東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

22 / 142
書きたい事が多いんですけど、文章が纏まりませんでした。
いつにもまして、文章がくどい。


第121季/春 紅魔館withカリスマお嬢様!

「それで、監査の結果はどうだったかしら?」

 ソファにゆったりと腰掛けたレミリアが退屈そうに問いかけます。机には先ほど私が渡したお土産の箱が置いてあり、レミリアが早速一口食べています。

 

「そうですね。咲夜から話を聞く限り、上々とまでは言いませんが、合格ですよ」

 咲夜に先程出された紅茶を一口飲みながら、そう言います。

「レミリアもフランもつつがなく過ごせているようで、何よりです」

 お茶を飲んだ私はレミリアに渡したお土産に手を伸ばし、饅頭を食べようとしますが、レミリアに軽く叩かれます。

 

「もうすぐ咲夜がケーキ持ってくるから、貴女はそれを食べなさい。饅頭は私のものよ」

 レミリアがそう言った瞬間、部屋がノックされ、咲夜が丁寧にデコレーションされたタルトケーキを持ってきてくれました。

 …ケーキって、急に用意できるものでしたっけ?

 

 

 

「それで、咲夜にも聞いたのですが、最近どうです?」

「そうねぇ、貴女が今日見た通り、これがいつもの紅魔館の日常よ」

「へぇ、いつもは咲夜に仕事を押し付けているのに、私が来た時だけ応接間で作業中とは…レミリア、貴女、私が今日来ることを見てましたね?」

「さぁね?たまたま、偶然だわ」

 白々しい。彼女の「運命を操る程度の能力」の詳細は不明ですが、紫曰く、未来予知や自分にとって都合の良い流れを引き寄せる程度のことはできるとののこと。私が雨の日に監査に来ることを予知し、事前に咲夜にケーキを用意させていたとしても不思議ではありません。

 これでは抜き打ちの意味が薄れてしまいますね。他の住民の日常はともかく、レミリアの素の姿を見るのは難しいようです。

 

 

「まぁ、それは良いでしょう。本題に入ります。レミリア、貴女は今、幸せですか?」

 ふふ、まるで信仰を押し付ける狂信者のような問いかけだと、自分でも思い、笑ってしまいます。

 

 

「幸せ、ねぇ」

 レミリアは赤い瞳を天井に向け、小さく呟きました。

「それがどういう状態なのか、いまいちピンと来ないけれど」

「貴女にとっての幸せはどのようなものでしょうか?」

 私は穏やかな口調で問いかけながら、ふと自問します。

 

(私にとっての幸せとは何でしょう?)

 

 レミリアは少し考え込むように腕を組みます。

「そうね…退屈しないことかしら。面白いことがたくさんあって、皆でくだらないことで笑い合えたら、きっと幸せね…まあ、今もそんな毎日を送っているつもりよ」

 

「なるほど、貴女はそのような考えなのですね」

 私は小さく頷きます。

「それと、姉である貴女から見て、妹の方はどのように過ごされているように見えます?」

 

「あの子は…楽しければそれでいいのよ、退屈さえしなければね。最近は基本的にはご機嫌だわ。館の中で色々なものを見つけてはしゃいでいるし、たまには外の世界の友人とこっそり遊んでいるみたいだしね」

 レミリアの声には、姉としての優しい響きが自然と滲み出ます。姉妹仲は良好なようで、安心しました。

 

「そうですか。お二方とも、それぞれの形で穏やかな日々を送られているご様子、何よりです」

 私はそう言って、静かに目を閉じます。この静寂の中で、微かに聞こえる館の生活音に耳を澄ませば、確かに穏やかな時間が流れているのを感じます。

 目を開けると、レミリアは私の様子をじっと見つめていました。警戒の色を完全に解いているわけではないでしょうが、初めて会った頃のような鋭い敵意はもう感じられません。

 

 レミリアは紅茶を一口飲み、カップを机に置きます。

「あなたって、本当に不思議な奴ね。私たちのことをこんなに気にかけるなんて」

 私はフォークでケーキを一口食べ、その甘さが口の中に広がるのを感じながら、レミリアに答えます。

「貴女の養父との約束ですから。子を思う親の気持ちは、痛いほどよくわかるつもりです」

 

その言葉に、レミリアの表情がほんの僅かに揺らぎました。

「…お父様の?」

 

「ええ、貴女もご存知でしょう。彼の最期の時、私に『私の娘たちが幸せになるまで見守ってやってくれ』と頼んだことを。それが私が今こうして、紅魔館に足を運ぶ理由のきっかけですよ」

 

 レミリアはしばらく沈黙し、それから自嘲気味に小さく笑いました。

「勿論、何度もその話は聞いているわ。何回聞いても信じられないけれどね。自分を殺した相手にそんなことを頼むなんて…全く、あの人も何を考えていたのかしら」

 

「彼なりに、貴女たちのことを深く案じていたんですよ」

 ただ事実を述べるような静けさと共に、「わかってるでしょう?」とレミリアを少し叱るような私の声音が部屋に響き渡ります。

「私も、私なりに、彼の遺言を尊重したいと考えていますよ。彼は私にとって同志みたいなものですし」

 そう言い、私はケーキを食べるのを再開しました。

 

「約束のためにも。貴女達姉妹が、閉じた世界でただ生きるだけでなく、外の世界との関わりを持つことも大事ですからね。貴女達を外に出す事ができて、幸いでした」

「…別に、あなたがそこまで気を遣わなくても、私たちはそれなりに上手くやっているわ」

 レミリアは顔をムッとさせて、少しだけ語気を強めましたが、その言葉には以前のような強い拒絶の響きはありません。

 当然でしょう。私は彼女の養父からの最後の贈り物。そうそう無下にする事はできないでしょうね、彼女の養父と彼女を繋ぐ楔みたいなものです。

 

「わかってますよ。貴女と貴女の家族ならば、この幻想郷でこれからも強く生きていかれるでしょう。ただ、私は見守り、万が一の時に手助けするだけです。精々、私の助けなど必要としないくらい、幸せに過ごしてくださいね」

 

 私が揶揄うようにそう言うと、レミリアは小さく息をつき、饅頭を手に取り、言葉を続けます。

「まあ、気が向いたら、また来ればいいんじゃない?勿論、歓迎するわ。ただし、次は正面から正々堂々と入ってきてね」

 

 レミリアのお願いを無視して、私は穏やかに微笑みます。ノーコメントとも言う。

「それでは、本日はこれで失礼いたしますね」

「貴女たちの世界が広がりが、新たな喜びを生むきっかけになることを私は願ってますよ」

 

 

 

 私は立ち上がり、応接間の扉へと向かい、扉を開けます。その際、閉める時に一瞬だけレミリアの赤い瞳と目が合いました。その瞳には警戒の色と共に、ほんの僅かな、本当に微かな親愛のような光が宿っているような気がしますが…それは私の願望がそう見せているだけかもしれません、そう錯覚です。私がそんな目を向けられる資格はないのですから。

 

 私は扉を静かに閉め、廊下のひんやりとした空気を吸い込みます。窓の外には雨上がりの柔らかな日差しが差し込み、庭園の木々や花を鮮やかに照らしていました。

 あの姉妹の未来にもこの光のような温かさが降り注ぐことを、私は静かに願います。

 

 さて、次はフランに会いに行きましょう。最近、友人が出来たと聞いていますし、彼女の変化が楽しみです。

 

 …でも、普通にフランがいる地下室の行き方わかりませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ふぅ…やっと夕雲が行ったわね)

 

 夕雲が扉の向こうに消えた途端、私は張り詰めていた空気が緩むのを感じる。あの何考えてるかわからない瞳に見つめられていると、まるで全てを見透かされているようでどうにも落ち着かないわ。別にやましいことなんて何もないのだけれど…

 

 机に残った半分以上減った饅頭を手に取る。あんな得体の知れない存在が持ってきたお菓子は、美味しくも何ともないはずなのに、ついつい手が伸びてしまうのは何故かしら?

 

(「貴女の養父の約束ですからね。子を思う親の気持ちは私にもわかりますから」…)

 

 夕雲の言葉が脳裏で繰り返される。あの胡散臭い何かが、まさか本当に亡くなった義父の遺言を守っているだなんて。しかも年に一度は私との契約でこうしてやってくる。全くもって理解できない。あの人(お父様)は何を考えていたのかしら。

 

 

 

 私たち吸血鬼は、幻想郷にやってきた時に大きな異変を起こした。

 吸血鬼異変。

 その首謀者は、他でもない私の義父だった。

 強大な力で幻想郷を支配しようとしたけれど、結局は住人たちの抵抗に遭い、幻想郷で最も力を持った妖怪たちに紅魔館は敗北した。その結果、吸血鬼は危険分子と見なされ、首謀者の娘である私とフランは紅魔館の外に出る事を禁じられた。

 

 館の中だけの生活は退屈だったわ。

 

 広い屋敷ではあるけれど、見える景色はいつも同じ。閉ざされた世界は私たち姉妹の心を少しずつ蝕ばんでいく。私たちの自由を奪われたまま、時だけが過ぎていった。外からの刺激は時々やってくる夕雲だけ、彼女は一年に一回やってくる契約だったのに、一ヶ月に一度は顔を見せに来てたわね。

 

 そんな閉塞感を打ち破ったのが、ついこの間の私たちが起こした異変だった。

 紅霧異変。

 私たちは八雲紫の要請により、幻想郷を紅い霧が覆い、太陽の光を遮断した。 

 幻想郷側はスペルカードルール制定から初めての異変解決として、実例を作り、私たちは報酬として、紅魔館の外に出て、幻想郷を自由に歩き回る許可を得た。

 けれど、今思えばあの異変の裏には、夕雲の影があったのかもしれない。

 以前から違和感はあったのだ。

 幻想郷側はわざわざスペルカードルールを用いた異変解決のデモンストレーションとして、危険因子である吸血鬼の私たちを使う理由がない。この幻想郷には多くの妖怪がいる、賢者子飼いの妖怪に茶番の異変を起こせば、事足りる。 

 

(「そのためにも、閉じた世界でただ生きるだけでなく、外の世界との関わりを持つことも大事ですからね、貴女達を外に出す事ができて幸いでした」)

 夕雲の言葉が再び蘇る。

 

「出す事が“できて”って言ってたのよねぇ」

 もしや夕雲は幻想郷の賢者、八雲紫に掛け合い、私たちに異変を起こす遠因だというのかしら?

 お父様の起こした吸血鬼異変によって外に出ることを禁じられた私たちに、紅霧異変という形で、外の世界との繋がりを与えるために?

 これは妄想だが、不思議と私はこの考えは合っていると確信していた。

 なんだって、夕雲はこういう爪が甘いところが多いから。

 

 結果として、あの紅霧異変は私たちに新しい出会いをもたらした。博麗の巫女、白黒の魔法使い、氷の妖精、そして様々な妖怪たち。

 吸血鬼異変以来、孤立していた私たちの周りに、新しい繋がりが広がったのは確か。外の世界を知り、様々な価値観に触れることで、私たちの世界は確かに広がったわ。

 

(私たちの世界を広げ、新たな喜びを生むきっかけ…ね)

 

 夕雲の言葉を再び反芻する。

 私たちの行動の裏で、こんなにも複雑な思惑が渦巻いていたとは。私たちの犯した過ちによって閉ざされた私たちの世界を、あいつは救おうとしていたのかしら。

 

 ただ一つ言えるのは、夕雲が私たち姉妹のことを全くの他人事として見ていないということだけ。彼女の行動の理由は未だによく理解できないけれど、その結果として、私たちの今の生活が吸血鬼異変の頃よりもずっと彩り豊かになったのは紛れもない事実なのだから。

 

 

 私は残りの饅頭を口に放り込んだ。味はよくわからない。ただ、夕雲が、次にどんな顔をしてやってくるのか、そして、その裏でどんなことを考えているのか、少しだけ興味があるのもまた事実。

 

 今度はもう少し歓迎してやろう。

 

 

「あっ、レミリア。よく考えたら地下室の行き方わからないので、咲夜を呼んで下さい!」

「そんぐらい自分で探しなさいよ!」

 思わず、ベルをぶん投げてしまった。

 

 ちょっと見直したら、すぐこれなんだから!




華扇に語った内容の回収と深掘りです。
フランと幕間を挟んだら、少し物語が進みます。

高評価よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。