東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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執筆を深夜に書いてるのですが、今回は筆が乗りました。
夜中の疲れている最中に筆がなったらどうなる?
知らんのか。すげー誤字ったり、迷走したりする。
出来る限り変なところは直したと思いますが…


第119季/秋 八目鰻の屋台with変装下手な兎

 ある日の鈴奈庵からの帰りの話です。

 いつも通り、小鈴ちゃんに妖魔本を貸して、代わりに何冊か本を借りた後、小腹が空いた私は八目鰻の屋台で一杯やることにしました。

 

「こんばんわ、ミスティア。いっぱいひっかけに来ましたー」

 

 そうして、屋台を覗くと既に先客が一名。

 大きな笠を頭に被り、近くにとても大きな葛を置いている彼女は、最近里で噂の薬売りさんですね。

 どうやら薬の効能が抜群に効くらしいですが、残念ながら里の人達からは「説明が訳わからない」や「気味が悪い」などと悪い評判が広がっています。寺子屋の先生である慧音でさえも「 あいかわらず意味不明の単語ばかりでわけがわからないな 」と本人に言うほどなのですから、その不審さは折り紙付きでしょう。

  

 それにしても、やはりと言うか何と言うか、薬売りさんは妖怪だったようですね。

 普通の人間ならば、ミスティアの屋台に夕方から訪れることなんてしません。来るとしても精々が年に一人や二人、それも真夜中に一人のところ、ミスティアに夜目にされて、八目鰻を買わなければならなくなった人ぐらいなもんです。

 ミスティアの屋台に行くようになって相当な年月が経ちましたが、人間がわざわざ夕方にミスティアの屋台にいることなんて、今まで見たことないです。

 

 まぁ、それはともかく。私、薬売りさんに結構興味あるんですよね。里の評判はすこぶる悪いですが、性格の良し悪しとかは聞いていないので、普通にどんな人物か気になります。少し、一緒に酒を飲んでみますか。

 

 

「あら、薬売りさんじゃないですか。どうです?私と一杯傾けません?」

 そう言いながら、私はグラスをカツンとぶつかる動作を行います。薬売りさんはかなり怪しんだ目線で私を見つめますが「私と飲んでくれたら奢りますよ」と言えば、渋々と言った表情で了承しました。

 

「いやいや、何度か里で見かけることはあったんですが、話をした事がなかったですね。私、話をしてみたかったんですよー」と言うと、胡散臭げそうな目を強めます。

 

「女将、今日のお勧めお願いします」と注文すると、雀酒と共に卵焼きが出されました。

「薬売りさん、私、卵焼きが出されるたびに思うのですが、焼き鳥はダメなのに卵はいいってどう思います?」

「…さぁ?」

「まぁ、美味しいのでいいんですけどね」

 卵焼きをパクパク食べていると、私を観察する様な目線が…

 そういうのはバレないようにするんですよと思いながら、卵焼きを何個か彼女の皿に置きます。

「そんなにじっくり卵焼きを見ちゃって…欲しいんですよね?」とウインクをパチリ。

 戸惑いの目をしてますね。この子は表情にはなかなか感情が出ませんが、目にかなり表れます。

 それにしてもかなり警戒心が強いです。妖怪はもう少しちゃらんぽらんな方が多いのですが、彼女は用心深い性格なのか、それともなにか警戒に値する理由でもあるのでしょうか。

 

 そうして、彼女が卵焼きを食べている間に彼女の風貌を確認します。

 特徴的な赤色の目に、笠からは豊かな薄紫の髪と大きな耳が見えます。

 服装はあまり変装が得意な妖怪には見えませんね。里に出入りするために最低限変装をしていると言った感じです。

 

 彼女が卵焼きと共にお酒を飲み干したのと同時にすぐさま酒を注ぎ、「回す程度の能力」を使って彼女の体内にあるアルコールを急速に回します。

 所謂、酔いが回るってやつです。私の能力は物理的に回すだけではなく、私が回せると思ったものなら大体は回せます。

 すると、みるみる彼女の顔が赤く、そして緩くなっていきます。

 

「そういや、薬屋さん。貴女の名前は?」

「鈴仙・優曇華院・イナバです〜」と妙に語尾が抜けた声が…

 どれも人間の名前に付けられるもんじゃないですね。それにしても、イナバですか、となると考えられるのは兎の妖怪ですね。

 それに優曇華、懐かしいですね。昔はよく見ましたが、最近ではめっきり見なくなった華の名前です。

 

「私は薬売りさんの事を何と呼べばいいですかね?」

「そうですね。鈴仙でも優曇華でも何でも良いですよー」

と酔ってきたのか、顔を真っ赤にしながら言います。

 

「ちょっと暑いですね」と薬売りさんが被ってる笠を取ります。

 すると、そこには大きくヨレヨレな兎耳が…まぁ、笠から潰れた耳が見えてましたし、名前からして兎の妖怪だと思ってましたが、やけに早く正体が露見しましたね。

 

「では、鈴仙さんと呼びますね」

「それで、あなたの名前は?」

「申し遅れました。私は夕雲と申します。以後お見知り置きを」

と私は深々と頭を下げました。

 完全に酔いが回ったのか「じゃあ、夕雲と呼びますね!」とのこと。先ほどまでの警戒はどこに消えたのでしょうか。

 まぁ、兎妖怪はお調子者の子が多いですからね。お調子者で悪戯好きのくせに詰めが甘いのが兎妖怪です。私の友人の兎妖怪も調子に乗って、和邇(ワニザメ)に皮を剥ぎ取られていました。

 

「それで、鈴仙さんは薬を売ったらすぐ帰ってますけど、どこに行ってるんですか?」

「あー、私は迷いの竹林に住んでるんです。結構離れてますから、暗くなる前に帰りたいんですよ」

「ほぉ、迷いの竹林と言うとあの深い霧が立ち込めていて、一度入ったら二度と戻れないと噂の…」

「そうそう、そこです」

……

………

 しばらく、彼女と話しているのですが話の半分以上が愚痴でした。何十年も竹林から出られなかったようですね。そんな閉鎖された環境では鬱憤が溜まるのは当たり前。久方ぶりに外で他の人と話せてるらしいので、愚痴ぐらいは甘んじて受け入れましょう。話を聞いている限り、苦労人っぽいですし…なんだか可哀想ですし…

 

「師匠は本当に酷いんですよ。拾っていただいた恩は感じていますが、いつも大量の雑務を押し付けてくるんですから」

「それに、私が里で薬を売らなきゃ、永遠亭は幻想郷で孤立してしまうでしょうし…」

彼女はそう言って、不満を漏らします。

「ほうほう、それは大変ですねぇー」

「そうなんです!それに、輝夜様も時々、無理難題を仰るんです!」

「でも、師匠さんたちのことは嫌いではないんですよね?」

「それはそうなんですけど…でも、もう少し待遇を改善してほしいんですよ!」

「確かに、先日異変を解決してくれたのは私の為でしたし、感謝はしていますが…」

 けど、けど言いながらも恩義は感じている様子、よほど永琳や輝夜と仲が良いのでしょう。永琳も鈴仙さんのためにこの間の異変…永夜異変でしたっけ、それを起こすぐらいには愛着を感じているようです。

 

 それにしても、なるほど永琳の弟子でしたか。永琳とはスペルカードルール制定のお知らせの際に顔を出したぐらいですし、全然顔を出してませんね、久しぶりに会いに行きたいですね。

 

「鈴仙さんも大変なんですねぇ」

「そうなんですよ。わかってくれるのは夕雲だけです…」

 

 なんやかんやで彼女の正体と里で薬を売っている理由を聞き出せましたね。

「そろそろ、私も家に帰らなければいけませんし、今日はここでお開きってことで…ミスティア、お勘定お願いします」

 ミスティアに言われた代金を聞いて、耳を疑います。

…想像の倍以上の値段。この兎、人の金で相当飲み食いしやがりましたね。私の懐に壊滅的な被害が、しばらくお酒を買うのは控えなければ…

 

「夕雲、今日は楽しかったです。また今度お礼させてください!」

「いえいえ、こちらこそ楽しかったです。また一緒に飲みましょうね」

 あっ、彼女に永琳に対して伝言をお願いしましょう。

 それに加えて、今日はだいぶ飲み食いされたので、少し仕返しぐらいしますか。私の財布の恨み!

 

「八意××に今度会いに行くと伝えてくださいね」

 どうやら鈴仙さんは月の連中に対して、かなりの恐怖を感じている様子。少しぐらいビビらせてもバチは当たらないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 先程までのアルコールで赤らんでた顔が真っ青になるのを感じる。

 夕雲、今別れた彼女は地上の人では発音する事ができない師匠の名前を正確に唱えた。

 つまり、彼女は月の民と関係性がある者か、地上に来ている月の民のどれかだろう。

 彼女を殺す事も考えたが、地上に降りている月の民はエリート、一介の玉兎である私如きでは返り討ちに遭う可能性が高い。

 

 

 走る、走る、走る。

 一刻でも一秒でも早くこの事態を師匠や輝夜様に伝えるために。

「あー、もうバカ!」 

 何故、安易にペラペラと永遠亭とその住人について喋ってしまったのか。

 豊姫様の「山と海を繋ぐ程度の能力」があれば、いつ月の使者が永遠亭に来てもおかしくない、既に月から師匠や輝夜様を捕らえようとしているのかもしれないのだ。

 そもそもあの胡散臭いスキマ妖怪は博麗大結界で月の民は幻想郷を見つける事ができないと言っていたが、それは嘘だったのか。それとも、あの大妖怪の想定外と言うべき存在が夕雲なのか。

 

 もしかすると、私は恩人たちを危険に晒しているかもしれない。そう思うと、涙が出そうになるが、その前に自分のやるべき事をやらなければ…

 後悔で涙を出す時間なんてない。

 

 

 

 永遠亭に着き、師匠や輝夜様を探す。

 

「師匠!師匠!輝夜様!輝夜様!いますか!!!返事をしてください!」すると、すぐに「どうしたんですか⁉︎鈴仙」と師匠の声が聞こえてくる。

 

「月の民が、幻想郷に居たんです!」と師匠に言うと、彼女の顔が変わる。

「鈴仙、詳細を」

「わ、私、屋台で酒を飲んでて、それで…」と息絶え絶えに、酸欠のせいか頭が回らず、途切れ途切れに報告をする。

「鈴仙、まずは落ち着きなさい。まずは深呼吸を」

 そう言われ、息を整える事に集中する。考えが纏まってきた。

 

「私、里で薬を売った後に屋台でお酒を少し飲んでいたんです。そこで仲良くなった人と愚痴…じゃなくて色んな話をしたんです。話をした後、別れの際に彼女は「八意××にもよろしく」と師匠の本名を出しました。師匠の事を知っているのは幻想郷でもごく一部のみの筈。それに加え、地上の人たちには発音をする事が出来ない師匠の本名を正確に唱える事が出来てました」

 

 報告が進むにつれ、師匠の顔が強張っていきます。

「それで、その者は何と名乗っていました…」

「夕雲と名乗っていました」

【夕雲】その名前を出すだけで、師匠の張り詰めた顔が緩みます。

 

「大丈夫ですよ、鈴仙。その方は私たちの味方です」

「ですが!」納得できずに声を荒げる。

ここまで証拠が揃っている。夕雲が月の関係者なのは間違いないのだ。

 

「安心して、そもそも私と姫様に迷いの竹林を紹介したのが夕雲なのよ」

「えっ」

 

頭が硬直する。たっぷり一、二分その言葉を咀嚼し、理解した後、私は力が抜け、思わず膝から崩れ落ちた。

 

「ちょっと、鈴仙!」

「良かったです。とんでもない事をしでかしたのではないかと思ってて…」

 安心したのか、私の瞼から涙がボロボロと溢れ落ちる。

 師匠は「もう」と言いながら、涙を拭いてくれますが、それでも涙が落ちるのが止まらない。

 本当に、本当に怖かったのだ。私に居場所を与えてくれた優しい人たちに恩を仇で返す羽目になっていたかと思うと震えが止まらない。

 

「大丈夫、大丈夫よ。鈴仙。夕雲はなんなら月の民達のことが大嫌いだから、私たちの敵になる事はないわ」

 

…師匠は勘違いしてます。彼女が怖かったのではなく、貴女達を傷つけることになるのが怖いのです。

 

 

 

「師匠」

「どうしたんです?鈴仙。疲れているでしょう、早く寝なさい」

 

 私のことを慮ってくれた師匠は今日行うはずだった雑務を免除して、私に早く床に就く事を勧めました。

 

「もう、大丈夫なんですよね」

 師匠達が本当にいるか不安で思わず幼子のような言葉を発してしまう。

 

「ええ、大丈夫よ。私たちはちゃんと此処にいるわ」

 その言葉を聞き、体の緊張が解けるのを感じる。

 

「それにしても、夕雲は悪戯好きだけど、ここまで行き過ぎたことをするなんて…」

 体がビクリと震える。

 …もしや、今後会うことはないだろうと思い、後先考えずに高い物をたくさん注文したから?

 今思えば、会計時に額に血管が浮き出てたような…

 

「鈴仙、なにか心当たりがあるみたいね」

 その後、夕雲さんのお金で高い酒を飲み倒した事を師匠にしこたま怒られました。ぐすん。




奢るって言ったから奢るけど、想定の倍以上飲み食いされて、少しは遠慮しろよと思い、ちょっと悪戯した夕雲さん。
懐狭いなぁ…

前書きの執筆を書いているってなんだよ笑
ちょっとツボったので残します。
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