ずっと一緒だった。
此処に来てから私が死ぬまで。
私の小さな成長も、大きな喜びも、どうしようもない悲しみも、その全てを貴女は一緒に喜び、悲しんでくれた。
夕焼けが空を茜色に染める度、
夜空にぽっかりと浮かぶ月を見上げる度、
新しい朝日が昇る度に、
私は貴女の優しい眼差しを感じていた。
春には、境内の桜の下で貴女と一緒にお弁当を広げ、
夏には、風鈴の音を聞いて、暑さから逃避し、
秋には、燃えるような紅葉を眺めながら、静かに語り合い、
冬には、しんしんと降り積もる雪景色の中で、貴女の温かさを感じた。
数えきれないほどの季節が過ぎ、その全てに貴女はいた。
初めて貴女に出会ったのは、この神社。
まだ幼かった私は、名も知らぬ大妖怪に手を引かれ、不安でいっぱいだったけど、そんな私を貴女は穏やかな眼差しで迎え入れてくれた。
それからは修行の毎日。修行は結構キツかったけど、貴女が居てくれたから頑張れた。ご飯も美味しかったしね。
初めての妖怪退治は怖かったけど、里の人たちに感謝されて、何者でも無かった私が認められたみたいで嬉しかったのを覚えている。
そんなこんなで、いつの間にか私は神社の巫女として扱われ、妖怪退治や結界の維持、果てには厄介な異変解決、いろんなことをしたわ。
…参拝客の増加だけは出来なかったけどね。だって、ここは妖怪が多すぎるわ。貴女がみんなから好かれているのはわかるけど、なんだって地獄に消えたはずの鬼やら天狗の首領、式神となった九尾の狐がひょいひょいとやってくるわけ?
そのせいで、お賽銭は空っぽ同然。挙げ句の果てには狐や狸たちにお金の化けた葉っぱが入れられる始末。貴女は笑ってたけど、本当に死活問題だったんだから!
…まぁ、みんながお裾分けしてくれたからなんとか暮らしていけたし、退屈はしなかったけど、、、こほん、話を戻して。
ねぇ、私の大切な貴女。
長い間、私の傍にいてくれて、本当にありがとう。
けどね、貴女は私とずっと一緒にいて、幸せだったかな?
時折、貴女の綺麗だけど、寂しげな横顔を見て、そう思っていたんだ。
貴女の心の中を、もっと知りたかった。
人間は、貴女にとって、あまりにも短い命を持つ生き物。
共に過ごせる時間は、ほんの一瞬で過ぎ去ってしまう。
だからこそ、貴女はいつも私たち人間の一瞬一瞬を大切に慈しんでくれた。
それでも、別れの時は必ず訪れ、その度に貴女の優しい心は、深く痛んでいた。
だからこそ、これは私にとって最後の願い…というより、我儘なような物。
もし許されるなら、私の名前を、そしてこの朽ちていく体を、貴女にあげたいの。
私の事を忘れないで欲しい…ってのもあるけど。
この体を使えば、貴女は人間として暮らす事ができる。
貴女風に言うならば、時間軸を人間と合わせる事が出来る。
私が、そして貴女が愛したこの美しい幻想郷を、貴女自身がこの体を使って、感じ取る事が出来る。
柔らかな風の音や木々のざわめき、流れる川のせせらぎ、人々の息遣い、妙な妖怪たちの温かさ、その全てをこの体で感じてほしい。
そして、いつか、私が貴女の一部として、この幻想郷のどこかで、貴女と共に在ることができたら、それ以上の幸せはないよ。
ちょっとだけ、心配なのは私の後継が見つからなかったこと。
本来なら先達の私が次代の巫女を育てあげなければならないけど…この体ではその役目は果たせそうにないわ。
後、最後に…私は貴女と一緒にいれて、幸せだったよ。
ありがとうね。私の大好きな天◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎様。
「本当に
短いので、朝の6時にも出します。