東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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小鈴ちゃんを羅万館に招待するのを忘れてて、急遽入れました。
永遠亭行くフラグもあるのに、管理が杜撰だぜ!

…一番気に入ってる前話のUAが少なくて困惑してる。上手く書けなかった咲夜さん回はなんかUA増えてるし…キャラ人気かな?わかんねー


第121季/夏 羅万館with妖魔本大好き少女③

 さて、今日は初めて、小鈴ちゃんを羅万館に招待する日ですね。

 先日の鈴奈庵でのやり取りから数日が経ちました。

 あの後、紫からの忠告が頭の片隅に引っかかってはいたものの、今の私は人間、これからの事は未来の私に託すことにします。人間は辛い事を先送りにするって聞きますしね、頼みましたよ、未来の私。

 

 話を戻して、先ほど述べたように今日は私が鈴奈庵まで迎えに行く約束の日。少し早めに家を出て、手土産にいくつか珍しいお菓子を用意します。羅万館は人間の里からは少し離れているので、小鈴ちゃんが一人で来るにはまだ心許なく、私がこうして迎えに行きます。手土産は鈴奈庵で小鈴ちゃんと働いている御両親方に渡そうと思います。

 

 鈴奈庵に到着すると、小鈴ちゃんは既に外で待っていました。いつものように明るい笑顔で、「師匠!」と駆け寄ってきます。

 

「おはようございます、小鈴ちゃん」

「ええ、師匠もおはようございます!」

「ふふ、今日は元気がいいですね。ちゃんと眠れましたか?」

 

 私がそう聞くと、小鈴ちゃんは少し緊張した面持ちながらも、期待に満ちた瞳で私を見つめ返し、「はい、昨日はなんとか眠ることができました」と言いました。

 

 小鈴ちゃんの両親に手土産を渡した後、私たちは早速、羅万館に足を運びます。

 人間の里から羅万館までは、ゆっくりと歩いて一時間ほどの道のりです。道中では、小鈴ちゃんが読んでいる妖魔本の話や妖魔本に封印されている妖怪の話をしながら、私たちは歩きました。

 小鈴ちゃんは、私の話に目を輝かせながら熱心に耳を傾け、時折「それってどの妖魔本に載っていますか?」と質問してくる様子は、本当に妖魔本が好きなのだと感じさせます。

 

 羅万館に近づくにつれて、小鈴ちゃんの足取りが少し早くなったように見えました。門をくぐり、庭を通って玄関にたどり着くと、彼女は目を丸くして辺りを見回しています。

 

「あれ?妖魔本は?」

「一応、羅万館はお店ですからね。本は別の部屋に置いてありますよ」

「えっ?師匠のお家ってお店だったんですか?」

「えっ?知らなかったんですか…」

 お互いに見つめ合う私たち。小鈴ちゃんは信じられないといった表情で私を見つめ、私はどこか拍子抜けしたような顔で小鈴ちゃんを見つめます。

 しばらく見つめあった後、なんだか堪えきれなくなって、私たちは吹き出しました。

「小鈴ちゃん、私がどうやって生活してると思ってたんですか?」

「ふふ、それはその…隠遁生活や不労所得みたいな感じですよ」

「そんなわけ……ないで、、、」

 よくよく考えたらそこまで間違ってませんね。羅万館の売り上げは微々たるものですし…大抵、貯金を切り崩しています。

 

「こほん。話を戻して、、、いらっしゃい、羅万館へ、小鈴ちゃんの事を歓迎しますよ」

 

 カウンターを通り過ぎ、書斎に向かいます。前日に、小鈴ちゃんがまだ読むには早い妖魔本は、別室に隔離しているので、書斎のはほとんどは読めるはずです。

 

「どうぞ、遠慮なく入ってください。少し散らかっていますが」

 私はそう言って、書斎の扉を開くと、小鈴ちゃんは目を大きく見開きます。壁一面を埋め尽くす書架、積み上げられた古書、そして独特のインクと紙の匂い。それは小鈴ちゃんにとってまさに楽園のような光景だったでしょう。

 

「こ、これが全部、師匠の本ですか……?」

 

 彼女の声は、わずかに震えていました。

 

「ええ、まあ、長年かけて集めたものですから。今日はゆっくりと見ていってください。何か気になる本があれば、遠慮なく言ってくださいね」

 

 私の言葉に、小鈴ちゃんは何度も頷き、すぐにでも書架に駆け寄りたそうな様子でしたが、まずは台所から持ってきたお菓子を彼女に勧めました。

 

「少し歩いて疲れたでしょう?まずはお茶でも飲みながらゆっくりしてください。これは、この間友人に貰った珍しい外の世界のお菓子ですよ」

 

 小鈴ちゃんは、少し照れたように「ありがとうございます」と言いながら、お菓子を手に取りました。

 

「無作為に読みふけるのも良いですが、目的を持って読んだ方が良いですよ。何か読みたいテーマはありますか?」

「はい!私、この間夕雲さんに貸してもらった異聞ホツマツタエみたいな神話に関する本を読みたいです」

「…となると、この辺りですかね」

 私は何冊かの本を取り出し、小鈴ちゃんに渡します。小鈴ちゃんはペラペラと紙を捲り、ふむふむと頷き、早速読み始めました。

 

 そして、読んでから数分もしないうちに、小鈴ちゃんが私に問いかけます。

 

「やはり、外の世界での日本神話では『死』がいつから来たか書いてないのですね。それに比べて、幻想郷で書かれた日本神話では『死』の出自が明確です」

「…」

「これも何か理由があるのですか?」

 彼女は顔を上げ、真剣な眼差しで私に問いかけます。私は分かりやすく順序立てて説明するためにも、頭を「回し」ます。

「そうですね、小鈴ちゃん。人間が最も忌み嫌う物って何だと思います?」

「それは、やはり…死でしょうか?」

「はい、その通りです。『死』は恐ろしいものですからね、人間は『死』とその出自を忘れたのです。ですが、幻想郷は…」

「忘れられた物、幻想となった物が幻想郷に流れ込む!」

 小鈴ちゃんは、私の言葉を引き継ぎ、 立ち上がりながら大きな声を上げます。

「正解です」

 やはり、小鈴ちゃんは頭の回転が早いです、一つのヒントを教えれば、10とは言わずとも7や8程度には察してくれます。

 

「まぁ、『死』が早々にシステムを作り終え、隠れたのが良くなかったのでしょう。国産み・神産みの際に現れたとは言え、幻想郷の神話ではその程度しか書かれていません。正直、忘れられて当然と言ったところです」

 私は先程、小鈴ちゃんに渡した本から無造作に一冊取り、表紙をなぞりながら言います。

「ふむふむ」

 小鈴ちゃんは真剣な様子で、私の言葉に聞き入ってますね。一言も私の言葉を聞き逃さん!とばかり、鬼気迫る様子です。

 

「忘れられた『死』ですが、世界の構築において殊更重大な役目があります。何かわかりますか?」

 私は少し間を置いて、彼女の思考を促します。小鈴ちゃんは、小さく顎に手を当て、目を瞑って考え込み、書斎に漂う古臭い紙とインクの匂いだけが、私たちの五感を刺激します。

 

「そうですね…うーん、世代交代ですか?」

 しばらく考え込んだ小鈴ちゃんは目を開けて、自分の考えを伝えます。まさか1番難しい答えを言うとは…普段から本を読んでいるからでしょうか?

「完璧、花丸満点です。『死』は伊奘諾・伊奘冉(イザナギ イザナミ)の時代から三貴子たちの時代の移り変わりの要因でもあります。イザナミの死から逃げたイザナギが穢れを祓い、三貴子の誕生に繋がりましたからね。つまり、『死』は停滞を打ち消し、世界を撹乱する意味があります」

 小鈴ちゃんは私の言葉を反芻するように深く頷き、その瞳には深い理解の色が宿っています。

 

「それ以外にも『死』には色んな意味があるんですよ。『死』が無ければ、世界には生物で溢れ、リソースが食い尽くされてしまいます」

 小鈴ちゃんは、うんうんと頷き、メモを取っています。あら感心。

 

「生と死は紙一重、一種の循環です。例えば、植物。種が土に落ち、芽を出し、成長して花を咲かせ、やがて枯れて土に還ります。その枯れた植物は土壌を豊かにし、新たな種を育むための栄養となり新たな生命を生む。動物も似たようなものです。命を終えた動物は他の生物の食物となったり、分解されて土に還るなどして、生態系を支える一部となる…この辺りからは科学の話に片足突っ込みますが…」

 長々と話した後に、小鈴ちゃんを見ると、頭をクラクラと揺らし、煙を出しています。少し、話が難しすぎたかもですかね。

 

「休憩しましょう」

 パンと手を叩き、一度話を終えます。一度勉強した後には、甘いものを補給するのが大事です。紫から貰ったチョコでも出しますか。

 

 

 休憩をし、小鈴ちゃんが本を読み漁った後、ご飯を食べて。私たちは就寝するための準備を行い、灯を消し、床に就きます。

 布団の中に入った小鈴ちゃんは、今日の事を思い出しながら、復習を兼ねて、私とおしゃべりをしています。

 

「それにしても、やっぱり不思議です。こんなに重大な神様なのに外の世界では忘れられているなんて…」

「先程は言っていませんでしたが、『死』が忘れられた弊害で、システムが一度壊れてしまったんです」

 

 小鈴ちゃんはガバッと、体を起こして私に問い詰めます。

「…どういうことです!?死んだ者が生き返ったりしたんですか?」

「惜しいですね。正解は死ななくなったんです。システムには穢れを回収する機構があったんです。『死』を忘れ、死を恐れた人たちは集まった穢れを浄化しようと、爆弾を落としました。その結果、システムが壊れ、穢れを回収できず、生と死の狭間の状態になりました」

 

 暗闇の中、小鈴ちゃんが顎に手を当てているシルエットが浮かび上がります。

「確か…穢れがあるから、生物には寿命があるんですよね?」

 私は頷き、答えます。

「ええ、合っていますよ。生物が生まれ、生き、死ぬ事で穢れは生まれます」

 その後に、私は自分の推測を語ります。

「当時の人たちは、穢れさえ消せば、不老不死になるとでも思ったんでしょうね。その考え自体が穢れを生むのにも関わらず…」

「愚かな事です」

 

「それで、その爆弾を落とした人たちはどうなったんですか?」

 どうやら彼女は、その愚行の結末に興味を持ったようですね。

「大抵は死にましたが、残りは穢れがない場所に行きました」

 小鈴ちゃんの目が輝きました。

 

「そこってどこです?幻想郷にありますか?」

「ふふ、どこだと思います?」

 

 小鈴ちゃんの問いかけに、私は意味深な笑みを浮かべ、夜空へ視線を向けます。闇に溶けた幻想郷の中、欠けた月だけが羅万館の屋根を静かに照らしていました。ええ、あの忌々しい月だけが。




この『死』ですが、一応日本神話にも出て来る神様です。
けど、本当に脈絡もなく出てきて、すごそう!って事しかわからない神なんですよ。なんか他の神に名前譲ってるし…自分はその神をアレンジ…出自を捏造して、この二次創作に出してます。

急遽入れた割にはすごい大事な話になっちゃったな。小鈴ちゃん便利すぎるぞ。
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