東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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サブタイトルの続きは、親バカの集いです。
時系列は不明です。少なくとも原作風神録よりは後ですが、それ以外は何も。おそらくは本編完結後の未来の話です。


外伝
外伝 神話大戦、またの名は…


 

 弾けたい。

 

 私は数年に一度、このような欲望に襲われます。全部しちゃかめちゃかにして、なにもかもをごちゃまぜにしてやりたいという一種の破滅願望…ならぬ、破壊願望のようなものでしょうか。

 

 無論、私は幻想郷で一番の大人を自負する人間。このような欲望に襲われても、無論、耐え忍び、我慢を続けます。代わりに一種の代替行為はしますけどね。

 

 では、この代替行為とは何か?という話なのですが、毎度気分によって変わります。一つは暴飲暴食。欲望が尽きるまで、ミスティアの屋台で飲み食いすること。これはなかなか満たされます。話し相手はミスティア一人しかいませんが、好きなように酒を飲み、食べたいものを食べまくる。時折、やってくる他の妖怪と飲めや歌えや出来たら最高ですね。まぁ、酔いが醒めたら、大抵のものは破壊されてましたけど。おそらく、あれは私じゃないはず、おそらく萃香でもいたんでしょう、知りませんが。

 

 他には、本を読み尽くすこともします。羅万館にある本はもちろん、気配を消して、妖怪の山の天狗の縄張りにある本や紅魔館の大図書館の蔵書を読みまくる、これはあまり満たされません。私は何千、何万と本を読んできた人間。そこらの本じゃ私の脳みそに満足を与えることが出来ないのです。結局、天魔やレミリアがいる場に押し入り、お酒を飲むことになります。これまた、酔いが醒めたら、大抵のものが破壊されていました。おそらく、フランのせいですね。間違いない。

 

 

 

 そして、私の大本命。一番満足して、後腐れが何もない、お酒も(理論上は)使わない最高の物。

 

 それは、一種の神話大戦ともいえる、お互いのプライドを賭けた——知略と策略、そして、ほんの少しの物理的な行使を伴う、壮大なる戦い。

 

 私は博麗大結界を揺らして、紫を呼び出します。普段はこんなことをしませんが、弾丸の確認をしていると、時間が遅くなってしまったので、緊急だという事で。

 

 

 いざ、参りましょう。…ってことで、紫~!スキマ開けて~!

 

 

 

 

 

 

 私が、その場、全てが死んだ世界に足を踏み入れると、既に客人たちは揃っていました。

 

「おや、私が最後とは…皆さん、お早いことですね」

 

「大丈夫だよん。それほど、待っていないわ」

 

 そう言うのは、私の古くからの友人で地獄の女神である。仮称、トリカブト。

 

「トリカブトって…流石にダサくない?」

 

 だまらっしゃい、貴女を象徴する植物だからいいでしょう。何?それともいい案でもあるんですか?ヘカー…こほん、トリカブト。

 

「けど、流石にトリカブトはねぇ…そんなこと言ったら、私なんてそういうものないわよ。私、創造神だし」

 

「確かに、そうねぇ、どうするのさ?」

 

 Goddess of devil's world

 

「え?」

 

ですから、Goddess of devil's worldです。あっ、AN ORDEAL FROM GODでも良いですよ。神…ごほん!は偉大な偉大な魔界の創造神様ですし、こういう厳かな物でもいいでしょう笑

 

「夕雲、あんたねぇ…わかったわよ。Goddess of devil's worldでいいわよ」

 

 そう言いながら、なんだか嬉し気な彼女。え?もしや、気に入ったんです?

 

「じゃあ、Goddess of devil's world…言いずらいですね。誰です?こんな長い名前考えたのは…」

 

「「あんただよ」」

 

 Goddess of devil's world…贅沢な名前ですね、いいですか、貴女の名前はGODです!W(world)は浜で死にました。

 

「もう、滅茶苦茶だわ。まぁ、いいけど。」

 

 それで、私の名前は?

 

「夕雲が自分で考えればいいじゃない?」

 

 いやですよ、何が悲しくて、自分であだ名みたいなのを作らないといけないんですか?

 

「考えるの面倒だし…」

 

 はぁ、それでも魔界の創造神ですか?

 

「何よ?」

 

 たとえ、創造神と言えどもネーミングセンスだけは作れませんでしたか。

 

「ほう、八百万の神の一人風情が言うじゃない」

 

 甘い、甘いですよ、神…GOD。私たちは八百万になるまで栄えたのですよ。

 

「ふーん、まあ一理あるわね。オーケー、その話は置いといて、夕雲のコードネームはどうする?」

 

「敗北者でいいんじゃない?」

 

 ハァ…ハァ… 敗北者……?

 

「本当の家族に忘れられ、「母」と言われず終いの永遠の敗北者が“夕雲”じゃァ どこに間違いがある…!!」

 

 コフッ‼︎

 

「流石の私も、驚きの高火力、夕雲吐血して、死んでるわ」

 

「あら、ごめんくださいませ。という事で、ルーザーでいいんじゃないかしら?」

 

 Antichronal Rotation(リザレクション)と…へぇ、前回優勝者の私にその名を付けるとは、いいでしょう。その喧嘩買いました!

 

「あっ、蘇った」

 

「という事で、始めましょうか。私たちの親バカ(戦争)を!!!」

 

 

 

 

「「「デュエル!!!」」」

 

 私たちの言葉と同時に、周囲が半透明の結界で覆われ、それぞれの頭上には、00と言う白銀の数字が静かに浮かび上がりました。

 

 これは、私たち三柱が、互いの魂を燃やして作り上げた合作の魔術。術式を結界に組み込むのは、私が。事象を数値化するのは、トリカブトが。そして、数値化した事象を視覚させるのは、GODが。二つの術式が完璧に編み込まれたこの結界は、それ故に、絶対的な完成度を誇ります。それこそ、どんな魔術であろうとも、これに勝る魔術はないと、トリカブトが豪語できるほどに。魔術の神がそう言うほどの完成度です。それでいいのか、魔術の神。

 

「それで、先攻は誰から行く?」

 

「オーケー、じゃあ私からいくわよ!まずはこれね!【私とお揃いの服を着た、クールな部下!】」

 

 トリカブトが、自信満々に取り出したのは、何やら、外の世界の、板状の機械でした。彼女が、その硝子の表面を、慣れた手つきで数回なぞると、空間に、美しい映像が浮かび上がります。

 

 そこに映し出されていたのは、彼女の部下である、地獄の妖精。

 映像の中の彼女は、トリカブトとお揃いのパンキッシュなTシャツを着て、一生懸命に地獄の釜のようなものを、かき混ぜています。そして、次の瞬間、釜は派手な音を立てて爆発し、顔中ススだらけに。けれど、それに全くめげずにススだらけの顔で満面の笑みを、カメラに向けていました。

 

「こ、これは…可愛すぎます!トリカブトの個性的な服も地獄の妖精が着ると可愛く見えますね!そして、あの失敗してもめげない、純粋な笑顔…!」

 

 くっ…!今年のトリカブトも、中々の物を披露してきましたね。…ですが、これ私たちのプライドを賭けた、親馬鹿の戦い。ここで私が後れを取るわけにはいきません。

 

「ふふ、確かに貴女のところの妖精さんも、大変可愛らしいですね」

 

 私は平静を装い、にこやかに彼女を称賛します。

 

「ですが、私のも、負けてはいませんよ?」

 

 私はそう言うと、手のひらを、そっと目の前の空間にかざしました。私の記憶の泉から最も愛おしい一場面を掬い上げ、それを映像としてそこに映し出すために。

 

「テッテレー!【霊夢が異変解決のために頑張っている映像】!」

 

 撮影元は河城にとりのご提供でお送りいたします。これは、神奈子さん達が幻想郷にやってきた時の異変です。んー、いつ見ても霊夢の弾幕は綺麗ですね。流石です!

 

「どうです!見てください、この芸術的な弾幕を!」

 

 私は、もはやどちらが対戦相手かも忘れ、ただ映像の中の巫女の姿に夢中になっていました。

 

「寸分の狂いもなく、まるで意志を持っているかのように敵を追尾する美しいお札の軌跡!そして、あの弾幕の嵐の中を、まるで舞を舞うかのようにひらりひらりとすり抜けていく、あの体捌き!」

 

 映像の中の霊夢が、神奈子さんの放つ苛烈な弾幕を紙一重で見切っています。

 

「そして、何よりも、この真剣な眼差し!普段の縁側でだらけきっている巫女の姿からは、想像もつかないでしょう!やるときはやる子なんです!霊夢は!」

 

 私は興奮のあまり立ち上がって、トリカブトとGODの二人に向き直りました。

 

「どうです!トリカブト!GOD!これが我が幻想郷の至宝、博麗の巫女ですよ!貴女のところの妖精さんも、大変可愛らしいですが、この戦場で咲き誇る一輪の華のような凛とした美しさの前では、霞んでしまうでしょう!」

 

 私が勢い全開でそう言い放つと、トリカブトは、少しだけ悔しそうな顔で言いました。

 

「…ふん、まあ確かに見応えはあるわね。戦闘技術だけなら、うちの子より上かもしれないわ」

 

「ええ」と、GODも続きます。

 

「けど。親バカポイントとしては、トリカブトの方が、高得点だわ」

 

「…何……ですと…?」

 

 私は、ようやく相手に高火力の攻撃を当てられたのに、無傷で敵が現れたかのような絶望感に襲われます。しかも、その敵は第三形態まであるそうな。

 

「確かに弾幕も綺麗だし、博麗の巫女のギャップにはすごい威力がある」

 

 GODは、一度は私のプレゼンテーションを肯定しました。そして「しかし」と続けます。その声はまるで出来の悪い生徒に、テストの間違いを諭すかのような冷たい響きを持っていました。

 

「だけど、ルーザー。貴女には、致命的な欠点が、二つある」

 

「む、二つもですか!?」

 

「一つ。あの映像は、貴女の視点ではない。河童の撮った、客観的な記録に過ぎない。そこには、貴女の『愛』が介在する余地がないわ!トリカブトが見せたのは、自分の部下の、おそらくは自らが撮影したであろう、主観に満ちた映像でした。この差は大きい」

 

 続けて、トリカブトが言います。

 

「二つ目としては、ルーザーが見せたのは、完璧な『英雄』の姿。私が見せたのは、愛すべき『失敗作』の笑顔。確かに、博麗の巫女のギャップは素晴らしい。ですが、それが貴方のミス。貴女はこのギャップを見せるためにも、最初の一枚ではなく、博麗の巫女がダラダラとした姿を見せた、後半に見せるべきだった!」

 

 ぐぅ。

 

「ふっ、ぐぅの音しか出ないようね。では、次は私の番!喰らいなさい!【最高傑作の微笑み!】」

 

 GODが自信満々に見せてきた映像に映し出されるのは、赤い半袖のメイド服で、胸元には黒い紐を蝶々結びにしている魔界人。私の知る彼女は、常に無表情で、主であるGODの隣に、影のように控えている、メイドのはずですが…

 

 GODは、まるで世界中の聴衆に向けて演説するかのように、高らかに、そして、それはもう、嬉しそうに語り始めました。

 

「見なさいよ!うちの子のこの可愛らしさ!いつもは、眉間に皺を寄せて、私の身の回りのお世話だけを、寸分の狂いもなくこなしている、生真面目すぎる子なの!それこそ、笑顔の一つも見せない、鉄壁のポーカーフェイスなんだけどね」

 

 GODは、一度、言葉を切ると、映像の一点を、愛おしそうに指差します。

 

「けど、ほら見て、この一瞬を!私が、ほんの気まぐれで、『いつもありがとう』と、頭を撫でてあげた、ただ、それだけの時の!この、はにかんだような、困ったような、それでいて、心の底から嬉しさがこみ上げてきているのが分かる、微笑みを!」

 

 映像の中のメイドさんは、確かにほんの僅かに頬を赤らめ、はにかむように微笑んでいました。それは太陽のように眩しい笑顔ではありません。夜の闇にそっと灯る月光のような儚く、そして、美しい微笑みでした。

 

「どうです、ルーザー!戦闘中の格好いいだけの顔ではありません!これは、私とこの子との間にだけ存在する信頼と絆の証!これこそが、真の『親バカポイント』なのですよ!」

 

 ふぅむ。ですが…

 

「確かに認めましょう。貴女のメイドさんの微笑みの破壊力は、素晴らしいと…ですが」

 

 私が反論の狼煙を上げようとした、その時。横からトリカブトが、にやりと笑いながら、会話に割って入りました。

 

「今回は私の勝ちかな」

 

「ええ、癪ですが、トリカブトに賛成です」

 

 私たちのその言葉に、勝利を確信していたGODは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしています。

 

「な…なんでよ!あの完璧な微笑みに!どこに、貴女たちが勝てる要素があったというの!」

 

 その、あまりにも純粋な疑問に、私は、憐れむような視線を向けました。

 

「ええ、確かにあの微笑みは美しいものでした。だからこそ、分かってしまったのです」

 

「何がよ!」

 

「貴女のメイドさんは、ただ、頭を撫でられただけ。たったそれだけのことで、あの『最高傑作の微笑み』を見せた。…それはつまり、普段、貴女が、どれだけ、あの子に愛情表現をしていないか、という何よりの証拠ではありませんか?」

 

「そ、それは…!」

 

「そうそう」と、トリカブトも続きます。

 

「私の子はいつも褒めてるから、あれくらいじゃあんな綺麗な笑顔は見せないわよ。『気まぐれで』頭を撫でた、なんて言うのが、愛情表現が薄い証拠じゃない、GOD?」

 

 私は、とどめを刺すように、最後の言葉を告げました。

 

「あるいは、貴女は、あまりにも多くの魔界人を作りすぎて、一人一人に注ぐ愛情が、希釈されてしまっている、とか?」

 

「あ…あ…」

 

 GODは、言葉もなく、ただ、パクパクと口を動かすだけでした。どうやら、彼女は、自分の話の中に、これほど巨大な、自らを敗北させるロジックが潜んでいたことに、全く気づいていなかったようです。

 

 私とトリカブトは、顔を見合わせ、悪戯が成功した子供のように、くすりと笑い合うのでした。

 

 親バカ道。それは、時に非情なまでの論理の戦いでもあるのです。










元々はこう言う作品(東方キャラを褒め散らかしたい云々)を書きたかったんだよなぁ…と自分が再確認のために書いた作品です。このままじゃ、出す場所に困るので書き終わった今日出すことにしました。勿論、26日も更新します。

あっ、作者が描きたくなったら、続き書きます。
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