着替えながらのひとり作戦会議

 

制服に袖を通しながら、被身子は頭の中で『可愛くなるための作戦会議』を始める。

 

(まずはヘアアレンジだよね。ーー医療ヒーローモードの時はまとめちゃうけど、普段はツインテに戻すか、それとも……出久くん、どの髪型が好きかなぁ?)

 

(スカートもちょっと短めにしてみる?でもわたしが短いと先生に怒られるなー……うーん、程よいセクシーって難しいなぁ。)

 

(あとは……)

自分の胸をぺたぺた触る。

 

「……もうちょっと成長してくれてもいいんだけど。」

 

(でも出久くん、ちゃんと触ってくれたし、好きって言ってくれたもんね♡)

 

「うふふ♡」

 

鏡に映った自分にウィンクしてみる。

 

(もっと可愛くなって、もっと好きになってもらって、

次は出久くんから“我慢できない”って言わせてやるんだから♡)

 

隣の部屋から、ドライヤーの音と共に、「ふわぁ……」という出久の寝ぼけ声が聞こえる。

 

(……あれだけしておいて、まだ寝ぼけるなんて……)

 

その無自覚可愛さに、被身子は思わず顔を覆って悶える。

 

「もう!!可愛すぎ!!」

 

「え?なにか言った?」

 

「なんでもないよ♡」

 

「?」

 

「学校行く前に、もう一回だけ“好き”って言って♡」

 

「え、えぇ!?い、今!?」

 

「今じゃなきゃダメ♡言ってくれないと、学校に遅刻しちゃうよ?」

 

「ひぃぃぃぃ!!」

 

出久は耳まで真っ赤になりながら、小声で「好きだよ……」と呟く。

 

「ふふ♡」

 

(よし、今日も最高に幸せ♡)

 

学校に行く前から、すでに勝利確定の被身子だった。

 

 

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エピソード:夏休み、どう過ごす?医療ヒーローとしての選択

 

出久にベタ惚れだが、逆に活力が湧きやる気満々な被身子

 

 

放課後、被身子は保健室の奥にある特別室でリカバリーガールと向かい合っていた。

 

「さて、夏休みの話だけど。」

 

「はい!」

 

「どこかのプロヒーローの事務所に行くのも良いけど、それよりは医療ヒーローとしての活動を優先させる方が合ってると思うよ。」

 

「そうですよね……わたしもそう思います。」

 

「実際、被身子の現場判断力と処置の速さは、下手なプロより上だとわたしは思ってるよ。」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

嬉しそうに笑う被身子。でもすぐに真剣な顔に戻る。

 

「それで、出久くんが林間合宿に行ってる間は、わたしもその間にぎっちりインターン詰めようと思ってて。」

 

「ふむ。」

 

「どうせなら、一番実戦に近い場所で学びたいんです。今のわたしに足りないのは、医療だけじゃなくて“現場の流れそのもの”を読む力ですから。」

 

その言葉に、リカバリーガールは目を細める。少しだけ黙って考え込んだ後、保健室にあった通信端末に手を伸ばした。

 

「根津、ちょっと時間あるかい?」

 

『もちろんですとも、わたしはいつだって暇なフリくらいはできますからね。』

 

通信越しに聞こえる根津校長の軽いノリ。でもリカバリーガールは珍しく、少しだけ真剣なトーンで切り出した。

 

「この子の夏休みについてなんだけどね。」

 

『渡我くんですね?』

 

「そう。林間合宿の準備は色々してるんだろうけど、この子も“同行”って形で連れて行くのはどうだい?」

 

『ほう。』

 

「訓練中の怪我は必ず出る。わたしが帯同すればいいんだろうけど、わたしも何かと多忙だしね。」

 

『確かに。医療従事者が一人でも増えるなら、助かりますね。』

 

「それに、被身子なら身辺調査もいらない。わたしがここでずっと見てきたし、何より、一番“あのバカ”を止めることができるからねぇ。」

 

「り、リカバリーガール先生!?」

 

「わたしはあんたがどれだけ『緑谷ラブ』か、ずっと見てきたんだからねぇ。」

 

『ふふ、なるほど。』

 

根津校長は、しばらく思案するように鼻に手を当てていたが、やがてコクンと頷く。

 

『では、正式に外部からの医療サポート要員として、渡我くんには林間合宿に特別同行してもらいましょう。』

 

「え、えぇぇ!?わたし、行けるんですか!?」

 

「もちろんだよ。」

 

根津校長が言葉を続ける。

 

『ただし、あくまでも“雄英生として”ではなく、“医療ヒーロー研修生として”の参加です。君もそれで良いですね?』

 

「はいっ!ありがとうございます!!」

 

「その代わり、外部スタッフとしての自覚は忘れるんじゃないよ。生徒モードで甘えてたりしてたら引っ叩くからね。」

 

「……は、はい!!」

 

被身子はぴしっと背筋を伸ばすが、内心は(出久くんと一緒に夏休み過ごせる)とテンションMAX。

 

「わたし、出久くんが無茶しないように、ちゃんと見張ります!」

 

「ほんと、あんたは恋愛フィルター越しでも仕事になるんだから。」

 

「ふふ、良い関係ですね。」

 

 

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エピソード:林間合宿、サプライズ先輩登場!

 

先輩ヒーロー風を吹かせる被身子

 

 

朝早く、雄英の校門前。A組・B組がそれぞれ荷物を抱え、集合していた。

 

「はぁ〜、林間合宿かぁ!」

「なんか遠足みたいでワクワクするよね!」

 

そんな和やかな空気の中、一人だけ落ち着かない様子の出久。

 

(被身子ちゃん、今日から研修で泊まり込みって言ってたけど……やっぱりちょっと寂しいな……)

 

そう思っていると——視界の端に、見慣れた髪型と制服が映った。

 

「……え?」

 

荷物を抱えたまま固まる出久。そこに立っていたのは、相澤先生、ブラドキング、そして——

渡我被身子。

 

「へ?」

 

「え?えええええええ!?」

 

一気に目が点になる出久。

 

「おい、静かにしろ。」

 

相澤先生が無愛想に口を開く。

 

「今回の合宿には、1年生だけじゃなく、医療サポートとして渡我も同行する。2年ヒーロー科所属であり、リカバリーガール直伝の医療ヒーロー研修生。お前らが怪我しても、すぐ治せるってわけだ。」

 

「わたしはリカバリーガール先生の代わりって感じかな!」

 

被身子は笑顔で手を振る。

 

「一応、先輩としても、医療従事者としてもよろしくね。」

 

「は……はいっ!!」

 

突然の先輩登場にざわつく1年生たち。特にB組の面々は「え?」「誰?」と軽く混乱。

 

「そもそも2年生ってどんな人いるのか全然知らねぇし……」

 

「初めてまともに話す先輩がこの人ってこと?」

 

「しかもめっちゃ可愛くない?」

 

「制服アレンジ、ちょっとオシャレでお姉さん感あるよな……」

 

「お前ら、静かにしろ。」

 

相澤先生の一喝でその場は静まるが——緑谷出久だけは、真っ赤になってプルプルしていた。

 

(聞いてない!聞いてないよ!!被身子ちゃんが一緒なんて!!)

 

バスに乗り込む直前、A組のメンバーが出久を取り囲む。

 

「なぁ緑谷……お前、さっきから妙に動揺してねぇ?」

 

「っていうか、渡我先輩が登場した瞬間、一人だけ挙動不審すぎだろ。」

 

「えっ!?そ、そんなことないよ!?」

 

「いやいや、わかりやすすぎるわ。」

 

「お前、まさか——」

 

「渡我先輩と何かあるんじゃねーの?」

 

「な、なにもない!!ほんとになにも!!」

 

「ほんと〜?」

 

ニヤニヤが止まらないクラスメイトたち。その様子を遠くからジト目で見ている人物がいた。

 

「……チッ。」

 

爆豪である。

 

「意味わかんねぇ……。」

 

一方、その間の被身子は完全に“先輩スイッチ”が入っていた。

 

「荷物ちゃんとまとめておきなよ〜!忘れ物したら置いてくからね!ほら、バス乗る時も順番守って!」

 

1年生たちにてきぱき指示を出す姿は、普段の甘えんぼ被身子しか知らない出久からしたら完全に別人。

 

(すごい……先輩モード全開だ……)

 

でも、それがまた「僕だけが知ってる顔」があるっていう事実が、出久の中で妙な優越感にも繋がる。

 

(でも……やっぱり家にいる時の被身子ちゃんが一番好きだな……)

 

バスに乗り込むと、当然のように被身子は出久の隣へ。

 

「わたし、医療担当だからさ。怪我しないように君の隣で見張ってるね♡」

 

「ひぃぃぃぃ!」

 

「うるさいぞ、緑谷。ーー渡我もあんまりからかうな。」

 

相澤が2人に睨みを効かせる。

そんなことをしているとA組の皆が被身子に質問攻めを始める。

「先輩、USJの時も来てたよね!?」

「緑谷とはどういう関係なの?」

「医療ヒーローとは具体的にどのような活動が?!」

 

バスの中は朝から完全にカオス。でも、そんな賑やかな夏休みの始まりも、悪くはないと思う出久だった——。

 

 

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エピソード:林間合宿スタート!A組、崖落としの儀式にエールを添えて

 

医療ヒーローとしての務めを果たす被身子

 

 

休憩のために止まったそこはPAではなく、なにもない場所だった。

 

「じゃあ早速、A組のみんなにはこの山を越えてキャンプ地まで行ってもらうから。」

 

ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの登場にテンションが上がるA組だったが、説明を聞いて絶望顔。

 

「えぇぇぇぇ!?バスで行かせてくださいよ!!」

 

「なぁに言ってんの、ヒーローなんだから足で稼ぎな!」

 

そう言った次の瞬間、ドドドドドッと地面が揺れ、A組のいる崖下へと道が崩れ落ちる。

 

「「「ぎゃああああああ!!?」」」

 

その瞬間、後ろからひょいっと飛んできたのは、渡我被身子の声と何かの鞄。

 

「はいこれ!!応急処置セット!下で転んで怪我しても、とりあえずこれ使いなさい!」

 

「え、あ、ありがとうございます!!」

 

ボフッと落ちてきた鞄の中には、消毒液、包帯、絆創膏など最低限の救急用品がぎっしり。

 

「待ってるからね〜!先輩として“ゴールで笑顔で迎える係”やるから!!」

 

「え、先輩もついてくるんじゃないんですか!?」

 

「わたしは医療班だもん。みんながボロボロで帰ってくるのを笑顔で迎えて、しっかり治療するのが役目!」

 

「くぅ〜!!めっちゃ優しい!!」

 

「ほら、早く行きなさい!出久くんも頑張ってね〜♡」

 

「う、うん!!」

 

照れながら崖を滑り落ちる出久を見送りつつ、被身子はしっかり先輩スマイルで手を振った。

 

(しっかりやるんだよ。みんな)

 

 

日が傾き始めた頃——泥と汗と砂にまみれたA組が、ようやくキャンプ地に辿り着いた。

 

「お、お疲れさまです……!」

 

「はぁ……もう無理……」 「死ぬ……」 「足が限界……」

 

まさに満身創痍のA組。そんな彼らを、笑顔で迎える白衣姿の先輩がいた。

 

「おかえりー!よく頑張ったね!」

 

「あ、渡我先輩……!」

 

「順番に体調チェックと怪我の確認するから、わたしの前に一列に並んでね!」

 

「はーい…」

 

普段の柔らかい笑顔のまま、でも目は完全に“プロ”のそれになっていた。

 

「はい、次の人、腕見せて。あー、これは擦り傷だけど、ちょっと土が入ってるね。消毒するから痛いけど我慢して。」

 

「うっ……はい!」

 

テキパキと処置しながら、身体の熱や呼吸、顔色まで細かくチェック。

 

「走ってる途中で気分悪くなったりしてない?」

 

「大丈夫です!」

 

「OK、次!」

 

 

そんな流れで爆豪勝己の番になる。

 

「はい、爆発太郎クンも——」

 

「いらねぇ。」

 

「え?」

 

「俺は怪我なんかしてねぇし、そんなモンに頼るつもりはねぇ。」

 

「……そ。」

 

一瞬だけ、被身子の笑顔が消える。

 

「だったら、証拠見せてもらおうか。」

 

「は?」

 

「わたし、医療ヒーロー研修生。プロの現場でも活動してる。ちゃんとした判断基準で“怪我してないか”確認させてもらうから。」

 

「チッ……」

 

「逃げるなよ、ヒーロー候補生くん?」

 

「——っ!!」

 

完全にヒーローモードの被身子の迫力に、あの爆豪が一瞬怯んだ。

 

(こいつ……今までのデクの隣に居るだけの時と印象と全然違ぇ……)

 

「ほら、右手出して。」

 

「クソが……」

 

悪態をつきながらも、素直に手を差し出す爆豪。爆豪の手を握った瞬間、見抜かれる。

 

「……うん、手首、軽く捻ってるね。無自覚な軽傷、見逃すとクセになるよ。」

 

「ハァ!?捻った覚えなんかねぇし!!」

 

「覚えてないだけ。わたしは血の巡りから微細な筋肉の違和感まで感じられるから。」

 

「……っ!」

 

「“無傷”って言うなら、ちゃんと証明できる身体で来なさい。それがヒーロー志望ってもんでしょ?」

 

「クソが……!」

 

悔しそうに舌打ちしつつも、被身子の処置には逆らわない爆豪。

 

被身子は淡々と処置しながら

 

「強がりはいいけどね、“ヒーロー”ってのは自分の身体をちゃんと大事にするやつのことだから。」

 

「はぁ!?そんな甘っちょろい——」

 

「最前線で戦い続けるプロは、身体が資本ってこと、一番よく知ってるんだからね。」

 

「……!」

 

「だから爆豪くんも、“無駄な怪我で脱落するバカ”にはならないこと。」

 

「……クソが。」

 

文句を言いながらも、不思議と反論はできなかった爆豪。

 

 

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エピソード:静かな夜に、先輩ヒーローが見回りを

 

忙しいであろう先生の代わりを務める

 

 

夕飯もお風呂も済ませ、A組・B組の生徒たちは、山登りの疲れもあってほぼ全員爆睡していた。

そんな静かな宿舎の廊下を、白衣を羽織ったままの被身子が、スリッパの音を立てないように歩いていく。

 

元々、夜の見回りは担任である相澤先生とブラドキングの役目だった。けれど被身子は、夕食後に「明日以降の準備もあるだろうから、わたしが代わりにやります!」と申し出た。

 

「医療担当として生徒の体調管理も仕事ですから。」

 

「……助かる。」

 

相澤先生は短くそう言って、早々に資料まとめに戻っていった。

 

見回り開始

一部屋ずつ、そっと引き戸を開ける。月明かりが差し込む部屋には、走り続けてバタンキューしている生徒たちの寝顔。

 

「ふふ、お疲れさま。」

 

そう言いながら、はだけた布団をかけ直したり、枕を整えたり。

 

足をつったまま寝ている子の足をそっとほぐしてあげることも忘れない。

 

被身子は、寝ている生徒たちの顔色や呼吸を見ながら、さらに自分の「個性」を使い、体内の血の流れもなんとなくチェックしていく。

 

「……あ、ちょっと貧血気味かな。」

 

そんな子には、明日の朝に塩分やミネラル補給を勧めるメモをそっと枕元に置いておく。

 

「次の部屋っと。」

 

男子の大部屋に入る時は、「男子部屋失礼しまーす。」と小声で声をかけてから入る。

 

寝相の悪い子が布団を蹴り飛ばしているのを見て、「しょうがないなぁ。」とクスッと笑いながら、しっかり布団をかけ直してあげる。

 

そして、最後に見るのは——もちろん緑谷出久。

寝息を立てながら、可愛い顔でぐっすり。

 

「……ふふ、よく頑張ったね。」

 

ほんの少しだけ、他の生徒より優しく布団を整える。そして、そっと出久の髪を撫でる。

 

「君がちゃんと無事で良かった。」

 

「……んぅ……」

 

「ふふ、起こしちゃダメだね。」

 

いつもなら抱きついたり、甘えたりしてしまうけれど、今日は先輩モードを貫くためにグッと我慢。

 

「おやすみ、出久くん。」

 

静かに部屋を後にするその背中は、しっかり“先輩”であり、ヒーローだった。

 

 

(明日も無茶するんだろうなぁ。)

 

(でも……どんな無茶をしても、わたしがちゃんと守るから。)

 

(安心して、ヒーローを目指してね。)

 

そんな想いを胸に抱えながら、被身子の夜の見回りは続く。

 

 

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エピソード:早朝の目覚ましお姉さん、渡我被身子参上!

 

女の子らしい対応で!

 

 

夜が明けきる前のキャンプ地。ひんやりした山の空気が流れる中——

被身子は白衣の上に羽織るジャージを着込み、プンスカ怒りながら先生たちに直談判していた。

 

「相澤先生!ブラド先生!いくら先生だからって、年頃の女の子たちが寝てる部屋にいくなんてどうかと思います!」

 

「いや、仕事だから。」

 

「そういう問題じゃありません!!」

 

「なら任せる。」

 

「最初からそのつもりです!!」

 

ぷんすかしながら腕まくりし、「A組女子部屋」へ突撃する被身子。

 

女子部屋

 

「おはよー、みんな!」

 

「んー……?」

 

「今日から個性強化メニューだよ!早起きして気持ちよく始めよう!」

 

「……ねむい……」

 

「ほらほら、起きて起きて。朝ごはん前に、軽く体を動かすんだから!」

 

優しい声と笑顔でお姉さんモード全開。寝ぼけた女子たちを布団の上から優しくトントン。

 

「あと10分……」

 

「ダメー!あと10分を続けてると、あっという間に遅刻コースだからね!」

 

「んー……せんぱぁい……」

 

それでもなかなか布団から出ない面々。その時——被身子の目がサッと鋭くなる。

 

「……仕方ない。」

 

「……?」

 

「医療ヒーローは、時に荒療治もするんです!!」

 

バサァッ!!!

 

寝ている生徒の布団を容赦なく剥ぎ取る!!

 

「きゃー!?」 「さ、寒っ!!」

 

「時間厳守!寝坊は許しません!!」

 

「せ、先輩スパルタすぎる!!」

 

「未来のヒーローになるんでしょ?これくらいで泣き言言わない!!」

 

「は、はいぃぃ!!」

 

 

布団を剥ぎ取った後は、ひとりひとりの寝癖チェック。

 

「この子ははねすぎ!ちゃんと水で直してから行きなさい!」

「この子は顔洗った?目ヤニそのままじゃダメだよ!」

「あと、水分補給も忘れずに!」

 

「お、お母さん……!」

 

「違う!先輩です!!」

 

「ホントなら、男子のとこも行ってやりたいけど、それは先生たちの役目だから。」

 

「男子部屋、絶対ヤバいことになってますよね……」

 

「うん。でも、男子はちょっとくらい臭くても放置!」

 

「女子は可愛く、爽やかに登場しなきゃ!」

 

「先輩……!」

 

「ほら!女子の清潔感は命!これ、医療ヒーローとしても言えることだからね!」

 

「はーい!!」

 

 

そんな風に女子の起床を済ませた被身子だったが、心のどこかで気になっているのは男子部屋の一人。

 

(出久くん、ちゃんと起きてるかな……)

 

(あの子、夜中もゴロゴロしてたし……)

 

(……って、ちょっと彼女フィルター入ってる!?)

 

「ダメダメ、今は先輩としてのわたし!」

 

自分に言い聞かせつつ、次は朝食準備のお手伝いへ向かうのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

エピソード:個性強化、遠くから見守る先輩医療ヒーロー

 

皆の頑張りを見守る先輩

 

 

山の中で行われるA組B組の個性強化合宿。それぞれが自分の個性を限界まで追い込むメニューに取り組んでいた。

 

その様子を、少し離れた木陰のベンチから眺める渡我被身子。白衣を羽織ったまま、膝には分厚い医療関連の専門書。

 

“現場待機”の医療ヒーロー。

 

(個性強化メニューについては、相澤先生たちの担当。わたしが口を出すことはない。わたしの仕事は怪我人が出たら即対応すること。それまでは、自分の勉強タイム。)

 

目を通しているのは、外傷処置の応用技術や特殊個性による負傷パターンについての資料。

 

「リカバリーガール先生からも、“医療ヒーローは常に知識をアップデートすること”って言われてるしね。」

 

普段は甘えんぼで、出久には全力でデレデレする被身子も、この時ばかりは真剣な顔でページをめくる。

ふと目を上げると何気なく顔を上げると、そこには必死に修行するみんなの姿が。

 

(みんな、すごいなぁ……)

 

そして、自然と目が探してしまう——緑谷出久の姿。

 

(……やっぱり、君が一番頑張ってる。)

 

泥だらけになりながら、歯を食いしばり、限界を超えようと体を動かし続ける。

その姿に、被身子はふっと優しく微笑んだ。

 

(がんばれ、わたしのヒーロー。)

 

 

その瞬間——被身子の緩んだ表情を、何故かキャッチしたのがワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの“虎”だった。

 

「ん?」

 

(なんだ今の顔は……あいつ、デレたな?)

 

目線を追えば、当然その先には緑谷出久。

 

「おい、そこの緑谷!!」

 

「ひぃっ!?は、はい!!」

 

「もっとやれるだろ!お前の限界ってのはそんなもんじゃねぇはずだ!!全力で突破してみせろ!!」

 

「はぃぃい!?」

 

「ほら走れ!!叫べ!!爆発しろ!!」

 

「ひぃぃぃ!!」

 

「……虎、何か気づいた?」

 

マンダレイが小声で聞くと、虎はドヤ顔でこう言った。

 

「見たんだよ。あの医療ヒーロー研修生が、緑谷を見て“乙女の顔”になってるのをな!!」

 

「えっ……」

 

「ほぉぉぉ♡」

 

ピクシーボブ&ラグドールが盛り上がるのを、被身子は遠目で「しまった!」と顔を赤くするのであった。

 

 

(ちょっと!!もう!!虎さん、なんで余計なこと言うの!!)

 

(……でも、まぁいいか。)

 

(君がもっと強くなるためなら、なんでも応援するから。がんばれ、出久くん。)

 

 

休憩中に様々な指導をしていた被身子。少し離れた位置でその様子を見ていた相澤&ブラド。

 

「……渡我が何か言ったのか?」

 

「休憩中に簡単なセルフケア講座をやったみたいだな。」

 

「へぇ……余計なことしないで、“医療ヒーローとして必要なことだけ”教えるあたり、さすがリカバリーガールの直弟子だな。」

 

「自分の役割、ちゃんとわかってるってことか。」

 

「教師じゃなくサポーターだから口出しはしない。でも、生徒のためになることは確実にやる。」

 

「あの子は優秀だな……」

 

「……直接は評価に入れられないが、内申点くらいは上げておくか。」

 

「ああ。」

 

 

 





<渡我被身子にとってのA組>
素直でいい子たちばっかりだな、が第一印象。自分の次に相澤含め彼らが出久を止められる存在なんだろう、と何処かで感じている。
特に女子は自分を慕ってくれて可愛い後輩たちで嬉しい。
爆豪に対して色々思うところはあるが出久本人がそこまで言わないので強くはでない。だから”ヒーロー”として彼を咎めたりする。(原作と違い被身子が近くに居たため激しいイジメにはあっていないため。)


<爆豪勝己にとっての渡我被身子>
出久同様に理解の外にいる存在。出久と違い拒絶ではなく、自ら全力でにげていた節がある。(そのため被身子も爆豪に強く出ない)
訳のわからない存在がしっかりとした”ヒーロー”になっていてさらに訳が分からない。


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