キヴォトスでMS作ろうぜ(仮)   作:詠むひと

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急変

 

 

目を瞑っていても眠れない。

 

まだあちこち痛いし身体も重い。自由に動かない身体。

前世今世含めて、こんな大怪我したのは初めてで身体を動かす事も怖い。

 

寝てしまおうと思っても、眠いわけでもない。頭の中でぐるぐると考え続けてしまう。

 

「なんで、治癒速度が早くなってるんだろう。」

 

疑問に思う。

 

今まで怪我をしても、どちらかと言うと治りが遅いしちょっとぶつけても直ぐに青あざになる上なかなか治らなかった。

 

クラスの他の子達は怪我しない程度でも擦り剥いたり血が出てた。身体が弱くて直ぐに体調を崩していたし熱が出る事も多かった。

いつもいつも、どうして私はこんなに弱いんだろうって。

 

ああそうか。だから外に力を求めたんだ。

 

身体が弱いなら、外付けすれば良いんだって。

 

ブルアカの先生は、私よりも脆い身体の強度でこんな世界で生徒の為にとキヴォトス中を駆け巡ったのか……。すごいなぁ。

 

生活してみて分かる、キヴォトスは治安が悪い。

銃撃戦は日常茶飯事、爆発音も毎日どこからか響いてくる。市民も手榴弾や銃を持ち歩き、喧嘩になると直ぐに銃を抜く。

 

大人は多少は銃を抜くのを堪えるけど、大抵殴り合いよりも銃を抜く方が早い。

 

Q 控えめに言って地獄では?

 

A ここは地獄(ゲヘナ)

 

 

キヴォトスはゲヘナだった……?

ゲヘナは特に治安が悪いけど、他の地域が治安が良いわけでもなくて。

 

先週、校内掲示板に路上強盗に注意の貼紙があったな。

 

D.Uでビル工事で通行止めがあって、迂回路が遠いからって狭くて薄暗い路地を近道しようとしたら物陰からいきなり銃撃されて蹲った所を襲うという悪質な強盗事件が多発してるらしい。

 

工事が原因で監視カメラの死角になってて、そこに不良が目を付けたらしい。掲示板には急がば回れって注意書きが書いてあったね。

 

ほんと物騒だよね。こんな場所に赴任させられるとか地獄過ぎるでしょ……。

あー、パワードスーツ作るまでの繋ぎで防弾ベストでもプレゼントしようかな。

 

そう言えば先生撃たれて重傷負うけど、なんでサオリは確実に殺害する為に頭を撃たなかったんだろ。

 

そのおかげで一命を取り留めたけど、確実に殺害しようとするなら頭を撃つべきだったのは確か。

ストーリー上の都合とかの身も蓋も無い事を言わず、理由を考えるならば。

 

心の何処かでは、殺人に忌避があって無意識に頭を避けたのかな?

じゃあ、見て分かる様な防弾装備してたら頭を狙われてしまうかも?チタン製のカツラを模したヘルメットでも作るか?

 

光学迷彩下着を作る人も居るんだし、チタンウィッグヘルメットとかいけるかな。

好きな髪型に早替りかつ防御力UP!とかで。

 

とりあえず現実的には、既製品の防弾ベストはライフル弾を止めようと思うとプレート入りで嵩張って目立つから、スーツの下に着用出来る薄型でライフル弾を止められる防弾ベストの開発が必要になるのかな。

 

ミレニアムだったらどっかで開発してそうだし、今度聞いてみよう。

 

でも

 

 

「いつ退院出来るんだろう。」

 

検査終わりにお医者さんに聞いてみたけど、最低でも1週間は必要だって。恐らくはもっと延びるだろうって。

 

色々やりたい事あるのにな。

 

柴関ラーメン食べに行ったりとかブルアカで見た場所へ行ってみたいとか。ああでも小学生がアビドスに1人で行くのは許可出なさそうだし、先輩達に頼んでみようかな。

 

検査の行き帰りに付き添ってくれた先輩がラーメンの食べ歩きが好きで柴関ラーメンプッシュしてきたし。

荒廃しつつあるアビドスでも未だ客足が途切れる事の無い隠れた名店だって。人情味のある店主といつ行ってもハズレの無い味って熱く力説されてしまったし。遠いのが難点だけど、行って後悔は無いって。

 

でも結局、いつ退院出来るんだろうで止まっちゃう。

 

 

 

なんか外が騒がしい様な?

 

布団から頭を出して、通路側の窓を見た。

ミレニアム医学部の先輩達が何人かで何か言い合ってる?

なんだろう、なんかあったのかな。

 

 

 

 

 

 

「だーかーらー!私の一存じゃ入れられ無いんですよ

!ナースステーション行って許可貰ってから来て下さい。」

 

「そこをなんとか。」

 

頼みこむ副部長と厳として断る部員。

 

「めんどくさがってないで、さっさと行って許可貰って来て下さい。」

 

勝手に入室させたら自分が怒られる為、絶対に折れない部員に負けナースステーションに向かう副部長。

 

「っていうか、こんな時間になんですか?マキナちゃん布団被って寝てるんですよ。騒がないで下さい。」

 

「消灯までまだ時間あるでしょ。なんとかして早急に彼女に謝りたいのよ。」

 

「先輩達、マキナちゃんに何かしたんですか?私の見てる限り接点無かったでしょ?」

 

副部長を連行してきた部員がマキナに付き添っていた部員に経緯を話す。

 

 

「は?何やってるんですか?流石に見損ないましたよ。」

 

マキナが起きてから1日ずっと付き添いそれなりに親しくなっていた部員にとって納得の行く事では無かった。

 

「先輩達、オカシイですよ。なんでそんな事、それに。そもそもなんで止めないんですか?それこそ副部長の厨二病知ってるなら、なんで交渉させるんですか?止めるべきでしょ。」

 

救命の為、それはまだ納得出来る。最善を尽くすべきと。

 

でも、何故?どうしてそんな扱いをあの子に出来るのか。厨二病?知るかっ!暴走を止めるべき人達が止めないで後出しで何をやっているのか。

 

「副部長には自分の言葉で謝らせて下さい。何か変な引用しようとしたら私、止めますから。先輩達が止めないなら、殴ってでも止めますからね。」

 

憤りを飲み込み、拳が震える。

暴走する厨二病副部長は迷惑だけど、勢いと人を惹き付けるカリスマがある。それに付いて行ってしまうのも分かる。

分かるけど、他人に迷惑掛ける前に止めろよ。

 

 

そんな事をやっていると、担当の看護師を連れて副部長(馬鹿)が戻って来た。

 

「まだ消灯じゃないとは言え、こんな時間にこんな大勢で迷惑だと思わないんですか?」

 

看護師の正論に項垂れるミレニアム医学部一同。

 

「でも、私は彼女に許されない過ちをしたんだ。この気持ちが熱いうちに彼女と話したいんです。」

 

頭を下げながら真剣に話す副部長に看護師はじゃあ、と条件を付けて承諾する。

 

「プライベートな内容の様ですから私は入りませんが、彼女への負担を減らす為に副部長さんとあと2人まででお願いします。それと、体力も落ちているので極短時間でお願いします。」

 

条件を飲み込み、副部長と部員2人(暴走を止められ無かった先輩部員とラーメンマニア後輩部員)で入室する事になった。

 

「副部長、繰り返しになりますが。」

 

ラーメンマニア部員からの忠告が入る。

日中の検査中も身体が重そうで辛そうにしていて、何度も意識が飛び掛かっていた。治癒が速度想定より早いとは言え、まだ完治には遠く体力が相当落ちている。

とにかく負担を掛けない様にと。

 

厨二病の世話は疲れるので、と言葉にはしないけど思う。

 

「余計な事言おうとしたら、引っ叩いてでも止めますからね。」

 

「承知した。」

 

 

 

 

 

 

なんかゴソゴソしてるなって、布団から覗き見てたら医学部の先輩達が消毒とか入室手順をしていたのが見えた。

この病室には私が居るだけ、ベッドは他にも有るけど今は居ない。

 

私に何か用事有るんだろうって思って布団から顔を出して、起きようとした。

 

「!」

 

声に鳴らない鈍痛が身体を走り反射的に力が抜けた。

鈍い痛いに続いて鋭い痛みが身体の芯から伝わり、痛みを堪え震えた。

息をするのも忘れる程の痛みと息が止まった事で激しくなる動悸。

夕方までは動けたのに、今は身動ぎ一つでこの痛み。

 

先輩達がこちらへ来るのを目で追うので精一杯。

 

 

「こんな夜分に済まない。君に謝らなけれならない事があるんだ。」

 

痛みで息を吸うので精一杯の私には聞く余裕も無いし声も出せない。

 

「かっ…んぐ、あ。」

 

私からは意味を成さない声が漏れるだけ。

何か言ってるけど、焦点の定まらない私には姿さえぼやける。

 

「待った。副部長不味いですよコレ。早く鎮痛剤を!」

 

部員の1人が急いで退室し看護師に伝えに行く。

 

「焦点が定まって無い、意識は……。」

 

何か言ってたけど、もう聞こえない。ぼんやりと慌ててるのが見えるけど、私は何も伝えられない。

 

なんでどうして、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 

まるで、何かが身体の中で蠢いている様な。痛くて痛いから痛くて。痛い。

 

痛い以外わからないいたいいたいいたい。

 

 

 

 

 

 

「意識無し。先生早く!」

 

何人もの看護師が慌ただしく動き回り、主治医の到着を待つ。

締め出された副部長達は無言で食い入る様に病室を見詰める。

 

容態が急変し医師と看護師達が集まり、医学部生徒達は何も出来る事は無く見ている事しか出来ない。

 

 

「副部長、今は回復を信じて待つしか無いんです。私達に出来る事は無い。」

 

「せめてもの救いは機器が異常を報せるよりも早く、看護師さんに急変を伝えられた事ですかね。」

 

「私は、いや。私達は無力だ。命を救う為と、最善と信じて違法に処置したが、苦しみを与え続けているだけでは無いのか……?そのまま、痛みも苦しみも感じずに……」

 

「それ以上はダメです!それを言ってはダメです!あの子は、やりたい事が有るって!退院したら行ってみたい場所が有るって!マキナちゃんと約束したんです、私が連れて行ってあげるって!だから……、それを口に出さないで下さい。」

 

泣き崩れる後輩部員。検査の合間に笑顔で話していた少女が、今は痛みと苦しさで痙攣し処置を受けている姿が。

 

「こんなはずじゃ無かった、こんなはずじゃ。苦しめるはずじゃ無かったんだ。私達は。開発部と研究と、こんなはずじゃ……。」

 

違う違うと泣き崩れこんなはずじゃと後悔しても後悔仕切れず、もっと予算を割いて研究を進めれば良かったと目を虚ろにしながら呟く副部長。

 

1人の看護師が来て、医学部の生徒達に言う。

 

「貴女達は最善を尽くした。臨床試験には私達病院側も協力しているけれど、今まで悪影響は無かった。貴女達だけの責任じゃ無い、これは私達大人が負うべき責任。色々思う事もあるでしょう、でも今は信じて待つしか無い。だから、貴女達は仮眠室へ行って下さい。」

 

「はい……。」

 

消沈して仮眠室へと向かう部員達。誰もが皆、表情は暗く力無く足を引き摺る様に歩いて行く。

 

「誰も悪意でやってるわけじゃない。1人でも多く助けたいだけなのに、もしも神が居るのならば。どうして子供達にこうも苦しみを課すのでしょう。」

 

トリニティ生の頃は神に祈りを捧げたけれど、学園(学び舎)の外は理不尽な苦しみに満ちている。神は見ている、でもただ見ているだけで助けるのは人だと。

看護師になったけれど、私達もまた無力なんだと。現実に折り合いを付けて、出来る事を一つずつやっていくしか出来ないから。

 

 

夜が更け消灯が過ぎても慌ただしい夜が続く。

 

 

 




曇のち晴れが好きです。
だからいっぱい曇って、曇った後の晴れはきっとキレイな青空だから。

柴関ラーメン、生徒数人と疎らな住人で採算取れるとも思えないしキヴォトスのラーメン通が通っているのではと。食材の流通コストも馬鹿にならんだろうし、アビドスで食材は全体的に割高なのでは。

ラーメンマニア部員、一緒に柴関行くって約束をした(してない)興味が有るって?じゃあ行くんだろ、行くぞ行くぞ。

アリスの損傷した表皮を補修するナノマシンに似たような物を体内に注入し、ましてや全身を巡っていて何も無い筈が無い。

看護師さんはトリニティ卒業生、キヴォトスにおける大人は描写が無いだけでそれなりには居るのでは。
学園都市で且つ、青春の物語なのでスポットライトが当たらないだけで。
大人はキヴォトスの過酷で理不尽な現実に打ちのめされて擦り切れ、人の心を喪っただけで。
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