東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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どんどんサブタイトルが雑になっていくのを感じます。まぁ、考え付かないだけなんですけどね。
今回、考える事が多くて難しかったですね。難産です。
なんか、雷鼓さんの口調がさくらももこになっていく。


第128季/夏 永遠亭with太古の太鼓②

「……笑いたいなら笑いなさい。これで気が済むのなら安いもんです。……それで、雷鼓さん。少しは落ち着きましたか?」

 

 私は、重力に従わなくなった自分の頭髪を何度か撫でつけようと試みましたが、髪は意志を持っているかのように「ボフッ」と元の巨大な球体に戻ってしまいます。

 

「あはは……。ああ、最高だよ。こんな姿を見せられたら溜飲も下がちゃうね」

 

 雷鼓さんは目尻の涙を拭い、ようやく真面目な顔(といっても、まだニヤついていますが)で私を見つめました。

 

「それで、私が鬼の魔力が無くなっても動けるためにはどうすればいい?案でもできた?」

「ふむ…それに関しましては……」

 

 ん?鬼の魔力ですか…初出の単語ですね。推定、逆さ城から出てる魔力の事でしょうか。鬼に多くの付喪神、弱い妖怪の気性が荒くなる…まるで百鬼夜行ですね。後は鬼と…打ち出の小槌を連想させて…一寸法師に敗れた鬼?正直、仮説も仮説。一応、頭に入れておくぐらいにしましょう。

 

 にしても、鬼の魔力…なるほど、永琳がしたい事がなんとなくわかりました。

 

「永琳。答え合わせしません?」

「言った私も何なんだが、もう考え付いたの?」

 

 雷鼓さんが少し驚いた顔をしていますが、私は「当然です」といった心持ちで表情を作ります。まぁ、髪型はアフロなのですが。雷鼓さんを助けたらすぐにAntichronal Rotation(リザレクション)しましょう。

 

「まぁ、そこまで難しい方法ではありませんので。要は鬼の道具を作る方法と同じでしょう?ね、永琳」

「流石は夕雲様ね。それでお願いできるかしら?」

「待て待て待て、話が読めない。鬼の道具って何のこと⁉」

 

 鬼の道具、三分メイキング!

 用意するモノはそれなりに縁がある道具と、入れる魂、この二つで大丈夫です!また、入れる魂は使用者の魔力でも代用可能!

 

 まずはそれなりに縁ある道具を魂抜きして、空っぽの状態にします。その空っぽになった道具を依り代として、用意した魂を宿らせ、新しい名前を付けてやれば…何という事でしょう!あっという間に鬼の道具の完成です!

 

 ちなみに、鬼の道具には伊吹瓢や星熊盃などがありますが、あれは魂ではなく、代用の使用者の魔力を馴染ませたものですね。揮発した酒を『萃』める伊吹瓢に、杯に入った酒の『力』をあげる星熊盃。要するに、道具には力が宿ります。それは特殊な道具だけでなく、全ての道具がそうです。

 

 鬼の道具ではないですが、私の髪飾りや博麗の陰陽玉も()()()()()()という点では大きく似通っています。ですが、こちらは複数の力を、魂を模倣し、貯蔵するモノ。どちらかというと、打ち出の小槌に似ているかもしれませんね。

 

 …流石は玉造魅須丸さん(玉祖命)。道具作りに関しましては右に出る神*1は一柱ぐらいしかいません。世界で一番長く伊弉諾物質を捏ね繰り回している私ですが、真似できませんね。私、技術面では圧倒的に負けちゃってます。

 

「それでなんでその鬼の道具?とやらになる必要があるのさ」

「鬼の道具になるのではなく、重要なのは方法。他の物に移ることです。このままでは鬼の魔力とやらに乗っ取られてしまうのでしょう?では、その魔力はどうやって乗っ取るのか。依り代である和太鼓と使用者の魔力からでしょう?」

 

 付喪神の魔力が使用者の写し鏡であるならば、私と彼女の波長が近いのも道理です。ふむ、改めて見れば、雷鼓さんは私に似ている……というよりは、伊弉冉に似ている。もっと正確に系譜を辿れば、八雷神――特に、鳴神命に近い気配すら感じます。

 ……まあ、今更でしょう。彼女が私の関係者であることは理解しました。

 

「要はお引越しです。簡単簡単」

「まぁ、確かに…簡単かもしれないけど。でも、私に縁ある道具はどうする?」

 

(ふむ、確かに…雷鼓さんと似ている道具を用意するには…香霖堂にでも行ってみましょうか?けど、あそこ、今は付喪神に溢れてそうで面倒ごとの気配を感じるんですよね)

 

「永琳、いい案あります?」

 

 困ったときの永琳ちゃん。頼りすぎると、いざというときに裏を掛かれるのでご注意を。

 

「そうね…伊弉諾物質での再構築も論理的には可能だと思う。けど。制作者である夕雲様の魔力が混じるのは不安要素ね。加えて、現在の幻想郷は鬼の魔力による環境的なノイズが多すぎる。情報の純度を担保し、彼女を完全な自律個体として確立させるのであれば、鬼の魔力の影響外――つまり、外の世界から道具を調達し、一から霊性を定着させるのが、最も確実かつ合理的な選択と言えるわ」

 

 ふむ…外の世界ですか。確かに賢者である私ならば、外の世界に行くのも簡単です。私の監視付きならば、雷鼓さんも結界を越えても文句は…言われるかもしれませんね。言い訳は…異変解決後の後始末のためと言えばどうとでもなるでしょう。

 

「なるほど。その案で行きます。雷鼓さん、博麗神社に向かいますよ」

「……は? 博麗神社? なんでまたそんな物騒なところへ……それに、ゆ、夕雲さん、その頭で外を歩くつもりかい?」

 

 雷鼓さんが引きつった笑顔で私の頭を指差しました。なるほど…アフロと出歩くのが恥ずかしいようです。思わず、ニヤリと悪い顔が浮かんじゃいますね。

 

「勿論ですとも。これは貴女を放っておいた事に対する禊ですからね、さぁ行きましょう!」

「いやいやいや、恥ずかしい恥ずかしいから。せめて、その頭をどうにかしてから向かおう」

「何言ってるんです。アフロは私の反省の証ですよ。しばらくは消したりなんかしません。さぁさぁレッツゴー、博麗神社!」

 

 私は彼女の抗議を心地よいBGM程度に聞き流しながら、慣れ親しんだ、けれどどこか「距離」を置いてきた場所へと歩みを進めました。

 


 

 博麗神社。

 幻想郷の要石であり、大結界の境目に位置するコア。

 ふと、私はここを訪れた最後の日を思い出します。……いつぶりでしょうか。

 

(……あぁ、神子さんが起きた時の異変です)

 

 後戸の国から出る際に適当な扉を開けたら、神社の狛犬の背中に通じたんでしたっけ。あの時は焦りました。

 

「そう考えると、久しぶりというわけではないんですね」

「ん?なんか言ったかい?夕雲さん」

「いえ、何も」

 

 霊夢が私の事を思い出さないためにも、本来は博麗神社に入ることを禁じられているのですが、賢者たちは霊夢を人間として繋ぎとめるためにも私と交流させようとしてきますし、霊夢は既に私と知り合ってしまったし、今回は異変に関わる事なのでセーフセーフ。

 

「……何さっきからニヤニヤしてるんだい、夕雲さん。そのアフロのせいで、不審さが三割増しだよ」

 

 背後から、雷鼓さんの冷ややかなツッコミが飛んできました。

 

「いえ、免罪符や建前は大切だなと思いまして。もしも博麗の巫女に見つかった場合、人間であるわたしはともかく、雷鼓さんは退治されてしまうでしょうし、その言い訳を考えていました」

「ひぃ!怖い事言わないでくれ」

 

 まぁ、嘘ですが。雷鼓さんは妙に良い反応をするので、揶揄いたくなっちゃうんですよね。

 

「さて、冗談はともかく、行きますよ。『賢者××××の名において命ず、127年の禁を解け』」

 

 私がその言葉を口にし、指先で空中の「軸」を鋭く回した瞬間。

 神社の裏庭の、何もない空間にひび割れのようなノイズが走り、古い映画のフィルムが焼き切れるような音と共に、世界が裏返りました。

 

 

暗転

 

 

 私は、乱れた羽織の裾を払いながら、周囲の夜気に視線を巡らせました。幻想郷の濃密な霊気を含んだ夜とは異なる、どこか乾燥して無機質な、鉄とアスファルトの匂いが鼻腔をくすぐります。

 

(ふむ?外の世界の博麗神社ではない?…どこです、ここ)

 

「なんだいここは……。変な地面だし空が狭い……外の世界は辺鄙な場所だねぇ」

「それは私も同感です。そんなことより、ここがどこか調べますよ」

 

 私はとりあえず現在地を特定するための手がかりを探しました。

 深夜の静寂に包まれた街並み。少し歩いた先に、コンクリートの塀に囲まれた大きな建物が見えてきました。夜の帳に沈んでいるため、遠目には判然としませんが、校門らしき場所の横に掲げられた銘板が街灯の光を鈍く跳ね返しています。

 

「おや、あちらに学校があるようですね。……少し失礼して」

 

 近づいて目を凝らしてみれば、そこには古風な書体で『東深見高校』と刻まれていました。

 

(東深見……。やはり、知らない土地ですね)

 

 時計の針を見れば、時刻はまだ午前二時を回ったところ。楽器店が立ち並ぶ繁華街へ向かうには、少々早すぎます。

 

「何かしらのイレギュラーが起こっていると考えて良さそうですね。雷鼓さん、注意してください」

「……もしかして迷子? 勘弁してよ、夕雲さん」

 

 雷鼓さんが低い声で、警戒を露わにしたその時でした。

 

「――ねえ、君たち。そんな格好でこんな時間に、何してるの?」

 

 背後から、不意に声をかけられました。

 深夜二時の校門前。およそ人がいるはずのない時間に、あまりに自然な、そしてどこか好奇心に満ちた声。

 

 振り返ると、そこには一人の少女が立っていました。

*1
伊斯許理度売命。三種の神器である八咫鏡を鋳造した神様




げええええ、おまけtxtの雷鼓に「彼女は和太鼓の付喪神だった」って書いてますね。輝針城で付喪神化したんじゃなくて、前から付喪神だったんですね。勘違いしてました。
この作品での雷鼓は殆ど意識は構成済みだけど、魔力が足りず、自律的に動く事は出来なかった…四捨五入したら殆ど付喪神……(設定的に)通るか?

よく考えたら製作者と使用者は違うんじゃないかな。夕雲は「打たずとも鳴る鼓」を製作し、輝夜の前で一曲弾いたけど…その程度なんだよな。弾いた数だけを言えば、おそらく輝夜や永琳などの永遠亭の住民の方が多い…雷鼓が輝夜を襲わないために永琳が一計を案じた…そんなところでしょう。
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