元々一巻と途中の巻しかなかったんですよね。鈴奈庵の原作が東方時系列の後ろの方なので、鈴奈庵よりも前の話になります。…この作品はもっと時系列後から始めればよかった。
…やっと花映塚終わったもんな。まだまだ続きそうです。それこそ天空璋ぐらいまで。
あっ、今回は説明回です。
「夕雲さん、妖怪ってなんなんです?」
私は夕雲さんが持ってきた百鬼彩画異聞録を読みながら、疑問を投げかける。この書物に描かれる妖怪たちの姿は、狐や狸などの代表的な妖獣から、最近存在が確認されたと言う鬼まで、いろんな妖怪について書かれている。しかし、明らかに妖怪では無いもの、それこそ妖精などもこの妖魔本に載っているのだ。
「そうですね」
夕雲さんは、顎に手を当て、思案する様子を見せたが、それも数秒。すぐに私に説明を始めた。
「広義の意味では、妖怪とは“人外全般”を指すと言えます」
「と言うと、妖精も妖怪って言えるのですか?」
私は驚きを隠せずに尋ねた。妖精といえば、愛らしい存在という印象が強く、妖怪のように恐ろしいというイメージは持たないからだ。
「はい、妖精のみならず、幽霊や神もまた、妖怪と称する事ができます」
夕雲さんは穏やかな口調でそう答える。
「少し狭い意味となると、神霊や妖精といった存在を除外し、魔法使いや河童などの一般的に認識される妖怪を指すことになります」
私は夕雲さんの説明に耳を傾けつつ、頭の中で様々な妖怪の姿を思い描いていた。しかし、その定義の曖昧さに一層混乱してしまう。魔法使いが妖怪ならば、この店の常連でもある魔理沙さんも妖怪なのだろうか?
「霧雨魔理沙さんってご存知です?彼女も魔法使いなのですが、妖怪の区分に入るのですか?」
私は率直に疑問に思った事を夕雲さんにぶつけた。
「いえ、彼女は恐らく人間でしょう。紅魔館のパチュリーさんは妖怪としての魔法使い、時々、里で人形劇を披露するアリスは元々は人間でしたが、今は妖怪としての魔法使いです。…魔理沙さんもいずれは妖怪の側に立つ可能性も否定できませんが」
「捨虫、捨食の魔法を使っているようには見えませんしね…」とボヤくように呟いたが、私には聞き取る事ができなかった。
ふむふむ、つまり人間側の魔法使いと妖怪側の魔法使いがいるということだね。
「じゃあ、夕雲さん。人間の魔法使いが妖怪の魔法使いになる事は分かったんですけど、その逆。つまり、妖怪の魔法使いが人間の魔法使いになることってあるんですか?」
夕雲さんは目を閉じる。これは夕雲さんが考えている時によくする癖だ。
「寡聞にして聞きませんね。大抵、種族の変化は不可逆なものです。時間を戻したとしてもその者の魂までは変えられません。恐らくですが、無いと考えて良いかと」
なるほど、人間が妖怪になった場合も魂が妖怪になり、人間に戻ることはないのだろう。
「話を戻しますね」
夕雲さんは、再び私に向き直り、説明を続ける。
「先ほど言ったように広義の意味では、幻想郷に住まう人間以外の種族全てが妖怪です。少し狭い意味となると、小鈴さんが想像する天狗や付喪神などが該当します。では問題です。最も狭義の「妖怪」と言う言葉は何を意味するでしょう?
私はしばらく考え込んだが、答えを見つけるには至らない。
「…うーん。ごめんなさい、わかりません」
「謝る必要はありませんよ」と夕雲さんは私の頭を優しく撫で、答えを言う。
「正解は、“その他”としての妖怪です。」
「その他、ですか?」
私は、戸惑いを隠せずに聞き返す。
「ええ、その他です。」
夕雲さんは、例を挙げて説明してくれた。「そうですね。わかりやすく説明するならば…例えば、文々。新聞を発行してる射命丸文の種族はなんだと思います?」
「確か、鴉天狗ですよね」
阿求の家で書かれている幻想郷縁起では、彼女は鴉天狗だと言う記述があった。私の家で印刷と製本をしているのだから、当然幻想郷縁起も読んでいる。まぁ、一回しか読んでないし、大体の内容しか覚えてないけど…
「はい、正解です。では、幻想郷の賢者である八雲紫の種族は?」
「確か、幻想郷縁起ではスキマ妖怪と書いてあったような…」
「あら、幻想郷縁起を読んだ事あるんですか?それなら話は早いですね。ですが残念、不正解です。彼女がスキマ妖怪であることは確かですが、スキマ妖怪なのは彼女一人のみ。その場合は種族は妖怪となります」
合点がいった。つまり、単一の存在である妖怪には種族というものがない。その場合は種族を妖怪と言うしかないのだろう。
「なるほど、理解できました。ご説明いただき、ありがとうございました」
私は夕雲さんに丁寧に感謝の意を伝える。
夕雲さんの説明のおかげで、妖怪に関する理解が深まった。
「それにしても幻想郷縁起を読んでいるなんて感心です。縁起と百鬼彩画異聞録を読み込んでいれば、妖怪の正体や対処法を学べるので是非頑張ってくださいね」
講義がひと段落ついたので、私は夕雲さんに話しかける。
「夕雲さん、一つお願いがあるのですが…」
「お願い…ですか?」
「ええ、私の切実なお願いです」
「せ、切実な…」
少し戸惑ったように目を丸くする夕雲さん。
「私を夕雲さんの家に連れて行ってもらえませんでしょうか!」
私は夕雲さんの家に行った事がない。だが、一つ確信している事がある。それは夕雲さんの家には本、特に妖魔本がたくさんあるってことを!
それにあわよくば、気に入った本を何冊か借りたいところ…
私の熱意と懇願が伝わったのか、夕雲さんが首を縦に振る。
「わ、私の家にですか?ええ、構いませんが…」
「やった!ありがとうございます!」
私は嬉しさのあまり拳を天に突き上げ、飛び上がった。
ふふ、本や妖魔本抜きにしても、夕雲さんの家には行ってみたかったのだ。あっ、お土産は何にしよ。お酒が好きみたいだし、確か、お父さんが鯢呑亭で買ったお酒があったような…
ふぅ、小鈴ちゃんは素直で礼儀正しいからついついお願い事を聞きたくなっちゃいます。ええ、決して気迫に気押されたわけではありませんとも。
「こほん」
咳払いをして、自分の気持ちをリセットさせ、小鈴ちゃんにいつ来るか聞きます。
「それで、小鈴ちゃん。いつ私の家に来ます?その時は迎えに来ますよ」
「なるべく早く行きたいんですが、夕雲さんのご都合もあるでしょうし、今度夕雲さんが鈴奈庵に来た時の帰りに連れて行ってもらえませんか?」
そうなると大体来週ぐらいになりますがね。その事を注意事項と共に伝えます。
「それと、私の家は結構人間の里から離れているので、泊まりになると思います。大体の物は貸せると思いますが…」
「わかりました、楽しみに待っていますね!」
朗らかで眩しい太陽のような笑みを浮かべ、小鈴ちゃんは言いました。
うーむ、とっても良い笑顔。こんなの甘やかしたくなっちゃいます。
「ねぇ、夕雲」
「なんですか?紫」
「貴女、あの子を気に入ってるの?」
「あの子というと、小鈴ちゃんですよね」
「ええ、里の貸本屋の一人娘よ」
「気に入ってる…と言うより仲良くしているだけですよ。小鈴ちゃんは素直で良い子ですし」
「そうね、それは良いことだわ。けどね、夕雲」
「一つ忠告、あまりその子に入れ込みすぎないようにね」
「彼女は人間、貴女は 」
「所詮は住む世界が違うのよ」
「貴女は優しすぎる。彼女に何かあったら、傷つくのは貴女よ」
「わかってますよ、そのぐらい」
声は霞のように消えていった。
前の話とかを時々見直すのですが、読みづらい。
いつか読みやすいように訂正するかも?
ちなみに、今話で語った妖怪の定義…悪用しまくります。