いきなりスペカ出してきます。
追伸:これまでの話で、博麗の巫女が何代目か明記してきたのを修正しました。
2025/07/29
神力を解放すると言う表現を別の表現にしました。
「それじゃあ、始めましょうか、スペルカードは…4枚で」
「構わないわ」
霊暮と同じく、上空に移動すると、空気は研ぎ澄まされたものへと変わっていました。霊暮はどうやら本気で私と戦うようですね。
私は普段から使っている霊力だけではなく、
その変化に、霊暮の表情に微かな驚きの色が浮かびます。
「…お母さんも本気なんだね」
その声には、先ほどまでの遊び半分な調子は消え失せ、真剣な響きが宿っていました。
「ええ、どこぞの馬鹿娘を叱る良い機会ですから、少し懲らしめます。さぁ、まずは一手」
私は意識的に不敵に微笑みます。ここで手加減をしては、霊暮のためになりません。私に会いたいからって、こいしちゃんの体に取り憑いた事や是非曲直庁にスカウトされるほどの地獄での暴れっぷり、現世の天人や仙人を全員地獄送りにしようとする…などなど、霊暮に対して本気で叱りたい事はたくさんあります。
私の掌から溢れ出た眩いばかりの神力は、瞬く間に形を成し、巨大な光の渦となって、私の前に収束していきます。
私はスペルカードの名を唱える同時に、光の渦を猛烈な勢いで膨張させ、一つの巨大な光の奔流として、霊暮目掛けて放ちました。
威力、速度、そしてその全てを飲み込むかのような圧倒的な熱量を持った光の塊が、空間を軋ませながら霊暮に迫ります。中庭の空気は熱で歪み、地霊殿の屋根瓦ですら、スペカによって溶け始めています…後で直しておきましょう。
しかし、霊暮は臆することなく、不敵な笑みを浮かべました。彼女の周囲に広がる夕焼け色の靄が、まるで意志を持ったかのように蠢き、迫りくる光の奔流に立ち向かおうとしています。靄は次第に濃くなり、ついには黒に近い紫紺の闇へと変貌しました。
「面白いね、お母さん!それじゃあ、私も一発!」
「冥道『現世隠し』!」
霊暮が腕を大きく広げると、彼女の背後に広がる闇が突如として無数の壁と化し、私の光と激突します。光と闇がぶつかり合う轟音は、旧都の地下深くまで響き渡り、地霊殿全体が激しく揺れ動くほど、その衝撃波は、傍観していた神奈子とさとりを思わず身をかがめさせるほどです。
「へへ、どう?」
威力をスペルカードルール用に調整しているとはいえ、まさか私の光線を防がれるとは…いえ、違いますね。私の光線を「太陽」と仮定して、沈む…歪ませたのでしょう。流石は霊暮です。ですが…
「油断大敵ですよ」
弾幕ごっこは、始まったばかりです。先ほどの極太の光線は、私の先達のアメさんを表したもの。光線が終わった間際に、私は二つの弾幕の塊を設置します。ちなみに、これはタカさんとカムさんのお二人方を表現したやつです。放射状に放たれる赤と青の弾幕が霊暮を狙います。
「っ!でも、このぐらいなら!」
霊暮はそう言って、迫りくる二つの光の塊から放たれる弾幕を巧みに避け始めました。夕焼け色の体が中庭を縦横無尽に駆け巡り、まるで舞を踊るように弾幕の間をすり抜けています。
「死角にも注意です」
私はスペルカードを発動した瞬間、霊暮の足元と頭上に、複数の巨大な光の柱を作り出します。柱はそれぞれ、霊暮の動きを予測するように追い詰め、やがて彼女の周囲を完全に囲い込みました。まるで竜巻のように回転する光の螺旋は、霊暮をその中心に閉じ込め、逃げ場を完全に塞ぎます。
しかし、霊暮は不敵な笑みを浮かべたまま、その身に宿る夕闇をさらに深く濃くしました。そして、彼女の背後から、巨大な影が立ち上がります。それはまるで、北欧の終末に現れるという、太陽や月を食らう大狼のような幻影です。
「終焉『神昏いの大狼』!」
霊暮がスペルカード名を叫ぶと同時に、彼女を包み込んでいた影の大狼が咆哮を上げました。その咆哮は音を伴いませんでしたが、しかし空間そのものを震わせるような強い響きでした。そして、影の大狼は、私の神力を宿した光に嚙みついたと思えば、そのまま咀嚼して、食らい尽くし、瞬く間に螺旋を崩壊させました。
霊暮は、その大狼の影の中から、まるで何事もなかったかのように姿を現します。彼女の表情には、一分の焦りもなく、むしろ私の攻撃を乗り越えたことへの純粋な喜びが浮かんでいるように見えます。
「残念、お母さん。その程度の拘束じゃ、私を捕まえられないよ」
「…さっきから言ってるでしょう、油断は禁物です」
私のとっておきのスペカから逃れたのは、褒めてあげます。ですが、私が今回使うスペルカードは四つ。一つ目は始源にして、究極。ありとあらゆるを消滅する極大の光線。それに加えて、創造を司る先達を表した赤と青の弾幕。二つ目は螺旋を描いて、相手を拘束する私のもの。そして、最後は…
霊暮が私の次の言葉を待つかのように身構える中、空間そのものがざわめき始めました。私が、光の螺旋が消え去った後も残っていた神力の残滓を、収束させ、大量の弾幕へと姿を変えさせた結果です。
私は、葦の芽が飛び出るかのように、光の尖弾が次々と作り出し、霊暮に狙いを定めます。色とりどりの光の粒が、まるで生命が芽吹くかのように空間を満たし、その全てを霊暮一点に集中させます。
「さて、これで終わりですよ」
「っ……しつこいなぁ、お母さん!」
霊暮の顔から、先ほどまでの余裕が消え失せました。彼女は素早く闇の衣を纏い、迫りくる弾幕の嵐を必死に回避しようと舞い始めますが、私の放った弾幕は彼女を追尾し、その数は一向に減りません。そのせいで、何回か霊暮は被弾しました。
それでも、霊暮は耐え抜きました。
私の放った弾幕の嵐を、彼女は被弾しながらも、ただの一度も戦意を消失させることなく耐え抜いたのです。
「はぁはぁ、私の勝ちだね。お母さん」
「相手が動かなくなるか、敗北を宣言するまで油断してはいけませんってば」
私がそう告げると、霊暮が今し方避けたはずの弾幕が、彼女の背後で一斉に輝きを取り戻します。あのスペルカードの最後は、活力と天の永久を表したもの。前段階では、雨後の筍のように増える弾幕が対象を襲い、それでも仕留めきれなければ、背後から凝縮された光が巨大な波濤となって、相手を押し潰します。それは、まるで空に浮かぶ積乱雲のように巨大なものです。
「さっきので、最後じゃないの?」
「これと合わせて、最後です」
霊暮は、私の言葉にギッと顔を歪めました。その透き通るような体から、最後の力を振り絞るように夕焼け色の靄が噴き出しますが、その輝きは弱々しいです。彼女が振り返る間もなく、背後から迫る光の波濤は、容赦なく霊暮の細い体を飲み込みました。
「うっ……あぁ……!」
霊暮は苦悶の声を上げ、光の波濤の激流の中で藻掻きますが、その動きは次第に鈍っていきます。弾幕が収まると同時に、力尽きた霊暮の体が重力に従い、地面へと落ちていきます。
私は、霊暮の体が地面に叩きつけられる寸前、素早く彼女のもとへ移動し、その小さな体を宙でそっと抱きとめました。霊暮はぐったりと力が抜けきり、私の腕の中でぐったりとしています。怖くなって、念の為、顔を見てみますと、私の腕に抱かれた彼女の表情は、疲労困憊の苦痛と共に、どこか安堵のような色が浮かんでいました。
「全然、最後じゃないじゃん」
と霊暮が軽口を叩きますが、その声はかすれていて、会話する元気もなさそうです。私は優しく霊暮の頭を撫でてやります。
「霊暮が勝手に勘違いしただけですよ」
私の言葉に、霊暮は小さく息を吐いて、ジトっとした目で私を見てきます。ふふ、どうやら大事には至ってなさそうですね。私は「回す程度の能力」を使い、霊暮の傷ついた体を直していきます。
「それにしても、ずいぶん強くなりましたね、霊暮。私のスペルカードをよくここまで耐え抜きました。3枚目あたりで倒せると思ったのですが…本当に強くなりましたね」
…なんでこの子は、死後に強くなってるんでしょう。それはともかく。
私は霊暮の体を抱きかかえたまま、ゆっくりと中庭の地面に降り立ちます。霊暮もある程度の体力が戻ったのでしょう、自分の足で地面に立ち、ゆっくりと空を見上げます。その瞳には、かつての不遜な輝きはなく、どこか晴れやかな諦めが浮かんでいました。
「それで、霊暮はこれからどうするんです?」
「うん。お母さんが元気にしてるのも、楽しそうに暮らしているのも確認できたし、大体、やりたい事はやれたわ。それに、有給がもう尽きるからね、そろそろ是非曲直庁に戻るよ」
その言葉に、私は安堵の息をつきました。これでようやく、一連の騒動に終止符が打たれます。地獄にも有給があるのは驚きですが…
そんな事を考えていると、霊暮はさとりさんが抱きかかえているこいしちゃんの方へ向き直り、その場で深々と頭を下げていました。
「古明池こいしさん…貴女の心を、勝手に拠り所にしてしまったことを謝罪します。本当にごめんなさい。さとりさんにもご迷惑をおかけしました」
その真摯な謝罪に、さとりさんは静かに首を横に振ります。
「…妹に代わって、謝罪を受け入れましょう。私の妹に勝手に取り憑いたのは許せませんが、夕雲さんの顔を立てるのと、家族の事が大切な気持ちに免じて、今回だけは許します」
さとりさんの優しい言葉に、霊暮は少しだけ救われたような顔をします。
「今度は、映姫様から正式に許しをもらって、堂々と地上に行くわ!お母さんに、大手を振って会いに行くからね!」
「ええ、楽しみに待っていますよ、霊暮」
私の返事に、霊暮は満足そうに頷くと、悪戯っぽく笑います。
「ふふ、
「ええ、約束です」
「じゃあ、またね」
霊暮は最後に悪戯っぽく笑うと、自身を闇に包み、その場から立ち去りました。夜…どう言うより、影や闇を媒介にした移動術でしょう。いつのまに、そんな技を身につけたのでしょうか。
(ようやく終わりましたね)
後に残されたのは、静寂と安堵の空気でした。私もようやく肩の荷が下りたのを感じ、大きく背伸びをします。永遠亭を出てから、何かしらの異変が起こり、私の核が揺れ、それから霊暮とこいしちゃんの憑依を破るために、動く…かなり多くのイベントが重なりましたからね、相当疲れました。
ふと、辺りを見回しますと、さとりさんは腕の中で穏やかな寝息を立て始めたこいしちゃんの頭を、愛おしそうに撫でており、神奈子さんはどこか遠くを眺めています。
さて、久しぶりに羅万館に帰りますか!
「あっ、神奈子さん。八咫烏はお返ししますね!」
「あぁ、預かるよ」
神奈子さんが差し出した手に、私は八咫烏の分霊をそっと戻しました。これで今回の騒動は本当に終わり。旧地獄での旅行?は思いがけない形で幕を閉じましたが、霊暮との真剣勝負は、私にとって何よりも貴重な経験でした。羅万館の暖炉の火が、今夜はいつもより温かく、心地よく感じられる事でしょう。
◆
カー、カー、と。
声のした方へ、守矢の神はゆっくりと視線を向ける。あの賢者とその愛し子のやり取りは、殆ど聞こえなかったが、それはもうどうでも良い。
重要なのは、信仰を集めること。
(ほう…これは、、、面白いものを見つけた)
館の屋根の端に、一羽の地獄鴉が止まり、虚空に向かって鳴いている。何の変哲もない、この地の底ではありふれた一羽の鳥。
思わず、笑みを浮かべてしまう。なんと、都合の良い事だろうか。夕雲殿が私の八咫烏を分離してから、八咫烏の扱いに手をこまねいていたが、ちょうど良い。
神奈子の口元に、これまで見せたどの笑みとも違う、野心的で、どこか危険な光を宿した笑みが、ゆっくりと浮かび上がっていく。
地霊殿の中庭に、一羽の地獄鴉の鳴き声だけが、やけに大きく響き渡っていた。
次から新しい章です。みんな大好きあのキャラの登場が増えます。その前に幕間ですけどね。
それにしても、ほんと、まじで、長かった。そして、粗が多すぎた……それに知識不足。書籍集めなきゃなー。