渡我被身子は救われていました。   作:imuka

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そんなに話は進みませんね。
書きたかったのは被身子用の部屋の話と爆豪への喧嘩後の声掛け。




仮免許試験から出久と勝己の私闘まで

 

エピソード:ヒーロー仮免許試験を終えたA組を迎える被身子

 

無傷の出久がうれしい被身子

 

 

試験官としての役割を終えた被身子は、相澤と共に試験会場の出口でA組を迎えていた。

 

爆豪と轟。二人は合格できなかった。

被身子の目から見ても、二人の二次試験はひどいものだったといえる。しかし今回の仮免許試験には補講があり二人はそれを受けることに。

そんな中でもみんな、仮免許試験に合格したことに少し浮足立っており、被身子には出久が変なテンションになっているのがまるわかりだった。

 

「出久くん!」

 

そう声をかけると、彼は少し驚いた顔をしながら、すぐに優しく笑った。

 

「被身子ちゃん!」

 

その姿を見て、被身子の胸に、強い想いがこみ上げた。

 

(……良かった。本当に良かった。戦闘じゃなくて、救助の試験だったとはいえ――怪我なく、無事に合格できたんだね。)

 

「……偉いね、出久くん。」

 

ふっと力を抜くように、被身子はそっと微笑んだ。

 

「……ねぇ、出久くん。君が、怪我なく帰ってきたのって、何回目だっけ?」

 

「……え?」

 

「もしかして、初めてじゃない?」

 

「…………あ。」

 

出久が少し考えて、「あ、本当だ」と気づく。

 

彼は今まで、戦いのたびに傷だらけになっていた。無理をして、ボロボロになって、そして帰ってきていた。

 

だけど――

 

「今回は、ちゃんと無傷で合格した。すごいね。君は、ちゃんと"守る力"を手に入れたんだね。」

 

そう言いながら、被身子は愛おしそうに彼を見つめる。

 

「偉いね、出久くん。……本当に、偉いよ。」

 

「え、いや、えっと、そんなに言われると、なんか……。」

 

もじもじする出久。

 

(……可愛い。)

 

その反応があまりにも愛おしくて、被身子は思わず頬を緩めた。

 

「ほんと、可愛いなぁ……。」

 

「ひゃっ!?」

 

そのまま、出久の頬を人差し指で突っつく。

 

(こんな風に、何も心配せずに出久くんを迎えられる日が来るなんて……。嬉しいな。)

 

こうして、仮免試験は無事に終わり、A組の新たな一歩が始まった。

 

 

 

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エピソード:「被身子専用の部屋」――雄英が用意した新たな役割

 

被身子が得た信頼による結果

 

 

仮免試験が終わり、A組と共に雄英に戻った被身子は、リカバリーガールに仕事内容を報告するために保健室へと向かっていた。

 

「……何事もなくてよかった。」

 

試験官としての緊張感もあったし、A組を見守る中で感慨深くなることも多かった。

 

(……でも、無事に終わって良かった。)

 

そんなことを考えながら、廊下を歩いていると――

 

「……ん?」

 

ふと、見慣れない扉があることに気づいた。

 

(こんな部屋……あったっけ?)

 

保健室のすぐ隣にある、新しい部屋。

 

ドアの前に立つと、ちょうどリカバリーガールが姿を現した。

 

「ああ、来たね。」

 

「リカバリーガール先生? ……この部屋、何ですか?」

 

すると、リカバリーガールはニヤリと笑った。

 

「アンタのための部屋さ。」

 

「……え?」

 

「被身子、あんたが“ヒーロー活動”するための部屋だよ。」

 

「……え、どういうことです?」

 

リカバリーガールは、ゆっくりと部屋のドアを開けた。

 

そこには――ベッド数台、応急処置セット、診療器具、デスク、資料棚。

 

そして、医療ヒーローが活動するための設備が整えられていた。

 

「……え、これって……?」

 

「アンタの“医療ヒーロー”としての活動拠点だよ。」

 

驚く被身子をよそにリカバリーガールは説明を続ける。

 

「雄英が全寮制になって、教師たちの業務も増えた。当然、わたしもずっと保健室には居られない。でも、負傷者の対応はいつでも必要だ。だから、"現場で活動できる医療ヒーロー"が必要になったのさ。」

 

被身子に近づき、見上げる。

 

「そして、それをできるのは――アンタしかいないだろう?」

 

「……でも、私はまだ正式な医者じゃないですよ?今までは先生たちがいたからそれの監視下でやってましたけど…」

 

「だから、今から本格的に医師免許の勉強をするんだよ。」

 

「……!」

 

「アンタには、ヒーロー活動だけじゃなくて、本物の“医療従事者”としての役割も担ってもらう。」

 

「この部屋は、そのための拠点。ーーそして、もう一つ。」

 

「……?」

 

「これから、本格的にわたしの“すべて”を叩き込むよ。」

 

「……え?」

 

「わたしも、もう若くはない。」

 

「個性の酷使は、どうしたって寿命を削る。……だから、わたしは“その時”が来る前に、できる限りのことをアンタに教える。ーーわたしの知識、経験、技術……すべて、アンタに託す。」

 

被身子は、その言葉の重みを理解した。

 

(……リカバリーガールは、オールマイトと同じで"引退"を考えてる。だから、私に後を継がせるつもりなんだ。)

 

「受け取る覚悟、あるかい?」

 

リカバリーガールは、被身子の目をじっと見つめた。

 

「この道は、簡単じゃないよ。ヒーローとして、戦場に立ち、そして医者として、人の命を救う。」

 

「どっちも、命を背負う仕事だ。」

 

「だから――アンタに覚悟があるかどうか、聞いておくよ。」

 

「……。」

 

被身子は、しばらく黙っていた。

 

(覚悟なんて、とっくにある。だって、私は――)

 

「やりますよ、もちろん。」

 

深く息を吸い込み、被身子はリカバリーガールをまっすぐ見た。

 

「私は、ヒーローです。」

 

「そして、私は“誰かを助ける人”になりたいんです。」

 

「だから――全部、受け取ります。」

 

「先生の知識も、経験も、全部。私に、教えてください。」

 

リカバリーガールは、ニヤリと笑って頷いた。

 

「……そうこなくっちゃね。」

 

こうして、被身子は正式に「雄英の医療ヒーロー」としての役割を持つことになった。

 

そして――

 

「これから、アンタの時間はさらに足りなくなるよ?勉強、実技、ヒーロー活動、すべてこなしてもらう。」

 

「さぁ、ついてこれるかい?」

 

被身子は、ふっと笑って答えた。

 

「もちろんですよ、先生。」

 

「だって、私は――この道を歩むって決めたんですから。」

 

新たな戦いが、始まる――。

 

 

 

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エピソード:「爆豪と出久の夜。ただただ見守る被身子」

 

被身子も付き合いだけは長いので勝己の違和感に気がつく

 

 

リカバリーガールとともに部屋に入り内部設備を確認する被身子。

 

「ここは”医療特別保助官室”として作られた。当然わたしの補助を名目に作られた部屋だね。たださっきも言ったようにあんたの仕事は補助じゃない。」

 

部屋を見渡す被身子に部屋の説明をしていくリカバリーガール。

 

「ヒーロー仮免許を持っているとは言え、本来一人での医療活動にはある程度制限がかかるもんだけどね。でも被身子は私のもとでの実績、現場での評価、ともに悪くない。

 雄英で行動については被身子一人での判断で対応して問題ないことの許可が下りたよ。」

 

「はい。」

 

「あんたが今まで築き上げた実績による信頼だ。しっかりやりな。」

 

「はい!」

 

被身子がしっかりと返事をしたのを確認すると設備を一つ一つ見ていく。

 

応急処置用のベッド

診療台

輸血パックや注射器

医療機器の棚

薬品管理用の冷蔵庫

医療用モニターと患者データ管理端末

 

「これなら、急患対応は問題なさそうですね。」

 

「まぁね。」

 

リカバリーガールが頷く。

 

「でも、まだ足りないものもあるよ。」

 

「例えば、何が必要です?」

 

「外傷治療のための最新医療キット。あと、アンタの“個性”を活かせる装備も整えたほうがいいね。」

 

「そっか……じゃあ、雄英のサポート課と相談して追加発注します。」

 

「いいね、それと“万が一”のときのために、保健室以外の緊急搬送用のカートも置いておこうか。」

 

「なるほど、それは確かに……!」

 

被身子は、必要なものをメモしながら、部屋の設備を確認していく。

 

 

設備の確認が終わると、すぐにリカバリーガールの講習が始まった。

 

「じゃあ、今日から本格的に始めるよ。」

 

「今日は何を?」

 

「"実際の患者データ"を基に、診断と応急処置の判断をしてもらう。」

 

そうして、リカバリーガールの厳しい指導が始まり――気がつけば、夜遅くになっていた。

 

 

医療特別保助官室の鍵を閉め、廊下を歩いて校舎を出ると――

 

「……?」

 

暗がりの中、2つの影が並んで歩いていた。

 

被身子は、目を細める。

 

(出久くん……?)

 

もう一人は――

 

「……爆発クン?」

 

そう、そこにいたのは、緑谷出久と、爆豪勝己だった。

 

二人は、言葉を交わさず、静かに歩いている。

 

(……就寝時間は過ぎてる。)

 

最初こそ、「二人とも、こんな時間にどこへ行くつもり?」と止めようとした被身子だったが――爆豪の表情を見て、足を止めた。

 

(神野の事件以来、ずっと気になってた。……もしかして。)

 

何か、"話すべきこと"があるのかもしれない。

 

「……ついて行こうかな。」

 

そっと、被身子は気配を消して二人の後をついていくことにした。

 

(きっとわたしは二人を見守らないといけない)

 

二人の後を追いながら、被身子は静かに、歩き出した。

 

 

静かな夜の雄英。被身子は、気配を消しながら 二人の後をついていく。向かった先は――グラウンドβ。

 

(ここで……何をするつもり?)

 

彼女が見つめる先で、出久と爆豪が向かい合う。

そして、爆豪が口を開いた。

 

「無個性で出来損ないのはずだったお前が――無個性で出来損ないのはずのお前が、どういうわけか雄英合格して、個性まで発動しててよぉ。――気づけば訳わかんねぇやつが、どんどん登っていきやがる。」

 

爆豪の言葉は、まるで内側から絞り出すような言葉だった。

 

(……)

 

被身子は、そっとビルの上から二人を見下ろす。

 

「ずっと考えてた。オールマイトからもらったんだろ、その個性。」

 

出久がついに言われたと顔が緊張する。

 

「ずっと石ころだと思ってた相手が、知らん間に憧れた相手に認められて――」

 

爆豪は、拳を握る。

 

「だから、ここで戦え。てめぇの何が、そこまでオールマイトにさせたのか、確かめさせろ!」

 

出久が必死に止めようとするが――

 

「……やめようよ、かっちゃん!」

 

「関係ねぇ!!」

 

爆豪は、言葉を聞くつもりなどなかった。

 

――バンッッ!!!

 

爆破の音が響き、爆豪が先手を仕掛ける。

 

(……戦うんだね。)

 

被身子は、ただじっと、戦いを見守った。

 

「なんでなんだよ!!」

 

拳と拳がぶつかる。光と影が交錯する。

爆破の火花が夜の闇を照らし、グラウンドβに轟音が響き渡る。

だが――戦いの最中、爆豪の口から飛び出したのは、痛烈な怒りと、悲しみの言葉だった。

 

「なんでなんだよ!!なんでずっと後ろに居たやつが、憧れた人に認められて!どんどん成長して!」

 

「――なのに、なんで俺は!!――――オールマイトを終わらせちまったんだ!?」

 

夜空に響く、爆豪の叫びを、被身子はただ聞いていた。

 

(……そっか。君はずっと思ってたんだね。オールマイトが“終わった”のは、自分のせいだって――。)

 

彼は、ヒーローを目指している。誰よりも、ヒーローに、オールマイトに憧れていた。

 

だからこそ、あの夜の戦い――「神野の悪夢」で、オールマイトが最後の力を振り絞った瞬間を、誰よりも深く胸に刻んでいたのだろう。

 

(でも……そんなことないよ。オールマイトが終わったんじゃない。オールマイトは、"出久くんに託した"んだよ。だから――)

 

被身子は一度目を瞑り、考えを中断する。

 

(……”これ”を受け止められるの出久くんだけ。)

 

「この戦いに意味はない、でも――」

 

被身子は、ビルの上から戦いを見つめながら、静かに自分の胸に手を当てた。

 

(……私たちは、まだ子ども。ヒーローを目指しているけれど、心まで強くあり続けられるわけじゃない。この戦いに意味なんてない。でも、きっと、これは"必要な戦い"なんだ。彼は、戦わなきゃ"前に進めない"。――そして、出久くんも、それをわかってるから……だから、逃げない。)

 

「なら、私は――君たちの戦いを、最後まで見守る。」

 

彼らは、まだ少年。

大人に頼るのではなく、"自分自身の答え"を見つけるために、ぶつかり合うのだろう。

だったら、私は――ただ、見届けよう。

 

(大丈夫、私がいる。私は君たちを見てる。)

 

そう思いながら、被身子は夜のグラウンドβを静かに見つめ続けた。

 

 

 

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エピソード:「OFAの真実――そして相澤の説教と、被身子の応急処置」

 

先生たちがしっかりと道を示して叱ってくれるので被身子は余計なことをしない

 

 

静寂が訪れた。

爆豪と出久、二人の戦いは終わっていた。

地面には、戦いの激しさを物語るように焦げた跡が残っている。

 

爆豪が出久を完全に抑える形で勝負は決着がついた。それを、ビルの上から見ていた被身子は、そっと目を細めた。

 

(……うん。――まだ、全部を整理しきれたわけじゃないと思うけど……それでも、確かに"前に進めた"気がする。)

 

彼女は、そっと屋上から降りるタイミングを見計らっていた――すると、その時だった。

 

「そこまでにしよう、二人とも。」

 

静かな声が響いた。

――オールマイト。被身子が、降りる寸前で止まる。

 

(……来た。)

 

爆豪は出久から降り、はっと顔を上げた。

 

「オールマイト……。」

 

そう言いながら、オールマイトはゆっくりと近づいてきた。

だが――その表情は、どこか、"苦しげ"でもあった。

 

オールマイトは爆豪に謝罪する。彼の強さに甘えていたことに。

爆豪はなぜ出久が選んだのかを問う。出久はあの時誰よりもヒーローであり、そして”持っていなかった”。

 

 

「OFAについて知っているのは?」

 

爆豪が、拳を握りしめながら、問いかける。出久が一瞬、緊張した顔をする。

 

オールマイトは、ゆっくりと答え――

 

「あと私も。」

 

唐突に、声が割り込んできた。

――被身子だった。

 

「お前、やっぱり知ってやがったのか。」

 

「……。」

 

被身子が姿を現すと、爆豪は眉をひそめた。

 

「最初から知ってたのかよ?」

 

「渡我少女には、OFAの話をする前に"私の限界"を自力で気づかれてしまったんだよ。」

 

オールマイトが、静かにそう言った。

爆豪の目が、少しだけ見開かれる。

 

「……は?」

 

「彼女は、"血の巡り"を本能的に察知できる。だから、私が"マッスルフォームを維持するのが不自然"だと、初めて見たときから気づいていたんだ。それで、リカバリーガールに相談されて――結局、私はOFAのことを話さざるを得なくなった。」

 

「……」

 

爆豪が、改めて被身子をじっと見る。被身子は、苦笑しながら肩をすくめた。

 

「……まぁ、最初は"すっごい違和感"って程度だったんだけどね。でも、直接オールマイトを見てるうちに、確信に変わった。――そして、出久くんが……"何か"を手に入れてたって、気づいたんだ。」

 

爆豪は、深く息を吐いた。

 

「……やっぱり、わけわかんねぇよお前。」

 

 

グラウンドβでの"決闘"が終わり、オールマイトと共に戻った三人。だが――

 

「さて、問題児ども。説明してもらおうか。」

 

すでに、相澤が待っていた。2人は、相澤の束縛布でガッチリ拘束される。

 

「チッ……。」

 

「……はい、すみません。」

 

(……うわぁ、ガッツリ怒ってる。)

 

被身子は、少し距離を取りつつ、"どこまで巻き込まれるか"を様子見ていた。

 

「……夜に抜け出し、教師の目を盗んで"私闘"とはな。しかも仮免試験後とは元気があってよろしいな。ーー何か言い訳は?」

 

「……ないです。」

 

「ねぇよ。」

 

「なら、"罰則"は避けられないな。」

 

「……。」

 

オールマイトが口を挟もうとする。

 

「すまない、相澤くん。これは私たち大人が、彼らのケアを怠ったせいだ。爆豪少年は私が引退したことに負い目を感じていた。フォローが足りなかった。」

 

しかし――

 

「それはそれ。」

 

相澤はピシャリと言い放つ。

 

「"いけないことはいけない"。それは、ちゃんと反省させる。」

 

ぐるんと相澤の顔が二人を見る。

 

「さきに手出したのは?」

 

「俺。」

 

ぶっきらぼうに答える爆豪。

 

「二人とも寮内謹慎!爆豪は4日!緑谷は3日!共有スペースの朝夕の掃除!!それと反省文!」

 

「以上!文句あるか?」

 

「……ないっす。」

 

「はい……。」

 

相澤は、ため息をつきながら、「全く……。」と、束縛布を解こうとしたその時――

 

「ちょうどいいから、そのままで。待っててください。」

 

不意に、被身子が手を挙げる。

 

「せっかく縛ってるなら、"このまま"応急手当しちゃいますね!」

 

「……は?」

 

「……え?」

 

「おい、待て。」

 

「はい、ジッとしててくださいねー!」

 

そう言って、被身子は、サッと医療キットを取り出した。

 

「はい、まずは出久くん。――顔、ちょっと腫れてるね。骨に異常はなさそうだけど、炎症してるから冷やすよ。」

 

「う、うん……。」

 

「爆発クンも――ほら、顔と腕。――割と派手に擦りむいてるね。アルコールしみるかもしれないけど、我慢してね!」

 

「っ……チッ……!!」

 

顔をしかめる爆豪。

だが、反抗しつつもちゃんと治療を受ける辺り、何も言えないのがわかる。

 

(……オールマイトの言葉が君に届いているんだね。)

 

被身子は、ちょっと微笑んだ。

 

「……で、渡我。」

 

相澤は、じっと被身子を見据えた。

 

「お前は、なんで出歩いていた?」

 

「ん? ああ、それはですね……。」

 

彼女は一瞬考え――

 

「二人が私闘を始める直前まで、リカバリーガールの授業を受けていました!」

 

と、堂々と言い放った。

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「………………。」

 

「……ふーん。」

 

鋭い目つきで睨まれるが――

 

「……まぁ、ばあさんならありえるか。今回は目をつむる。」

 

(よし、セーフ!)

 

被身子は心の中でガッツポーズを決めた。

 

応急処置を終え、束縛布を解かれた二人。

爆豪はムスっとした顔、出久はシュンとした顔。

 

そんな二人に、被身子はニコッと笑い――

 

「色々ありはしたけど、今回の私闘はいけないことはいけないこと。ちゃんと反省しなね?――二人とも!」

 

ペチッ

 

――二人のおでこを軽く叩いた。

 

「……はい。」

 

「……チッ。」

 

(よしよし、素直になったね。)

 

そんな二人の様子に、オールマイトも相澤も、ほんの少しだけ微笑んでいた。

 

 

 

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エピソード:「勝己くん――私と彼もちゃんと話したことはない。」

 

遠くから彼を見ていた被身子だから知っていること

 

 

相澤の説教が終わり。

出久と爆豪は、1年A組の寮へ。被身子は、2年A組の寮へ。

 

被身子は、星が瞬く夜空を見上げながら、静かに考えていた。

 

(……爆発クン。彼は、きっとまだ"言葉"を持てていない。だけど、今日の戦いで、少しは整理できたはず。だから……私は、少しだけ背中を押そう。)

 

その決断した被身子は――小学生ぶりに、名前を口にした。

 

「――勝己くん。」

 

「……は?」

 

前を歩いていた爆豪が、ピタリと足を止める。

出久も、驚いたように振り向いた。

 

「……おい、今なんつった?」

 

「勝己くん、って呼んだんだけど?」

 

「…………。」

 

爆豪は、少しだけ眉をひそめた。

 

「お前に、そんな呼ばれ方される筋合いねぇんだけど?」

 

「最初はこう呼んでたんだけどなー。ーーまぁ、そう思うだろうね。」

 

被身子は、微笑みながら歩み寄る。

 

「でも、これは"私なりの言葉"だから。」

 

被身子は、少し懐かしそうに爆豪を見た。

 

「付き合いだけなら、小学生のころからあったね。」

 

「……。」

 

「君はずっと、"私"から距離を取っていた。」

 

「私も、"爆破クン"って呼んで、"出久くんを虐める相手"って認識してた。でも、それでも、私は"完全に君を拒絶しなかった"。それはね――出久くんが、"君に憧れていた"って、知っていたからだよ。」

 

爆豪の瞳が、微かに揺れた。

 

「……。」

 

「だから、私は"遠くから"見てた。君が、どんなふうに"勝つこと"を大事にしていたのか。」

 

被身子は思い出すように目を瞑る。

 

「君が、どんなふうに"完全勝利"を目指していたのか。君が、どんなふうに"戦い続けていたのか"。」

 

被身子は、まっすぐな瞳で爆豪を見つめる。

 

「勝己くん。――君のプライドは、君だけを守るための"誇り"なんかじゃないでしょ?君は、"完全勝利"を目指す人間なんでしょ?だったら、その勝利は"君だけ"のためのものじゃないはずだよ。」

 

爆豪は、ギリ、と歯を食いしばる。

 

「……チッ、いちいち、うるせぇんだよ。――デクみてぇに勝手に人のこと、分析してんじゃねぇ。」

 

「……うん、そうだね。」

 

被身子は、穏やかに微笑んだ。

 

「でも、私は"先輩ヒーロー"だから。ヒーローを目指してる後輩が、"本当に勝ちたい道"を見つけられるように、ちょっとくらいアドバイスしてもいいでしょ?」

 

「……チッ。」

 

爆豪は、それ以上何も言わなかった。ただ、拳を握りしめて、ゆっくりと歩き出す。

 

「……ああ、クソが。――言われなくても、"そう"するっての。」

 

その背中は、少しだけ――"前に進んでいるように"見えた。

 

 

爆豪が歩き去った後、被身子は出久を振り向く。

 

「……出久くん。」

 

「……うん。」

 

出久は、何かを言おうとしたが――言葉にならなかった。

 

ただ、"ありがとう"という気持ちだけを込めて、被身子をまっすぐ見つめた。

 

(うん、伝わってるよ。)

 

被身子は、優しく微笑みながら、手を振った。

 

「……おやすみ、出久くん。」

 

 

 

 





<医療特別保助官室について>
雄英高校が全寮制になったこと。さらにはオールマイトの引退にあたり、リカバリーガールの業務圧迫が予測され、雄英高校にも常に居られるか不明のため、対応としてリカバリーガールの代役、渡我被身子を選出。その活動拠点として新たな部屋を作成した。
推薦者はずっと彼女を見てきたリカバリーガール。一年と少しの雄英高校での活動内容や現場での対応などを含めて実績、経験、身元が申し分ないと職員会で判断され、この部屋限定で誰の監督もなしに渡我被身子は医療行為が行える。
今後はここでの活動実績(主に外科)をもとに実際の医療資格を取得を目指す目的のため、リカバリーガールが居ても簡単な傷などは被身子に任せる方針へ変えていく。
設備は主にサポート科の人達が作成。渡我被身子の個性に合わせて大量の血をストックしてある。

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