うむ。うむむ。うむむむむ…使えそうな設定は幾つかありますねぇ。けど、基本は大丈夫そうかな。うーむ、宗教が必要で科学だけでは無理。解釈が難しいですねぇ
それと、この外伝はギャグなので、まじで適当に読んでください。
本編は大苦戦中ですが、あと少しで書けると思います。ちょっと怖かったブックレットも確認しましたしね。
天弓千亦との秘密裏の談合を終え、妖怪の山の高地から悠々と歩を進めていた大天狗・飯綱丸龍。描いた筋書き通りに全てが転がり始めた満足感からか、紅い雪を踏みしめるその足取りは、鼻歌交じりに舞う羽のように軽やかものだった。
だが、山の中腹まで下りてきたあたりで、彼女の鋭い聴覚が天狗たちの騒めきを捉え、彼女の軽やかな歩みは止まる。
「おい、典。今、妖怪の山で何が起こっているか知ってるか?」
呼び出したのは彼女の腹心である菅牧典。影のように静かに姿を現した管狐は、いつものようにどこか食えない微笑を浮かべながら、恭しく首を傾げてみせた。
「ええ、飯綱丸様。もちろん把握しておりますとも。山道の警備網は機能不全に陥り、白狼天狗たちは哨戒の職務を放り出して、とある『噂』の議論に花を咲かせておりますよ」
「なに……? 噂だと?」
飯綱丸が不審そうに眉をひそめる。
それもそうだろう。噂と言うモノは地震の初期微動のように”先ぶれ”があるもの。だが、話題の噂にはそのようなものはなかった。つまり、人為的に一気に広められたのか、それとも飯綱丸に隠す形で少しづつ陰から広まっているかの二択になる。どちらにしろ、良い事ではない。
「どんな噂だ。詳細を教えてくれ」
「そうですね…この噂は妖怪の山や天狗たちの立ち位置を脅かすようなものではありません。ですが、飯綱丸様にとっては恐ろしい噂でございます」
「…どういう噂だ、それ」
典は細い目をさらに細め、どこか楽しそうに尾を揺らす。
「『大天狗・飯綱丸龍様が、市場の神である天弓千亦様に心奪われ、己の権力を私物化して紅い雪を降らせ、愛のプレゼントとして市場を贈った』……という、感動的なラブストーリーでございますよ」
「は……? はあぁぁぁぁぁッ!?」
あまりに脈絡のない言葉に、飯綱丸の思考が一瞬フリーズする。
「な、なんだそのバカバカしい噂は! 誰がそんな出鱈目を吹き込んだ! 典、お前か!? お前がまた裏で妙な糸を引いたんじゃないだろうな!?」
「お戯れを、飯綱丸様。私めがどれほど口八丁とはいえ、これほどまでに創造性と破壊に満ちたネタを思いつけませんでした。えぇ、私は一切、手を出しておりませんとも。……ただ、火のない所に煙は立たぬと申しますし、白狼天狗たちの混乱を静観していただけでございます」
「お前なぁ……ッ!」
典はふわりと長い尾を揺らし、くすくすと笑う。彼女は飯綱丸の怒気を柳に風と受け流しながら、木々の奥――紅い雪が積もる山道の先を、細い指先でひらひらと指し示した。
「誰が仕組んだわけでもなく、己の純粋な思い込みだけでここまで山を掻き乱すお方など、幻想郷広しといえどあの方くらいなものでしょうねぇ」
主人が青筋を立てて絶句するのを横目に、典は実に楽しそうに肩をすくめ、すっと一歩後ろへ下がる。
「噂をすればなんとやら。もう少しで件の人物がここの来ます。これ以上ここに残っていては、私まで巻き込まれかねませんので、私はこれで。……それでは飯綱丸様、ご武運を。私は特等席で高みの見物と洒落込ませていただきますね」
言い残すや否や、典の身体は煙のように薄れ、音もなく木陰の闇の中へと溶けて消えていった。
「あ、おい待て典! 逃げるなッ!」
飯綱丸の怒声が虚しく山に木霊した瞬間、噂を広めた例の人物が現れた。
「あっ、ようやく見つけました!」
えったらほいと山を駆け巡ってようやく見つけた
いつもは余裕を漂わせているはずの彼女ですが、今のその横顔には、密かな逢瀬の余韻を強引に引き裂かれた苛立ちと、予期せぬ混乱に対する狼狽が複雑怪奇に混ざり合っているように見受けられます。
「夕雲殿……ッ! それに、はたて……!」
飯綱丸さんはギリリと奥歯を噛み締めると、冷え切った空気を切り裂くような重々しい溜息を一つ吐き出しました。その吐息は白く凍りつき、彼女の内に渦巻くマグマのような激情を雄弁に物語っています。
「ふぅ……夕雲殿。一体全体なんの真似でしょうか?白狼天狗の規律を乱し、あやつらを口車に乗せて山中の警備網をズタズタにした挙句……あまつさえ、私が千亦に懸想しているだの何だのと、大天狗たる私の名誉を著しく毀損する妙ちきりんなデマを撒き散らすとは。貴女が山登りをするのは勝手ですが、この度の愚行、単なる悪ふざけの範疇では到底片付きませんよ」
彼女の低く鋭い声音には、妖怪の山の頂点に君臨する支配者の一角としての威圧感がこれでもかと込められていました。向けられる眼光は、並の妖怪であればその場に平伏して命乞いを始めるほどに鋭利なもの。
ですが、神話の時代から愛憎劇のすべてを見守ってきたこの私に、その程度の威圧が通用するはずもありません。私は月の髪飾りにそっと指先を添え、あくまで嫋やかに、慈愛に満ちた笑みを返しました。
「悪ふざけなどと滅相もございません。私は至極大真面目に、貴女を止めに来たのです」
(……なるほど、神社で市場を開いたのが良くなかったか。夕雲殿は博麗神社の祭神…神社で市場を開くのはテリトリーを荒らすようなモノ。なるほど、夕雲殿が流したデマも千亦との関係性に楔を打ち込み、神社の主導権と自らの権益を守るためものというわけか。……夕雲殿の目的は読めた。だが、解せないのは何故この場にはたてがいるのか、だ。)
飯綱丸さんは顎に手を当て、目まぐるしく思考の渦へダイブしています。眉間の皺はさらに深くなり、盤上の二手先、三手先を必死に読み解こうとする策略家特有の動きです。隠岐奈もよくしているポーズですね。きっと私も似合うポーズです。
(はたては念写という能力を使って、普段は自室から滅多に出ないはずだ。そのはたてが、わざわざ夕雲殿の先導役を買って出て、山中の白狼天狗どもを扇動し、私への謀反同然のスクープをでっち上げている……)
(――まさか!?)
(天狗の間で燻る権力闘争…その一環か!デマによって私の求心力を徹底的に失墜させ、白狼天狗たちの忠誠を揺るがし、一気に天狗社会の勢力図を塗り替える……。そう、これはクーデターだ……ッ!)
飯綱丸さんの鋭い眼光が、夕雲の背後で暢気に携帯電話を構えているはたてへと突き刺さります。対するはたては、「あ、目線ありがとうございまーす」と言ってシャッター音を響かせています。…案外、天狗社会ってフランクなんですね。文から時折聞く愚痴の限り、かなりの縦社会だと思っていたのですが。
「……恐れ入りましたよ、夕雲殿。そして、はたて」
飯綱丸はギリッと奥歯を鳴らし、苦々しく吐き捨てました。
「下らない痴情のもつれに見せかけて、私の足元を揺るがす情報戦を仕掛けてくるとはね。……ですが、この大天狗の首、そう安々とくれてやるつもりはありませんよ!」
「はい?」
「とはいえ、私が追い詰められているのも確か。ここはひとつ、幻想郷の流儀に則って、弾幕ごっこで勝負をつけましょう」
「「???」」
私とはたては顔を見合わせ、同時に小さく首を傾げました。
なんかよく分かりませんが、弾幕ごっこで勝てば全てが丸く収まるようです。
「……よく分かりませんが、つまり私が勝てば、(千亦さんから)大人しく身を引いてくださるということですね?」
「――えぇ、
飯綱丸はどこからともなく取り出した三脚を振り抜き、殺気混じりの突風で周囲の紅い雪を巻き上げました。その表情は絶対に負けられない矜持と覚悟に満ちています。
なんという気力!
まさか、ここまでの覚悟を持っているとは。
「わかりました。では、早速始めましょうか」
「提案を受けてくれて感謝する。だが夕雲殿、後悔するなよ。この山で私を本気にさせた代償は高くつくぞ!」
飯綱丸が三脚の石突を大地に突き立てると、重々しい金属音が雪山に反響しました。
吹き荒れる突風が、紅い雪を円を描くように薙ぎ払います。
直後、真昼の空が急速にその光を失い始めました。山を覆っていた白霧とくすんだ紅色の空が、まるで墨を流し込んだかのように漆黒へと染め変えられていきます。
彼女の能力――『星空を操る程度の能力』。
天頂に現れたのは、息を呑むほどに冷徹で美しい星々の海。
無数の星が瞬き、それぞれが恐ろしい密度の神気と弾幕の輝きを宿しながら、飯綱丸の掲げた三脚の切っ先へと収束していきます。星座を象る光の線が夜空に幾何学的な模様を編み上げ、天と地を繋ぐ巨大な天文盤が戦場そのものを支配しました。
「天に座す星々は私の盤上、降り注ぐ光は我が一手! 天狗の頂がどれほどの高みか、その身に刻むがいい!」
その言葉と共に、私は挿していた髪から月飾りを抜き、言葉を返します。
指が触れた瞬間、封じられた神格の端が淡い銀色の燐光となって滲み出します。
星とは、天に散る無数の神々の瞬き。
そして月とは、その神々の光を統べるもの。
その双方が揃って初めて、世界は完全なる『夜』を迎えるのです。
「太古より、太陽が沈み、人ならざるものが跋扈する夜は――すべて
―――激突。
数千発に及ぶ星々の乱舞と、それらを飲み込み回転させ続ける銀色の嵐。
激しい閃光と轟音が妖怪の山を震わせること数十分――。
…滅茶苦茶強かったです。
私が今まで戦った人妖でも十指に迫る、そんな激闘を繰り広げました。
彼女が操る星々の弾幕は、単に美しいだけでなく、一筋一筋が緻密に計算された盤上の詰み手のように私の逃げ道を塞いできました。三脚から放たれる烈風は山そのものを削り取るかのようで、一歩間違えれば私の着物もズタズタに引き裂かれていたことでしょう。
戦いの余波で巻き起こった突風に吹き飛ばされそうになりながらも、「このアングルよ!」と命がけでシャッターを切り続けていたはたての根性にも、ある種の敬意を表したいところです。
にしても、本当に驚きましたね。ぶっちゃけ、そこらの鬼なんかよりも飯綱丸さんはずっと強かった気がします。これが彼女の恋慕がなせる業なのでしょうか。
「流石だよ、夕雲殿。私の負けだ。約束通り、私は身を引こう」
(
飯綱丸さんは疲労困憊の様子でふらふらと立ち上がり、どこかすっきりしたような、あるいは「後は野となれ山となれ」と言わんばかりの清々しい表情で、山奥の隠棲先へと去っていきました。
――そして、ここからが全ての悲劇、いえ、喜劇の始まりでした。
空席となった大天狗の座。
本来なら綿密な会議や儀礼を経て選出されるべき最高権力者の椅子に、私と言う後ろ盾と天狗たちを熱狂させた「ガチ恋スクープ号外」の功績を引っさげて――なんと、はたてが臨時大天狗として就任しました。
「ふっふっふ……見たか文! これが時代の寵児、新時代の大天狗・姫海棠はたて様よ!」
「なんかよく分かりませんが、はたて!私たちの時代です!!!」
突然の大出世に完全に調子に乗ったはたてと、「大天狗を擁立した影のフィクサー」気取りの私。
私たちは大天狗の屋敷にふんぞり返り、権力をこれでもかと乱用し始めました。
まず、はたては天狗の全通信網を私物化して自分の新聞を幻想郷全土に強制配備。
そして私はといえば、大天狗の権限をフル活用し、博麗神社へ「山の幸詰め合わせセット」「秋姉妹の本日の特産」などと言った食材を毎日送りつけ、鴉天狗に「今日の霊夢コーナー」を確実来ることを命じました。
当然ながら、そんなお気楽な天下が長く続くはずもありませんでした。
飯綱丸さんが一手に担っていた、天狗、河童、商人、そして地底や市場の神々とのネットワークや利害調整。引継ぎも何もなく放り出されたそれらの膨大な業務を、引きこもり気質の念写記者と、恋愛脳全開の古道具屋が処理できるはずがなかったのです。
数日と経たずに山の流通は麻痺。
河童の工場は資材不足で大爆発を起こし、白狼天狗は指示系統が狂って山中で右往左往し、市場の神・千亦さんは「契約が履行されていない」と激怒し――妖怪の山は、未曾有の異変へと突入してしまいました。
そして、はたての大天狗屋敷の扉が、ドゴォォォンッ!と凄まじい轟音と共に蹴破られました。
「――いい加減にしなさいよ、このバカーーーーッ!!!」
お祓い棒を怒りに震わせ、般若のような形相で仁王立ちしていたのは博麗の巫女・博麗霊夢その人でした。
無理ある展開でもギャグ時空なのでね!許して!東方大好き!(プライベート・ライアン)