渡我被身子は救われていました。   作:imuka

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投稿遅れました。すみません。
新年度&私用がドタバタしてまして。
書きたかったのはナイトアイの件の部分。



ヒーローインターンから文化祭くらいまで

 

エピソード:仮免合格、おめでとう

 

こっそりお祝い

 

 

「出久くん、仮免許合格おめでとう。」

 

「……えっ?」

 

夜の"医療特別保助官室"に連れてこられた出久が、驚いたように被身子を見つめる。

寮では謹慎明けに「お祝い」なんて堂々とできない。

でも――

(それなら、"私の部屋"ならいいよね?"医療特別保助官室"なら、先生たちも頻繁に来ないし!)

そう考えた被身子は、こっそり出久を呼び出したのだった。

 

「でも、本当に良かったね。」

 

「うん……! ありがとう、被身子ちゃん!」

 

「これで、僕も"仮免ヒーロー"として、もっと活動できる!」

 

「……そうだね。」

 

被身子は、微笑みながら座る。

 

「それで、もう"ヒーローインターン"は考えてる?」

 

「うん……ナイトアイ事務所に行こうかと。」

 

「オールマイトの元サイドキックだった、あのナイトアイ?」

 

「そう。オールマイトのことをよく知る人だから、"自分の次の成長"に繋がると思うんだ。」

 

出久は、しっかりと前を見据えた表情で答えた。

 

(……うん、やっぱり出久くんはすごいな。ちゃんと"自分に必要なもの"を考えて、行動できてる。)

 

「被身子ちゃんは? どこかの事務所に行くの?」

 

「私は……まぁ、リカバリーガール先生の下で"ガッツリ研修"って感じかな。今は、"医療ヒーロー"としての基盤をもっとしっかりさせないとね。」

 

「そっか……!」

 

「出久くん、"ヒーローインターン"頑張ってね。私も、負けてられないし。……ま、それはそれとして。」

 

目つきが変わった被身子に出久は首を傾げた。

 

「ん?」

 

「"お祝い"だもん。せっかく"私の部屋"に来てもらったんだし、ちゃんとお祝いしなきゃね?」

 

被身子は、少し妖艶な笑みを浮かべた。

 

「えっ、被身子ちゃん?」

 

出久が、微妙に警戒する。

 

「久しぶりだね、こういうの。寮生活が始まってから、あんまり"甘々"できてなかったもんね?」

 

「……えっ?」

 

出久の顔が、一気に赤くなる。

 

「ちょ、ちょっと待っ……」

 

「なに?」

 

「ヒーローインターンとか、真面目な話したばっかりじゃ……!?」

 

「関係ないでしょ?」

 

被身子は、スッと出久の横に座ると――ぎゅっと抱きしめた。

 

「っ……!?」

 

「……久しぶりだね、こうやって"くっつく"の。」

 

「…………。」

 

「出久くん、仮免許取得の"ご褒美"ね?」

 

「ま、待って待って……!」

 

出久が、完全にパニックになる。

 

「ひ、被身子ちゃん……!?!?」

 

「うん?」

 

「な、なんで急に……」

 

「……そんなに"久しぶり"に感じる?」

 

「そ、それは……っ!!」

 

(あ、これ可愛い。)

 

出久の耳まで真っ赤な顔を見て、被身子はちょっと満足げに微笑んだ。

 

「やっぱり、たまにはこういうのも大事だよね?」

 

「……ひ、被身子ちゃん……っ!」

 

「んー?」

 

「も、もうちょっと、落ち着いて……!」

 

「……ふふっ。」

 

"お祝い"は、もうちょっと続きそうだった。

 

 

 

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エピソード:やっぱり、私はこの人を愛してる

 

久しぶりの甘えられる時間

 

 

出久を抱きしめながら、被身子は、静かに彼の体温を感じていた。

 

(……ああ、やっぱり、落ち着くなぁ。寮生活が始まってから、"ヒーローとしての時間"が多くなったけど……。こうやって、"ただの私"になれる時間、ちゃんと取れてなかったなぁ……。)

 

久しぶりに感じる、"出久くんとの距離感"。彼の心臓の鼓動が、自分の鼓動と重なる。

 

「被身子ちゃん……!?」

 

出久は、予想通りテンパっている。

 

(うん、やっぱり"出久くん"って感じ。いつもは"ヒーロー"としてすごく成長してるのに、こういう時だけは相変わらず"可愛い"んだから。)

 

「ねぇ、出久くん。」

 

「な、なに……?」

 

「今、幸せ?」

 

「え……?」

 

「私は、すごく幸せだよ。」

 

被身子は、優しく微笑みながら、出久を見つめた。

 

「君が、ここにいるだけで。」

 

被身子は、ふわっと目を閉じた。

 

(私は、"ヒーロー"としての道を進んでる。医療ヒーローとして、"人を救う"力をつけようとしてる。"個性"の特性を生かして、"誰かを支えられる"存在になろうとしてる。でも――本当の本当の、本当のことを言うなら。私は"出久くんがいたから"ここまで来れたんだ。彼が、私の"最初のヒーロー"だったから。"個性"がどうかなんて関係ない。最初に、"私を助けてくれたのは"――"出久くん"だったんだから。)

 

「……出久くん。」

 

「う、うん……?」

 

「私はね、君のためなら、どこまでも進めるよ。"誰よりも前に行く"くらい、全然平気。」

 

「……え?」

 

「でも、"君と一緒に進める"なら、もっといいなぁ。」

 

「……被身子ちゃん……。」

 

出久が、少し照れくさそうに目を逸らした。

 

(ああ、もう、ほんと可愛い。)

 

「ねぇ、出久くん。」

 

「な、なに……?」

 

「やっぱり、私は"君のこと"が大好き。"ヒーロー"としての君も、"普通の君"も、"テンパる君"も。私は、全部ひっくるめて、君を愛してるんだよ。」

 

「っ……!!」

 

出久の顔が、一気に真っ赤になる。

 

「ひ、被身子ちゃん……っ!!」

 

「……ふふっ。」

 

被身子は、その様子が可愛くてたまらず、そっと彼の頬に口づけを落とした。

 

(やっぱり、私は"この人"を愛してる。"ずっと"、愛してる。どんな未来が待っていても、

どんな困難があったとしても――"一緒に歩んでいきたい"って思える人。)

 

「出久くん?」

 

「……な、なに……?」

 

「これからも、"私のヒーロー"でいてね?」

 

「……!!」

 

出久は、何かを言おうと口を開くが――結局、言葉にならず、小さく頷くだけだった。

 

 

 

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エピソード:出久成分不足と、突入作戦への出動

 

出久成分が足りない渡我被身子

 

 

「……はぁ~~~~……。」

 

被身子は、医療特別保助官室の机に突っ伏して、ため息をついた。

 

「……やっぱり、出久くん成分が足りない……。」

 

そう、ここ最近――出久はヒーローインターンでナイトアイ事務所へ行き、ほとんど雄英に帰ってこない。

 

「仕方ないけどさ……。」

 

(ナイトアイって、超厳しいらしいし。自主練もガッツリやってるみたいだし……。……でも、やっぱり"寂しい"のは寂しいよね。)

 

少し拗ねたように、被身子は机の上で顔を埋める。

 

「"出久くんの気配"がないの、慣れないなぁ……。」

 

"あんなに一緒にいたのに"、ぽっかりと穴が空いたような感じがする。

 

(……ま、でも、私もやることいっぱいあるしね!)

 

そう言って、被身子は勢いよく立ち上がった。

 

「よし! 出久くんが頑張ってるなら、私も負けてられない!"ヒーロー"として、"医療者"として、もっと成長しなきゃ!」

 

そう自分に言い聞かせ、次々と医療関連の仕事をこなしていく。

そんな毎日を送っていた数日後――

 

「渡我、現場に出なさい。」

 

リカバリーガールの言葉に、被身子はすぐに顔を上げた。

 

「はい?」

 

「"死穢八斎會"への突入作戦。ナイトアイ事務所が調査していた"ヤバい組織"だ。そこに、ヒーローたちが突入する。」

 

「……。」

 

「で、アンタには"バックアップ要員"として同行してもらう。負傷者の対応"と"戦場医療"が、お前の任務だ。」

 

被身子は、リカバリーガールの言葉を聞きながら考える。

 

("現場"に出るのは、これが初めてじゃない。私は、"何度も"ヒーローの戦場を見てきた。"負傷者の処置"も、"ヒーローのサポート"も、ずっとやってきた。だから……今回も、"冷静に"やるべきことをやる。)

 

被身子は、そう自分に言い聞かせながら、リカバリーガールを見る。

 

「……でも、何故"私"なんですか?」

 

「身元もしっかりしているし、"現場経験"も申し分ない。加えて、"ナイトアイ事務所"が動いてるんだ。ーー残りは言わなくてもわかるね?」

 

「……!!」

 

ナイトアイ事務所。それは、今、出久がインターンをしている場所。

 

(ってことは……出久くんもそこに!?)

 

被身子の脳裏に、しばらく会えていない彼の姿が浮かぶ。

 

(……こんな形で会うようになるとは思わなかったけど。でも会えるなら、それはそれでいいか。……出久くん、頑張ってるかな。大丈夫かな……?)

 

一瞬だけ、ヒーローとしてではなく、"彼女"としての思いがよぎる。

でもすぐに、被身子はその思考を振り払った。

 

「……了解しました。」

 

「"バックアップ要員"、やらせていただきます。」

 

「よし。」

 

リカバリーガールは頷く。

 

「じゃあ、"現場"で思う存分に発揮しておいで。"医療ヒーロー"としてね。」

 

 

 

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エピソード:作戦前の再会――エリちゃんのために

 

作戦会議の再会

 

 

作戦決行の前日。

ナイトアイ事務所の作戦室には、ヒーローたちが集結していた。

プロヒーロー、警察関係者、そして――

 

「今回の作戦では、医療ヒーローもバックアップに入ります。」

 

ナイトアイの言葉とともに、被身子が会議室の扉を開けた。

 

「はじめましての人も、久しぶりの人も、よろしくお願いします!」

 

被身子は、にこっと笑いながら、軽く手を振った。

その瞬間――

 

「ええっ!?」

 

出久が、思いっきり驚いた顔をした。

 

「ひ、被身子ちゃん!?」「先輩!?!?」

 

切島、麗日、蛙吹も、驚いたように目を見開いた。

 

「彼女は"渡我被身子"。」

 

ナイトアイが続ける。

 

「リカバリーガールの推薦を受けて、"医療ヒーロー"としてバックアップに入ることになった。彼女の"変身"の個性を活かせば、"緊急時の輸血"や"負傷者の迅速な処置"が可能。戦場では、彼女が"即時の医療対応"を行う。」

 

「"医療ヒーロー"として、皆さんをサポートさせてもらいます!―――よろしくお願いします!」

 

被身子は、軽く会釈した。

 

「……まさか、先輩が来るとは。」

 

切島が、ちょっと驚いたように言う。

 

「でも、頼もしいね」

 

「私たちをサポートしてくれるのね」

 

麗日と蛙吹も、嬉しそうに微笑む。被身子は、小さく手を振り返した。

 

(……"出久くん成分不足"で、ちょっと寂しかったけど。こんな形だけどでも会えると嬉しいなぁ)

 

被身子は、チラッと出久の顔を盗み見る。

 

(……うん。ちゃんと"ヒーロー"の顔になってる。出久くんも、すごく成長してるんだなぁ……。)

 

そんなことを考えながら、会議の続きを聞いた。

 

「では、作戦概要を説明する。」

 

ナイトアイが、スクリーンにエリの写真を映し出す。

 

「今回の作戦の最大の目的は、この少女――"エリ"の救出だ。」

 

被身子の目が、かすかに揺れる。

 

(……小さい。……怯えた目をしてる。こんなに幼いのに、何かに追い詰められているみたいな顔をしてる。)

 

「彼女の個性が"死穢八斎會"に利用されている。詳細はまだ不明だが、"個性因子"に関する実験が行われている可能性がある。」

 

「……。」

 

被身子は、胸がギュッと締めつけられるのを感じた。

 

(また……まだこんなに悲しいことがある。)

 

「絶対に助けなきゃ……。」

 

そう決意を固めているとナイトアイが、説明を締めくくる。

被身子は、静かに拳を握る。

 

(……私も"ヒーロー"なんだ。この子を助けるために、"医療ヒーロー"として全力で動く。)

 

出久も、真剣な眼差しで、スクリーンのエリを見つめていた。

 

(出久くんも、きっと同じ気持ちなんだろうな。)

 

被身子は、ふっと小さく笑った。

 

(じゃあ、やることはひとつ。"共に戦う"だけ。"ヒーロー"として。)

 

 

 

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エピソード:ナイトアイの傷――被身子の医療ヒーローとしての決断

 

ナイトアイの致命傷

 

 

凄まじい力で空へと翔んでいった出久を見上げ、その姿に呆然とした被身子。

 

「先輩!!ナイトアイが!!」

 

しかし麗日の叫び声が、一気に現実へと引き戻す。

下の大穴からナイトアイを抱えて出てきた麗日。彼の腹部には、大きな傷と激しい出血、左腕の欠損。一目見ただけで、それが"深刻"なものだと分かった。

 

「……!」

 

被身子は、即座にナイトアイの元へ駆け寄る。しかしナイトアイの傷口を見た瞬間、被身子の手が、一瞬止まった。

 

(……これは……。)

 

彼女は個性を強化発展させたことで"血の巡り"を瞬時に把握する能力を持っている。

それはつまり――

 

「……内臓が……破壊されてる……。」

 

彼女は、本能的に理解してしまった。

 

(これ……"致命傷"だ……。)

 

血の流れ方。止血が間に合わないほどの内部出血。脈の落ち方。

 

「……"間に合わない"……?」

 

被身子の指先が、一瞬だけ震えた。

 

(そんなの……ダメ……。私が”ここ”にいるのに、"助けられない"なんて……。)

 

「……っ!」

 

被身子は、すぐに震えを振り払う。

 

「違う。"間に合わない"なんて言わない!!」

 

(私が"医療ヒーロー"なら、最後まで"助ける"ために動く!!)

 

「縫合準備!!」

 

彼女は、即座に処置を開始した。

・止血剤の注入

・傷口の洗浄

・腹に刺さった破片を除去せずに内臓の位置の調整と、縫合開始

血液が飛ぶ。手が震えそうになる。

 

(ダメダメ、手を止めるな!!"助けられる可能性"があるなら、私は"最後の最後"まで諦めない!!)

 

「ナイトアイ!意識をしっかり……!!」

 

「……」

 

ナイトアイは、薄く目を開け、かすかに微笑んだ。

 

「……すまない……。"未来"は……変えられない……。」

 

「そんなこと言わないでください!!そんなの、やってみなきゃ分かんないでしょ!!」

 

血液パックを繋ぎ、被身子は必死にナイトアイの命を繋ぎ止めようとする。

 

(お願い、"間に合って"!!)

 

「"救急車、到着!!"」

 

ヒーローたちの声が響く。

被身子は顔を上げ、治療を続けながら担架にのせる。

 

("ヒーロー"が諦めるなんてありえないんだから!)

 

 

 

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エピソード:ナイトアイの最期――ヒーローとしての悔しさ

 

病院へ――懸命の処置

 

 

ナイトアイは、緊急搬送された病院で、すぐに緊急手術を受けた。

救急車に運ばれながらも被身子は、救急隊員と共に治療を続け、彼の状態を事細かく主治医に伝え、手術室へ入っていくのを見送った。

 

(……お願い。助かって……!!)

 

彼女は、自分が行った処置を必死に思い返す。

・出血の管理

・縫合処置

・輸血

・酸素補給

 

考えて扉の前で立つ被身子を看護師が血を落としたほうがいい、と彼女の手を取った。

 

("できること"は全部やった。それでも……それでも……。)

 

まだできたことがあったのではないのか。そんな考えが彼女の頭をよぎりながら彼女はその場を離れた。

 

血で汚れたヒーロースーツから借りた看護服へ着替え、汚れた顔などを洗い、被身子は他負傷者の状態を報告しつつ、運ばれた状態の確認も行っていた。

そんなところに相澤が訪れる。

 

「渡我、ついてこい」

 

その相澤の声だけで被身子は全てを察するが如く、全身の血液が冷えるのを感じた。

 

相澤へ連れられてきた集中治療室には、オールマイト、ミリオ、出久、センチピーダー、バブルガール、リカバリーガール、そして医療関係者がいた。

ナイトアイとの最後の会話を皆がしていた。そしてミリオに声をかけたナイトアイは最後に呆然と立つ被身子を見る。

 

「……渡我被身子くん。」

 

「……!!」

 

被身子は、涙をこらえながら、思わずナイトアイの横に駆け込みしゃがむ。

 

「君が……懸命に……"治療"してくれたおかげで……。こうして……皆と"言葉"を交わすことができた……。……ありがとう。」

 

被身子の目が、一瞬だけ見開く。

 

「……そんな……!!」

 

(私の治療なんて……。結局、"助ける"ことができなかったのに……。)

 

彼は、微笑んだ。

 

「ヒーローとは……人を救い、"未来"を作る者だ。君は、"最高の医療ヒーロー"になるだろう。……君のおかげで、私は"最期"に、友にも、弟子にも、仲間にも会えた。」

 

「……。」

 

被身子の手が、震えた。

 

(そんなの……そんなの……。)

 

ナイトアイは、最後にミリオに笑顔を向け

 

「笑え……未来を信じろ……。元気とユーモアのない社会に明るい未来は……こない」

 

そう言い残して、静かに、息を引き取った。

 

「ナイトアイっ……!!」

 

ミリオの叫びが響く。被身子は、必死に涙をこらえた。

 

(助けられなかった……。"命を救う"ために……"ヒーロー"として来たのに……。私の力は……"間に合わなかった"……?)

 

手を強く握る。唇を噛みしめる。何もできなかったわけじゃない。でも、"救えなかった"ことには変わりない。

皆が涙を流す中、被身子は歯を食いしばり、病室の外へと出る。そんな悔しそうな被身子に手術を行った医者が、被身子の処置について評価を述べる。

 

「君の処置は、完璧だったよ。縫合も、消毒も、止血も、すべて正しい。おそらく、あの場でできる最高の医療を施したはずだ。」

 

リカバリーガールも、静かに頷く。

 

「そうだね、渡我。"アンタがいたから"、彼は最後の時間を持てたんだよ。」

 

「……。」

 

(分かってる……。"できること"は全部やった。……でも。)

 

被身子は、ついに我慢できず大粒の涙をこぼした。

 

「……悔しい……。"助ける"って、言ったのに……。"間に合わなかった"……。」

 

誰も彼女を責めなかった。

"ヒーロー"である以上、どれだけ完璧にやっても、"救えない命"がある。

でも――彼女にとって、それは、"耐えられない現実"だった。

 

 

 

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エピソード:止まらない涙、優しい腕の中で

 

こんなに悔しいのは、初めてだ

 

 

病院の廊下。

人気のない一角で、被身子は、壁にもたれかかりながら、震える手で顔を覆っていた。

 

「……っ……。」

 

涙が、止まらない。

 

(こんなに悔しいの、初めて……。こんなにも、涙が出るのは……久しぶりだ……。)

 

目を閉じても、ナイトアイの最期の顔が浮かぶ。

 

「……助けるって……言ったのに……。」

 

何度も何度も、頭の中で"たられば"が巡る。

 

(あの時、もっと早く処置していたら?もっと違う方法を取っていたら?私が"もっと強ければ"……?)

 

「……っ……!!」

 

拳を握る。

 

(私は、"医療ヒーロー"なのに。"ヒーロー"って、人を救う存在なのに。それなのに……"救えなかった"……。)

 

涙が、頬を伝う。

 

「……私……無力だった……。」

 

その時――

 

「……被身子ちゃん。」

 

静かに、大好きな声がした。

 

「……っ……!」

 

顔を上げると、そこにいたのは、出久だった。

 

「……出久くん……?」

 

彼も、目に涙を浮かべていた。

でも――彼は、何も言わなかった。

ただ、そっと、被身子を優しく抱きしめた。

 

「……っ……!!」

 

その瞬間、涙が、また溢れた。

 

(どうして……。どうして、出久くんは、いつも……。"私が一番苦しい時"に、そばにいてくれるの……?)

 

「……っ……」

 

彼の胸に顔を埋め、被身子は、声も出せずに泣いた。

彼の腕の中は、とても、あたたかかった。

 

「……っ……。」

 

涙が、次から次へと零れる。

 

「……っ……。」

 

(今は……。今は、足を止めて、"泣いてしまう"けど……。)

 

「……っ、明日には……。明日には、"また歩き始める"から……。」

 

出久は、ぎゅっと被身子を抱きしめたまま、静かに頷いた。

 

(だから、今は……。今だけは、このまま泣かせて。)

 

そう思いながら、被身子は、彼の腕の中で、ただ涙を流し続けた。

 

 

 

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エピソード:「涙を糧に――プルスウルトラ」

 

涙を拭って、前を向く

 

「……絶対に、次は"救う"。」

 

それが、被身子の新たな誓いだった。

ナイトアイを救えなかった悔しさ。止まらなかった涙。

でも――

 

("ここで足を止める"なんて、ありえない。私は"ヒーロー"だ。"医療ヒーロー"として、もっともっと"先へ"進まなくちゃ。)

 

だから、被身子は雄英高校に戻るとすぐに、リカバリーガールのもとへ向かった。

 

「……ナイトアイを、救えませんでした。」

 

被身子は、まっすぐリカバリーガールを見つめた。

 

「私が、"もっと上手く"やれていたら……。もっと"高度な医療"を知っていたら……。もっと"先"に進んでいたら……。私は彼を救えたんじゃないかって、そう思うんです!!だから……!!"もっと学びたい"です。"もっと強くなりたい"です!!もう、"救えなかった"なんて言いたくない!!」

 

リカバリーガールは、静かに被身子を見つめていた。

やがて、くつくつと笑みを浮かべる。

 

「さすがのお前さんも、"足を止めてしまう"んじゃないかと心配したけど……。杞憂だったみたいだねぇ。……医療現場に入れば、"嫌でも"ああいう場面には出会う。」

 

リカバリーガールの言葉は、静かだけれど、どこか重かった。

 

「どれだけ努力しても、"救えない命"はある。それでも私たちは、"助けるために治療する"し、"諦めない"。アンタも、"現場"ではそれができていたはずさ。だから、涙を糧にプルスウルトラしていくよ。」

 

「……っ。」

 

被身子の胸が、ぐっと熱くなった。

 

(……そうだ。私は、"助けられなかった"んじゃない。"助けるために、すべてを尽くした"んだ。だから、次こそは――。)

 

「……はい!!」

 

力強く、被身子は頷いた。

 

「じゃあ、早速"次のステップ"へ行こうかねぇ。医療の"もっと深い知識"を叩き込むよ。……覚悟しといで。」

 

リカバリーガールの言葉に、被身子はぎゅっと拳を握る。

 

(今度こそ。"絶対に救う"。涙を糧に、私は"もっと先へ"進む――!!)

 

プルスウルトラ。医療ヒーロー・渡我被身子の道は、まだまだ、これからだ。

 

 

 

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エピソード:意気込みすぎる被身子、出鼻を挫かれる

 

もっと学びたい、もっと強くなりたい!

 

 

「……!!」

 

リカバリーガールの言葉を聞き、被身子は強く拳を握った。

 

「絶対に、"もっと先へ"進みます!医療の知識も、技術も、経験も!!今度こそ、"誰も救えない"なんて言わない!!」

 

力強く宣言する。が――

 

「……とは言え。」

 

リカバリーガールが、どこか呆れたように肩をすくめる。

 

「そろそろ雄英高校の文化祭だよ。」

 

「……え?」

 

被身子の熱意が、一瞬で霧散した。

 

「……文化祭……?」

 

「学生の特権を無駄にするんじゃないよ。どんなに覚悟を持っても、どんなに経験を積んでも、あんたは"まだ学生"なんだよ。」

 

リカバリーガールは、じっと被身子を見つめる。

 

「"文化祭"は、"雄英高校の生徒"であるアンタたちにとって、"特別な時間"なんだからね。」

 

「……。」

 

被身子は、一瞬言葉を失った。

 

(……そうか。私は、"ヒーロー"としての活動ばかり考えていたけど、今の私は、"雄英の生徒"でもあるんだ。)

 

「張り切りすぎてもいけない、……ってのは、あんたの"彼氏"を見ればよく分かるだろ?」

 

「……!!」

 

リカバリーガールの言葉に、被身子はピクリと反応した。

 

(……出久くん。確かに……"頑張りすぎ"て、いつも無茶ばっかり……。だからこそ、私が"支えたい"って思ったんじゃん。

 

「……そっか。」

 

被身子は、ふっと力を抜いた。

 

「わかりました、リカバリーガール。」

 

リカバリーガールは、満足そうに微笑んだ。

 

「さて、それじゃあ"文化祭モード"に切り替えなきゃ!聞いた話じゃ1年A組は"ライブパフォーマンス"をやるみたいだし……。出久くんが、どんな顔をして楽しむのか、しっかり見てあげなきゃ!」

 

被身子は、改めて気合を入れた。

 

("医療ヒーロー"として、"プルスウルトラ"するのはもちろん。でも、それと同じくらい。"学生"としての時間も、大切にしなくちゃね!)

 

 

 

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エピソード:エリちゃんと文化祭――ミリオからの感謝

 

エリちゃんとの再会

 

 

文化祭の準備で雄英が賑わい始めた頃。

 

「……!」

 

被身子は、校内を歩く小さな女の子の姿を見つけた。

 

(エリちゃん……。)

 

尾形ミリオに手を引かれながら、エリはゆっくりと歩いていた。

周りをきょろきょろと見回しながらも、彼女の表情は――まだ"後ろ暗さ"を抱えている顔だった。

 

「……そうだよね。」

 

被身子は、心の中で呟く。

 

("すぐに救われる"なんて、そんな簡単なことじゃないよね。)

 

彼女の小さな肩には、"過去の傷"がまだ重く残っている。

それでも――

 

(だからこそ、"これから"なんだよね。)

 

被身子は、静かにエリの背を見つめた。

 

1年A組が準備しているライブ。

 

「"エリちゃんのため"だけじゃないんです!」

 

出久の言葉が、頭の中でリフレインする。

 

(……うん、わかるよ。このライブは、"エリちゃん"のためだけじゃなくて、"皆のためのライブ"なんだ。)

 

雄英は、"敵の襲撃"で注目され、特に1年A組は周囲から厳しい視線を浴び続けている。

それでも、1年A組は――

 

「周りのことを考えられるヒーロー"なんだね。」

 

そんな彼らの"姿勢"に、被身子は感心した。

 

(私も、もっと見習わなきゃな。)

 

そんなことを考えていると――

 

「渡我くん。」

 

「?」

 

ミリオが、ひらひらと手招きしていた。

 

(……?)

 

不思議に思いながらも、彼のもとへと向かう。

 

「どうしました? 尾形先輩。」

 

ミリオの呼びかけに、被身子が首を傾げると――彼は、深々と頭を下げた。

 

「……えっ?」

 

「ごめんね。ずっと言えてなかった。君のおかげで、ナイトアイと"最後に話すことができた"。」

 

「……。」

 

「君の治療は"完璧だった"って聞いた。だから"最後の時間"を作れたんだって。本当に……ありがとう。」

 

「……っ。」

 

被身子の胸が、ぎゅっと熱くなった。

 

「きっと、最後にナイトアイに"ああ言ってもらえなかったら"、俺、もっと"引きずっていた"かもしれないから。」

 

ミリオは、微笑みながらそう言った。

 

(……私は、"救えなかった"と思ってたけど。……"救ったもの"も、あったんだ。)

 

「……こちらこそ、ありがとうございます。」

 

被身子は、小さく微笑みながら、ミリオに頭を下げた。

 

エリちゃんは、まだ"完全には救えていない"。

だけど、少しずつ"歩き出している"。ミリオも、"前に進もうとしている"。

 

(……私も。涙を糧に、"もっと先へ"進まなきゃ。)

 

1年A組のライブ。

文化祭。

雄英の生徒として、この"時間"を大切にしよう。

 

(だって、"未来"はこれから作るものなんだから。)

 

被身子は、少しだけ明るい気持ちになりながら、ミリオと共に文化祭の準備に戻るのだった。

 

 

 

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エピソード:文化祭の後――ご褒美と甘い時間

 

無事でよかった――褒めることがたくさん

 

 

雄英文化祭が終わった夜。人々の笑顔に包まれた一日が終わり、校内も少しずつ静けさを取り戻していく。

被身子は、こっそりと"医療特別保助官室"へ出久を招いた。

 

「お疲れさま、出久くん。」

 

「被身子ちゃんも……文化祭、楽しかった?」

 

「もちろん! でも、それより――。」

 

被身子は、出久の腕にそっと触れながら、じっと彼を見つめた。

 

「ライブ開演前に、"イザコザ"があったって聞いたよ?」

 

「……っ!」

 

出久の肩が、ピクリと跳ねた。

 

(やっぱり、バレてるよね……。)

 

「うん。でも、僕は大丈夫! 軽い打撲くらいで……。」

 

「……ちゃんと"軽い打撲"程度で済ませたのは偉いね。」

 

被身子は、にっこりと微笑みながら、出久の頬を撫でた。

 

「ずっと無茶ばっかりだったのにどんどんそれが"無事で済みました"っていうのは、"褒めるポイント"だよ。」

 

「……ありがとう、被身子ちゃん。」

 

「それに――。」

 

被身子は、ふっと柔らかく笑う。

 

「エリちゃん、すごく楽しそうにしてたよ。」

 

「ちゃんと"笑えてた"。それってきっと、"君が作ったきっかけ"だよ。」

 

出久の目が、かすかに揺れる。

 

「僕は、ただ……。……ただ、エリちゃんに"楽しい"って思ってもらいたくて。」

 

「うん。その"願い"が、ちゃんと届いたんだよ。」

 

ふわり。

被身子は、軽やかに出久に抱きつき胸に顔をうずめながら、そっと囁いた。

 

「凄いよ。君がどんどんヒーローになっていって……私も頑張らなきゃって思えていくる。私も絶対に救えるヒーローになろうって。――――でもそれと同時に夢中になってくれる私にもなりたいの。」

 

すっと顔を上げる。ぐっと近づく。唇が触れそうなほどの距離。

出久は、被身子の瞳に吸い込まれそうになった。

 

(……夢中にならないわけ、ないよ。)

 

「……いつも、僕は助けられてばかりだし。被身子ちゃんがいてくれて、すごく嬉しいし。もう、僕は君にとっくに夢中だよ。」

 

そう言って――出久は、珍しく"自分から"被身子にキスをした。

 

「……っ!」

 

一瞬、被身子の目が見開く。

 

(……久しぶりのキス……。なんだか、いつもと違う……?)

 

そして、気づいた。

 

(……え? 私、今……。顔、赤くなってる!?)

 

「……えっと、出久くん?」

 

「……ん?」

 

出久は、どこか不思議そうに首をかしげた。

 

「え、ちょっと待って……なんか、今の……。」

 

(私がドキドキしてる!?私の方が"押されてる"!?)

 

「……なんで、そんなに落ち着いてるの?」

 

「……え?」

 

「いや……え、ちょっと……。」

 

そんな被身子の動揺をよそに――

 

「……なんか、"かわいい"なって思って。」

 

そう言って、出久はもう一度、そっと唇を重ねた。

 

「……っ!」

 

被身子は、自分が完全に"受け身"になっていることに気づく。

 

(……え?私、いつもは"攻める側"なのに……?なんで……?)

 

そのまま、出久は、何度も何度も――

 

「……っ……もう……。」

 

"自分から"キスを繰り返した。

 

「……ふふっ。」

 

最後に、ようやく余裕を取り戻した被身子は、そっと出久の頬を撫でた。

 

「……出久くんも、"やるときはやる"んだね?」

 

「……そ、そうかな……?」

 

「……うん。今日は"負けた"かも。」

 

「……えっ?」

 

「いつもは、私が"押す側"なのにね?」

 

そう言いながら、被身子はくすっと笑う。

 

(でも、こんなのも"悪くない"。むしろ、すごく"幸せ"。)

 

被身子は、そっと出久の手を握った。

 

「……今日は、このまま"甘々な時間"にしよっか。」

 

「う、うん……。」

 

2人は、お互いの温もりを感じながら、静かに、甘く、愛しい夜を過ごした。

 

 





<本作の渡我被身子についての補足>
医療系ヒーローとして現場にはいくつも出ているが監督者無し、かつ医療系ヒーロー単独での行動は今回の件が初めてだった。そんな感じの設定です。
活動の多くをリカバリーガールと共に過ごしていたため、今回の対応について本当に問題がなかったのか、それに悩む彼女を書いたつもりです。

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