東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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弾幕アマノジャクをする→勝てなくなる→息抜きしたくなる→執筆する→展開に迷う→息抜きしたくなる→弾幕アマノジャクを…(以下ループ)
二日目はありません。セリフ付きと最終日だけにしようかな、迷い中です。


三日目 増え続ける追っ手

 三日目――。

 霧の湖を抜けた私が逃げ込んだ先は「迷いの竹林」だった。

 視界を遮る背の高い竹、足元に絡みつく湿った土の匂い。ここなら追っ手の目を眩ますには絶好の舞台だ。そう高を括って奥へと突き進んでいた私の背に、突き刺さるような熱気が届いた。

 

「見つけたぜ。お尋ね者の天邪鬼」

 

 振り返れば、そこには白い髪をなびかせ、赤い袴のポケットに手を突っ込んだ女――藤原妹紅が立っていた。彼女の全身からは、隠しきれない戦意が立ち昇っている。

 

「げ、こんなところまで広まってるのか」

 

「本腰入れて不可能弾幕でやっつけろってお触れが出ててな」

 

「誰なんだ? そんなお触れを出した奴……」

 

 舌打ちが漏れる。今までの弱者だけではない。実力者と言われている竹林の隠者までが「ルール無用」で私を捕らえに来るとは。どうやら幻想郷全体が、私という異物を排除するために狂い始めているらしい。だが、それこそが望むところ。

 

「あー、確か姿くらましの布とブンヤのカメラを使うんだったか?となりゃ、こういうのはどうだい!」

 

 …どうやら、私が集めた反則アイテムは追っ手たちに共有されているらしい。

 姑息な連中だ。正々堂々と一人ずつ返り討ちに遭いに来ればいいものを、裏で対策会議でも開いたのか?

 

 妹紅がニヤリと不敵に笑うと、その全身から溢れ出す炎の質が変わる。

 

「要は”広範囲”で”長時間”の弾幕を放てばいいってわけだろ?」

 

 彼女を中心に、地を這い空を埋め尽くすほどの放射状の炎弾が放たれた。

 一発一発が意志を持つ火の鳥の雛のように、逃げ場を塗り潰しながら全方位へと拡散していく。

 それは竹林の湿った空気を一瞬で沸騰させるほどの、圧倒的な熱量を伴った紅の絶望。

 

 弾幕を避けながら、考える。今は避けられているが、これが続けばいつかは当たる。相手はスペルカードさえも使っていないというのに、頬に火の玉が掠めているのだ。当たる前に何かしらの行動を移さねば…

 

(ひらり布を使ううか……)

 

 私は懐の布に手をかけ、即座にそれを引っ込めた。

 普通の弾幕ならばきっとひらり布で避けることが出来る…だが、目の前にいるには正真正銘、幻想郷でもトップの強者。ひらり布を燃やされる可能性は否めない。ひらり布も普通の布ではないが、どうせ相手のも普通の炎じゃない。超常的な何かだろう。

 

 となると、ここでひらり布を燃やされることになるよりも、対策が難しい手札を切る方が得か。

 

「しょうがない、悔しいが……とっておきの不思議道具も使っちゃうか」

 

 そう呟き、道具を取り出すと同時に藤原妹紅が叫ぶ。

 

「さあ、焼き尽くされる前に投降しな! 惜命『不死身の捨て身』!」

 

 周囲の空間が真っ赤に染まった。

 彼女自身が炎の塊となり、私を粉砕せんと全方位から迫りくる、まさに捨て身の不可能弾幕。

 

 だが、私は不敵に笑い、道具を使う。今回、私が使うのは――!

 

 

「――そこだ!」

 

 視界が歪む。次の瞬間、私は妹紅の真後ろへと「瞬間移動(ワープ)」していた。

 今、使ったのは『隙間の折りたたみ傘』――それは視界内のあらゆる場所へ、境界を無視して跳躍する反則。どんなに密度の濃い弾幕が張られようと、空き場所が少しでもあれば、それで十分。

 

「ちっ、ちょこまかと……!」

 

 妹紅は即座に反転する。彼女の身体は、どれだけ弾を叩き込んでも、まるで手応えがないほどに「固い」。不死の肉体を持つ者特有の、絶望的な耐久力。

 

 つまりは追いかけっこ。もしくは根性比べとなる。私が妹紅を削りきるのが先か、彼女が私を捕えるのが先か。

 

 そうやって傘の跳躍を繰り返すうちに、私の息も上がり始めていた。そこへ、妹紅がさらに巨大な妖力を練り上げる。

 

「遊びは終わりだ。永遠に燃え続けてもらうよ! 『火の鳥 -不死伝説-』!」

 

 その瞬間、空を覆い尽くさんばかりの巨大な火の鳥が翼を広げた。

 降り注ぐのは、火炎の雨。最初こそ傘を使って回避に専念していたが、弾幕の密度は秒単位で増していき、ついには跳躍した先さえも炎に塗り潰される。

 

(……くそっ、これじゃ傘が持たない!)

 

 私は追い詰められた。全方位、逃げ場なし。

 

(手札は余り見せたくないのだけど…しょうがない)

 

「悪いが、これで全部……消し飛ばしてやるよ! 『四尺マジックボム』!」

 

 私が懐から投げ出したのは、禍々しい輝きを放つ超巨大な爆弾。消耗品であるがため、一度使ったら元に戻らない。だが、使いどころを間違える事なんてしない。

 

 それが弾幕の渦中で爆ぜた瞬間、視界は真っ白な閃光に包まれた。

 

 ――ドォォォォォォン!!

 

 竹林を震わせる轟音。炎の鳥も、降り注ぐ火炎も、すべてがその圧倒的な爆圧によって霧散していく。爆風が晴れた後、そこには膝をつき、肩で息をする妹紅の姿があった。

 

「……やったか?」

 

 勝った。これだけの爆発を至近距離で浴びて、無事でいられるはずがない。

 私は勝利を確信し、勝ち誇った笑みを浮かべようとした。

 

 だが。

 

「……あ……ああ、良い攻撃だった。だけどな」

 

 妹紅の身体が、不気味な光を帯びて脈打った。

 それは再生というにはあまりにも異質で、強引な力の奔流。

 

 ――『リザレクション』。

 

 傷が、服の焦げ跡が、そして消耗したはずのまでもが妹紅の妖力までもが、まるで時計の針を逆回転させたかのように、一瞬で「なかったこと」にされていく。

 

「な……!? なんだよ今の……反則じゃないか!」

 

 あまりの光景に、私は一瞬、呆然と立ち尽くした。

 その隙を、妹紅は見逃さなかった。

 

「――すまないが、」

 

 至近距離から放たれた火炎の礫が、私の胸を捉えた。

 あ、死んだ。

 私は反射的に目を瞑り、死の衝撃に身を強張らせた。

 

 ……。

 …………。

 

「……あ?」

 

 痛みがない。

 確かに弾幕は直撃したはずだ。だが、私の身体はどこも焼けていなければ、傷一つついていない。

 

(……こけおどし……か?)

 

 妹紅の攻撃に威力がなかったのか。それとも、あの『リザレクション』とやらで力が削がれたのか。

 

 理由はわからないが、生きているなら儲けものだ。私は動揺を押し隠し、即座に身を翻した。なにやら、妹紅も目を見開かいて驚いている。

 

「ははっ! 案外、大したことないじゃないか! あばよ、不死身のお嬢さん!」

 

 私は再び傘を使い、深い竹林の奥へと逃走を始めた。

 

 背後で、妹紅は追いかけてこなかった。

 彼女は自分の手を見つめ、そして逃げていく天邪鬼の背中を、言葉にできない不審げな、そしてどこか「何かを察した」ような眼差しで見つめていた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「……あれ?」 




はい、一回目。

今回のストーリーと関係ありませんが、絶対に妹紅の腹筋は割れてる。
後、なんか少し戦闘描写が物足りないので、もしかしたら付け足すかも。
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