東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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何と同類か?誰と同類か?どこが似通っている?


第122季/秋 博麗神社withほとんど同類の神様

 にとりと別れて数日後よく晴れた日の午前。羅万館の静寂を破る、元気いっぱいの声が響きます。

 

「夕雲ー!お邪魔するよー!」

 

 扉が開かれるとそこには案の定、にとりが満面の笑みを浮かべて立っていました。背中にはあの最新型のスライド映写機がしっかりと背負われています。

 

「いらっしゃい、にとり。今日は何のご用で?」

 私はいつものように平静を装いながら、にとりを迎え入れます。

 

「この間、宴の手伝いをするって言ったじゃんか」

 にとりは、当然のようにそう切り出しました。

 

「あぁ、その連絡ですか。それで、いつになったんです?」

 私は内心ではそろそろかと思っていましたので、落ち着いて日程を確認します。

 

「うん、今日だ!」

 にとりの明るい返答に私の体は一瞬硬直し、「今日⁉︎」と思わず声が出てしまいます。

 

「…急ですね」

 動揺を悟られないように、努めて冷静に言葉を続けました。

「あぁ、さっき決まったからな!」

「そうですか…それで場所は?」

 

「博麗神社!」

 

 にとりのその一言で、次は私の心臓はドキリと跳ね上がります。私、諸々の事情があって、博麗神社には近づかないようにしてますし、紫からも禁じられています。

 

(あんまり、博麗神社には行きたくないのですが…)

 

 しかし一度約束した手前、今更断るわけにもいきません。それに、にとりの頼みを無下にするのも気が引けます。そしてなにより、新型映写機が欲しい…

 

「わかりました。すぐ用意するので、待っていてくださいね」

 私はにとりにそう言い、奥の部屋で準備を始めます。と言っても、準備するものはお酒とその肴ですけどね。

(まぁ、ちょっとぐらいならいいですかね。霊…今代の博麗の巫女に会わなければどうとでもなりますし…)

 私はそう自分に言い聞かせ、小さく息をつきました。

 

 

 

「そういえば、宴について何も聞いていませんでしたね。誰が来るんです?」

 映写機に頭が支配されて、大切な事を聞くのを忘れていた私は、にとりに質問をします。

 

「参加者か〜ブン屋と最近引っ越してきた神様とその巫女は確実。後は知らない」

 

 文と早苗さん、神奈子さんは確実にいるって事ですね。…薄々気づいていましたが、これ異変解決の宴です。

 

「それで、宴の出し物って何するつもりなんです?」

「ふふふ、出し物はな。この映写機を使った今回の異変解決者、博麗の巫女の弾幕鑑賞だ!夕雲も見たいだろ?」

「ええ、確かに…かなり、かなり見たいです。それにしてもよくそんな映像撮れましたね」

 にとりは指先でちょこっと鼻を擦り、ニヤリと笑い、答えます。

「ふふん!そこは私の光学迷彩スーツで…あっ…」

 思わず、口を滑らしたと言わんばかりの表情をするにとり。ふゅーふゅーと誤魔化すように、空気を出し入れするだけの下手くそな口笛を吹き始めます。

 

 それにしても、光学迷彩スーツで盗撮とは…

「夕雲…怒ってる?」

「別に怒ったりしません、怒る資格は私にはありませんしね。ただ、倫理観はどうかと思いますよ。外の世界では『ストーカー』って言うらしいですね、にとり“さん”みたいなのを」

「絶対、怒ってるじゃん!」

 手を大きく広げて抗議するにとりを横目に私は、疑問をぶつけます。

 

「それで、今回は映像を映すんですよね?スクリーンとか持ってきたんですか?」

 博麗神社は基本木造建築。白い壁のような物や大きな布はなかったと思いますし、どうやって映すんでしょうか?なにかそう言う新機能でもあるんですかね?

 

 私の言葉に、にとりは再度動きを止め、ギィィィ……と機械が軋む音ようは音が聞こえるぐらいぎこちない動きで、私の方に向き直り…

「わ、忘れてた…」

 と言うのでした。

 

 

 私は思わずその様子に吹き出し、軽口を叩きます。

「ふふ、天罰ですよ。天罰。神様は見てらっしゃるのです」

「やめろよぉー、夕雲が言うと洒落にならない!」

 

 ひとしきり笑い終わった私は、にとりに尋ねます。

「それじゃあ、今日の出し物はどうするんです?」

「他の物にするしかないだろうね。他のは操作が難しいから私がする。また今度、手伝い頼むよ」

「ええ、わかりました。楽しみに待ってますね」

 

 そんな会話をしながら、私たちは博麗神社へと続く大きな階段を上り終え、ようやく鳥居にくぐることが出来ました。そして、にとりは旧友に挨拶しに行くため、私とは別れます。その別れ際、私は映写機を受け取ると同時に、にとりに頼み事をします。

 

「にとり、後で博麗の巫女の弾幕映像、後で私用にフィルムに焼き付けておいてくれませんか?」

 にとりは、いつものニヤリとした笑顔でこちらを振り返り、親指を立てて言いました。

「へへ、安くしとくよ。夕雲」

 その言葉に、にんまりと悪どい笑みを返し、私は宴が始まる直前の喧騒の中へと足を踏み入れました。

 

 

 さて、私も知り合いに挨拶に向かいましょうか。

 

 

 

 

 境内に入ると、すぐに私は誰かに声をかけられます。

 

「夕雲さぁーん!」

 その言葉と共に駆け寄ってきたのは、早苗さんです。

 

「夕雲さん!ここのみんな、全員お酒強いんですよ!お酒弱い私には生きる道が無いんです、しかも私、まだ未成年ですし!」

 そう言って泣き出す早苗さん、可哀想に…そう思い、慰めようとしたところで、気づきます。

 彼女の体温が高く、顔も熱っぽい、そして何より息がアルコール臭い事に…これは相当酔っ払ってますね。

 

「霊夢さんや魔理沙さんも絶対未成年なのに、あんなに飲んじゃって!法律違反ですよー!」

「だが、早苗。ここには警察も外の世界の法律もない。幻想郷に来る前に言っただろ?『幻想郷では常識には囚われてはいけない』って…」

 

 早苗さんを追って来た神奈子さんがそう突っ込むと、早苗さんは「はっ!」と雷に打たれた表情をし、そのまま千鳥足でどこかに行ってしまいました。彼女は何に気づいたのでしょう?まぁ、いいです。

 

「やぁ、夕雲殿。うちの早苗が失礼したね」

「いえいえ、友人に迷惑をかけられる事には慣れていますから」

 私は苦笑いを浮かべ、神奈子さんに答えます。そして、神奈子さんの隣に立つ女の子に目を向けます。溢れ出る神性、以前守矢神社で捉えた三つ目の気配に酷似していますね。

 

「それで、神奈子さん。その方は?」

「あぁ、こっちは諏訪子。私の友人兼同僚だ」

「勝手に私の神社を引っ越ししたやつのことを友人なんて言いたくないね…まぁ、この話は後にするとして…」

 その紹介に不満があるのか、諏訪子と呼ばれた方は腕を組み、不機嫌そうな表情をしていましたが、次の瞬間には元の表情に戻り、私の方に視線を向け、ほんの少しだけ口元を緩めて言いました。

 

「はじめまして、私は洩矢諏訪子。神奈子と同じ神様だよ。今日はたまたま起きてたから、宴会に来たんだ」

「こちらこそ初めまして、私は夕雲。早苗さんや神奈子さんとは仲良くしてもらってます」

 諏訪子さんは私の言葉に小さく頷きました。

「うんうん、早苗からよく話を聞いてるよ。こちらこそ、仲良くしてやってほしい」

 

「それじゃあ、諏訪子。私は他の人達に挨拶しに行くから。夕雲殿と一緒にいてくれ」

「ちょっと待って、神奈子。私も行くよ」

「駄目じゃないか、諏訪子。私は営業、諏訪子は実務。挨拶は私の仕事だ」

 そう言い、去っていく神奈子さん。諏訪子さんは呆気に取られた表情で立ち竦むのみでした。

 

「えっと、諏訪子さん?とりあえず、お酒飲みません?」

 私は持って来たお酒を見せ、諏訪子さんと共に地べたに座りました。

 

 

「神奈子ったら酷いんだよ!私に何も知らせずに、こんな土地に引っ越しさせるし、いくら早苗のためだとは言え、私にも連絡の一つぐらいするべきだって!別に反対もしないのに…」

 

 お酒を飲み始めて、一時間もせずに、すっかり出来上がってしまいました諏訪子さん。最近、誰かとお酒を飲むと、愚痴を聞く事が多いような…鈴仙さんも愚痴を吐いてましたね。

 

「ふふ、諏訪子さん。そういう時は『貸し一つ』だと思えば良いんですよ」

「貸し一つ?」

 

 諏訪子さんは首を傾げながらおうむ返しして、私に尋ねます。

 

「ええ、貸し一つです。そのまま怒っていてもしょうがないですし、少しでも自分の得になる事をするべきですよ。神奈子さんは諏訪子さんの機嫌を取ることができる、諏訪子さんは神奈子さんに対してひとつ貸しが出来る…外の世界ではWin-Winって言うんでしたっけ?貸しの内容はなんでもいいですが、神奈子さんがちょっと頑張ればできるぐらいのがおすすめですよ。例えば…美味しいお酒とか?」

「美味しいお酒ねぇ…うーん、お酒も良いけど、今はそういう気分じゃなちかな」

 そう言って、諏訪子さんはしばらく考え込みます。私はその様子を横目に、静かに盃を傾け、喉を潤しました。ごく、やっぱり、お酒は美味しい。 

 

「そう!私、気になってたんだよ。神奈子も早苗も弾幕勝負をやったそうじゃないか。私も博麗の巫女や白黒魔法使いと弾幕ごっこをやりたい!」

 

おや、願い事が決まったらしいですね。諏訪子さんはワクワクとした感情を全身で表しています。彼女の見た目も相まって微笑ましいです。

 

 新しいお酒を開け、徳利から自分と諏訪子さんのお猪口に丁寧に注ぎます。琥珀色の液体がきらめき、芳醇な香りが立ち上りました。

 お猪口差し出すと、諏訪子さんは嬉しそうにそれを受け取り、私のお猪口に軽くカチンと当てました。清らかな音色が、宴の賑わいに溶け込んでいきます。 

 

「ぷはーっ、やっぱり宴会はこうでなくっちゃ!」

 一口飲んだ諏訪子さんは、満足そうに息をつきます。そしてこちらを向き、にやりと笑って言いました。

「それにしても、夕雲。上手いこと考えるねぇ」

「あー…それは、それは…もう何度もやられた手でしたから」

「へぇ?誰にだい?」

「…霊暮って子にですね。生前は元気で明るく、優しい子でした、、、それなのに……」

 昔を思い出すように、私は遠い目をしました。明るく笑う霊暮の姿がまぶたの裏に浮かんでは消えます。優しい彼女が、なぜあんな姿になってしまったのか……

 私の憂う表情に気づいたのでしょうか。諏訪子さんは言葉を探るように、少し口を開いては閉じるのが見えます。

 私はお酒を一口飲み干し、言葉を続けました。

 

 

「今じゃ、地獄で暴れる罪人や怨霊を拳で黙らせていると聞きます」

 私がそう呟いた瞬間、隣で「ズコーッ」と盛大な音と共に何かが倒れる音がしました。

 振り返ると、諏訪子様が地べたに大の字になって倒れています。

 

「いやいやいや、その流れはおかしいだろ!」

 諏訪子さんは起き上がり、勢いよく両手を振って、地面を叩いて、ツッコミます。

 

「なんで地獄で働いてるのさ!しかも素手で!」

 私は少し遠い目をしながら、答えます。

「昔は霊暮も陰陽玉、お祓い棒、封魔針、お札とかちゃんと使ってたんですけどね。針やお札は作るのが面倒、お金がかかるとか言って、使うのをやめてしまい、お祓い棒と陰陽玉は『素手の方が殴る、掴む、引っ掻く、投げる、突き刺す。なんでもできる!』とか言って、使うのやめてしまって…」

 

 そのせいで専ら使うのは拳と霊力のみ。それで大抵の妖怪を討伐してきたのですから…ふふ、自慢の子です。

 

「やだ、幻想郷怖い!」

「…って、違う、違う、聞きたいのはそうではなくて…夕雲!その子に一体何があったんだよ!その『霊暮』って子には!」

 諏訪子様の真剣な眼差しを受け止め、私はにやりと笑います。

 

「おやおや、聞きます?聞いちゃいます?聞いてしまいます?我が愛し子について!写真とか友人に見せびらかす用にいっぱい持ってますよ!」

 

今では、写真は文が持つようなカメラみたいに簡単に撮れるようになりましたが、昔は大きくて持ち運びのにも一苦労、撮るのも時間がかかったもんです。

 まぁ、にとりが一晩でやって(改造して)くれました。極上の胡瓜を餌にすれば、にとりに出来ないことはないのではないか?と密かに思ってます。

 

 私の身の上…いえ、自慢話がどうやら長くなりそうだと気づいたのでしょう。諏訪子さんは、お猪口に残っていたお酒をぐびっと一口で飲み干されました。その仕草には、話をじっくり聞く覚悟のようなものが感じられます。

 

「ええい!アンタの娘の話も気になるけど、私の早苗だって可愛いんだから!」

 

 諏訪子さんは少し頬を赤らめながら、そう主張されました。その言葉には、早苗さんを想う親心のような温かさが滲んでいます。

 

 私はにっこりと笑い、盃を飲み干して答えます。

 

「いいでしょう、いいでしょう。今夜はとことん語り明かしましょうじゃないですか!お互いの愛しい存在について!」

 

 とりあえず、新しい日本酒を開けて…

「「せーの(せーの)」」

「「乾杯!(かんぱーい!)!!」」

 

 遠い過去の記憶と、愛しい存在への想いを肴に、新しい友人と今宵はゆっくりと杯を重ねるとしましょう。




A.どちらも親バカ
勿論、他にもありますけどね。

親バカいいよね、親バカ。この話ではないですが、この作品を書こうと考えて、一番最初に思いついた話は親バカの話でした。物語が終わったら番外でやるって決めています。


にとり、諏訪子はおそらく、アールグレイの影響を受けまくってます。


後、UA3000超えました!皆様のおかげです!昨日とか何も投稿してないのに、過去最大UA叩き出して、困惑してます。誰かが評価してくれるだけでこんな違うんですね。わし、嬉しい。
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