東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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久しぶりに満足できるサブタイトル。
書けたので投稿です。書いてるうちにプロットが崩れてきました。書いているうちに楽しく待って、話がズレていくんですよね。なんで董子と会ってるんだろう?


第128季/秋 外の世界with超高校級のサイキック

 ゆるやかに波打つ茶色の髪と、同じ色の瞳。

 街灯の光を反射して赤く縁取られたアンダーリムの眼鏡が、彼女の知性的な、けれどどこか浮世離れした印象を際立たせています。

 そして何より目を引くのは、その服装。夜中であるにもかかわらず、彼女は深く被った白色のリボンが特徴の帽子を脱ごうともせず、夜に隠れるような黒のマントが夜風に靡いていました。

 

 私は雷鼓さんに「私が応答します」と目配せします。雷鼓さんはわかってくれたのか、こくんと頷き、一歩後ろに下がりました。

 

「貴女の方こそ誰ですか?それに、私たちがここで何をしていようと関係ないでしょう?」

「私はこの学校の生徒よ。…忘れ物をしたから取りに来ただけ。そしたら貴女たちが不審な行為をしてたのよ」

 

(面倒ですね…ちょっと可哀想ですが、捲くし立てましょう)

 

「おやおや、随分と心外な物言いですね。『不審な行為』と仰いましたが、私たちはここに居ただけですよ、失礼ですね。 そもそも、法治国家において証拠なき断定は単なる誹謗に過ぎません。

 それより気になるのは貴女の言い分です。忘れ物を深夜二時に取りに来るほどの勤勉な学生がそんな服装をしますか?その……趣味を凝縮したようなマントと帽子という、およそ校則とは無縁の出で立ちで彷徨っているんです?

 もういいでしょう…お互いの事を考えれば、今回の事は無かったことにしましょう。そうしましょう。是非ともそうしましょう。では、私たちはこれで」

 

 論点をずらし、質問には答えず、此方が逆に問いを畳みかけ、発言の機会を奪う勢いで捲くし立てる。大抵の人は頭の処理が追い付かなくなり、反論の糸口を見失って呆然と立ち尽くすことしか出来なくなります。

 

 ましてや、目の前にいるのは「爆発したアフロヘアーを微塵も気にせず、至極それっぽい理屈?を並びたてる、現代日本に似合わない和服を着た不審者」という、情報量の過積載。

 

 そんなの誰だって混乱するでしょう。私だってします。現に、目の前の少女も眼鏡の奥の瞳を点にして、口を金魚のようにパクパクと開閉させたままフリーズしてしまいました。

 

(それにしてはこの女の子、どこかで見たことがあるような…気のせいでしょうか?)

 

「……あ、いや、えっと、私はただ……」

「おや、まだ何か? 議論の継続をご希望ですか? ですが、私たちはこれからやることがありますので、一学生の主観的な不信感に付き合っている時間は一秒たりともありません。では、ご機嫌よう」

 

 そう言い、雷鼓さんと共に立ち去ろうとして―――違和感。体が重いようなそんな感覚。それでも、歩を進めようとして…

 

「……ちょっと待って(なんで止まらないのよ)。そんな雑な理屈で煙に巻こうとしたって無駄よ。私の目は誤魔化せない」

 

 私が鮮やかに(?)立ち去ろうとした背中に、再起動を果たした少女の声が鋭く突き刺さりました。眼鏡の奥の瞳が、好奇心という名の怪しい光を湛えて細められます。

 

「確かに貴方達を不審者呼ばわりしたの間違いだったわ。それはごめんなさい。それで一つ聞いてもいい?

「…」

「貴方たち二人、どこからともなく突然現れたかのように思えたんだけど、どういうトリックを使ったの?」

 

 …本当に面倒ですね。

 


 

 頭を回します。これから私たちはどうするべきなのか。

 

 能力を使って、無理矢理気絶させる?ありです。もしかしたら夢だと思ってくれるかもしれません。ただ、好奇心の強い彼女の事です。きっと自身の好奇心を抑えきれない。いつかは私たちの存在(幻想郷)に気づくかもしれません。

 

(ん?今、なんだか違和感が。まぁ、いいです)

 

 では、それっぽい納得できるような嘘を吐く。これも悪くは無いでしょう。ただ、彼女が心の底から納得する嘘を吐くことが出来るのか。正直、難しい。私たちがここに突然現れたという決定的な瞬間を見られていますしね。

 

 いっそのこと、彼女を攫う?攫っ(神隠し)た後に紫などの手を使って、記憶を消せば…これも悪手でしょう。彼女は絶対に自身の記憶の空隙を放っておかない。そういう目をしてますす、事実、そういう人間でしょう。

 

 頭を回した結果、私が採った手段は―――

 

「しょうがないですね…真実をお話ししましょう。私たちはこの高校の、七不思議の調査に来ました」

 

 彼女に更なる餌を撒き、時間を稼ぐこと!

 

「はぁ…七不思議、この高校の」

「えぇ、どうやらこの学校に怪しげなモノが現れていまして、その調査に来たのですよ」

 

 私はアフロの髪をボフッと揺らし、いかにも「専門家」っぽい神妙な面持ちで嘘を吐きました。

 まあ、その「怪しげなモノ()」とやらは、間違いなく私と雷鼓さんの事ですが。

 

 そもそも私たちはなぜここに降ろされたのか。これがわかりません。本来あれば、私たちは外の世界にある博麗神社の境内に降り立つはずでした。ですが、何の因果か、私たちはこの見知らぬ土地に降ろされている。何かしらの原因があるのは間違いないのです。

 

 ですので、周囲を調査したいという言葉に嘘はありません。

 

(それに、原因があるとしたらこの学校でしょうし)

 

 元より、学校は負の感情が溜まりやすく、異界の入り口になりやすい場であります。例えば、階段。階段は上下の階を繋ぐ境界であり、どちらにも属さない空白です。その隙間こそ、怪異が好む場なのです。現に十三階段や踊り場に置いてある鏡に吸い込まれる…と言った都市伝説があります。

 

(しかし、たかだかその程度で私を呼び寄せる事なんて出来ないはずなんですけどね)

 

 うーむ、幻想郷で発生している異変が関係しているとかでしょうか?鬼の魔力が外の世界に漏れ、異界の入り口が広がった?それだと、紫が気づかないはずがなく…。

 

「そう言えば、名乗り忘れていましたね。私の名前は夕雲。こっちは雷鼓です」

「よろしくねー」

「そう、それじゃあ、私も名乗るしかないわね!私は、東深見学園高校一年 秘封倶楽部初代会長 宇佐見菫子。泣く子も黙る本物の超能力者よ!」

 

 …なんだかトンデモない子ですね、それも想像以上に。

 


 

「それで、宇佐美さんはどうしてこんな夜中にこんな学校に?先ほど言っていた忘れ物の話は嘘でしょう?」

「…夕雲さんと同じ、似たような話を聞いたのよ。秘封俱楽部…あぁ、簡単に言えばこの世界の秘密を暴く部活ね。ともかく、部長として謎を解き明かそうと思ってね」

 

 ダウト。目が泳いでます。どうやら、本当の事は言うつもりがないみたいですね。

 

「なるほど。そう言う事でしたか。では、宇佐美さんにも手伝ってもらいましょうか。そうですね…在校生としてどこが一番怪しいと思います?」

「そうね…(困ったな、どこにしよう)うーん、やっぱりトイレね」

 

 小声のつもりなのでしょうが、やけに響いて聞こえます。

 

「トイレというとやはり花子さん?」

 

 雷鼓さんの問いに、宇佐見さんはわが意を得たりとばかりに身を乗り出しました。

 

「そうよ雷鼓さん。この学校、ちょっと特殊だけど花子さんの噂があるの。大抵、そういう七不思議って小学生の間に広まるじゃない?けど、そんな都市伝説が私の学校に広まってる。それって、()()がいるってことじゃない?」

 

 一理あります。

 都市伝説というものは、人々の「認識」と「恐怖」を糧にその輪郭を形作るもの。子供たちの無邪気な想像力が生む噂は、成長とともに淘汰されるのが道理です。

 しかし、そんな合理的精神が芽生えているはずの高校という場において、なおも語り継がれ、恐怖の対象であり続ける花子さん。実物が居たっておかしくありません。

 

「ほら、ここから入れるのよ。着いてきて」

 

 宇佐見さんが慣れた足取りで向かったのは、校舎の一角にある一階の窓でした。驚くべきことに、その鍵は最初から開いており、彼女は躊躇なくサッシを滑らせて中へと滑り込みました。

 

 …偶々じゃないですよね。運よく学校の窓が開いてたなんて。絶対、さっきまで学校にいましたよね。ご丁寧に警備会社のセンサーや防犯カメラまで光を失ってる…何かしらの力が働いてる?それとも純粋な技術?うーん、まだわかりませんね。

 

「やっぱり、ワクワクするわね。夜の学校は」

 

 外の空気よりも数度低く感じる、冷え切った廊下。

 月明かりがタイルの床に長い影を落とし、私たちの足音だけが、やけに重く反響します。

 

「それで宇佐美さん。この学校の花子さんと言うのは?先ほど、『ちょっと特殊』と言っていましたが」

「あー、うちの学校の花子さん、どうやら年を取っているらしいの」

 

 子供ではない花子さんですか。

 花子さんと言えば、赤い吊りスカートをはいたおかっぱ頭の女の子の姿なのですが、成人女性がの恰好をしているとなると…

 

(インモラルと言いますか…正直、キツいですね)

 

 花子さんの都市伝説の源流を遡れば、厠神に行き着きますし、その厠神の源流を更に辿ると、知り合いの埴山姫神や水波能売神に…どこかで変な枝分かれをしていてもおかしくないです。知り合いのそんな姿は見たくありませんので、勘弁してほしいのですが。

 

「それも老婆の姿。なかなか聞かないよね。お婆ちゃんの花子さんなんて。一応、私の方も調べてみたんだけど、花子さんの話は岩手県の方で昭和20年代ごろからあったらしいのよ。だから、そのまま成長するとお婆ちゃんになっていてもおかしくない…とは思う」

 

 へぇー、老婆の花子さんですか。かなり興味がそそられる話ですね。案外、老婆の妖怪と厠は密接な関係にあって、カラサデ婆や三枚のお札に出てくる山姥などがいますが、案外それ関係だったり?

 

「それで件の花子さんはどこに出没するんです?」

「ごめん!それが分からないの。だから、とりあえず一階から回ってみる事にする」

 

 窓から見えた時計に映る時刻は二時四十四分。まだまだ夜は明ける気配はありません。


 

「全然ですね~」

 

 それから二時間ほど一階から三階までのトイレを下から回っていきましたが、何の成果も挙げられませんでした。

 

「やっぱり、花子さんの都市伝説は嘘だったのかしら。あいた」

 

 両腕をがっくりと脱力させ、魂が抜けたような足取りのせいで、階段で派手に躓いてしまった宇佐美さん。私は背中を見つめながら、内心で深く彼女の落胆へ同意の意を示します。何しろ私たちはこの数十分間、考えうる限りの花子さんの召喚方法?を片っ端から試したのですから。

 

 定番の三番目の個室を叩き、「花子さん、遊びましょ」と定型文を唱えるのは勿論、「こちらが遊んでいれば混ざりたくなって出てくるはず」という宇佐見さんの提案で、個室の前で軽いゲームに興じたり、「怒らせれば姿を現すのでは」と、失礼を承知でドアを軽く蹴って挑発するに加え、思考が一周回って、「徹底的に綺麗にすれば、お礼を言いに現れるかもしれない」という結論に至り、便器から床までを私の能力を使い、新品同然にするなど…かなりの労力を要しました。

 

 それでも出ないとなると、私たちがここに招かれたのは花子さんが原因ではなさそうです。

 

「宇佐美さん、もう解散に…」

「待って、夕雲っち…四階に、あんなところにトイレはなかった」

 

 階段を上り詰め、四階へと足を踏み入れた瞬間のことでした。

 躓いた膝をさすりながら顔を上げた宇佐見さんが、驚いた様子で廊下の突き当たりを指し示しました。

 

 私は立ち止まり、アフロヘアーをボフッと揺らしながら、暗がりに沈む廊下を見据えました。

 一階から三階まで三箇所ずつ配置されていたお手洗い、普通に考えれば四階も三箇所のはずですが、四階には四つ。確かに一つ増えています。

 

 存在しないはずのトイレを認識したからでしょうか、明らかに廊下の雰囲気が変わりました。廊下に面する窓を覗き込むと、辺りは真っ暗闇。月や星さえも消えています。

 

(ここら一帯を暗闇に包んでいる?まさか、ルーミアじゃありませんし…異界に紛れ込んだとみるべきでしょう)

「スマホも使えないわね。電波が届いてないわ」

 

 菫子さんは、青白い光を放つスマートフォンの画面を何度もスワイプしていますが、その指先は微かに震えています。

 

「夕雲さん、これは…」

「ええ、雷鼓さん。花子さんと思われる妖怪のテリトリーに足を踏み入れました。宇佐美さん、お手洗い以外になにかおかしいところはありますか?」

 

 私の問いに、宇佐美子さんはハッとしたように顔を上げ、辺りの暗がりに視線を走らせました。

 

「えっと…あっ!教室のプレートが全部4ー4になってる!」

 

 その叫びが、静まり返った廊下に嫌な響きを伴って反響しました。

 私も董子さんの視線を追うと、そこには錆びついた鉄板に、白く塗りつぶされたような『4-4』の数字が四つ並んでいました。

 

(四階の、四番目のお手洗い。そして、全ての教室が4ー4……)




この辺りびっくりするぐらい複雑なので学びなおそうとしたんですが、
「霊夢可愛い」
「霊夢可愛いな」
「霊夢可愛すぎないか?」
「紫も可愛い」
「二人合わせて、可愛い選手権優勝か?」
となって、マジで頭に入らない。ほんまかわいいっすよね。

老婆は勿論、花子さんじゃありません。何の都市伝説か考えてみてね!
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