東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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サブタイトルも小説本文も大苦戦。

輝夜の喋りが難しすぎて、なるべく喋らない様に舵を取りました。


第123季/夏 永遠亭with17分割しても死ななそうな月の姫

 輝夜の部屋は、外の騒がしさとは対照的に、静かで落ち着いた空間でした。ふわりとした座布団に腰を下ろすと、ほのかな香が鼻をくすぐります。月の光が障子を通して優しく差し込み、室内を淡く照らしていました。神秘的な雰囲気を醸し出しているように見えますが、よく見れば、無造作に置かれた本や適当に脱ぎ捨てられた服、この部屋だけやけに汚…こほん、人間味に溢れています。

 

「ふふ、永琳のあの顔見た?鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔…けど、後で会ったら、絶対お説教よね」

 

 「憂鬱だわー」と言いながらも、私にお茶を注ぐ輝夜の表情はどこか楽しそうです。彼女は私と同じで、退屈を何よりも嫌う性質ですから、たまにはこういった騒動も悪くないのかもしれません。

 

「まあまあ、たまにはああいうのも面白いじゃないですか。以前はこんなの無かったでしょう?」

 

 私はそう言って、熱いお茶をすすります。永琳の叱責は避けられましたが、てゐには後で何かお土産でも持って謝っておきましょう。じゃないと、彼女は後が怖いですからね。どんな報復が待っているかたまったもんじゃないです。

 

「そうね。永遠亭は私の永遠を解いてから、どんどん変わっているわ」

 

 輝夜は遠い目をしながら、そう呟きました。彼女もまた、永琳らの変化を感じているようです。私から見たら、輝夜も変わったように思えるのですが、本人は気づいていないのかもしれませんね。

 

「そういえば、夕雲。あなた、鈴仙と知り合いなのね?少し意外」

 

 彼女は興味深そうに、こちらを見つめてきました。

 

「ええ、人間の里でも鈴仙さんが噂になってまして、私も気になったんで、話してみただけですよ」

「あら、そう。なんだ、面白い話でもあると思ったのに…」

「面白い話と言えば…そうですね、折角ですし、永琳について今日は話しませんか?昔話とか興味あります?」

「いいわね!なんか弱みになる話とかある?」

「そうですね…」

 

 私は頭を回し、永琳と最も古い思い出…彼女と初めて会った時の出来事を思い出します。

 

 

 

 

 障子越しに差し込む月光が、ほのかに畳を照らす静かな一室。

 輝夜は肘をつき、退屈そうにしていた表情を改めて、私の方へ身を乗り出しました。私は、新品同然の湯飲みに残る温くなったお茶をゆっくりと飲み干し、遠い目をしながら語り始めます。

 

「そう、あれはずっと昔の話です」

 

 庭の木々を通り抜ける風の音が、時折、静寂を破るのが聞こえます。

 

「月の都がまだ無い頃…永琳が地上で暮らしていた時の話ですよ」

 

 私はそう切り出し、まるで目の前に古びた蔵の扉が現れたかのように、ゆっくりと瞼を閉じます。

 遠い記憶の扉を開く、その静かな仕草に、輝夜は一層興味を惹かれたように、姿勢を正し、絹の衣擦れの音を微かに立てました。ちらりと覗くと、彼女の瞳は好奇心で潤んでいます。

 

「私は当時の永琳を人伝てにしか知りませんが、永琳はそれはそれは優秀な研究者として名を馳せていましたようです。彼女の頭脳は明晰で、誰もが思いつかないような奇抜な発想で、次々と新しい技術や理論を生み出していたのです」

 

 私はまるで昨日のことのように、出来るだけ客観的に当時の永琳を語ります。

 

「輝夜も知っているでしょう?」

 

 私に促された輝夜は、小さく頷きました。その黒曜石のような瞳は、私の言葉の一つも逃すまいと、じっと見つめています。なんだか、小鈴ちゃんみたいですね。私が妖魔本について話す時の彼女とそっくりです。

 

「そうですね…彼女の研究は多岐にわたりましたが、特に注目を集めていたのは生命…いや、『穢れ』に関するものでした」

 

 私は言葉を選びながら、少し間を置きます。輝夜の表情を窺うように、そっと目をやると、輝夜は眉をわずかにひそめ、私の次の言葉を待っています。

 

「穢れ…生きる事、死ぬ事そのもの。穢れがある故に生命は死に、物質から永遠を剥奪する。永琳はこの穢れの根絶を目指したんです」

 

 輝夜は、私の言葉を反芻するように小さく頷きました。まぁ、彼女がそれを知らないはずがありませんしね。

 

「紺珠の薬の開発もその一環でしょう。未来を見通し、死を遠ざければ、穢れは生まれないで済みますから」

 

 

「まぁ、永琳は当時、『死』のみが穢れを生むと考えていたらしいですが…」

 

 そう言って、私は苦笑いを浮かべます、まぁ、死だけではなく、生も穢れを生むとは当時は考えられもしなかったようですからね。

 

「話を戻しまして、永琳が『穢れ』について研究してた時に、私は彼女と初めて会いました」

 

 私は再び遠い記憶を手繰り寄せるように、ゆっくりとした口調で語りを続けます。

 

「いえ、彼女が会いに来た、ってのが正しいですね」

 

 

「その時の私は全くもっての無名。忘れられた存在でした。一つは知り合いに譲り、もう片方は単純に知名度がありませんでした」

 

 私は自嘲気味に微笑みます。輝夜が以前「過去は無限にやってくる」と言っていましたね。私の名前は過去の奔流に流され潰されたのです。

 …まぁ、ですから、昔の話はいいのです。自分のことを考えるのをやめ、語りに集中します。

 

「ふふ、あの時の永琳は凄かったですよ。目をギラギラと光らせるだけではなく、血走っていましたもん。あれは正直、かなり怖かったですね。あれで私は恐怖という感情を知った気がします」

 

 私は当時の永琳の異様な熱気を思い出して、思わず身震いをします輝夜はその様子を興味深そうに伺っていました。

 

 

「この時のことを弄ると、永琳が良い顔するんですよ。だから、今日は当時のことを輝夜に教えますね」

 

 私はいたずらっぽく微笑みました。永琳の意外な一面を共有することは楽しいですからね。もっとこの話をしたいところですが、永琳の交友関係が狭いせいで、なかなかできないのが残念なところ。

 

「そうですね。私と初めて会った時のはしゃぎ様は今の永琳からしたら、考えられないほどでした。静かに感情を表すのではなく、全身で表現してましたよ」

 

 私は当時の永琳の身振り手振りを真似るように、少し大げさに手を動かしました。輝夜はその様子を見て、くすくすと笑いました。

 

 私は身振りを辞め、話を再開させるために、永琳との出会いの衝撃を思い出します。

 

「ええ、本当に別人みたいでした。私の前に現れた時の彼女は、興奮を抑えきれないといった様子で、早口でまくし立てるように話しかけてきましたから。『貴方のその力!その知識!是非私にください!』って。まるで、珍しいおもちゃを見つけた子供みたいに目をキラキラさせて」

 

 私は当時の永琳の言葉を再現するように、少し声を高くします。あぁ、本当に懐かしいですね、生者が私たちの世界に入り込んできたの驚きは永遠に忘れることはないでしょう。

 

「最初は可愛らしいって感想でしたが、目のキラキラがギラギラと危ない光を宿すようになり、そこから永琳の暴走が始まりました」

 

 私は声のトーンが、少し低くします。勿論、大半が彼女との楽しかった思い出ですが、その中には危なかったこともたくさんあります。

 

「不眠不休での研究。ご飯を食べずに倒れ、眠らず倒れ、研究が一段落するたびに倒れていました。みんなに怒られてというもの、倒れないために完全栄養剤を作り出したりしてました。まぁ、睡眠はさすがの永琳でも対処が難しく、結局、不眠不休の実験で倒れていましたけどね。ですから、私が当て身で寝させてましたよ。あぁ、他にも私を研究という名の解剖をしようとしたり、私の食事に薬を混ぜたり、睡眠薬で寝させ、解剖しようとしたこともありました。私が逆に睡眠薬を彼女に使ってから、作らなくなりましたけど」

 

 

 

「ほんと色んな人に助けられてましたよ、永琳は」

 

 私は冗談めかしながらも、当時の苦労を滲ませます。輝夜は、目を丸くして聞き入っていますね、きっと彼女のイメージと全然違うからでしょうか。

 

「ふふ、昔、私が輝夜と初めて会ったとき、『あぁ、彼女は永琳の教え子だな』ってすぐわかりましたよ。地上に降りるために蓬莱の薬の飲む、月に戻りたくないから、月の軍勢をどうにか対処する。昔の永琳も輝夜みたいでした」

 

 私は遠い記憶を反芻するように、ゆっくりと首を縦に振ります。

 

「まぁ、輝夜よりも永琳の方が規模は小さいながらも、騒動の数は圧倒的に多かったです。彼女の研究室は、毎日のように爆発しているような状態で、私は彼女の後見人として、いつもその後始末に追われていました。でも、彼女のその異常なまでの集中力と、常人には思いつかないような発想力には、やはり感嘆せざるを得ませんでしたね。それに、彼女が時折見せる、子供のような無邪気な笑顔も、どこか憎めなくて…」

 

 私はきっと声を和らげ、懐かしむような表情を浮かべていることでしょう。

 

「みんな彼女の事を好いていましたね。醜女たちはなんかと世話を焼こうとしますし、ナミも忙しいのに時々様子見し、雷神たちは桃の実で餌付けされていました」

 

 私は当時の光景を思い浮かべます。研究室の騒がしさの中で、不思議な仲間たちが永琳を支えていました。

 

「永琳は、その破天荒さゆえに、多くの人に心配をかけましたが、同時に彼女の純粋な情熱は、周りの人々を惹きつける魅力でもあったのでしょう。彼女自身は全く意識していなかったでしょうが」

 

 あの子たちともう会えないのはずっと前からわかっていますが、やはり、少し寂しいですね。私はその感情を隠すように、語りを続けます。

 

「そうですね。弱味ってほどでは無いですが、永琳にこの頃の話を書いてみてください。きっと、彼女、面白い顔しますよ。あっ、話聞くときは私も呼んでくださいね。普段、あれほど冷静な永琳が昔の破天荒な自分の行いをどう受け止めるか、興味ありますので」

 

輝夜は想像しただけで面白くなったように、目を輝かせ、口を開きます。

 

「ふふ、とっても楽しみね。永琳、どんな反応すんだろ」

 

 輝夜はそう言って、楽しそうに微笑みます。彼女もまた、普段の永琳からは想像もできない過去の姿に興味津々なようですね。

 

 私はパンっと手を叩き、「今日の話はこんなところです、どうです?面白かったですか?」と輝夜に問いかけます。

 

 輝夜は満足そうに頷き、「ええ、永琳の恥ずかしい過去聞けたし、私は満足だわ」と答えました。

 

「どういたしまして。少しでも、輝夜の退屈しのぎになれたのなら幸いです」

 

 私ははそう言って、語りで乾いた喉を潤すために残りの温くなったお茶を飲み干そうとします。…あぁ、さっき飲み干したんでした。まぁ、いいです。

 

「そういえば、輝夜は最近、何か面白いことでもありましたか?」

 

 私がそう問いかけると、輝夜は窓の外の景色に目をやりながら、少し不満そうな表情を浮かべます。

 

「そうね…特に変わったことは無かったわ。相変わらず、退屈な毎日…なにか、お金を稼ぐことをやろうとしても永琳がそれとなく禁止するし…」

 

 しかし、その声音にはどこか楽しげな響きが混じっているのがわかります。永遠亭での、穏やかでありながらも変化のある日々を、彼女なりに満足しているのでしょう。

 

「そうですか。もし何かありましたら、いつでもお話聞きますよ」

 

「ええ、ありがとう、その時は頼りにするわね、夕雲」

 

 それからしばらく、私たちは穏やかなおしゃべりを続けました。

 ふと気づくと、庭の鳥のさえずりが聞こえ、月がいつの間にか沈み、朝日が地平線から顔を覗かせています。

 

「そろそろ、私もお暇しましょうか」

 

 私は立ち上がりながらそう言いました。

 

「そうね。今日は来てくれてありがとう、夕雲」

 

 輝夜も立ち上がり、私を見送ってくれます。

 

「ええ、私も楽しかったです。また会いに来ますね」

 

 私はそう言って、輝夜の部屋を後にしました。

 

 廊下を歩きながら、私はこれから永琳に、今日の話の糸口をどう見つけようかと考えていました。きっと、彼女は最初は驚いた顔をするでしょう、そして、少しだけ照れたような、普段は見せない表情を見せるかもしれません。それを想像すると、私の胸の奥がじんわりと温かくなりました。

 

 もう、彼らのことを覚えているのは、私と彼女だけ、いつか彼らのことを話したいもんです。

 

(でも、永琳にどう話しましょうか…やっぱり、お酒ですよね!)

 

 私はそう心の中で呟きながら、静かに朝焼けで輝く永遠亭から抜け出しました

 




最近思い始めたのが、第一話は「羅万館with誰よりも長生きな女の子」の方が良かったなって…あの時は文字稼ぎのために香霖堂に行かせましたが、絶対そっちの方がよかったなぁー

後、無論。永琳の過去は捏造です。原作に書かれていない=話の膨らまし所です。
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