東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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アンチ・ヘイトになってないかな?と不安になりますね。原作でもこんなんだったし、いつか挽回の時が来るから…多分、メイビー


第123季/夏 帰り道with神出鬼没の困ったちゃん②

 明けの明星が消え、東の空を太陽が白々と染め始める頃、私は永遠亭の静けさからいつもの我が家へと続く見慣れた道を歩いていました。

 夜露に濡れた草の匂いが、まだ眠りについたままの幻想郷に清々しい息吹を与えているようで、なんだかとっても良い気分です。

 

「ん?」

 

 鼻歌を歌いながら、歩いてますと、微かですが、確かに私の核とも言える何かが揺らぐような感覚と共に、強烈な眩暈が私を襲います。

 

「くっ…いったい何が…」

 

 しゃがみ込んで、眩暈が収まるの待ちます。収まりましたが、気分が悪いのは変わりありません。自分が少々、苛立っているのがわかります。

 何とか、その苛立ちを理性で抑え込み、私はどうするかを考えます。以前にも二度ほど同じような現象が起きましたが、今回はその原因に関わることが出来ません。

 

(…家に戻ったら、紫に報告しましょう)

 

 そう結論付け、私は再度、羅万館に向かって、足を進めようとすると…

 

 

「夕雲!大丈夫!?」

 

 背後から空間を引き裂き、スキマから紫が現れました。

 思わず、驚きのあまり肩が跳ね上がります。本当に彼女が現れる時は心臓に悪いです。

 そんな私の事を意にも介さず、紫は慌てた様子で私の体に触れ、頬や肩、背中をペタペタとまさぐるように確認しています。普段の余裕綽々としたものとはかけ離れて、どこか焦燥感を滲ませていました。

 

 ある程度、私が無事なのを確認できたのでしょう。紫は大きく息を吐き出し、胸に手を当てて、心底安堵したような表情を浮かべました。

 

「家に帰ったら、紫を呼ぼうとしてたところです。私の存在が揺らぐ感覚があったのですが、早急に対処してくれますよね」

 

 私が威圧感を込めて、問いかけると紫は真剣な表情で頷きました。

 

「…異変の影響よ。詳しくは言えないけど、夕雲はしばらく羅万館にいてちょうだい」

 

「別に良いですけど、そんな大規模な異変なんです?大変ならば、私が手伝ってあげますよ」

 

 そう考え、私は頭を「回し」始めますが…

 能力を使い始めた瞬間、紫の細く白魚のような人差し指が、私の思考を遮るようにそっと唇に触れました。

 

「夕雲、考えるのも駄目。今回の異変に貴女の出る幕はないわ」

 

「…」

 

 むすーとした顔で、私は不満をあらわにしますが、先程までの動揺はどことやら、紫は素知らぬ顔で、私の不満を無視し、言葉を続けます。

 

「別に羅万館じゃなくても、構わないわ。とりあえず、人がいないようなところにいて」

 

「…はいはい、わかりました。今回は私は何も関与しません。大人しく、“人”がいないような所に居ますよ」

 

 紫があそこまで取り乱していたのは、久しぶりに見ました。

 おそらく、賢者たちの予想しなかった異変が幻想郷を覆い始めているのでしょう。私は今はただ、紫の言葉を信じ、大人しく事態の収束を待つしかなさそうです。

 

「頼むわよ。夕雲」

 

 東の空は、刻一刻と明るさを増していきます。それに対して、私の心は拭い去れない陰鬱な影が深く落ちていました。

 先程までの楽しい気分との落差が酷く、家に篭っていても、気分は晴れないでしょう。

 

 ええ、ですから。こんな時こそ、

 

 

 

「お酒ですね」

 

 

 

 

 お酒を飲む、そう決めたのはいいですが、残念ながら紫から「人間のいるような場に行ってはならない」と言われてしまいました。つまり、人間の里でお酒を調達するのは難しいです。

 

 ですが、裏を返せば、人間がいないような場になら行っても良いと言う事。妖怪の山に行って、天狗から天狗酒を掻っ払うのも良いですが、それだけでは味気ないです。もっと、他の物も飲みたいですね。どうせなら、他の人たちとも飲みたいのですが、妖怪の山では早苗さんに遭遇する可能性があります。

 

 どこか、人間が居なさそうなところ…それでいて、お酒がたくさん置いてあるような場所…

 

 ミスティアの屋台もありますが、何日も籠るのは流石に気が引けますし…

 

 …いや、ちょっと待ってください。妖怪の山…なにかそこにヒントあると、私の灰色の脳細胞が言っています。数秒考え、私は答えに辿り着きます。

 

「そうです。地獄に行きましょう」

 

 今じゃ、名前が変わって、旧地獄でしたっけ?

 思い立ったら、吉日。早速、準備して、旧地獄に向かいましょうか。

 私はお土産と暇つぶしになるための本、ついでに日記帳…はもう無いんでしたね、それらを準備するために私は羅万館に戻りました。

 

 

 

 

 

 

*1

 

 あぁ、やっと見つけた。博麗神社を倒壊させ、自身の神社を博麗神社に仕込む、浅はかな虫が。

 

 許せるものか、許してたまるものか。月と通じているだけでも、殺してやりたいのに、幻想郷にさえ、危険を晒すとは…

 

「つーかまーえた」

「何!?何!?今は神社の落成式中よ?」

 

 それがどうしたというのだろう?自分で壊して、自分で直して、まるで自分の手柄のように振る舞うその態度、虫唾が走る。

 

「こんな神社、壊れちゃいなよ」

 

 思わず、そう言葉が漏れる。それを聞いてか、目の前の天人、比那名居天子が剣を私に向ける。

 

「いきなり出てきて何よ!そんな事させないわ!」

「へぇ、自分の時はいとも簡単に壊した癖に今になって壊しちゃ駄目って言うの?」

 

 私の言葉を聞いた瞬間、比那名居天子の顔が歪む。手に持つ《緋想の剣》が、微かに震えているように見える。背後では、落成を祝う賑やかな音楽や人々のざわめきが、まるで遠い世界の音のように聞こえた。

 

「しかも、自分の神社と博麗の神社を混ぜるなんてねぇ?自分の良いように神社を改造して、住む場所を増やそうとするなんて…私たちを馬鹿にするのも大概にしなさい」

 

「ええそうよ、良いじゃないそのくらい。だから何?あんな古臭い神社を壊して何が悪いって言うの?どうせ、誰にも信仰されていない、巫女だって知らない、忘れられた神なんだ。そんな奴から神社を貰っても構わないでしょ」

 

 いいわけがないだろう。

 地の底から湧き上がるような怒りが、全身を駆け巡るのを感じた。古臭い?忘れられた神?この神社が、何を背負ってきたのか、こいつは何も分かっていない。

 

「だから、壊れちゃいなよ」

 

「ふふふ、地面を這い蹲っている土くさい妖怪が愉しい事言ってくれるじゃないの」

 

 天子の嘲笑が耳に障る。その薄っぺらな優越感に吐き気がする。

 

「この間、天界を見てきたわ。天界は広くて土地が余ってそうね。それなのにさらに地上にも住む処って……」

 

「貧しくても恨む無きは難し。地上に居るからって僻まない事ね!」

 

 その言葉に、堪忍袋の緒が切れた。

 僻んでいる?笑わせる。こいつの浅ましい野心が、この幻想郷の均衡を崩そうとしていることこそが問題なのだ。

 

「富みて奢る無きは易し。鼻につくわ、その天人特有の上から目線…」

 

「廃線【ぶらり廃駅下車の旅】」

 

 スキマから電車を召喚し、新造の神社に突貫させ、破壊する。

 背後で、何が起こったのか理解できずに立ち尽くす人々の気配が感じられるが、そんな彼らの戸惑いなど、今の私にはどうでもいい。

 私はただ、目の前の敵、比那名居天子だけを見据えていた。

 

 彼女の顔から、先ほどの余裕の笑みが消え失せ、代わりに驚愕と警戒の色が浮かび上がっている。当然だ。私の内に渦巻く怒りと妖力は、隠そうともせず、奔流となって彼女を押さえつける圧力となる。

 

 《緋想の剣》を握る手に、一層力が込められたのがわかる。それでも、その剣先はわずかに震えている。私の放つ妖力に、彼女は本能的な危機感を覚えているのだろう。

 

「な、何を…!」

 

 ようやく絞り出した彼女の声は、震えていた。その狼狽ぶりに、わずかながら溜飲が下がる。今まで見せてきた尊大な態度は、一体どこへ行ったのだろうか。

 

 スキマを使い、新造神社に集まった人間たちを里に送る。これで準備は整った。

 

 私はさらに一歩、天子に向かって踏み出す。

 

 地面が僅かに軋み、周囲の空気がさらに重くなる。

 

「貴女のような浅ましい存在が、この幻想郷の、私たちの聖域を穢すなど、断じて許されない。博麗の祭神が不在だからと言え、好き勝手に振る舞うのもいい加減にしなさい!」

 

「貴女のその傲慢な鼻をへし折ってあげましょう。二度とこの地に足を踏み入れられないように、徹底的に叩き潰してあげますわ」

 

 私の言葉は、宣戦布告に等しい。もはや、言葉による交渉は…元よりする気もなかったが、無意味だ。この女には、力で理解させるしかない。

 

「美しく残酷にこの大地から住ね!」

 

 

*1
数日後




美しく、残酷にこの大地から往ね!

この台詞が一番好き

はい、ってことで原作、東方地霊殿編(時系列は緋則天)が始まります。これが想像よりも長くなってしまい、どうなることやら。
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