魔人と狼は幸福を求めない   作:澱粉麺

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ほんっとうに遅くなり申し訳ありません。エタりません。
今回から週一ペースに戻していきたく思います。


豹変

 

 

がむしゃらに剣を振るう。それ以外の行動は、もはや出来なくなっている。それは、ティータと呼ばれていた者が、もう知能が低減した木偶人形だからだ。握っている細剣はそうしてがむしゃらに振るうためのものではなく、剣技を用いて相手を刺し穿つためのもの。だからとうに、その剣はぽっきりと根本から折れている。

 

がむしゃらに剣をふるっていた。彼女自身を守るため。そして、弟妹達を守るために。自分たちを守ってくれる人間なんていない。この手に持つ盗品を使う方法も知らない。だからそれをがむしゃらに振り回す行動だけが、彼女のできる全てだった。

 

「ふむ、存外に早い振り…だがそんなものには当たりはしませんよ」

 

そう、当たるはずがない。本当に強い敵と相対すればそんなものが通用しないことなどわかっていた。明確にわからされたのは、弟たちが目の前で殺された時。憎くて憎くて、何より自身が憎かった。なんで、守りたいものすら守れなかったのに死ななかったのか。自分を殺そうと刃を閃かせようとして、それでも死ぬのが怖くて、廃人になっていた彼女を、ただ抱きしめてくれたのがリーフィだった。

 

(…ごめんなさい。私が、あなたを守れなかった。

ごめんなさい。私が少しでも来るのが早ければ。

ごめんなさい、ごめんなさい…)

 

ともすれば傲慢な陳情をする英雄の涙に、それでもその時のティータは救われたのだ。そうして、抜け殻になった彼女は拾われたのだ。

 

「…なんですか。その抜け殻のような技は」

 

失望し果てたような顔で青嵐は嘲る。くだらないというように、武器を構えていた手を降ろす。きっと生前ならば、その態度に女騎士は怒りを露わにしただろう。だがそんなことを理解する知能すら、もはや無い。

変化は不可逆で、もうこの人形が人に戻ることはない。

 

そうだ。変化をしたものはもう戻らない。ある日から、変わってしまった。聖母のように優しくて、全ての生命に慈しみを持って、それでも傷付くこの世界に心を痛めていた心優しき女帝、リーフィ・グリーン。

 

(すべての人を救うなんてできないけれど…それでも。今私の国にいる人だけは、幸せにはしてあげたいわ〜)

 

彼女のそんな甘ったれた口癖が、女騎士は大好きだった。国に、どんどんと、自分たちのような恵まれない者たちを抱え入れるその甘さを愛していた。この女王に仕えることが史上の喜びで、ああ、きっとその為に自分はあの日に死ななかったのだと、本当に思っていた。

ある日、までは。

女帝が、ある日とてつもない音を立てて玉座から崩れ落ちたことがあった。ティータを始めとした者たちが何事かと聞いても、ただ青ざめた顔で震えながら、首を横に振るうのみ。大丈夫、大丈夫とうわごとのように呟いて。そうしてから、一月ほど部屋に篭りきり。

 

その頃には騎士隊長にまでなっていたティータが、叱責を受けたとしても無理矢理部屋から出そう、と決心する頃、女王は顔を再び出した。

その思想と貌を暴君に変えてから。

 

「…処刑女王に仕えた、哀れな忠臣の末路ですか。

同情はしませんが…別に辱めもしませんよ」

 

自分の首が、刎ねられる。ああ、と緩慢な思考のまま、不思議と身体にもある感覚と視点のままに刎ねられる自らの首をティータは眺めていた。こんな光景を何人見ただろう。何人こうしただろう。何人、こうさせただろう。女王に命ぜられるままに、何人無実とわかっている人間をこうしたのだろう。何個の首を刎ねたろう。騎士隊長、ではなく、『処刑人』と揶揄されるようになったのはいつからだったろう。

 

ずっと、悪夢を見ているようだった。これはきっと悪い夢で、目が覚めれば私の優しい王さまは、いつものようにローズヒップの香りと共にお茶を淹れて、笑顔でお話を聞いてくれるのだと、信じて疑いたくなかった。

どれだけこれが現実であっても、どれだけ血の匂いが身体中に染み付いても、花の匂いと若草の楽園の匂いがとうに思い出せなくなっても。

 

それでも、付き従い続けた。

それでも目を逸らし続けた。迷うな、迷うなと。

迷わずに主君にただ従うのだと。

疑念を、首の喉の辺りにただ留めて。

 

それでもあの日の涙を嘘だと思わなかったから。

あの日の涙を嘘だとは思いたくはなかったから。あの日を、彼女を救ってくれたことを、嘘にしたくはなかったから。

 

「…貴女のような、誰かと再戦することを目的にしているようなリベンジャーを横から掻っ攫い、失意の内に倒れる姿を見るのが好きだったのですがね。これではまるでただの弱い者虐めではないですか。ああ嫌だ」

 

「……ァ…」

 

「まあ、いい。私にはこれが必要だった。何にせよね」

 

ぐしゅ、ぐちゅ。

青嵐はそうして倒れたままの騎士の腕をちぎり取り、そして自らの肩口に当てて、ぐりぐりと無理矢理に接合するような動きをした。すると、ティータの腕に纏っていた蔓草は青嵐もろとも飲み込もうとし…

 

「…ふう」

 

そして、そのまま嵐に飲み込まれた。生命を侵食するその力は、ドグ・シアンに受け渡された竜の力と、そしてルーチェに腕を切り落とされた時に残滓となった氷の力のその二つとともに混沌として取り込まれていく。

 

「これでいい。竜の力。氷の魔力。そして、侵食の力。それら全てを私のモノにできた。これで魔人の小娘に切り落とされた腕の分は、取り返した。慣れるまでには時間は必要ではありそうですがね…」

 

自らが手に入れた力にぎらついた笑みを浮かべる嵐。それを眺めるのは、もう離れて動きはしない首のみ。そしてその首は、最期までうわごとのように呟いていた。切り落とされた喉からは、ずっと、ずっと。隠して言えなかったことが、漏れ出ていく。

 

「…ナぜ、デすか…ナゼ…なぜ、あナたハ…

変わられて、しまったのですか……」

 

「リーフィ、さま…」

 

 

 

……

 

 

「リーフィ。キミはなぜそこまで変わった?」

 

銀髪の少女がそう静かに語る。眼鏡の奥の、ガラスの奥は月光を反射して緑色に怪しく光った。

 

「うん?こっちのセリフよぉ。私の知ってる貴方はそんなに独善的じゃなかったし、そんな酷い人でもなかった。シズクを殺したのでしょ?そこの子犬ちゃんから聞いたわ〜。私たちは仲間だったのに。ひどいわぁ、ひどいひどい」

 

「どの口が言えたものだ?シズクの住んでいた場所の人らを皆殺しにしたのはお前だろう。それともそれに何か弁解はあるのか?」

 

シズクを殺したこと。カリナから拷問をして聞き出したか?いいや、直接記憶を読み取ったか。何にせよ、それ自体は大したことではない。そう首を振るって、減らず口を返す。

ただへらず口のつもりだったのに、リーフィはその言葉を聞いて長い時間ぴたりと息を止め。そうしてぷるぷると震え始める。

 

「…どうして今になって、それを聞くの。なんで、今。ねえ、スノウ。私がそれを告白すれば、懺悔すれば、貴方は私を…

……私をっ…ば、罰してくれるの…?」

 

「…はあ?二つほど勘違いをしているよ、お前は。まず一つ、今質問してるのは僕。答えるのは君だということ。そして、二つめ。僕は…」

 

それは、今までにも何度も言ったこと。だけれど、今となっては。今、改めて言ってしまえば、なにかが壊れるようでそのままには言えなかった。恐怖で震える声を、飲み込むように抑えて、微笑んで言った。

視界の端には、狼を捉えながら。

 

「…僕はもう、ルーチェだ」

 

「……そう」

 

そう言われた瞬間に、ぷつりと何かが切れた音がした。一線が、切れた音。何かしらの、何かはわからないもの。

 

「………なら、ならッ!なら、初めから余計な口出しなんてしないでよ。関係のない小娘が私に口を挟まないでよ!私の心に指を入れないでよッ!私を見通したような、そんな目をしないでッ!」

 

「来るぞカリナ」

 

「私を、わたしをッ!

分かろうとなんてしないでよおおおおおッ!!」

 

頭を抱えて、内臓を吐き出すように絶叫をした女帝の身体中から、玉座の裏から、そして部屋の至る所から蔓草が現れる。茨棘が現れて彼女たちを狙う。

 

そしてその激情の発露が、最後の正気だったと言うように。ぴたりと、声を止ませて。そして静かににこりと笑顔になった。

 

「そしたら、死んでくれる?」

 

「…よし駄犬、後はお前の出番だ。わかってはいると思うが…その防具の上から以外は受けるなよ!」

 

「分かっている!」

 

ヒト姿になっているカリナは、そうして腕、胴体、脚のそれぞれについた防具の感覚を意識する。そして、それを着けた時の記憶のフラッシュバックもまた。

 

 

 

……

 

『対策?』

 

『と、いうよりは…最低限の、前提かな。まずリーフィの攻撃は、お前が耐え切れる類のものではない。それは多分一度受けたカリナが一番分かってるだろう』

 

『…まあ、悔しいが』

 

『まずあいつの基本の攻撃方は蔓や草木で縛り、貫いてくること。これ自体はまあ大したことはないんだ。あいつの魔力で強化されてるとはいえ所詮は無理矢理動かせた草木でしかない。根を張ってるわけでもないからすぐ千切れる』

 

『だが、問題は…』

 

『そう。問題は、草木に触られてしまうことそのものだ。触った瞬間、彼女の魔力である侵食が作用する。そうすれば、お前は全身の傷全てを再現され今度こそ死ぬ。つまりお前は一度たりとも相手の攻撃に触れてはならないんだ』

 

『…なんという理不尽だ』

 

『当然だろう?それが英雄ってもんだ。今まで戦ってきたやつらが都合よく弱体化していただけで、僕らが戦おうとしていた相手は。……あいつらは、すごく強いんだ。物凄く、強かったんだ』

 

『……』

 

『それに、だ。失望させるなよカリナ。僕が、お前がそれくらいできるやつだと思ったから、この旅に連れてきさせたんだからな?』

 

 

……

 

(とは、言うがな!)

 

言うは易し、行うは難し。

全く触れずに攻撃を全て避けることは結局持って不可能なことだ。少なくとも、この相手は全ての植物を操作して全方位から襲わせてくる。どうしても避けきれない瞬間というものが生まれる。

 

(わかっている、わかっていたさ。ここまで、英雄たちと俺には実力の差があるか)

 

囲まれる。蠢く蔓草に、荊枝に、絡め取られそうになる。中空に跳んだ瞬間を囲まれたそれを避ける手段はない。

 

(…本当にそうか?それで諦めるか?

そうして自分を納得させられるのか?俺は)

 

そう。常人、ならば。

 

「そうじゃ、ねェだろ!」

 

カリナは、猛る。

 

彼の目の治療は未完全。それは事実であり現実だが、それ故に彼らはここにいる。目より、それ以外の感覚への信頼。草の匂いと、草花が蠢く音。そして何より、操作を行なっていることから発生する、殺意に対して脊髄のあたりがぴくりと反射する。

それら全てを感じ取り、プロテクターで、確実に避けきれないものを弾く。その反動と獣の柔軟さが許す空中駆動にで左斜め後ろ、動く音を避ける。それに合わせ右前方に咲く花を烈き分ける。もうぼろぼろの黒狼槍は、その主人のようにそれでも槍としての役割を全うする。

 

(そうだ、そうじゃねぇだろ。だからこそ、追いつかなくちゃいけねえんだろうがッ!)

 

それでも自らを連れてきているルーチェのためにも。彼女に報いて、彼女の判断を間違いにしないべく。俺は、もっとここで強くなるのだ。その為の、リベンジだろうが。

そう思いながらリーフィに向かい跳ぶ。

その一撃はしかし、悠々と避けられて、むしろその数倍になって戻ってきた攻撃を捌くので精一杯だ。

 

「さすがっ、やるじゃないか駄犬!」

 

「言ってる場合じゃない!部屋の中じゃ遅かれ早かれ捕まる!あそこの窓から外に出るぞ!」

 

「いやダメだ。外の方こそ植物だらけだ。自分から敵陣に突っ込むようなものだぞ」

 

そうだ、そもそもが、今がそうなのだ。今のこの突貫は、敵兵だらけの中央に単身乗り込んだようなもの。無謀で馬鹿で、自殺的な行動なのだ。

女王の兵士は、彼女に支えていた騎士団たちではない。その支配された市民たちでもない。皆が手入れをして、育てているその植物、全てだ。

それら全てが戦力という、途方もない『現象』。それに戦いを挑んでいるのが、今だ。

 

そう。そんなことは分かっている。

その上で彼女らはここに来た。

そこには勝算があるからだ。

その、唯一の勝算は…

 

 

「スノウ。いや、ルーチェちゃん。あなたがじーっと探しているのは、『これ』?」

 

そう、話しかけてくる女帝、リーフィの手にあるものを、狼と魔人はぎらりと睨む。

『八つ星』だ。それまでに見た、錆びれ果てたノヴァのものとも、出涸らしのドグのものとも、消沈したシズクのものとも、どれとも異なり。それは煌々と光を放ち、星という名前に相応しくぎらぎらと輝いていた。

 

「そうよねえ。これ、壊されちゃったらまずいものねえ。壊されて、不死じゃなくなって暗殺されて。そんなことされちゃったら、こわい、怖いわ〜。

だから大事に、とっておかないとぉ、ねえ?」

 

そう言うや否や、彼女はその狂気に歪んだ口をかぱりと大きく開けてその中に八つ星を放り込み。

そしてごくり、と呑み込んでしまった。

 

「……ッ!ルーチェ、これは…!」

 

「…動くな、お前の治療が終わっていない」

 

冷や汗をかく、相棒を見て。カリナもまたまずいのではないかと喉を鳴らした。今目の前に提示されたのは、勝機の消失だ。

 

「ふんふん。なるほど〜?貴女が頑なに前に出てこようとしなかったのは、彼が、それでも避けきれなかった攻撃を皮膚と肉ごと取り除いたのを治す為。そして、その治す魔法のタネをバレないようにするためね〜。

でも残念。わたし、わかっちゃった」

 

攻撃を、指揮者のように杖をふるい再開させつつ、そう示威するように語り続けるのは一種の作戦か?いいや、そうというよりかは。

 

「貴方が元々持ってた氷の魔力じゃない、もう一つのその魔力。それは幻覚、ね〜?その目の色と、眼鏡が変質を語ってるわ。そしてあなたは外法でその幻覚の力を、幻覚にし尽くした。つまり…」

 

「ッ!聞くな、カリナ!」

 

その蒼白の様子からして、本当に聞いてはいけないことなのだろうとはカリナはわかった。わかったが、なんとか、再びの植物たちの攻撃を捌くことで精一杯の狼にはそれを敢えて聞かないようにするなぞ器用な真似は出来ない。

 

「幻覚を、本当に起こったものと信じた対象にだけ対する真実性の付与。つまり、信じちゃった人にだけ本当のことになっちゃう嘘ってところね。

子犬ちゃん、あなた、それがどうなってるか聞いたりしてはぐらかされたことなぁい?ふふふ」

 

「…ッ!」

 

まずい、という直感があった。

はぐらかされたこともあったし、確かにそれならばなんでも出来ていたことへの辻褄が合う。バレてしまえば、全てが終わりという力だからこそ強力であったことも。

そして、自分の『眼』がまだ完全に治ってないことも。どれもその推論が正しい事を示していた。

見えてないからこそ、その幻覚にはかかりにくい。それまでの治療の記憶しかないから眼はすぐに治らなかった。

 

すると、だとするのなら。

今自分は、そのタネを知ってしまった。そして人間は、生き物は意図的な忘却ができない。

それが意味する事はつまり、『自分はもう二度とルーチェの治療を、回復を受けることができない』ということ。

 

これから先、大傷を負えばそれが治ることはない。と、いうより、もっと目の前の問題がある。

目の前にいる敵を自傷…つまり植物の当たった場所の切除無しで戦えるのかということだ。

 

 

そうだ。何故か、と思っていた。

人々を全て繭に包んでしまうくらいに遠隔で植物を操れるのならば、わざわざ戦うのにリーフィがまだ彼らの前にい続ける必要はない。それなのに何故それをやっていたかというのは、つまりこれだ。

 

回復手段を奪い去り、『八つ星』の保管場所もないということも知らせて、戦う手段を。そしてなにより、心を完璧にへし折って、確実に殺す為だ。そしてつまり、それが終わったのならば。

 

「それじゃ、後はゆぅ〜っくり、死んでいってね?お二人とも、できるだけ苦しんで!」

 

その場を、去ろうとする。

そうだ、それをやらない理由は、ない。

『戦い』から、相手の戦う手段を奪い、自分に降り掛かる火の粉から身を隠すことで戦いでは無くす。蹂躙に変える。まさに女王だ。

 

だが、逆に、今ならば。

 

目の前に、女王は居る。

そうだ、史上最大の危機だからこそ。これは好機になり得る。

 

自分たちがしぶとく生き延び、逃げ回っていたことが女帝リーフィに確実に殺させんがためのこの行動をさせることに繋がり。そしてその確実性が、目の前に女王を引き摺り出した。

無謀で無駄に思えた、狼の行動が、ひいては女王にこの凶行に及ばせて、この現況に繋がった。

 

そうだ。今、自分たちはチャンスなのだ。唯一にして最大のその状態。これが最初で最期の。

今に至るまで一度も女王に触れてはいない。この植物の包囲網を抜けて致命傷を?出来るのだろうか、不可能だ。そう、先までなら。ならば自身を変容させるのだ。不可能だった自分から、可能な自分へ。

 

(変わる、変わるのだ。変われるか?違う!)

 

(変わらねば、いけないんだッ!)

 

跳ぶ。

カリナは、跳んだ。

何度目の跳躍かもうわからない。

だがその瞬間、ルーチェが視界の隅で嗤った気がした。

 

眼はまだほとんど見えてはいない。だからこそ、異様な気配がわかった。

『八つ星』が胎内のどこにあるか、見るよりも視える。そこに向けての一直線の跳び。

 

そしてそれを待ちかねてたような蔓網。

ああ、そりゃあ、そうするだろう?と、当然わかること。相手がやりたいことを全て封じるからこそ女王の計画は完全だった。

 

 

だが、カリナは宙空を跳ねた。

空中にある『影』を、その脚で跳ね蹴った。

そしてその宵闇は計画をも、跳び越えて行く。

 

「…あ、ら、…?」

 

それはつまり、人狼の豹変を表していた。

影を操る彼の力の、変貌を。

 

ぞぶり。

 

カリナの右腕が女王の腹部を貫いた。

貫通したその掌には、心臓の代わりに、輝く星が握られていた。

 

 





次回、花の園編完結
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