転生したら誰もいないどころか何もなかったのでゼロから世界を造ってみた 作:如月隼
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立て続けに放たれた、『ハイペリオン』に組み込まれた高位
トレドにとって、それは悪夢の連続再生だった。
(……ありえねえ! 特に『
くだんの魔法は、光速とまでは言わないが音速に近い速度で発射される。それを防がずに避けるなんてこと、『人間』にできる芸当じゃない。
こんなのは、『神業』だ。
「もう打ち止めか? 俺はあえて魔法を使わずに刀身モードのみで戦ってるんだけどな。ダブルでの戦闘において、これがどれくらいのハンデになるか。おまえにだって分かるだろ?」
「……ありえねえ! ありえねえ!! この『ハイペリオン』は、俺専用のAランクダブルだぞ!? 同じAランクのダブルでも、俺たち十二眷属が使ってるそれはほかのAランクとは格が違う! それなのに……それなのにッ!!」
「なに言ってんだ、おまえ。おまえ専用のダブルなんてねえよ。勝手に専用にしてるだけだろ? おまえ以外にだって、ハイペリオンは使える。まあ、Aランクの中で上位のダブルだってのは確かだけどな。どのみち、
「…………ッ!」
クソッタレだ。
こんなクソッタレなことがあってたまるか。
「俺は十二眷属だッ! ナギ様とナミ様の手によって作られた、由緒正しき原初の生命体だッ! たかが人間のクソに、こんなコケにされたまま終われるか!!」
「終われないなら、どうする?
「…………ッ!!」
トレドは、両目をむいた。
どこまでもコケにする。たかが人間風情が、この十二眷属である自分に対して
許せなかった。
「その言葉、後悔するなよ……! 氷の刃で、テメエの身体を滅多刺しにしてやるよッ!」
叫んで、トレドは一歩後方へとステップした。
そうして、ハイペリオンの先端を冷たく硬い床に押し当てる。
間を置かず、彼は
「北の地につながれし 冬の巨人よ 霜の刃となりて 八方に爆《は》ぜよ」
「アブソーブ」
終結の文句と同時、ブレナのダブルが魔法モードへと切り替わる。
だが、トレドは委細構わずに、発動の
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残酷が、彼の意識に
◇ ◆ ◇
放つのに詠唱を必要とする上位魔法である。吸い取られるエネルの量は甚大だが威力もそれに比例して高い。
「…………」
何が、起こった?
何が、起こっている?
なぜ、まだ終わっていない?
トレドは不可避の硬直の中で、何もできずにただ、絶望と化した現実を受け入れるほかなかった。
「いっさいの光を拒む 凍《こご》える夜の孤独な世界 闇の冷気にいだかれし 躯さまよう虚ろな世界――」
詠唱。
ブレナ・ブレイクの口から、上級魔法《ハイ・マジック》の詠唱が流れて落ちる。
傷ひとつ付いていない、彼の万全な肉体から――。
「豊穣と慈愛に満ちた この忌むべき世界に 飢餓と陰鬱を与える 絶望の一息を」
そして、それが終わる。
滞りなく、その
何が起こったのか、結局、最後まで理解できないまま――。
トレド・ピアスは、残酷極まる終焉を聞いた。
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◇ ◆ ◇
視界に映ったのは、氷点下の一面。
目に映るモノ全てが氷。
石柱は氷柱に、石畳の床は氷のじゅうたんに、そうしてトレド・ピアスの身体は氷のオブジェに――。
ブレナは、その氷の中をゆっくりと歩いた。
やがて、魂までもが凍りついたトレドの眼前にまでたどり着く。
彼は、誰にともなく言った。
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哀れな仔羊。
自分たちが無敵の存在だと思い込み、好き放題に極悪をやり散らかした井の中のみじめな
その無様な末路。
ブレナは「リリース」とつぶやき、グロリアスの形態を『刀身モード』へと切り替えた。その流れのまま、そうしてそれをゆっくりと頭の上に振り上げる。
ブレナは、最後に言った。
「天上天下唯我独尊――
振り下ろされた緋色の刃が、氷のオブジェと共に、帝都に根づいた最大最後の巨悪を根こそぎ豪快に打ち砕く。