東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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自分、なるべく原作に沿って書こうとしてるんですけど、フランの教養の高さと話の通じなさを再現できる気がしない

まぁ、それはそれとして、お気に入り登録や評価がちょくちょく増えて、儂、とってもハッピー!

感謝です!!!


第121季/春 紅魔館with狂気の箱入り娘

 レミリアに咲夜を呼んでもらい、地下室に案内してもらいます。私は幾多の廊下を越え、階段を下り、図書館を抜け、ようやく地下室に着きました。

 

「夕雲様、フラン様はここにいます。それでは私は失礼しますね」

 その言葉を最後に咲夜は能力を使って、この場から去ってしまいました。折角なら、顔を見せるぐらいすれば良いのに…まぁいいです。

 

 地下室の重厚な扉が独りでに開き、ひんやりとした冷たい空気が私の頬を撫でます。

 扉の後ろからひょっこと顔を出すのは、薄い金髪をサイドテールにまとめ、血のような赤い瞳を持つ少女の形をした吸血鬼。

 フランドール・スカーレットです。

 

 私の姿を確認したフランは手を招き、私を地下室に誘います。

 

「久しぶりだね、夕雲。足跡が二つ聞こえてたから誰かと思ってたんだ」

「久しぶりですね、フラン。元気にして…たようですね」

 地下室には手足の千切れた人形や散乱した本が至る所に見当たります。部屋の状態からして変わりないようです。まぁ、逆に部屋が埃一つ見つからないほど綺麗だと、何があったのかフランを心配しますけど…

 

「もう一人は?」

「咲夜ですよ。私を案内した後は何処かに行きました」

「ふーん」

 と興味がない声音を出すフラン。こういうところはレミリアと本当によく似ています。

 

「まぁ、いいや。それで?今日は何をして遊ぶの?」

「そうですね。じゃあ、今日は『Two Truths and a Lie』でもしましょうか」

 フランと会うときはいつも何らかの遊びをします。今回は遊びをしながら、彼女の監査をしましょう。前回はおままごとでしたっけ?

「あら、二つの真実と一つの嘘を吐くゲームね。ねぇ、嘘は一つじゃなきゃダメ?」

「そうですね…今回は幾らでも嘘をついてもいいですよ。但し、私の質問にはちゃんと答えてもらいます」

 私は地下室の人形を集めながら、フランに答えます。後ろからトコトコと付いてくるフランにも掃除の手伝いをしてもらいたいものです。

 

「それで、フラン。最近どうです?何か面白いことありましたか?」

 ある程度人形を集めた私は、フランの許可を得て、ベットに腰掛けます。すると、フランもベットに横たわりました。それにしても、いつ見てもベットの上に棺が乗っているのは目に慣れません。

 

「…そうね、私はいつも通りよ。夕雲が去年の睦月に来た時と何も変わってないわ」

「ダウトです。レミリアから聞きましたが、紅魔異変から何度かは外に出て、友達と遊んだり、博麗神社に言ってると聞きました。去年のフランとは全然違いますよ」

「あいつ…」

 私がそう指摘すると、フランが頬をぷくーと膨らませ、不満気な顔をします。

 

「レミリアお姉様は勝手よ。私から夕雲に伝えたかったのに」

 あら、嬉しい事を言ってくれますね。フグのように膨らんだフランの頬を突きながら私は言います。

「ふふ、フランの口から直接聞きたいんですよ。それで、外に出て何か面白かったことはありましたか?」

「そうねぇ…そうそう!私、初めて人間を見たの!」

「人間…ですか?」

「うん、人間。今まで咲夜にケーキや紅茶に加工された姿でしか見たことなかったからね」

「フラン、私も人間ですよ」

「ダウト!ねぇ、夕雲。普通の人は壊されても元に戻らないんだよ?ほら、きゅっとして!ドッカーン!」

 フランの能力が発動する前に、私は彼女の右手を握ります。

 彼女の能力は「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」

 対象の最も弱い箇所を自分の手のひらに移動させ、握り潰す事で、破壊する力です。ですが、その発動までに弱い箇所を確認、手のひらに移動、握り潰すと工程が多いため、近距離ならば案外防ぐ事も容易いです。

 

「あら、残念。防がれちゃった。けどね、夕雲。人間は吸血鬼に勝てないんだよ、人間が手を塞いでも私はそのまま握りつぶすだけだわ」

 フランが何かごちゃごちゃ言ってますが、危ないことをしたからには叱らなければなりません。あれ、当たるととても痛いんですよ。

 

「フラン、その能力を人に使っちゃいけないって私、言いましたよね」

「えっ?…確かに言ってたけど」

「悪い事をする子にはお仕置きです!」

 そう言いながら、私はフランのほっぺたをこねくりまわし、引き伸ばしたりして遊びます。

「んー…ゆーぐも、いーたい、いーたいよぉ…」

頬を引っ張られているせいで、言葉が少しばかり舌足らずになっています。

「もー、やめてよぉ…お顔が、びよーんってなっちゃう…」

 涙目になりながら、そう訴えかけてくるフラン。普段は強気なフランも、こうされるのは苦手なのかもしれませんね。

「もうやりませんか?」

「やらぁない」

 その言葉を聞いて満足した私はフランの頬を離します。

 かなり痛かったのか、フランは頬を摩ってます。それに頬が赤くなっていますね、やりすぎてしまいましたか…吸血鬼ならすぐ治ると思いますが、流石に良心が痛みます。

 

「ごめんなさい、フラン。やり過ぎてしまいました」

 私は能力を使い、フランの頬を摘む前に戻します。

「もう大丈夫ですか?」

私がそう尋ねると、フランはまだ少し不満そうな表情で頬をさすっています。

「…べつに。でも、夕雲も酷いことするんだね」

「それはフランがあまりにも危ないことをしようとしたからです。貴女の能力は決して、人に使ってはいけませんよ」

 私は少しばかり語気を強めてそう言いました。

 フランはむう、と唇を尖らせましたが、私の真剣な眼差しを感じ取ったのか、それ以上は何も言いませんでした。

 

「…わかった」

小さく呟いたその声には、いつものような元気はありません。少しばかり反省しているのかもしれませんね。

 

「それじゃあ、お菓子でも食べましょうか」

 私はお土産のどら焼きを取り出し、フランに渡します。

「はい、夕雲」

 フランはどら焼きを半分に分けて、片方を私に渡します。

「ありがとうございますね。フラン」

 

 お菓子を食べながら、私たちはゲームを再開します。 

「それで、フラン。レミリアから聞きましたが、どんな友人ができたんですか?」

「えっと、霊夢と魔理沙、チルノにルーミアでしょ。後は…こいしって子とも遊んだわ!」

「いろんな子と遊んだんですね」

 とフランを膝に乗せ、頭を撫でながら私は言います。

「それで、何をして遊んだんです?」

「霊夢と魔理沙は弾幕ごっこ!チルノとルーミアは霧の湖を凍らせて、スケートをしたよ。こいしちゃんとはかくれんぼ!」

 …なんだか感慨深い気持ちになりますね。あんなに引きこもっていたフランがこうして友達と楽しそうに遊んでいるなんて。

 

「弾幕ごっこですか。それはまた激しい遊びですね。楽しかったですか?」

「うん、負けちゃったけど、楽しかったわ!まさか人間に負けるとは思ってなかった!」

「スケートも楽しそうですね!でも、風邪をひいたり転んだりしませんでしたか?」

「大丈夫!チルノが氷を冷たくしすぎないようにしてくれたし、ルーミアは飛んで、私を支えてサポートしてくれたわ!」

 フランと友達との温かい触れ合いが目に浮かびますね、いい事です。

 

「こいしちゃんとのかくれんぼはどうでしたか?彼女は少し変わった能力を持っていますが…」

 私がそう尋ねると、フランは少し考えて、首を傾げました。

「こいしちゃんはね、どこに隠れているか全然わからなかった!気配が全然しないの。でも、たまにフッと近くに現れて、びっくりさせられるんだ。あれはあれで、すごく面白かった!」

 なるほど、こいしちゃんらしい遊び方ですね。彼女たちが遊んでいる様子が目に浮かぶようです。

 

「そうですか。色々な友達ができて、色々な遊びをして、本当に充実した時間を過ごしているんですね、フラン」

私はそう言って、フランの頭を優しく撫でました。彼女の赤い瞳はキラキラと輝いて、楽しかった思い出を物語っているようです。

 

 

「フラン、貴女は今幸せですか?」

 ゴロゴロと猫が喉を鳴らしているようなフランに私は問いかけます。

 

 すると、フランは私が十年間見たことのないような満面の笑みで私に告げます。

 

「うん、私、今とっても幸せだよ!」

 

「それは良かったです」

 

 …契約は完了ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 夕雲。貴女と会ってから結構長い時間が経ったね。

 495年も地下室に引き篭もっていた私にとって、貴女は外の世界の匂いを運んでくるよくわからない人だった。

 目を使って破壊しても、髪の毛が光って時計の針が逆回転したかのように元に戻るし、爪で引っ掻いても、首筋を噛み付いても全く手応えがなくて、正直怖かった。

 

 けど、すぐにそうじゃないってわかったわ。

 

 だって、夕雲はいつも私の目を見て、ちゃんと話を聞いてくれるんだもん。

 レミリアお姉様や咲夜は私が退屈しないように色々してくれるけど、貴女は違う。私の気持ちとか、考えていることを知ろうとして、共感しようとしてくれる。

 私、嬉しかったんだよ。今まで気が触れているとか、情緒不安定だとか言われて、私を理解しようとしてくれる人はいなかった。けどね、夕雲だけは私と一緒の視座を共有しようとしてくれた、私の考えを理解して、合わせようとしてくれた。

 それに、私が危ないことをしても頭ごなしに怒るんじゃなくて、ちゃんと理由を説明してくれる。今回だって、私の頬を引っ張ったりしたけど、それは私が悪いことをしたからだってわかってる。すぐに元に戻してくれたしね。

 外の世界の話をしてくれたのも夕雲だったね。人間の里や夕雲が経営してるお店にやってくるお客さんのこと。本だけじゃわからない、私の知らないキラキラとした世界のことを夕雲は教えてくれる。

 

 夕雲が膝に乗せて頭を撫でてくれる時はなんだかとっても落ち着くんだよね。あったかくて、優しい手のひら。まるで、ずっと昔から知っていたような、そんな不思議な気持ちになる。ずっと前に死んじゃったお母さんみたいに暖かい。

 

 最後に「貴女は今幸せですか?」って聞いてくれた時、ドキッとした。

 だって、本当にそう思ってたから。

 色々な友達ができて、色々な場所に行って、色々なことを知って。今の私はあの頃の閉じこもっていた私とは全然違う。

 

だから、迷わず言ったんだ。「うん、私、今とっても幸せだよ!」って。

 

 夕雲が「それは良かったです」って微笑んでくれた時、私もすごく嬉しかった。夕雲も私の幸せを願ってくれているんだなって思えたから。

 

 だからね、少し不安なの。

 夕雲の最後の表情、笑ってたけど目の奥底は悲しんでいるように見えた。

 ねぇ、夕雲。私、幸せだよ。

 けどね、夕雲は幸せなの?




彼と彼女の共通点は親バカ。
彼は命を懸けて娘の幸せを願い、彼女は最後まで見守った。
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