東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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書きたいとこまで行くのが遠すぎて、絶望している作者です。ついでに、
息抜きに画像作成AIに書いてもらった夕雲さんです。文章書く何倍も疲れました。二度としません。
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髪飾り?奴は死にました。
こんな物憂げな顔していますが、昨日投稿したのを見たらわかると思いますが、結構騒がしいやつです。冷静に考えて、昨日のやつはまた今度投稿すればよかったな、勢いでやりすぎちゃった、少し反省。
にしても…褒め散らかしたいなぁ……


第123季/冬 羅万館with 9.バカ

 

 

 

 

 

 ついに本格的な冬が始まりました。外は寒く、外出する気にもなりません。避寒地として地霊殿にでも行って、春になるまで籠ると言うのも考えましたが、そう何度も長期休暇を取るわけにはいきません。

 

 ですが、こんな凍えるような天気の中、誰が来るとも思えないのも事実。迷いながらも、私はカウンターで、暖炉の火がぱちぱちと爆ぜる音だけを伴侶に、静かに本のページを捲ることを選びました。

 

 そんな静寂の中、羅万館にまるで氷の槌で叩き割るかのような乱暴な音が響き、玄関の扉が開け放たれました。ガラン、と鈴が悲鳴のような音を立てます。

 一陣の吹雪が店内に吹き込み、暖炉の火が大きく揺らめきました。

 

「いらっしゃいま…」

 

 言いかけた言葉を、私は思わず飲み込みました。そこに立っていたのは、青色の服に氷の羽を持つ妖精。今は、霧の湖の辺りを縄張りにしている、妖精の中でもとびっきり力を持つ妖精、チルノです。

 

(チルノがなぜここに…羅万館から霧の湖は相当遠いですが…)

 

「へっくしゅん!」

 

 氷の妖精らしからぬ大きなくしゃみを一つすると、チルノはぶるぶると体を震わせ、鼻をすすりました。その小さな鼻の頭は、寒さで赤くなっています。

 

「いらっしゃいませ。随分と元気なご挨拶ですね。チルノさん」

 

 私が穏やかに声をかけると、彼女は氷の羽を一度はためかせ、カウンターまで一直線に飛んできました。そして、ドン、と小さな両手をつきます。

 

「…あれ?」

 

 何か言いたそうな雰囲気でしたが、私が名前を呼んだ事に気づいたのでしょう。彼女は目を丸くしてこちらを指差しました。

 

「な、なんであたいの名前、知ってるのよ!?アンタ、何者!?」

 

 その剣幕は、まるで秘密を探られたスパイのようです。ですが、その瞳に宿っているのは警戒よりも、純粋な驚きと、ほんの少しの期待。その表情に、私は思わず笑みを深くしました。

 

「ふふふ、霧の湖で(自称)最強の氷の妖精さんと言えば、この辺りでは有名ですよ。その武勇伝は、風の噂で私のお店にまで届いています」

 

「ふっふーん、そうでしょう、そうでしょう!」

 

 私の言葉に、彼女は指差すのも忘れて、胸を張ってふんぞり返ります。単純な子で助かりました。

 

「それで、その有名なチルノさんが、一体どうしてこんな辺鄙な店まで?霧の湖からは、随分と離れていますが」

 

「そうね、なにか忘れちゃったけど来ないといけない気がしたのと、最近霊夢の神社で地面が揺れたり、温泉が沸いてたりしてるって聞いたから!きっとおっきな人が歩いたり、お湯を入れたせいだわ!私はそいつを倒して、サイキョーを証明するってわけ!今日はっその探索!」

 

 地面の揺れ、温泉…。それは、地底の誰かの仕業でしょうか。私は内心で眉をひそめつつも、彼女の単純な思考回路に話を合わせます。

 

「なるほど、なるほど。もしかするならば、だいたらぼっちの可能性がありますね」

 

「だいたらぼっち?」

 

「ええ、だいたらぼっちって言うのは…いえ、その前に飲み物を注いできますね」

 

 私はカウンターの奥で、温めた牛乳にたっぷりと蜂蜜を溶かして、彼女の前に差し出しました。湯気の立つカップを、チルノは恐るおそるといった様子で覗き込んでいます。

 

「さあ、どうぞ」

 

 促されると、チルノは意を決したように両手でカップを持ち、一口、こくりと飲み込みました。

 

 そして、数秒の沈黙。

 

 彼女の青い瞳が、今までにないほど大きく、きらきらと見開かれました。

 

「な、なによこれ!あ、甘くて…あったかい…!?」

 

 氷の妖精であるはずの彼女の体の中から、驚きと感動で、ぽかぽかとした陽だまりのような感情が溢れ出しているのが、私には手に取るように分かりました。

 

 そのまま、彼女は小さな体を精一杯に使って、こくこくと蜂蜜牛乳を飲み続けます。そして、空になったカップをカウンターにドンと置くと、「かぱー」と、どこかの酒場で大人が酒を飲み干したかのような、実に小気味良い音を立てました。そして、満面の笑みで、私の名を呼びます。

 

「夕雲!おかわり!」

 

「ええ、構いませんとも」

 

 私は苦笑しながら、再び彼女のカップに温かい蜂蜜牛乳を注ぎました。それほど喜んで貰えるとは思っていませんでしたから。

 

「それで、だいたらぼっちの話の続き、聞かせてくれる?」

 

 二杯目のカップを、今度は宝物のように両手で包み込みながら、チルノは期待に満ちた瞳で私を見上げます。すっかり、私を「話の分かる人間」だと認識したようです。

 

「ええ、もちろんです」

 

 私はカウンターに肘をつき、少しだけ声を潜め、まるで古い物語を語り聞かせるように、ゆっくりと話し始めました。

 

「だいたらぼっち、というのは、この幻想郷が生まれるよりも、ずうっと昔から、この大地の深くに眠っている、大きな大きな山よりも大きな大妖怪のことです。普段はぐっすり眠っているのですが、たまに、寝返りをうつことがあるのですよ」

 

「寝返り?」

 

「ええ。その巨体が少し動くだけで、大地は揺れ、固い岩盤はひび割れます。そして、そのひび割れから、地底の熱い血潮…つまり、温泉が吹き出すのです」

 

 私の言葉に、チルノの瞳は、もはや蜂蜜牛乳に向けられてはいませんでした。まだ見ぬ巨大な敵への、挑戦的な輝きに満ちています。彼女の頭の中ではもう、その巨大な妖怪と自分自身が、壮大な戦いを繰り広げているのでしょう。

 

「なるほどー!そいつが、最近の変なことの犯人なのね!よーっし!」

 

 チルノは二杯目の蜂蜜牛乳を一気に飲み干すと、再びカップをドン、と置きました。

 

「決めたわ!あたい、そいつを懲らしめに行く!それで、そいつを子分にして、手懐けたら怖いものなしだ!」

 

 その小さな体から発せられる、あまりにも大きな決意。私はその様子を微笑ましく思いながら、一つだけ、助言を送ることにしました。

 

「だいたらぼっちは、悪さをしようとしているわけではないのかもしれません。戦う前に、まずはお話してみるのも、本当の『最強』の嗜み、かもしれませんよ?」

 

「む……。そ、そうね!あたいくらいサイキョーになると、それくらいの余裕を見せてあげなきゃね!分かったわ、話も聞いてあげる!」

 

 満足そうに頷くと、チルノは「じゃあね、夕雲!」と元気よく言い放ち、来た時と同じく、一陣の風のように店から飛び出していきました。今度は、鈴もどこか楽しげな音を立てたように聞こえました。

 

 一人になった店内で、私は空になった二つのカップを片付けながら、小さく呟きます。

 

「夕雲…ですか。私の名前を、チルノさんが知っているのはなんだか意外ですね」

 

 

 

 

 

 

 あのお店を飛び出したあたいは、全身に力とやる気がみなぎっていた。

 

 まずは、事件が起きてるっていう霊夢の神社に向かう。そいつが本当にいるのか、この目で確かめてやらないとね!もし本当にいたら、あのお店の人に言われた通り、まずは話を聞いてあげる。あたいくらいサイキョーになると、それくらいの余裕を見せてあげなきゃ!それで、子分にしてやるんだから!

 

 そんなことを考えているうちに、雪に覆われた博麗神社の鳥居が見えてきた。境内に勢いよく着地すると、縁側で巫女が一人、退屈そうにお茶をすすっているのが見えた。

 

「霊夢!あたい、すごい情報を手に入れたわよ!」

 

 あたいが大きな声でそう言うと、霊夢は心底面倒くさそうな顔で、ゆっくりとこちらを向いた。

 

「うっさいわね…。何よ、チルノ。またあんたが何か面倒事を起こしたの?」

 

「ちがうわよ!面倒事を解決しに来てあげたの!」

 

 あたいは胸を張って、さっき仕入れたばかりの知識を、さも自分が突き止めたかのように話し始めた。

 

「最近、この辺が揺れたり温泉が湧いたりしてるでしょ!あれはね、『だいたらぼっち』っていう、おっきな妖怪の仕業なのよ!」

 

「だいたらぼっち?」

 

 霊夢は湯呑みを置くと、呆れたようにため息をついた。

 

「何よそれ、おとぎ話?ただの地震でしょ。温泉なんて、たまたまどっかから湧いてきただけじゃないの」

 

 む、ぜんぜん信じてない顔だ。

 

「ちがう!だいたらぼっちだって!」

 

「はいはい、そうね。で、そのおっきな妖怪を見つけてどうするのよ」

 

「決まってるじゃない!あたいがやっつけて、子分にしてやるのよ!」

 

 あたいがそう宣言すると、霊夢は「はぁ…」ともう一度ため息をついて、本気で取り合おうとしない。こいつ、あたいの実力を分かってないんだわ!

 

「本当なんだから!夕雲が言ってたんだから、間違いっこないわよ!」

 

 私がそう叫んだ、瞬間だった。霊夢の眉が、ピクリと動いた。

 

「……夕雲?」

 

 彼女は、初めて聞く名前に首を傾げた。

 

「…まぁ、いいわ。そいつは、あんたの新しい友達?変な奴にそそのかされてるんじゃないでしょうね」

 

「友達…いや、新しい子分よ!すっごく物知りで、甘くてあったかい飲み物もご馳走してくれたんだから、うん、私の子分ね!」

 

「ふーん。まあ、あんたに何か吹き込んだそいつのことはどうでもいいけど」

 

 霊夢はそう言うと、興味を失ったように、再びお茶をすすり始めた。

 

「とにかく、面倒事を起こすんじゃないわよ。もし本当に異変なら、それは私の仕事なんだから」

 

「むっきー!霊夢のやつ、あたいだけじゃなくて、優しくしてくれた夕雲のことも信じてない!見てなさい!」

 

 あたいは固く決意した。絶対だいたらぼっちを見つけて、あいつを子分にして、霊夢の目の前に連れてってやるんだから!そしたら、あたいも夕雲もすごいって、あいつだって分かるはずだ!

 

「じゃあね!」

 

 私はそう言い放ち、霊夢の返事も聞かずに、再び空へと舞い上がった。

 まずは、一番怪しいあの山の上から、だいたらぼっちのやつを探し出してやる!

 

 

 

 

「どっかで聞いたことあったような気がするわね…あれ?なんて名前だったかしら」

 

 

 











非想天則で、チルノがだいたらぼっちなんて知ってるのか?と思ったので、誰かに教えてもらった…と言うことにしました。(けど、因幡の白兎の事は知ってるんだよなぁ)

妖精って不思議ですよね。神様は万物に宿るように、妖精は自然に宿る。神様と妖精って、もしかすると似てるのかも?
信仰を獲得できず、人間に名前をつけられることのなかった存在が妖精なのかもしれませんね。
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