東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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サブタイトルの続きは、娘自慢です。
息抜きで書いてたら、つい楽しくなっちゃいました。


外伝 最終戦争、またの名は…

「ふむ、最初の試合はトリカブトが得点を得たという事で言いですね」

 

「…悔しいけど、賛成ね」

 

「いぇい♪一点リード」

 

 ふふ、私から一点を捥ぎ取ったとは褒めてあげましょう。ですが、ここからは私のターン。先ほどのGODとトリカブトの論評を得た私は既に学習を…いや、適応した私には負けは無いです。

 

「ふふ、ぶちのめしてあげますよ…私の親バカで」

 

「じゃあ、ルーザーからでいい?」

 

 ルーザー言うなし!あと、恥ずかしいので私の独り言には反応しないでください!

 

 

 

 

 私は咳払いを一つ。取り出した扇子で口元を隠し、余裕の笑みを浮かべます。ルーザーなどという不名誉な呼び名、名誉返上…じゃなかった汚名返上させていただきます。このルーザーの称号、受け継ぐのは……次は君だ。

 

「では、二試合目の先行は私が務めさせていただきます。トリカブト、GOD。……覚悟はよろしいですか? これは先ほどのとは次元が違います。さあ、我が娘の可愛さで息絶えるがよい!」

 

 そう言い、投影するのは霊夢が昼寝している姿です。

 

「「ッッッ……ッ!!?」」

 

 ふっ、流石は我がライバルたち。この写真のすばらしさに気づきましたか。

 

「なんちゅうもんを見せてくれたんや… なんちゅうもんを…こんな羨ましいの見たことない。いや、そやない。何十年か前にやってもらった記憶がある。羨ましい、ほんま羨ましい…とりあえず、私も後でピースにやらせようかな」

 

 なんか口調がおかしくなったトリカブト。頭に乗せてる世界(人格)が変わったのかと思いましたが、そういうわけでもなさそうです。

 

「くっ…これはルーザーとルーザーの娘だから出来る技ね。私の部下たちも普通の昼寝ならまだしも、これはなかなか出来ない。みんな恥ずかしがるし、しかも全く寝てくれないし…」

 

 もっと詳しく描写するのならば、私の膝の上で完全に安心しきり、時折、陽だまりに中てられた仔猫のように「ふにゃ……」と鼻を鳴らしては、心地よさそうに頬を私の太ももに擦り付けている霊夢。

 

 そして、ふと彼女を見下ろせば、普段は異変解決で鋭く結ばれているはずの唇が、今は無防備に少しだけ開いていて。そこから漏れ出る規則正しく、けれど微かな吐息が、私の袴をわずかに、本当にわずかに揺らしているのです。その吐息の温かさを肌で感じるたび、私は自分の胸の鼓動が早まるのを抑えられませんでした。

 

 それと、時折、夢の中で美味しいものでも食べているのか、ちいさく「むにゃ……」と口を動かしては、私の着物をぎゅっと掴み直す小さな手。その指先の力強さに、「どこにも行かないで」という無言の訴えを感じてしまって、もう、どうしようもなく愛おしさが爆発しそうになるのです。

 

 思い出したら、なんか鼻がツンとして、涙出てきましたね。いろいろありましたが、こんな幸運が私に舞い落ちるとは……本当に、本当に、本当に、生きててよかった、長生きするもんですね。

 

 ふふ、感極まって少しだけ目尻が熱くなってしまいました。私はこっそりと、誰にも気づかれないような速さでその雫を拭いました。

 

 そして、私の猛攻はまだ留まりません。

 

「二人とも、静かに!まだワタシのバトルフェイズは終了していません!!」

 

「バトルフェイズって…いや、待って」

 

 映像の中の私は、愛おしさに耐えかねたように、彼女の柔らかな前髪をそっと指先で掻き分けました。指先に触れる黒髪の感触は、まるでお日様の匂いを吸い込んだばかりの絹糸のように滑らかで温かく、幾らでも触っていたいと思うような感触でした。そして、その微かな刺激に反応したのか、霊夢はふわりと長い睫毛を震わせ、微かに寝ぼけ眼を開きました。

 

 夢の余熱に浮かされるその瞳は、潤んでいて、どこか遠くを見つめるよう。 私と視線が合うか合わないかという、現世と夢幻の境界にあるほんの一瞬の邂逅。

 

 すると、私の姿を認識した彼女の口元が、春の陽だまりが解けるように緩みま、「……ん、おかー……さん……」と吐息のような消え入りそうな声で、彼女はふふっと、世界中のどんな宝玉よりも輝かしく、そして何よりも幸せそうな微笑みを浮かべたのです。

 

 そのまま、信頼のすべてを私の膝に預けるようにして、彼女は再び深い眠りの淵へと落ちていきました。満足げに鼻を鳴らし、私の指先に自らの頬を擦り寄せるその姿は、まるで絶対的な庇護者を見つけた幼子のようで——。

 

 ——動画の私は胸を押さえて、ゆっくり倒れました。

 

 

 

 あの時は、死ぬかと思いました。もう幸せのあまり、「これで終わってもいい、だからありったけを」って気分になりましたね。まぁ、終わってたまるか!って感じですけど。

 

 さて、二人の反応は…

 

「「…………」」

 

 沈黙。完全ノックアウト。パーフェクト勝利。ぶい!です。

 

 トリカブトは、もはや自分が地獄の女神であることを忘れたかのように、魂が抜けかけた顔で膝を抱えていますし、GODもまた、震える手で自身の胸元を押さえ、不規則な呼吸を繰り返していました。

 

「ふふ、ふふふふ……! どうしました? 先ほどまでの威勢はどうしたのですか? 『客観的な記録』だの『愛情表現が薄い』だの、あれほど私を分析していた賢明な神々が、今や言葉を失って、まるで茹で上がった蛸のように真っ赤ではありませんか!」

 

 私はあえて彼女たちの顔を覗き込むようにして、煽るように勝利の凱歌を奏でます。

 

「それじゃあ・・・勝ったのはワタシです あ・・・もう一度たっぷり言わせていただきます 勝ったのは・・・ワタシです!たっぷり!」

 

 私は溢れんばかりの優越感に浸りながら、さらに畳み掛けます。

 

「今すぐその『ルーザー』という不名誉な称号を、熨斗を付けてお返ししましょう。今の私は敗北者などではない。全幻想郷で最も幸せを噛み締めた、唯一の黄泉神ならぬ、唯一の親バカなのです!」

 

「……っ、この、親バカが……ッ!ああ、もういいわよ! 認めればいいんでしょ! 二試合目は貴方の勝ちよ、完敗よ!私たちのターンは飛ばしていいわ」

 

 トリカブトがようやく絞り出した声は、敗北の悔しさと、それでも認めざるを得ない尊さへの降伏宣言でした。

 

 GODもまた、脱力したように床に座り込み、自らの長い髪をいじりながらため息をつきました。

 

「……負けたわ。夕雲、貴女の勝ち。あんな『おかあさん』なんて不意打ち、反則よ、反則……。でも、そうね……。あんな風に笑ってもらってよかったわね。前まで、あの子に会えなかったのでしょう?」

 

「ええ、何年も会えませんでしたね。その時は一試合目のように知り合いに写真や動画を撮ってもらってました。あの子たちには何度感謝を伝えても伝えきれません。そう言えば、ヘカーティアにも迷惑かけましたね。私がいない間、幻想郷を見守ってくれたんでしょう?ありがとうございます」

 

「ああ、あれね。別にいいわよ、私も好きでやってたんだから」

 

 トリカブト……いえ、ヘカーティアは、照れ隠しのように頭の上の地球を指先で回しながら、ふいと視線を逸らしました。

 

「なんだか、私まで嬉しくなってきちゃったわ」

 

「うん?なんでです?」

 

「いや、この間、私が遊びに行った時の貴女、火がない灰のように燃え尽きてた感じだったじゃない」

 

 GOD…こほん、神綺の言葉に、私は一瞬、動きを止めました。ああ、思い出したくもありませんが、確かにそんな時期もありましたね。羅万館の開店祝いの時、ひょっこりと現れた彼女が見たのは、今の私とは似ても似つかない、抜け殻のような姿だったはずです。

 

 そりゃそうです。仕方なかったとはいえ、霊夢から遠ざけられ、新しく出来た友人はなんとなくしか私の事を思えておらず、詳細な記憶を忘れてしまった状態。

 

 神綺がお祝いだと言って持ってきた魔界の銘酒も味が分からないほど、あの頃の私は弱っていました。

 

「あんな弱ってた友人が、ここまで生き生きして、私たち相手に煽れるぐらい元気にしてるのを実感すると、怒りよりも先に嬉しさとか安心感の方が大きいわ」

 

「うっ…その節は迷惑をかけましたね」

 

 私は気恥ずかしさに耐えきれず、思わず目を逸らしてしまいます。いや、まさか、私が心配を懸ける側になるとは…いや、この間の異変で物凄い人に心配を懸けちゃいましたけど。賢者仲間や霊暮たち、永遠亭はすごい駆け回ってくれましたし。

 

 こほんと咳払いし、気持ちを入れ替え、私の純粋な気持ちを二人に伝えます。

 

「ですが、見ての通りです。今の私は、あの子をこの手で抱きしめ、その温もりを確かに感じることができます。あの子の寝顔を守り、寝言一つで一喜一憂でき、霊夢たちのためにご飯を作れる……私は幸せですよ」

 

 私はニコリと笑顔でそう言うと、二人が顔を合わせて、アイコンタクトをすると、急に私にジリジリと歩み寄ります。

 

「……あら? お二人とも、急にどうしたのですか。そんなに怖い顔をして……」

 

 私が首を傾げたのも束の間。ヘカーティアと神綺は、まるで獲物を追い詰める肉食獣のような目をして、私に襲い掛かります。

 

「待って、二人とも! 何を——きゃっ!?」

 

 叫ぶ暇もありませんでした。まず神綺が、私の肩をガシッと掴んで固定すると、そのまま私の頭を自らの豊満な胸元へ引き寄せ、わしゃわしゃと髪を掻き乱し始めました。

 

「ちょっと、夕雲! あなた、そんな可愛い顔ができるなら最初からしなさいよ!燃え尽きてた頃の貴女を心配してた私の気持ちを考えなさい!よしよし、よく頑張ったわね、この親バカ黄泉神!」

 

「あわわ……ちょっと、神綺、苦しいです! 私の髪が、セットが——!」

 

「あ、ずるい神綺! 私も混ぜなさいよ! ほら夕雲、こっち向きなさい!」

 

 横から参戦したヘカーティアは、私の両頬をむぎゅっと挟み込むと、そのまま子供をあやすように頭を撫で回し始めました。彼女の指先が、容赦なく私の髪をかき乱し、整えていた後ろ髪までしっちゃかめちゃかにしていきます。

 

「まったく、あんなに煽っておいて、最後はそんな『幸せです』なんて顔するなんて……反則なのはあんたの方じゃない!怒るに怒れないわ!ほら、もっと撫でさせなさい地獄の女神が直々に、あんたのその長かった幸福を祝福してあげるわ!ほんと!おめでとう!」

 

「ひゃい、ふぁめっ……! 二人とも、止めてください! 私、多分、貴女たちよりも年上ですよ——ああっ、そこは弱いです、くすぐったい!」

 

 魔界の創造神と地獄の女神。世界を統べる二柱の神によって、私はまるで大きなぬいぐるみのようにもみくちゃにされました。普段の羅万館での店主としての威厳も、唯一の黄泉神や天地初発からの太古神としての神格も、今やどこへやら。髪はボサボサになり、丁寧な口調も崩れ、私はただ、大事でお節介な友人たちの愛ある暴挙に身を委ねるしかありません。

 

 ……まあ、たまには、こうして「あやされる側」になるのも、悪くはないのかもしれませんね。

 

 いや、なんか艶々してる友人見てると負けた気分になりますね。第二試合勝ったのは私なのに…心配や迷惑をかけた側は甘んじるしか出来ないのです。




こうして仕込んだネタ見ると、驚異の少年ジャンプ率だな。カタカナでワタシになってるのは大抵元ネタがあります。

それにしても、書いてて楽しかったなー。一晩で書けた…もといジェバンニが一晩でやってくれました。
よし、続きもがんばろ。ついでに評価やお気に入り登録してくれると嬉しいです。
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