東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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本っっっっっっっっっっ当に難産でした。
それと、以前の話の改修を始めました。話の内容は変えていませんが、読みやすくなったはずです…なってるかな?これ。

一話とかにあった呼び方の差異は変更しましたけどね(改修前では魔理沙が香霖堂店主を霖之助と呼んでいたが、原作では香霖のため。原作寄りに改修など)
大抵はキツキツに詰められていた文章を改行しただけです。


第123季/夏 守矢神社with油揚げ大好き式神九尾

「台所?別に良いが…なぜ?」

 

「まぁまぁ、とりあえず見といてください」

 

 そう言い、私は案内された守矢神社の台所に立ちます。広くて清潔な、ひんやりとした空気が心地よい土間。隅々まで掃除され、使い込まれつつも丁寧に磨かれた調理器具が整然と並んでいます。きっと早苗さんが毎日綺麗に使っているのでしょうね。

 

 そんな事を考えていると、後ろで成り行きを見守っていた神奈子さんたちの視線を感じます。腕を組んで壁に寄りかかる神奈子さんに、小首を傾げる諏訪子さん、そして何故か期待に目を輝かせる早苗さん。三者三様の興味が、私の一挙手一投足に注がれていました。

 

 私はひとつ息をついて袖をまくると、一番近くにいた早苗さんに向き直りました。

 

「早苗さん、豆腐ってあります?」

 

 私の言葉に、早苗さんはぱっと顔を輝かせます。

 

「ええ、ありますが…何を作るんです?」

 

 早苗さんは「待ってました!」と言わんばかりに、元気よく返事をすると、ぱたぱたと貯蔵庫の方へ向かいました。そして、よく冷えた井戸水に浸された、ずっしりと重い一つの木綿豆腐を盆に乗せて持ってきてくれます。ひんやりとした豆腐の塊を受け取りながら、私はにっこりと微笑みました。

 

「ええ、油揚げを作ろうと思います」

 

私の宣言に、皆さんは「「「油揚げ?」」」と、見事に声を揃えて間の抜けた声を上げたのでした。

 

 まず、豆腐を厚手の布巾で丁寧に包み、まな板の上に置きます。その上にもう一枚まな板を乗せ、少し力を加え、豆腐の水分を抜いていきます。本来ならば、一時間かかりますが、私の『回す程度の能力』で短縮させます。イメージとしては、フィルムの早送り…時間軸の回転を早める行為です。

 

「そんなに早く水抜きを終えるのですか?」

 

 私の能力を詳しく知らない早苗さんが困惑した様子で、私に問いかけます。彼女の疑問に、壁際でつまらなそうにしていた神奈子さんが訝しげに眉を寄せました。

 

「どう言う事だい?早苗」

 

「あぁ、神奈子様。豆腐の水抜きは時間がかかるはずなのですが…あっ、しっかり締まってる」

 

 早苗さんは恐る恐る布巾をめくり、中の豆腐に指でそっと触れ、そう言います。

 そんな二人の会話を聴きながら、私は豆腐を均等な厚さに切り分けていきます。私の迷いのない包丁さばきに、諏訪子さんが「おお…」と小さく声を漏らしています。

 

 次に、大きな揚げ物鍋にたっぷりの油を注ぎ、静かに火にかけます。油の温度が上がりすぎないように注意しながら、切り分けた豆腐を一枚、また一枚と滑らせるように入れていきました。

 

 その時、私と神奈子さんだけが、台所の入り口、柱の影に私にとっては馴染みのある気配を感じ取ります。振り返らずとも分かるその気配に、私はくすりと笑みを漏らしました。ほんと、油揚げが好きなんですから。

 

 神奈子さんにはウインクで、大丈夫ですよって目配せをしておきます。

 

「最初は低温で揚げるんですわね」

 

 そんな私たちの様子には気づかず、早苗さんは鍋の中から目を離さずに問いかけました。

 

「ええ。こうして中の水分をじっくりと飛ばすことで、ふっくらと仕上がるんです」

 

 早苗さんに答えながら、鍋の中を見守ります。やがて、豆腐がじわじわと膨らみながら、ゆっくりと油の表面に浮き上がってきました。

 

「よし、今です!」

 

 全ての豆腐が浮き上がったのを見計らって、火力を一気に強めます。すると、じゅわっという音と共に、豆腐の表面が美しいきつね色に染まり始めました。香ばしい匂いが台所いっぱいに広がり、三人と一匹?の喉がごくりと鳴るのが分かりました。

 

 完璧なきつね色になったところで網杓子で手早く引き上げ、金網の上で油を切ります。仕上げに、沸かした熱湯をさっと回しかけ、余分な油を抜けば完成です。

 

 湯気を立てる、ふっくらとして艶やかな油揚げ。我ながら良い出来です。

 

「ふっ、何度見ても、夕雲様の油揚げは美味しそうだな」

 

「ええ、とても美味しそうです。でも…これを何に使うんですか?……あれ?」

 

 早苗さんは、ようやく何かがおかしいことに気づいたのでしょう。振り返ると、そこには侵入者…見知らぬ妖怪がいるのを確認し、瞬時に後ろへ飛び退きます。そして、流れるように、どこからともなく取り出したお祓い用のお札で、侵入者に鋭く突きつけます。幻想郷に生きる巫女としての、見事な反応速度です。

 台所の空気が一気に張り詰める中、お札を向けられた侵入者は、迷惑そうに少し眉をひそめました。

 

「まあまあ、早苗さん、落ち着いてください。私はその人を呼びたかったんですよ」

 

 私が二人の間に割って入ると、壁際で面白そうに見ていた神奈子さんもやれやれと首を振ります。

 

「まだまだ修行が足りないな、早苗。早苗が気づいてなかっただけで、そいつは途中からいたぞ」

 

「えっ…!?」

 

「勿論、私たちは気づいてきた」

 

 その言葉が出た瞬間、神奈子さんの隣にいた諏訪子さんの肩が、ぴくりと僅かに揺れました。

 

「えっ…!?」

 

 諏訪子さんが素っ頓狂な声を上げています。その目には「私も含まれてるの!?」と戸惑っています。気づかなかったんでしょうね。私の視線に気づいた諏訪子さんは、はっと我に返ると、慌てて咳払いを一つして威厳を取り繕いました。

 

「そうよ、早苗。もっと修行しなきゃね」

 

 場の空気が少しだけ和んだのを見計らい、この一連のやり取りを静かに見ていた侵入者…もとい、藍が、改めて向き直ります。

 

「こちらこそ、勝手に入ってしまって申し訳なかった。私は幻想郷の賢者、紫様の式神である八雲藍だ。以後よしなに」

 

 守矢家の方々に向けた完璧な一礼に、私は一つ頷き返すと、本題を切り出します。

 

「藍、貴女を呼んだのは他でもありません。交渉をしに来ました」

 

 私はそう言って、金網に並んだ極上の油揚げを示すと、藍の視線が、面白いぐらい私と油揚げの間を往復します。

 

「いつも通りの内容です。この油揚げが欲しかったら、紫を呼んでください」

 

 その言葉が出た瞬間、台所の空気が張り詰めました。神奈子さんと諏訪子さんの表情が、面白がるものから神としての真剣なものへと変わり、藍は忠実な式神の顔に戻り、丁寧に断りを入れます。

 

「…お取次ぎ自体は問題ありませんが、紫様は現在、ようやく異変がひと段落着いたらしく、お疲れになってらっしゃったので、もしかするとお休みになられているかもしれません」

 

 ふむ、疲れているならば休ませてあげたいですね。それにしても、博麗の巫女が解決せずに、紫自身が異変解決に出向いたのでしょうか?最近、紫が異変に関与することが多い…まぁ、問題ないでしょう。

 

「…なるほど。では、神奈子さんと紫の予定を鑑みて、日程を決めますか」

 

「承知しました。紫様に伝えておきます。それと、夕雲様。差し支えなければ、紫様を呼ぶ、その理由をお聞かせ願えますでしょうか?」

 

 ふむ、ちゃんと式神をしているようで、感心です。油揚げは一つの予定でしたが、二つにしてあげましょう。それで…理由ですか。

 

「そうですね…神奈子さんの神格と、その身に宿す八咫烏の分霊を分離する儀式を行います。ですが、二つの強大な神性は、長年の間に固く癒着しています。これを無理矢理こじ開ければ、神奈子さんの神格そのものを傷つけかねません」

 

 本当は映姫さんもいると、簡単なのですが、彼女は忙しそうですからね。いや…おそらく、彼女の部下である霊暮の後始末のためならば、もしかすると快諾してくれるかもしれません。

 

 …まぁ、過ぎたことは良いです、しょうがないです。それに、緩みさえすれば、私だけでも引っこ抜けます。

 

「そこで、あらゆる物事の境界を操る、紫の力が必要ってわけです。癒着し、曖昧になった境界を、壊さず、傷つけず、ただ“緩める”。それには、紫の力添えが不可決なんですよ」

 

 私の説明に、藍はしばし黙考していましたが、私の計画の全容と紫の力が必要な理由に納得がいったのか、深く頷きました。

 

「なるほど、承知しました。それでは、お伝えしますね。油揚げはその後でお願いします」

 

 彼女はそう言うと、ふわりと空間に解けるように消えようとしますが、その瞬間、台所の何もない空間に、まるでファスナーが開くかのように、一本の裂け目がジジジ、と音を立てて現れ始めました。

 

 なんだ、紫、聞いてたんですか。

 

 私の呆れたような呟きと同時に、裂け目の中から優雅な日傘がするりと差し出され、続いて扇子で口元を隠した紫が現れました。

 

「ゆ、紫様!いつからそこに…!」

 

 藍が驚いて慌てて傅くのを、紫は扇子の向こうで楽しげに目を細めて見ています。神奈子さんと諏訪子さんは表情を引き締め、早苗さんに至っては、何が何だかわからないみたいな顔をしていました。

 紫は、まるで自分の庭を散歩するかのように台所の中央へ進み出ると、私に向き直ります。その瞳は、全てを見透かすように細められていました。

 

「夕雲、貴女がそこの神様と八咫烏の神格を剥がしたいってのは理解したわ。けど、理由が聞きたいわね。貴女は"何故”そんな事をするのかしら?」

 

 紫は「まぁ、なんとなくわかるけどね」って言いながら、私の答えを待っています。もう長い付き合いです。私が自発的に動くときがどんな時だなんて知っているくせに…

 

 一つは幻想郷の均衡のため。

 

 二つ目は誰かとの約束。

 

 そして、最後に…

 

「私の愛し子(巫女)のためですよ」

 

 

 

 




内容が冗長すぎる。

いつの日か言った、二次創作と原作の知識の齟齬云々はここです。藍は多少なりともスキマの力を使えると思ってたけど、全然そんなことなかったです。そのせいで、紫が出張することになりました。

藍に謎アイテム持たせてスキマを利用可能にしようかと思いましたが、原作や元ネタも無さそうなのは気が向かず、とは言え、紫に内緒で事を進める想定だったし…いや、ほんと難産でした。

って事で、分離させるシーンはカットです。ケーネが食べちゃいました。

それと、10000UAや評価、誤字脱字報告感謝です。評価を貰っただけで、こんなUA増えるんですね。伸び率が凄すぎて笑っちゃいました。1日で作品の10分の1強ですよ。
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