不幸にも虚飾の魔女に懐かれてしまった男 作:OZ
とても嬉しいです。
モチベに繋がります。
改めて、俺はプラロリ──もといパンドラに視線を注ぐ。
まじでどうかしてんだろ、この服装......じゃなくて、こいつは本当に俺の知ってる、あのリゼロのパンドラなのか?
もし、そうなると、俺が今いる世界はリゼロの世界ってわけで、完全に元の世界から弾きだされたってことになる。
どうなってやがんだ?
神隠しやアブダクションみたいな怪奇現象によって、神域やら他の惑星やらに転送されるっていうならまだしも、創作物の世界に入るってのがよくわからん。
それも、ただ学校の教室で授業中にうつらうつらしていただけだ。
俺のリゼロへの愛が昂りすぎた結果、明晰夢として生み出された夢の世界って線も考えられるが、残念ながら頬を強く摘まむと相応の鈍い痛みが走る。
それに身の回りにあるもの、全てがリアルだ。
街には馬のような恐竜のような生物が荷車を引いてあくせくと走ってるし、獣人やエルフがその横を平然と通り過ぎている。
夢にしては、あまりにも出来過ぎている。
文章に起こしてみれば、完全にファンタジーの世界だが、俺の視界の先には紛れもないリアルとして存在している。
まるで意味がわからないが......まずは状況の理解が先だ。
現状を夢の世界ではなく、現実だという前提で思考を進めるとしよう。
まず、目の前にいるのは、『虚飾の魔女』パンドラ。
第一村人として会うには最悪すぎるが、ネームドキャラと会えたこと自体は幸運かもしれない。
原作知識のおかげで、相手の素性をある程度理解した上でコミュニケーションを取れるのが大きい。
加えて、こいつは魔女教の中では、ペテルギウスやノミ以下とかの大罪司教と違って多少は会話ができそうだ。少なくとも、受け答えはできるレベルだ。
例えば、ここに来て最初に会った人物がレグルスだったなら、変ないちゃもんをつけられて殺されて、ゲームオーバーって流れになってたかもしれない。
そういった最悪の未来にならなかったことを想うと、不幸中の幸いとギリギリ受け取れなくもない。
心の中で微かな安堵を感じつつも、パンドラに視線を送っていると、彼女は少し恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
それからモジモジと体を揺らして。
「......殿方にこんな熱い視線を送られては困ります」
う、嘘くせぇ......
こいつがパンドラと名乗る前ならまだ騙される余地はあったかもしれないが、正体を知った以上、そこはかとない胡散臭さを感じる。
それになんだよ、そのどこかいじらしいような仕草は。
両手で顔を覆いながら、指の隙間からこっちの様子を窺ってくるなよ。
何を期待してんだよ。
『ばっ、馬鹿じゃねーの!?お前のことなんて見てねーし』、みたいなテンプレのセリフでも返してやればいいのか?
まあ、そんな台詞言うわけがないんだけどな。
「熱い視線?ああ、そうだ。お前が着てるそのペラペラの服の下に下着は存在するのか気になって夜も眠れなさそうなんだ」
「履いてませんよ?」
「まじかよっ。つか正直だな、おい。さっきの恥じらいはどこいったんだ」
「見ますか?」
「見ねーよ!ちょ......おいっ!まじでやめろ!」
裾を掴み、そっと捲り上げようとするところを全力で阻止。
真っ白い細腕を握って、俺はずいっとパンドラに詰め寄った。
「お前はアホなのか?衆人環視で自分の秘部を曝け出そうとするとか、痴女なのか?」
「本当は布一枚すら必要とせず、ありのままの姿を皆さんに見せたいと考えています」
「聞いてねーよ!そんなのロリコンしか喜ばないから絶対にやめろ!」
クッソー。こいつが巨乳のお姉さんキャラだったら、全力で応援してやったのに!
こいつが貧乳ロリであったばかりに......神は残酷だ。
おっと、いけない。
パンドラのアホさ加減に、つい本題を忘れるところだった。
現状の把握についてだ。
リゼロの世界に転移してしまったらしい、という大きい情報を得ることはできたもののまだわからないことはたくさんある。
例えば、今、俺がいる場所は一体どこなのか、とかな。
暖かで気候も落ち着いてることを考えると、グステコ聖王国の領内ってことはなさそうだが。あそこって、確か国土の大半が永久凍土の極寒の地って話だったはずだ。
俺は早速パンドラにいくつかの質問を投げかけることに決めた。
少し頭のおかしい部分のある奴だが、サテラやエキドナ達と同じ時代を生きたことを考えると、もう数百歳のはずだ。知恵を借りる相手としては最適だろう。
「なあ、パンドラ。変な質問なんだが、ここは一体どこなんだ?実はついこの間、故郷を出たばかりで、まだこの辺りの地理に詳しくないんだ」
「確かに変な質問ですね。ここは、親竜王国ルグニカの王都です。向こう側に小さく見えるのが王宮です。尤も王宮を統べる主は不在のようですが」
パンドラが指を指す方向には確かに王宮らしきものがあった。
確かにアニメでうっすらと見たことがある気がする。
王の不在、ね。
それが原因で竜歴石に選ばれた王候補による王選が始まるわけだが、この世界ではもう始まっているのだろうか?
そんな疑問を頭の中で思い浮かべていると、それに応えるようにパンドラが言った。
「王の不在という異質な状況を打ち破る為、この国では、程なくして王選が始まります」
現時点では、王選は始まってないのか。
つーことは皆大好き、我らが主人公スバル君はまだこの世界に来てないってことだな。
「王選に関してはご存知でしょうか」
「ああ、美少女達が王様の座をかけて戦って、民衆達は自分が心に決めた推しの子を応援するっていうルグニカの一大イベントだろ?」
「少しばかり誤解がありそうですが、概ね正解です。地理に詳しくないのに、王選のことは知ってるのですね」
「まあな。ちなみに俺の推しはプリシラだ。なぜかと言うと、一番おっぱいが大きいからだ」
次点でクルシュ、エミリアあたりがくる。
フェルトとアナスタシアも顔は悪くないんだが......まぁ、今後に期待だ。
「そうなのですね。私も王選はとても楽しみにしていますよ」
俺の推し情報にパンドラは興味なさげに適当なリアクションをかえす。
四章の過去編を見る限り、パンドラは愛に対してかなりの拘りがあったから、おっぱいへの愛を担保に上手く話題を提供できたと思ったが、失敗してしまったらしい。
さて、では次は何を聞こうか。
現在地と時間軸が知れたのは大きいが、そのほかに必要な情報はあるだろうか。
一番知りたい情報としては、そもそもなぜ俺がこの世界に転移したのかについてだが、そんなのこいつが知ってるはずはない。
となると、後は──ああ、重要なことがもう一つあった。
今後、この世界を生きていく上での身の振り方だ。
日本から突如転移させられた俺は当然、この世界に居場所はない。
着用してる制服以外には、ポケットの中に100円玉2枚と10円玉5枚、計250円があるだけだ。そして、この世界ではこれらの硬貨が流通していないから、全くの無価値。
スバル風に言うと、無知蒙昧、天下破滅の無一文。
まったく、こんな絶望的な状況からよくスバルは王候補者の騎士にまで成り上がったもんだぜ。
死に戻りってチート能力の存在が大きいにせよ、騎士に至るまでの道程を形成したのは、間違いなく本人の努力の賜物だろう。
正直、俺にはスバルと同量の努力ができる気はしない。
同じ転移者だからといって、死に戻り能力を有している確証はないし、そもそも俺はたとえ人生をやり直せる権利を持っていたとしても、ただの一度だって死にたいとは思えない。
先が思いやられる。
努力を嫌い、死に物狂いで苦難と向き合う覚悟もない、そんな俺がこの世界で生きていく方法はあるのだろうか。
宿を取る金すら持たないのに、いったい──ああ、そうだ。
今、俺の目の前には、中身はともかく、外面だけは良さそうなガキンチョがいたのだった。おまけにこいつは魔女教の中ではお偉いさんだったはずだ。
レグルスさんも敬語使ってたしな。
そうなると、懐の暖かさにも一定以上を期待できると考えてもいいだろう。
「なあ、パンドラ」
「なんでしょうか。そんな期待を込めた目で私を見つめて、どうしましたか?」
「金貸してくれ」
「......なぜでしょうか?」
「そんなの金がないからに決まってんだろ」
「なぜ、そこまで堂々としていられるのか、私にはわかりません」
「わからないままでいい。それで、お前は金を貸してくれるのか?貸してくれないのか?」
普通の人間が相手ならば、俺だってもっと下手に出ていただろう。
しかし、相手は『虚飾の魔女』パンドラ。
正攻法で、金の無心をすることは難しいはずだ。
変に下手に出ると格下認定されて、やばい要求とかされそうだしな。
「......いいでしょう。しかし、条件があります」
「まじかっ。全裸で王都を駆け回れって命令されても、全力で決行する覚悟はできてるぜ!」
「いりません。私の要求はただ一つです。とても簡単なことです」
それから、少し間を空けてから、パンドラは柔和な笑みで俺に告げる。
「魔女教に入信してください。簡単でしょう」
「......結局そこに戻ってくんのか」
食えない女だ。
クソ、こんなことになるなら、スマホは常にポケットの中に仕舞っとくべきだったな。
スマホがあれば、貧民街にある盗品蔵に駆けこんで、ロム爺に換金してもらう手もあった。
『授業中はロッカーの中にスマホを収納しておかなければならない』なんてクソ校則を律儀に守ったせいで、今こうして窮地に立たされてるんだから、世話ないぜ。
さて、どうするか。
貧民街で適当な場所を見つけて、どうにか寝泊まりはできるのかもしれないが、問題は食生活だ。
金がなければ、飯は食えないわけで、最悪誰かから奪うって選択肢もあるが、現代日本のぬるま湯で育った俺には、そんな大それたことをする覚悟は当然の如くない。
そうなると、やはり俺の取れる選択肢は一つか。
......仕方ない。
一旦、こいつのお望みどおり、入信してやろう。
後々、ここでの生活が安定してきたら、棄教すればいいだけの話だ。
こんなカルト宗教に長く身を置くつもりなんてサラサラない。
旨い汁だけ啜って、ささっと辞めてやる。
「ああ、いいぜ。入信してやるよ」
「ふふ、先ほどまでは頑なに入信を拒んでいましたが、いいのですか?」
「苦渋の決断ってやつだ。背に腹は代えられない」
「賢い選択をしましたね」
よく言うぜ。
パンドラの顔が満足げなのが、腹が立つ。
「なら、さっさと金をくれ。取り敢えずは三食食事つきの宿を一か月取れるくらいの金をくれればいい。場所は王都で頼む」
「ふふ、あなたは中々強欲なお方のようで。では、付いてきてください」
「いや、金......ああ、わかったよ。付いてくよ!」
スタスタと歩いていくパンドラに、慌てて俺は同行することにした。
それにしても、言ってみるものだな。
てっきり、『あなた、結構図々しいですね』とか言われると思ったんだが、まさか本当に王都の宿という要求を了承してもらえるとは思わなかった。
***
「着きましたよ。王都では一、二を争う高級宿です」
「おおおおおお!!」
そのあまりの威容に、人目を憚らず、俺は思わず雄たけびを上げた。
パンドラに導かれたのは、見るからに高級そうな宿だった。
元の世界では見たことのないような煌びやかな色の宝石で装飾された建物は、正に圧巻だった。
まさか、こんな場所に泊まれることになるとは。
胸の内から感動がせり上がり、瞳には自然と涙が浮かんでいた。
「パンドラ......いや、パンドラ様!まじでありがとう!俺、立派な信者になるよ!」
「現金な方ですね。ですが、立派な信者になるという心意気は素敵ですね。さて、参りましょうか」
パンドラに続いて、宿の中へと足を踏み入れる。
「おおお......」
外観と同様に、内観もやはり素晴らしい。
きっと、個室の装飾も素晴らしいものなのだろう。
趣向が凝らされた内装に感動していると、横目にパンドラが受付で何かを喋っていた。
慌てて、俺も受付に向かう。
「──はい、アリシア・フリーゼル様ですね。そちらの方は?」
「付き人です。部屋は一つで結構ですよ」
「えっ?ですが、貴方はかのフリーゼル家の令嬢......付き人と同室とは──」
「何か問題でも?」
「......ッ。も、申し訳ありません。すぐに部屋に案内いたしますっ」
パンドラが放った圧に受付の男が血相を変えると、慌てた様相で俺達を部屋に案内してくれた。
受付が部屋まで案内してくれるなんて斬新な宿ダナー。
......言いたいことはあるが、まだ我慢だ。
部屋に到着し、受付の男が去った後、俺はベッドの縁に腰を下ろしたパンドラに詰め寄った。
すると、パンドラは悪びれる様子なんて一切見せずに、揶揄うように言った。
「そんなに鼻息を荒くして、どうかしましたか?付き人さん」
「平然とした顔でよくそんなことが言えますなぁ、アリシア様」
つか、誰だよ。アリシアって。
まあ、虚飾の権能使って、自分をどこぞのアリシアさんと受付の男に認識させたんだろうがな。何でもありかよ。
しかし、俺が言及したいのは、そこじゃない。
当然のように、俺と部屋を共にしているパンドラについてだ。
「お前がパンドラだろうが、アリシアだろうが、そこのところはどうでもいい」
「普通、そこが一番引っかかる部分だと思うのですが」
普通はそうだろうな。
ただ、俺は『虚飾の権能』を知っている。
それだけの話だ。
「なあ、なんで自然な流れでお前も居合わせてるんだ?」
「監視の為ですよ」
「監視?そりゃなんで」
「信者になるという口約束だけでは物足りません。現にあなたは入信に前向きではありませんでした」
確かにな。
パンドラの意見はもっともだ。
「口約束だけじゃ物足りないって言うが、監視したところで何かが変わると思わないがな」
「変わりますよ。私があなたの傍に身を置くことで、きっと何かが変わるはずです。あなたは必ず敬虔な魔女教徒になってくれるでしょう」
パンドラの怪しい笑みに俺は内心ゾッとした。
本作におけるパンドラの性格(参考程度です。。。)
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あくまでも魔女
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多少の人間味がほしい