またこれだ。
意識は有るのに、暗闇だ。
医学部の先輩達が入って来た時、急に激痛が走って意識を失った事は分かる。
身体の中で何かが蠢く様な感覚で、まるでお腹の中を誰かの手で掻き混ぜられる様な動きと痛みだった。
覚えている限りでは、人生で一番の痛みだった。意識が途切れて、意識が浮上したと思ったらまたこの暗闇。
私はまともな生活に戻れるんだろうか?次に目覚めてもまたこんな風に激痛と意識の途絶が来たらと思うと怖くて仕方ない。
記憶が戻る前には、自分がモブだとか思った事は当然無い。でも主役にもなれない精々一般人だって思ってた。
でもこのままじゃ、モブどころか背景にすら立てやしない。
ブルアカモブ、可愛いよね。
ああ違う、思考にノイズが入った。
背景にも立てずナレーションでも触れられ無い、そんなキャラ存在しないかの様に消えてしまうのかな。
まだ何も出来てない。お別れも言えず消えたくない。
嫌だいやだイヤだ。
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何?何かノイズの様な?
<
また聞こえた。機械音みたいな合成音みたいな?なにこれ?
<生体ユニットへの接続……完了>
<生体ユニットへの神経接続完了>
<生体ユニットとのコンタクト実行>
<対話プログラム起動……起動承認>
小さな女の子の声にも聞こえる合成音が聞こえる。
誰かが、私に中に居る?
怖い!怖いよ。何、なんなの?
「誰っ!誰か居るの!誰?目的は何!私に何をしたの!」
混乱する。ナニカガ、私の中に潜んでいる。
<生体ユニットとのコンタクトに成功>
<答 情報収集ユニット……生体との融合及び行動様式学習プログラム及び実証試験機群……不明な改造により一部機能喪失>
<答 当プログラムは先行試作型>
<答 当プログラムの機能。生体を生存に有利な身体構造へと再構成、物質の再構成機能の実証試験機、再構成粒子の運用試験機>
<答 当プログラムの目的。ナノマシンによる生体との融合実証試験、生体の損傷修復試験、生体との神経接続及び対話の有効性実証試験、生体による各種経験の蓄積解析、学習プログラム情報収集>
<対話の有効性実証試験、実行中>
<対象を高度な知的生命体と定義>
<問 回答にご満足いただけましたか? Y or N>
一気にまくし立てられる様にして、謎の声が答えていった。
ナノマシン?実証試験?なに?え?なんなの?とりあえず答えなきゃ!
暗闇の中でYとNがチカチカ光っていて、回答を待っている様に感じられる。
「とりあえずYES!まだ質問があるけどしてもいい?」
<答 質問を入力して下さい>
「えっとじゃあ。ナノマシンって言ってたけどどうして私の中に居るの?いつ入って来たの?」
そんな怪しい物、身体に入る機会なんて無いよね?無いはず。
<答 注射器による注入。当ユニットは対象の生体ユニットの大規模な損傷時に注入され、生体の損傷修復を実行中>
「え、じゃあ私が大怪我した時に入って来たんだ。病院とかかな?」
<答 当ユニットは生体に入るまでは休眠状態の為、不明。振動の検知により移送されていたと推測>
「生体ユニットって私の事?」
<答 肯定、実証試験対象個体、個体名未入力>
あー、ノーネームって事か。
「じゃあ、今後は私の事は生体ユニットじゃなくて、マキナって呼んでね。生体ユニットじゃ、実験動物みたいで嫌だからさ。」
<答 個体名の入力を確認、個体名設定完了、以降は生体ユニットをマキナと呼称>
「あと、喋り方が硬くて事務的で嫌だからもっと柔らかく出来ない?」
<答 柔らかくの定義不明、当ユニットは対話型学習プログラム及びマキナの行動様式学習によりアップデート可能、現在はデータ不足>
私がAIを育てる感じかぁ。
「じゃあ、これから一緒に勉強していこうねっ!私、まだ小学生だからまだまだいっぱい勉強する事あるから、あ。あなたの事はなんて呼べば良いかな。」
<答 了承、マキナの学習を学習し随時アップデート実行します、当ユニットは先行量産試作型物質再構成実証試験用ナノマシン型試験機ロット#009>
「長いよ……。覚えられない……。」
009、ダブルオーナイン、か。
ナイン、⑨、チルノ。
じゃあ、ナイン辺りかなぁ。
「決めた、あなたの名前はナイン。今後はナインって呼ぶから。」
<答 ……当ユニット個体名の設定完了、以後は当ユニットはナインと呼称>
「じゃあ、あとはナインの目的の説明をお願い。私に何をさせたいの?そして私にメリットは有るの?」
<ナインの目的の解説及び協力要請。ナノマシンによる生体との融合実証試験、生体の損傷修復試験、生体との神経接続による対話の有効性実証試験、生体による各種経験の蓄積解析、学習プログラム情報収集>
<答 ナノマシンによる生体との融合実証試験、生体の損傷修復試験、この2種の実証試験はマキナの身体の修復及び治癒に貢献した。マキナの脆弱な身体は自然治癒の限界を越えており死亡が確定だった。延命及び生存に有利な身体構造への再構成はマキナの生存性へのメリットであると定義した。>
<マキナの身体に損傷が発生した際、速やかな修復を行い、損傷に応じて強化を実行する>
<生体との神経接続による対話の有効性実証試験、生体による各種経験の蓄積解析、学習プログラム情報収集について>
<対話による円滑な情報収集、マキナの行動様式及び各種知識経験の解析、制式ナビゲートシステム開発のデータ収集>
「じゃあ私の見たもの聞いた物のデータがどっかに送信されて、その制式ナビゲートシステムの開発に使われるっていうこと?」
<答 開発時の参考データとして使用する、王女へのプリセットに活用される>
王女、もしかしてアリスのこと?もしかして制式ナビゲートシステムはケイのみたいな物の事なのかな。
<神経入力を確認 アリス、ケイ、検索中……該当無し>
あ……、神経接続されてるから。考えてる事が筒抜けなんだ。
「あ、えっと。対話の有効性実証試験なんでしょ。神経接続で考えてる事を読み取るのは禁止で。お願い。」
ヤバい、ヤバいヤバい。
<答 複数経路による入力により齟齬を低減する為に有効である、正当な禁止事由無き場合停止は不能>
「えー、考えてる事を読み取るのは楽だと思うけど!人間は心で思ってる事をそのまま口には出さないんだ。発言する前に、ちょっと考えて相手を思いやって言い方を変えたりするの。」
「思いやりを持たない本音と本音のぶつかり合いはケンカの元だか
ら。対話ううん、もっとお話ししよう!討論が大事だと思うから。」
どうかな。
<答 ……、……、審議中>
<答 マキナの提案受入、神経接続による読み取りの一時停止>
良かった、危ない危ない。
「うん、ありがとうナイン!」
見えないだろうけど、きっと私は笑顔だと思う。話し合って分かり合えるのは良いことだと思うし、受入てくれて嬉しいからね。
「これからよろしくね、ナイン!」
<答 よろしくお願いします、マキナ>
「じゃあ次の質問いくね。物質の再構成試験って?」
<答 無機物と有機物の分解、再構成により任意の物質の作成。活動に必須な物質の生成、マキナの内臓及び皮下組織の修復、再構成を実行中、最適化実行中>
「私の内臓……、皮下組織。どういうこと?私、改造されてるの?」
急に怖くなった。知らない間に、身体が再構成されて改造されてるの……?
「私の身体に何をしたの?」
私、改造人間か戦闘員にでもなるの?
<答 未発達及び発育不全の改善 、生殖器の発育不全の改善、虚弱体質の改善、損壊した身体の修復、治癒。人間からは逸脱しない程度の身体能力強化。>
安心して良い内容なのかな?生殖器の発育不全?は初耳かな。
「生殖器の発育不全って?」
<答 第二次性徴の発育の遅れ及び卵巣、子宮、膣の発育不全の解消、ホルモンバランスの正常化>
「つまり、チビでガリでいつまでも子供のまま成長しない身体がちゃんと成長する様になって身体も丈夫になるって事で良いの?」
<答 肯定、チビガリぺったんこのお子様(132cm)からの脱却>
ちょっとトゲのある表現してくるな。低身長の診断出てるけどさぁ。
「お子様……、いやまあ。そうだけどさ。言い方よ……。」
酷くない?
知識と経験はどこかに送信される。
発育不全のチビガリぺったんこのお子様が、押し潰された凄惨な現場を見た生徒達はトラウマ
人間からは逸脱しない程度の身体能力(キヴォトス基準)
改造人間になったチビガリぺったんこのお子様、身長伸びるってさ。やったね、喜べよ。
009はサイボーグ009から
神経接続されているということは、脳までナノマシンに犯されているという事。