私の名前は「
ミレニアム高等部エンジニア部を見学に行って事故にあった、と思う。
覚えてる最後の光景は、銀色の大きな壁みたいなのが迫ってきた光景。
壁と壁みたいなのに挟まれて真っ暗になって身体から凄い音がしたのを覚えてる。
昔からずっと何かを忘れてるみたいで頭がモヤモヤしてたけど、ハッキリした。
ここ、ブルーアーカイブの世界じゃん。てかミレニアムの初等部じゃん。ウタハちゃんの1個下だからたぶんあと5年くらいあるっぽい。
え、前世の私は最期どうなったの?
ぼんやりと思い浮かぶのは疲れ切って社会の理不尽を嘆きつつ、ただただ毎日仕事し続けてた疲れ切った社畜。
遊びに行く気力も体力も残って無くて、ブルアカに軽課金してたなって。シュポガキに脳を焼かれて始めた後発の先生。
ああなんかそんな感じで、仕事以外は空っぽだったな。
ガンプラもゲームもずっとやってなくて、いつか時間が出来たらって言ってずっとア◯ゾンカートに入れっぱなしにしてたっけ。
昔組みたかったキットはプレミア価格、他のキットも転売価格で嫌気が差して買うの悩んでたっけ。
最期がどうなったのかは不明だけど、たぶん死んだっぽい。
記憶が蘇る前、ずっとずっとなんかモヤモヤしてたのはこれだったんだ。何か意義のある事がしたいってずっと思ってたのに、何も成せず終わった私。
男だったのか女だったのかも分からないけど、空っぽだった私。
キヴォトス生まれ変わって、何か成したい。前世の無念を晴らしたい。
ブルアカは2次小説から入って、タイムラインに流れて来たシュポガキに脳を焼かれインストールした。
せっかくブルアカの世界に生まれ変わったのなら、何かしたい。
何がしたかったっけ?納得がいかなかった事に介入しようか。
先生に事は嫌いじゃないし、善人なのはわかる。でも納得がいかない事があった。
ヴァルキューレというかカンナの汚職の件。
ラビット小隊他のホームレスを立ち退かせる為にカンナと部下達じゃ戦力足りなくて、カイザーとの汚職に手を染めざるを負えなかったあの事件。
先生はラビット小隊はほとんど一からやって立ち上がったみたいな事言ってカンナを諭したけど、私はそれに納得がいかない。
カンナには背負う物がある、部下や立場と上からの圧力を受けながら達成する為に苦肉の策で汚職に走った。
汚職は確かにやってはいけない事ではあるけど、そうせざるを得なかった原因には先生の行動も有ると思う。
ラビット小隊を釈放し再び子ウサギ公園での生活に戻らせた事。再開発の為に不法占拠を止めさせる為にもヴァルキューレだけじゃ勝てず敗退している以上カンナには取れる手段が無かった。
重圧の中で苦しんで出した答えがカイザーとの汚職だった。先生がラビット小隊を公園に戻さなければカンナも汚職しなかったのでは?
最終章でヴァルキューレ内は汚職警官だらけだったみたいな事をカンナが言ってたけど、それも他の警官達も苦肉の策で取った手段からズルズル落ちて行ったんじゃないかって。私は勝手にそう思ってる。
現状に満足が行かないけど、方法が無いならズルするしか無いって。最初は出来心だったんじゃないかなって。
何か出来ないかな。
私に何か出来る事……。
警察用の装備とか開発して売り込んでヴァルキューレの戦力強化とか?
でも需要が無いと売れないよね。
SRTが出張って来ない程度に治安を悪化させたら売れないかな。犯罪の凶悪化対策の為とか市民の保護の為とかで。ヴァルキューレの仕事が増えたら予算も上がるんでは?
で、売上で予算確保してMSの開発費用に充てられないかな。
アヴァンギャルド君が作れるならガンタンクなら作れそうだし、ロボット市民やカイザーPMCの兵士を参考にしてジム系の開発に入れないかな。
あとはアビドスの砂で何か作れないかな、建材とか開発してキヴォトスの企業に売り込んだりとか。
環境に配慮した建材ですとかなんとかで売り込めそう、たしか中等部に新素材開発部とかあったしそっちに持ち掛けよう。
企業イメージの向上にとかなんとかで売り込めないかな。
アビドス側には砂の売却益と売上の一部をアビドスの緑化の為に寄付します、とか売り文句にしたら良いかな。
アビドスの借金の大きさに対しては焼け石に水かも知れないけど、やるだけやってみよう。
うんうん、よしよし。こんな感じ。
まあ、なんとかなるでしょ。たぶんきっと。
で、最大の問題がある。
私、どうやったら目覚めるの?
せっかく記憶が戻ったのにまさかこのままとか無いよね。
ていうか、生きてるの私?死んでないよね。
体感だとそこそこ時間経ってると思うんだけど。え、マジでどうしたら良いの。
意識だけは有るのに身体の感覚は無いし、夢なのかなんなのか。
真っ暗な中に意識だけが浮かんでて、夜寝付けずに布団の中で目を瞑ってアレコレ考えてる時みたい。
やばいこれ、どうしたら良いの。眠れない眠れないじゃなくて、今は目覚めない目覚めないだけど。
どうしよどうしよ……。
「呼吸、脈拍共に安定していますが未だ予断は出来ません。」
ミレニアム自治区内の病院へと搬送され、現在は集中治療室で24時間態勢で経過観察されている。
「彼女に未認可の医療用ナノマシンを無断投与した部員はヴァルキューレに拘束されたようです。」
「例の、治癒効果はあるが原理が解明されてないから却下されたやつね。」
とある医療機器を開発していた部にてオーパーツを組み合わせ、偶然開発されたナノマシン。治癒効果があるのは実験で証明されたが、原理が解明されておらず認可がされなかった物。
ミレニアムの技術を以てしても治癒効果のメカニズムが解明出来ず、危険性が無い事が証明出来ない為に却下され続けている。
『この状態では、もう手の施しようが無い。でも、このまま死なせるくらいなら。』
ミレニアムの医務室に運び込まれたが、全身打撲と心肺停止状態の彼女を見て蘇生の可能性があるならと。
「で、意識の無いこの子に無断投与したわけね。」
投与後、病院への搬送準備中に心臓が動き出した。
目の前で失われる命に手の施しようが無いと悲嘆に暮れる部員達の前で、奇跡的に再び鼓動を刻み出した。
「投与後、数分で心臓が動き出しましたが自発的な呼吸は開始されなかったので人口呼吸器を装着し、そのまま病院へ搬送されたわけです。」
「ヴァルキューレに拘束された部員ですが、救命の為という名目でしたので事情聴取に収まった様です。とはいえ未認可の医療機器の無断投与は重大な校則違反ですので、何らかの処罰が必要だとセミナーから通達がありました。」
「でしょうね。とは言え、今はこの子の経過観察が優先よ。部として何らかのペナルティは受け入れるしかないわ。」
「それと事件を起こしたエンジニア部は、現場検証と部員への事情聴取が終わるまでは当面封鎖だそうです。SRTとヴァルキューレに物証としてあれやこれやゴッソリ持ってかれたみたいですよ。」
「廃部にされなかっただけ良しとしましょ。うちもかなり危なかったわよ。無断投与してそのまま死亡だったら、下手すりゃまとめて矯正局送りだったわね。予断を許さないとはいえ蘇生出来て良かったわ。」
ミレニアム医学部の生徒が見守る中、未だ意識の戻らぬ彼女はただただベッドに横たわるまま。
「ナノマシンの効果でアレだけ目茶苦茶になってた身体がもうすっかり元通り、までは言わないけど打撲と骨折数カ所にまで治癒してるのはほんとに凄いわね。」
「ですね、まだたったの3日ですよ。このペースなら明日には完治するくらいじゃないですか?」
「内臓の方は検査してみないと分からないけど外傷はそうね。各校の最強格並の治癒速度に近いものがあるわね。逆に言うと、各校の最強格ってどういう身体してるのやら……。」
「ゲヘナの風紀委員長とか対物ライフルで撃たれても、撃たれたそばから弾がポロポロ落ちて傷が塞がっていくらしいですし。あの治癒速度のメカニズムが解明出来たら良いんですけどねぇ。流石に協力はしてくれなそうなのが残念です。」
数年後には巡航ミサイルを撃ち込まれてもそのまま戦闘出来る風紀委員長が居るあたり、各校の最強格は同じキヴォトス人から見ても異常と言える頑強さを持っている。
「もう、夜も遅いし。交代で仮眠とるわよ。アンタ先に寝なさい。」
「了解でーす。」
仮眠室へ向かう部員を見送り、医学部副部長は独りごちる。
「良いデータ取れたわ。この子には可哀想だけど、このデータが有ればきっとたくさんの人を救える。実験での上限以上に投与されたからナノマシンが自壊せず、血中に常在したままになってる。怪我をしても最強格と同列の速度での治癒が可能になるかもしれないわ。」
「可哀想な
提宇子マキナ
提宇子はデウス(神)の漢字表記だそうで、演劇用語のデウス·エクス·マキナから取ってます。
複雑な状況を突然又は強引に解決する。人、物、出来事。
唐突で強引な幕切れ。
作為的な大団円。
等の意味がある用語ですので、強引に介入して解決しようとする感じ。