渡我被身子は救われていました。   作:imuka

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色々場面を端折ってます。なにかいいネタが思いつけば挟むかもしれない。
洸汰への話は少し無理やりだったかもしれません。彼に話をしてお節介だったかも、と悩む被身子とそれを相談しにいく被身子の話が先にあったので、話チグハグはおおめに見てください。




林間合宿から仮免許試験まで

エピソード:洸汰の言葉に悩む出久を、被身子がそっと支える夜

 

被身子が思うヒーローはいつだって出久

 

 

夕食後、消灯前のひととき。

食事中もどこか浮かない顔をしていた出久は、宿舎の縁側で一人夜空を眺めていた。

 

そこへ、ブランケットを抱えた被身子が静かに隣に座る。

 

「出久くん、悩んでる?」

 

「……うん。」

 

「洸汰くんのこと?」

 

「……うん。」

 

洸汰の言葉が胸に刺さっている出久。

 

「僕、言葉に詰まっちゃったんだ。」

 

「個性がなくても、僕はずっとヒーローに憧れてて、でも洸汰くんはヒーロー社会そのものを嫌ってて……何が正しいのか、わからなくなっちゃった。」

 

被身子はそっと寄り添う。

 

「わたしは、君が悩むのも当然だと思う。」

 

「え?」

 

「わたしだって、ヒーローってなんだろうって思うこと、何度もあった。でもね——」

 

(手を伸ばし続けることに、きっと間違いではないはずーー)

 

「出久くん、覚えてる?わたしが最初に君に助けてもらった時のこと。」

 

「うん……もちろん。」

 

「あの時の君は、何の迷いもなく手を伸ばしてくれた。わたしがどんな人でどんな目に遭ってきたかなんて知らなかったのに、ただ困ってる子がいるからって、すぐに。」

 

「……」

 

「だから、わたしは今こうしてヒーローを目指してる。体育祭の時だってそう。ーー出久くんは、勝ち負けなんかより、目の前の“悩んでる人”を助けることを選んだ。轟くんはきっと、あの時の君の言葉がなかったら、今とは全然違う未来を歩んでたと思う。」

 

「……うん。」

 

「それにね、わたしもこの1年、医療ヒーローとしていろんな現場に出たけど——怪我を治すだけじゃ、人は救われないこともたくさん見てきた。本当に大事なのは、その後も見続けること。ーーヒーローって、敵を倒して終わりじゃない。救った相手が、その後どう生きるかまで寄り添う、

それがわたしの考えるヒーロー。」

 

被身子は緑谷家で得たものを喋る。

 

「わたしもさ、君に助けてもらっただけだったら、きっとここまで来れなかった。君のお母さんやお父さんが、その後もずっとわたしを支えてくれたから、今のわたしがいる。」

 

「最初の一歩も大事だけど、手を離さないことがもっと大事。それを教えてくれたのは、他でもない緑谷家のみんななんだよ。」

 

「きっと、洸汰くんだってそう。今はヒーローなんてって思ってるかもしれないけど、初めて“ちゃんと手を差し伸べてもらう”体験が、あの子の世界を変えるかもしれない。」

 

(出久くんの手は、きっと届く。だからーー)

 

「だから、出久くん。君がこれまでしてきたみたいに、まっすぐ手を伸ばせばいいんだよ。ーーそれが“ヒーロー”なんでしょ?」

 

「……!」

 

出久の心に灯がともる。

 

「僕……僕、やっぱりヒーローになりたい。洸汰くんにも、ヒーローは悪いものじゃないって伝えたい。」

 

「きっと伝わる。だって君は、誰よりもヒーローらしいヒーローだから。」

 

「……ありがとう、被身子ちゃん。」

 

「うん!」

 

甘やかすだけの彼女じゃない。ちゃんと支え、背中を押せる存在として、渡我被身子は、緑谷出久にとって最高のパートナーであり続けたいとそう願う。

 

 

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エピソード:洸汰と被身子、夜の静かな対話

 

その人の苦しみはその人にしかわかならない、だけど

 

 

キャンプ場の外れ。月明かりだけが照らす静かな場所で、ひとりポツンと座る洸汰。

そこへ、そっと足音を立てずに近づく白衣姿の被身子。

 

「こんなところにいたんだ。」

 

「……」

 

「少しだけ、いい?」

 

「……好きにすれば?」

 

被身子は洸汰の隣に腰を下ろし、少しだけ夜空を見上げる。

 

「ヒーローなんて、嫌い?」

 

「……。」

 

「わたしもね、昔は……”ヒーローなんて個性なんて”って思ってた。」

 

「?」

 

「わたしが本当に辛い時、手を差し伸べてはくれなかったから。」

 

「……!」

 

「ヒーローとかヴィランとか、“個性が全て”みたいな世界、そんなもん、クソくらえって思ってるんでしょ?ヒーローだからってかっこつけて、個性ひけらかして、でも結局、君の大切な人は帰ってこなかった。ーー個性があったからヒーローになれた?そんなの、残された君の気持ちには、何の救いにもならないよね。」

 

おおよそヒーローを目指している人間の言葉と思えず洸汰は大きく目を開く。

 

「わたしだって、今でも思うよ。個性なんてなければ、わたしはこんなにも血に執着しないで、そんな風にわたしを見られないでもっと普通に、ちゃんと友達ができる人生だったんじゃないかって。」

 

それでも被身子は助けてくれた日を今でも昨日のように思い出せる。

 

「でもね。それでも——助けてくれる人がいたんだ。個性も、ヒーローも関係なく、ひとりの人間として、困ってるわたしに手を差し伸べてくれた人がいた。」

 

「その人がいたから、わたしは今、ヒーローになろうって思える。だからわたしは、この“個性社会”に、少しでも本当の意味で優しいヒーローを増やしたいって思う。」

 

「個性のせいで失ったものがあるのも、ヒーローが全てを救えないことも、わたしは知ってる。」

 

「でもね、それでも誰かがちゃんと“君自身”を見てくれる日がきっと来る。」

 

「その時に——“ヒーローなんて大嫌い”って心の扉を閉ざしたままだったら、本当に君を助けられる人が来ても、気づけなくなっちゃう。」

 

「だからわたしは、ヒーローとしてじゃなく、先にちょっとだけ、困ってる子だったわたしを助けたもらえた経験がある“お姉さん”として、言いたい。」

 

「全部嫌いでもいい。だけど、君をちゃんと見てる人がいるってことだけは、覚えていてほしい。」

 

「わたしも、君を見てるよ。」

 

「……」

 

洸汰は何も言わなかったけれど、その小さな拳がギュッと握りしめられた。

 

「じゃ、おやすみ。」

 

「……」

 

洸汰が返事をする前に、被身子はそっとその場を後にする。

 

彼が心の中で、ほんの少しでも誰かを信じるきっかけを掴んでくれたら——それで十分だった。

 

 

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エピソード:夜の大人相談室、突撃する被身子

 

年齢相応の等身大の被身子

 

 

洸汰に自分語りを、精一杯の言葉を届けたものの——宿舎に戻る途中、被身子の胸にはモヤモヤとした不安が膨らんでいた。

 

(……わたし、出しゃばりすぎたんじゃないかな。)

 

(ヒーローでも先生でもないのに、あんなこと言って……ただのお節介だったかも。)

 

思い切って大人に相談しよう。そう決めた被身子は、夜の談話スペースへ飛び込んだ。

 

「失礼します!」

 

扉をガラッと開けると、そこには相澤とブラドキング。どちらも夜の打ち合わせ中だったが、

被身子のただならぬ表情に、すぐ手を止める。

 

「どうした?」

 

相澤がすぐ察知。

 

「その……ちょっと相談があって!」

 

不安を吐き出す被身子。

 

「わたし、洸汰くんに……勝手に色々話しちゃって……」

 

「個性社会がどうとか、わたし自身が個性とかで苦しんだ話とか……でも、よく考えたらわたしってヒーローでもカウンセラーでもないし……こんなの、ただの先輩ヅラしたおせっかいでしかなくて……余計なことしちゃったんじゃないかって……」

 

いつもの被身子らしくない、弱気な声な声にブラドはガハハと笑う。

 

「お前なぁ、何をそんなにビビってんだよ!!」

 

「え?」

 

「いいか?お前は“ヒーロー志望”だろ。」

 

「そ、そうですけど……」

 

「じゃあな、目の前で困ってるヤツを放っておけるヒーローがどこにいるんだよ!!」

 

「!!」

 

「正しい資格があるかどうかとか、誰かに頼まれたかどうかとか、そんなもん関係ねぇんだよ!!困ってるヤツがいたら、手を伸ばして、声をかける。それができるやつが“本物のヒーロー”だろうが!!」

 

相澤も言葉をつなぐ。

 

「それに、洸汰くんのことを気にしてたのはお前だけじゃない。俺もブラドも、プッシーキャッツも、みんな気にしてる。でも俺たちは担任や先生としての立場がある。プッシーキャッツだって近すぎるから言えないこともある。

けど、お前は違う。ただの“先輩”として話せる、貴重な存在なんだ。それを“出しゃばり”だなんて思う必要はない。」

 

「……でも……」

 

「それにな、俺たち教師だって正しいことばっか言ってるわけじゃねぇんだ。その場で言える範囲のことを言って、後で“あれでよかったかな”って悩むなんてザラだぞ?特に、相手が繊細な子どもだったらなおさらだ。だからお前も、悩んで当然。でもな——」

 

ブラドは大きな手で被身子の頭をガシガシ撫でる。

 

「悩むってことは、ちゃんと“その子のこと”を考えた証拠だ。それができるなら、お前は立派な”ヒーロー”だ。」

 

淡々と相澤も告げる。

 

「言い過ぎたか、余計だったかなんてのは——あとは洸汰くん自身が決めることだ。お前の話は、お前にしかできない。それだけは間違いない。」

 

「……!」

 

被身子は涙をこらえながら頭を下げる。

 

「……ありがとうございます。なんか、すっごく安心しました……。」

 

「ガハハ!いいってことよ!医療ヒーローだろうが何だろうが、結局“まずは目の前の子を救おう”って思えるヤツが一番強ぇんだ。」

 

「はい!!」

 

「まぁ、強いて言えばだな。」

 

被身子に目線を合わせる相澤。

 

「?」

 

「相手の気持ちを全部受け止めてやれるような“度量”が、ヒーローには必要だ。それは知識だけじゃ身につかない。今みたいに、自信なくして落ち込んで、悩んで、そっからまた立ち上がることで育つんだ。だから今日のお前は——100点満点だ。」

 

「……!!」

 

「お前はちゃんと“いい先輩”で“いいヒーロー”だ。」

 

被身子は満面の笑顔に変わる。

 

「ありがとうございます!!」

 

頭を撫でられ、真っ赤になりながらも、いつもの元気な被身子に戻るのだった。

 

 

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エピソード:肝試しから一転、敵連合襲来!被身子の怒りと覚悟の戦場

 

被身子の戦闘シーン

 

 

肝試し——

 

「出久くんと一緒に回れる!」

 

それだけでテンションMAXだった被身子。

 

「肝試しってより青春イベントじゃん!」

 

「先輩、テンション高いですね……」

 

「当然でしょ!特別な夜になるんだから!」

 

しかし——その楽しい時間は、敵連合の奇襲によって一瞬で崩れた。

 

生徒たちが次々に避難行動に移る中、マンダレイが困ったように言う。

 

《洸汰の位置がわからない》

 

「……!」

 

被身子はピンときた。

 

(たぶん……あの場所だ!)

 

口を開きかけた瞬間——

 

「僕が行きます!!」

 

出久が先に声を上げ、即座に駆け出した。何も考えず飛び出す出久にイラッとしつつ追いかける

 

「ちょっと!?出久くん!!」

 

一瞬カッとなった被身子だったが——

 

「……もう!!後でお説教だから!!」

 

叫びながら、全速力で後を追う。

しかし、OFAで加速する出久に追いつけるわけもなく、どんどん距離が離れ、あっという間に見えなくなる。

 

(あぁもう!!なんで君は、いつもそうやって……!!)

 

そんな思いが渦巻く中、先の方から爆音が響く。

 

「!!」

 

 

 

被身子が到着すると爆風で木々が吹き飛び、土煙の中に巨大な筋肉の塊と、血まみれの緑谷出久。

 

「出久くん!!」

 

叫びたい気持ちを押し殺し、医療ヒーローモードに一瞬で切り替える。

 

(あの筋肉……繊維の間にわずかな隙間がある。そこに割り込ませれば……)

 

すぐさま腰の医療バッグから特殊なチューブ状のガジェットを取り出す。

 

「……こじ開ける!」

 

被身子は滑るようにマスキュラーの後ろを取る。

 

「出久くん!!あと3秒、思いっきり押して!!」

 

「えっ!?は、はい!!」

 

ドゴォッ!!

 

OFAのフルパワーで一気にマスキュラーの筋肉を押し広げ、できた隙間に被身子が薬液チューブを挿入する。

 

「そこから動かないで!!」

 

ピシュッ!!

 

特殊麻酔を筋肉内部に直接注入。麻酔により一瞬筋繊維が強制的に弛緩し、一瞬だけ防御力が大幅ダウン。

その瞬間——

 

「お願い、出久くん!」

 

「……!!」

 

全身からスパークするOFA。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 

ドゴォッッッッ!!!

 

マスキュラーは吹っ飛び沈黙した。

 

「やった……!!」

 

安堵した被身子は、その場にへたり込む出久へ駆け寄る。

 

「もう!!なんで勝手に飛び出すの!?」

 

「ご、ごめん……でも洸汰くんが……!」

 

「わかるけど!!君はまだ仮免もないのに!!」

 

「でも……僕が行かなきゃ……!」

 

「だからって!!……っ」

 

叱ろうとして、涙が込み上げる被身子。

 

「ほんとに……無事でよかった……!」

 

「……!」

 

「これ以上……わたしの大事な人が傷つくのは嫌なの!!だから……勝手に飛び出すの禁止!!次からは絶対、わたしと一緒に行くの!!」

 

「……ごめん、被身子ちゃん。」

 

被身子は涙を拭きながら、血まみれの出久に応急処置を施す。

 

「わたしは仮免あるから独自判断での戦闘は問題ないけど……」

 

「君はまだ……卵なの。」

 

「わかってる……でも…」

 

「……ほんと、君は頑固。」

 

そう言いながら、被身子は出久の手をギュッと握る。

 

「でも駄目なものは駄目だからね。」

 

叱るときはしっかり叱る被身子だった。

 

 

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エピソード:ヒーロー仮免許試験の試験官をする被身子とA組

 

ずっと見守る立場でA組や出久に色々な思いをはせる。

 

 

雄英高校の職員室。リカバリーガールに呼び出された被身子は、思いもよらない話を聞かされていた。

 

「ヒーロー仮免許試験の二次試験(救助演習)の試験官をやってもらうことになったよ。」

 

「――え?」

 

被身子は、思わず聞き返した。

 

「えっと……採点は、救助されるプロの方々がやるんじゃないんですか?」

 

被身子の疑問に、リカバリーガールはニコリと笑う。

 

「確かに彼らは救助される"プロ"さ。でも、彼らは"医療のプロじゃない"。今回の試験は、"人命救助"が評価の中心になる。しかし、"正しい医療判断"ができなければ、救助はただの搬送になってしまう。そこで、医療側の人間を試験官として配置することになったんだよ。」

 

「私が、その枠?でも……医療従事者の方々を呼べばいいのでは?」

 

「本職の医師や看護師を"試験官"にするのは、なかなか難しいんだよ。忙しいし、人手不足のところも多いからね。」

 

根津校長が話に加わる。

 

「そこで、君の名前が挙がったのさ!リカバリーガールからの推薦があり、"実戦経験があり、適切な医療判断ができる者"として、君が選ばれたのさ。」

 

根津校長はテクテクと被身子の前を歩いて説明を続ける。

 

「今回は、医療を踏まえた救助も重要視される。君には、"救助を受ける側の立場"と"医療の視点"の両方から、受験生たちを評価してほしい。

ーー例えば、傷の応急処置の方法が間違っていた場合、試験官側のプロは気づかないこともある。しかし、君なら"それが適切な処置かどうか"を正しく判断できる。君の採点基準は"医療面"での補助だよ。」

 

被身子の仕事は 3つ。

受験生の行動を観察し、適切な医療判断ができているか評価する。

試験官たちに、医学的観点からのフィードバックを行う。

最終評価の際、医療面も加味し、受験生たちの評価に意見を出す。

 

「……なるほど。"救助活動"の試験だからこそ、"医療"の視点が必要になる。…わかりました!私、やります!」

 

被身子は、試験官としての役目を果たす決意を固めた。

 

試験当日、試験会場。

とりあえず一次試験から受験者たちを見るため会場の席へ向かうとそこには相澤が。

 

「え?!相澤先生?!ーーってことはここA組の試験会場!?」

 

一気に緊張が走る。

 

(待って、聞いてない!私が試験官で、彼らが受験生って……!)

 

少し動揺しつつも、相澤の隣に立つ。

 

「……先生、どうして黙ってたんですか?」

 

相澤は、ぼさぼさの髪をかきながら「言う必要、あったか?」と、いつもの調子で返す。

 

「……まぁ、お前ならフェアに採点するだろ。ーーむしろ、手加減はしないタイプだろうしな。」

 

「……それは、まぁ。」

 

被身子は苦笑しながら、それでも改めて緊張した。

 

「……でも、出久くんたちの試験を"試験官"として見ることになるなんて……。複雑です。」

 

 

1次試験が開始される。

 

観客席に座り、見つめるのは――雄英高校1年A組の戦い。

 

(そっか……みんな、もう仮免許試験なんだね。)

 

ほんの数か月前、体育祭や林間合宿で戦っていた彼らが、今こうして"プロヒーローの一歩"を踏み出すために試験を受けている。

 

(時間が経つの、早いな……。わたしも医療ヒーローを目指す関係でクラスの皆と違うタイミングで受けたけど…。それでも何故か皆がこうして受けてるのを凄く早くに感じる)

 

1次試験はボール当て。

 

(これは個性の強さだけじゃない。"誰とどう動くか"が、試される試験だね。だからきっとどの受験生たちも…)

 

被身子は、A組がどう連携するのかを注視していた。

 

「……さて、君たちはどう戦う?……出久くん。」

 

真剣な眼差しの出久。彼はすぐに周囲を分析し、A組メンバーに的確な指示を出していく。

 

「バラバラにならないで! 連携しながら、数を減らしていこう!」

 

それを聞いた他のA組生徒たちも、素早く動き、対応していく。個性の都合や性格的に離れていく人もいるがそれでもーー。

 

(……やっぱり、出久くんはすごいな。)

 

以前は戦闘において"考えるだけ"のことが多かった。でも今は――"考えながら、周りと共に動いている"。

 

「みんな、成長してる。」

 

誰一人、"独りよがり"になっていない。

 

(……すごい。林間合宿の成果が出てる。)

 

「みんな、ヒーローになってる。」

 

1年生とは思えない、洗練された戦い方。

 

特に、"仲間と共に戦う"ことを強く意識しているのが、はっきりと伝わってきた。

 

(……それだけ、今まで色んな経験を積んだってことだよね。)

 

USJの襲撃、体育祭、林間合宿、神野での戦い――。

 

「君たちは、もう"ただの生徒"じゃないね。」

 

試験は順調に進む。相澤も、腕を組みながらA組の戦いをじっと見つめている。

 

「A組……いい動きだな。」

 

「試験官としては公正に見なきゃですが、個人的には……やっぱり、合格してほしいです。」

 

相澤は被身子の言葉に「当然だ」と短く返す。

 

「俺のクラスだ。この一次試験程度で脱落するようなやつは、一人もいない。」

 

被身子は、ふっと笑った。

 

(……本当に、いい先生。)

 

「……頑張れ、A組。」

 

被身子は、静かにそう呟いた。

 

 

無事A組全員が1次試験を突破し、安堵する被身子。次はただ見ているだけではいけない。被身子は頬を叩き意識を切り替えた。

 

ヒーロー仮免許試験 2次試験。

テーマは“救助演習”――つまり、ヒーローが最前線で行うべき最も基本的で、最も重要な任務。

 

試験会場には、災害現場を模した広大なフィールドが広がっていた。煙が立ち込め、崩れた瓦礫が散乱し、爆発の音が響く。

被身子は、その景色を見て、何をベースに作られているか理解する。

 

(あ、これ神野を模しているんだーーそっかわたしの時となにか違う感じがしたのはそういうわけなんだ。)

 

被身子は試験官として、小型モニターを覗きながら、その目で皆の動きを確認するため周囲を歩き始める。

 

(さて……。みんなが、どう救助を行うのか。ヒーローの“本質”が試される試験だよ。)

 

「A組、どう動く?」

 

サイレンが鳴り響くと同時に、受験生たちが居た建物の外壁が倒れ、それぞれの判断で動き始めた。

被身子の視線が、A組に向かう。

 

(……この試験は、戦闘だけじゃない。力があるかどうかは関係ない。どれだけ適切に人を助けられるか、適切に行動できるか、自分の個性とできることを的確に判断できるかが評価基準。)

 

「君たちは、どう動く?」

 

 

初動こそ怒られていたA組だったがその後は一生懸命に言葉遣いなどを気をつけて救助を進める。

 

(そうそう、焦らない焦らない。人命救助の経験は少ないからこそ、ひとつひとつを大事に、ね)

 

A組の動きが徐々に早くなっていくのを関心しながら、すべてを見渡す。

 

被身子の評価基準の一つは、"適切な医療判断ができているか"。

 

「救助者を動かす前に首の固定をしてるか?」

「骨折の可能性がある場合、無理に引っ張っていないか?」

「応急処置は、最低限正しくできているか?」

 

A組の皆には被身子が林間合宿中にした指導が活きていた。

 

「これなら……減点は少なそうだね。」

 

 

もう一つの評価基準は、"誰を、どう優先するか"。

 

「助けるべき負傷者はどこか?」

「どの怪我が最も危険か」

「動ける人と、動けない人の区別は?」

 

被身子は、一部の受験生を見て「惜しい」と思う。

 

「無理に全員を助けようとして、状況が混乱してるね。」

 

でも――A組は違った。

 

「この人は軽傷です! 他の人の手が空いてからで大丈夫!」

「この人は意識がない! すぐに処置が必要!」

 

(助けるべき人を、適切に判断している。なにより声をかけあうことの大切さに気がついている。)

 

「……うん、これは満点。」

 

だが、完璧ではない。人は、負傷者を運ぼうとする際に「不適切な持ち上げ方」をしてしまっていた。

 

(それじゃ、逆に怪我が悪化しちゃう。)

 

被身子が運び方の指摘を書き加えているとさらに状況が変化は変化した。

壁が壊されそこにはギャングオルカの姿が。

 

(ああ、やっぱりそうなるんだね。)

 

救護、敵との対敵、それら並行に行う。

 

(わたしが見る箇所ではないけど、きっとこれによる”冷静さの維持”とかなんだろうね。冷静さを失えば応急手当も雑になる。助けを求めてる声も聞こえなくなる。対応も遅くなる。)

 

「正念場だよ、頑張れみんな。」

 

 

 





林間合宿の後半とか神野事件とか、敵連合が絡む場面はどうしても内容に悩みますね。敵側にいる被身子がヒーロー側にいるので。あとここくらいまでの出久の行動が危ないものばかりなので被身子が怒ってばっかりになるのでカット。
被身子は神野事件は現場に入れるヒーローとして近くで医療活動してました。そんなつもりです。
また、今更な設定ですが血を扱うなど医療に特化している関係で被身子も早めに仮免取得をしています。

たくさんの人が読んでくれてるようで感謝感激雨霰です。この後の話のネタがずいぶんと時間軸が飛ぶのでどうしようか悩んでいますが、妙案浮かべばこのまま時系列順で投稿します。
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