東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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紅魔館編は梅雨でしたが、一気に飛んで秋の話です。
あんまり季節とか考えるの良くないかもしれないな。

2025/11/17
時系列を考えると一気に1年経っていることに今更気づきました。




第122季/秋 人間の里with奇跡を希う風祝

 私が人間の里に行った時の話です。

 確か…あれはお昼ごろでした。家でご飯を作ろうとしましたが、材料がなく、渋々鯨呑亭で外食した帰りの事でした。以前から「煮物が絶品!」だとか、「お酒がうまい!」と聞いていたので、どうせなら美味しい店で食べようとしてたんですよね。

 

 食料品――ほとんどがお酒でしたが――を買い終え、さあ帰ろうとしたところでした。

 

「貴女、今幸せですか?」

 

 突然、背後から声が掛けられました。

 振り返ると、そこに立っていたのは見慣れない女性。だいたい十代後半ごろでしょう。緑色の髪を左側に垂らし、青色の髪留めをしています。それにあれは、蛙と蛇の髪飾りでしょうか? 瞳は青や緑が混在する色、見る方向によって色が変わります。服装は白と青を基調とした巫女服ですね。

 

「貴方は今、幸せですか?」

 私が聞こえなかったと思ったのでしょう。彼女は再度、声を上げます。

 

「ええ、美味しいご飯を食べて、お酒を飲む。なかなか幸せですよ」

 私は相手を刺激しないために、慎重に当たり障りの無いことを言いました。すると、彼女は「そうですか」と呟き、

「ですが!妖怪は怖いですよね!そこで私の力、『奇跡を起こす程度の能力』があれば、どんな妖怪でも退治してみせます!」

 

 そう言うと同時に、彼女は手を翳し、何かを呟いたかと思うと、「それ!」と私に手を向けます。

 

 すると、どこからともなく雨雲が私の頭上に現れ、私の頭限定の局所的な豪雨を起こします。

 

「どうです!これで私たちを信仰したくなりましたか!……あっ」

 彼女の目の前にはずぶ濡れになって、濡れ鼠な私がジト目で立っていました。食料品まで濡れてしまいましたね。

 

 

 

 

「…えっと、その、ごめんなさい」

 私をずぶ濡れにした張本人は頭を下げて言います。少し好印象です。宗教家は頭を下げるのを厭うもの、素直にごめんなさいを言える子は良い子です。

 

「ベ、弁償します!」

「いえ、そこまでする必要はありませんよ」

 私は指を鳴らし、濡れた衣服や食料品を乾いた状態まで「回して」戻します。

「わっ、服が乾きました!」

 と目を輝かせながら驚く目の前の彼女。子供のように純粋な反応です。…そういえば、まだ名前を聞いていませんでしたね。

 

「あの、貴女の名前は?」

 

 私がそう尋ねると、彼女はハッとしたように顔を上げました。

 

「あ!申し遅れました!私は、東風谷早苗と申します。最近、幻想郷に引越しして来た守矢神社の巫女です!早苗って呼んでください!」

 

「私は夕雲。幻想郷に住む普通の女の子です。では、またご縁があれば…」

「はい!さようなら、また会いましょう」

 と手を振る早苗さん。

 このまま、私たちは別れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いやいや、ちょ、ちょっと待ってください!」

「流石にバレましたか…」

「ええ、私はそう騙されませんよ!貴女が私たちを信仰してくれるまで帰しません!」

 

 これは中々長い話になりそうですね…これだから宗教家は苦手です。ある程度、適当に話を聞いたりしたら、満足して帰ってくれるでしょうか?

 

「それで、他には何が出来るんです?確か、『奇跡を起こす程度の能力』でしたっけ?」

「よくぞ、聞いてくれました!雨を降らす他に、海を割ったり、風を起こしたり出来ますよ」

 

 …さっき、濡れ鼠にされたばかりか、長話で時間を取ろうとしてきますし、ちょっとぐらい悪戯してもいいですよね?

 先程、幻想郷に引っ越したのは最近の話と言っていたので、まだこの辺りの事は知らないはず。ならば、簡単な嘘をついちゃいましょう。幻想郷で過ごしていたら、すぐに嘘だと気づけるような簡単な嘘です。

 

「そのくらいだったら、幻想郷では案外、いろんな人が出来ますよ」

 まぁ、いろんな「人」じゃなくて、大半が妖怪ですが…

「えっ?」

 ポカンと口を開けている早苗さんを前に、私は能力を行使します。

 

「例えば、ほら」

 

 風はどんな原理で起こるのか。色んな要因が風のメカニズムに関わっていますが、端的に言えば、空気の温度変化と気圧の変化です。

 温められた空気は上昇し、冷たい空気は下降する。上昇した空気は低気圧となり、下降した空気がそこに入り込む。上昇した空気は上空で冷たくなり、下降する。

 つまるところ、風は大気は循環し、回っています。

 私の力は「回す程度の能力」。大気をちょっと操るぐらい簡単です。

 

 私は能力を使い、早苗さんを囲む風を起こします。

 

「流石に海を割るのは出来ないかもですが…知り合いには何人か出来そうなのを知っていますよ」

 思い浮かべるのはどこぞの鬼の大将やフラワーマスター、紫も出来そうですね。

 

「な、なんですと…」

「幻想郷にも不思議な力を持つ人が多いですからね。信仰を集める方法にも気をつけた方が…」

 そう言い、操った風のせいで服に付いた砂塵や埃を手で払い、早苗さんの方を向くと、先ほどの驚いた表情から一転、キラキラとした期待に満ちた瞳でこちらを見つめています。

 

「す、すごい、本当に神奈子様の言うとおりだ…」

 何か小声で呟いたと思えば、早苗さんは急に大きな声で喋り始めます。

 

「あの、夕雲さん!私の友達になってくれませんか?」

 

 …はい?

 

 

 

 

 

「友達、、、ですか?」

「はい、私の神社の神様が言っていたんです。『早苗、お前はもっと色々な人と関わるべきだ』って。でも、外の世界ではなかなか友達ができなくて…私が現人神をやっていたからですね」

 最後の言葉は小さく、心から漏れたような呟きですが、私の耳にはしっかりと届きました。

 早苗さんは少しだけ寂しそうな表情を一瞬だけ見せましたが、すぐにまた明るい笑顔に戻りました。それは子供が泣くのを我慢しているような痛々しさのように私には思えます。

 

「だから、私、安心したんです!神奈子様は『幻想郷には早苗のような力を持った人間がいっぱいいる』と言われても、心の奥底では信じきれませんでした。ですが、実際に夕雲さんのような私と似たような力を持って、素敵な女の子に会えて、嬉しいんです!」

 

「…」

 

 

(…なるほど、大体わかりました)

 

 彼女の言葉を聞いて、ようやく合点がいきました。

 外の世界で「奇跡を起こす程度の能力」を持つ現人神として生きてきた早苗さんは、その特殊な力ゆえに周囲と隔絶した孤独を感じていたのでしょう。

 だからこそ、私のような力を持つ存在に出会い、親近感を覚えたのかもしれません。そして、彼女の神様である神奈子さん彼女の人間関係を心配していた、と。

 

 神様に愛された巫女…周りに人間がいない孤独…どこか似たような子がいましたね。

 

 

 

「…別に、構いませんよ」

 私は、少し考えてからそう答えました。早苗さんの押し付けがましい信仰はいただけませんが、根は素直で寂しがり屋なのかもしれません。

 

「ほ、本当ですか!」

 早苗さんは、パッと顔を輝かせ、私の手を握ろうとして…寸前でハッとしたように手を引っ込めました。

 

「あ…ごめんなさい!いきなり馴れ馴れしくしちゃって…友達が出来たのが嬉しくて…」

 

 私は引っ込めた彼女の手を掴み、一言言います。

「もう友達でしょう?これからよろしくお願いしますね、早苗さん」

「……はい!」

 

 彼女は太陽のような笑みを浮かべました。ポツリと頬から落ちた一粒の輝き()は見なかった事にしましょう。

 

「それじゃあ、早速、私の神様達のことを紹介しますね!まずは神奈子様。神奈子様はですね、ぱっと見は威厳があるお方なのですが、案外フランクで優しい方なのですよ!風雨を司る神様でして〜」

 

 

 …もしや、私、結果的に宗教勧誘されてます?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕雲さんと初めて会った時は、ただの普通の女の子だと思いました。

 正直、少しでも多くの人に私たちのことを知ってもらって、信仰してくれる人が増えたらいいなぐらいの軽い気持ちで、人間の里に赴いていました。それに私の力があれば、簡単に信仰を集めれると思っていましたね。

 

 でも、その考えは夕雲さんと会って、すぐに無くなりました。

 私が「奇跡を起こす程度の能力」だって言っても、全然驚かないですもん。それどころか、「そのくらいなら、結構いろんな人が出来ますよ」なんて言うんですから!

 

 最初は、「嘘でしょ」って思いました。私が小さい頃から修行して身につけた特別な力ですから、たとえ幻想郷の住民でもそんな事は出来ないだろうとたかを括っていました。

 ですから、夕雲さんが風を起こしたのを見た時、本当にびっくりしたんです。私の起こす風とは原理が全然違う、私のようになんとなくで起こすのではなく、どこか法則を弄っているような…それはまるで、世界がくるくると回っているみたいで、見ているだけで心が躍りました。

 

(神奈子様の言っていたことは、本当だったんだ!)

 

 神奈子様はよく「早苗、お前はもっと色々な人と関わるべきだ!」と言っていましたが、同時に「早苗の力は早苗を孤独にしてしまう、本当にすまない」と私に謝っていました。私は神奈子様に申し訳ない顔を見せたくなくて、ずっと強がっていました。

 

 そんなある日、神奈子様たちに幻想郷に引っ越す事を提案されました。

神奈子様達は信仰を手に入れ、私は信仰と同時に友人を作り、普通の女の子になれるそう聞いていました。

 

 でも、正直、心のどこかで信じきれていなかったんです。私と同じような力を持つ人なんて、本当にいるのかなって。外の世界では、私の力は特別なもので、私に友達なんて出来ませんでしたから。

 

 だから、夕雲さんに会えた時、本当に嬉しかったんです。初めて、私と同じような力を持つ人に出会えた。しかも、すごく優しくて、綺麗で…話していると、なんだか心がポカポカする不思議な女の子。

 

 私が馴れ馴れしいと思って、手を引っ込めた時も「もう友達でしょう?これからよろしくお願いしますね、早苗さん」って、私の手を握ってくれました。その手がなんだかすごく温かくて、涙が出そうになりました。勿論、泣いたりしませんよ。

 

 これから、夕雲さんと色々な話がしたいな。私の神様、神奈子様や諏訪子様のことも、もっと知ってほしいです。きっと、夕雲さんとなら幻想郷でも楽しい毎日が送れるはずです!

 

「それじゃあ、早速、私の神様達のことを紹介しますね!神奈子様はですね、ぱっと見は威厳があるお方なのですが、案外フランクで優しい方なのですよ!風雨を司る神様でして〜」

 

 私は夕雲さんの手を引いて、神奈子様のこと、守矢神社のこと、外の世界のこと、いろんな事を話します。夕雲さんはなんだか変な笑顔ですが、時々相槌を打ち、私の話を聞いてくれています。

 

(やった!これで、私も一人じゃないんだ!)

 

 心の中で、何度もそう呟きました。

 

 夕雲さん、これから、よろしくお願いしますね。

 

 ひとまずは…そうですね。守矢神社に招待しましょう!

 

「夕雲さん、私の家に行きましょう!」

「まぁ、別にいいですが…とりあえず、荷物を置かせてくれませ、あっ、ちょっと手を引っ張らないでください!」

 

 これからが楽しみです!




東方新作こえええ。頼むから設定違わないように。
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