東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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番外はこれ(と後少し)で終わりです。

全然話変わりますが、神仏習合って東方的にどんな設定なんでしょうね。分霊の一つが合体した的な?難しい


番外 原作地霊殿③

 

 

 

◆ Stage 5 昔時の業火

 

 さとりさんに見送られ、巫女は地霊殿の中庭へと足を踏み入れました。そこは、先ほどまでの静かな屋敷とは別世界。灼熱の炎が絶えず燃え盛り、地面は黒く焼け爛れた、まさしく地獄のような場所でした。

 

(あー暑いわねー。冬服着てきて損したわ)

(それ、冬服だったの?)

 

 毎度、今代の巫女の服を見ると思うのですが、なぜ袖がなく、肩と脇が開く形の服装なのでしょう。夏服ならわかるのですが、冬服まで開けてるとなると…うーん、わかりません。今度、ツケを払うついでに霖之助さんに聞いてみましょう。…まさか、彼の趣味だったりしませんよね。

 

(中庭ってこんな地獄のようなところとは思わなかったわ。……あっ、猫、あの猫、地霊殿からずっと付いてくるんだけど何か嫌ねぇ)

 

 巫女は紫の言葉をまるで聞こえていないかのように無視し、前を見据えます。その視線の先では、一匹の黒猫がちょこんと座っていました。

 

 あの極上のモフモフ…お燐さんですね。

 

 私がそう考えた次の瞬間、ボンと軽い音を立てて、二本足で立ち上がりました。そして、手押し車を携えた、快活な少女の姿へと変わります。お燐さん人間モードです。

 

(じゃじゃーん。お姉さん、楽しい事してるね!どこに行くんだい?)

(わ!猫が猫になった!)

(それを言うなら猫が猫車になった、かな?)

 

 猫の妖怪であるお燐さん。彼女は、紫の式神である藍の式神、橙とはまた違うモフモフを持った死体を運ぶ火車という妖怪ですね。

 

(猫の姿のままの方が楽なんだけど会話がまともに出来ないからね、またモフモフされたら堪らないし、元の姿に戻しちゃった)

(さっきのさとりが言ってたペットってやっぱりあんたかな?)

(見てた見てた聞いてたよ。ご主人様の勇姿、お姉さんの野望!間欠泉を止めるんだって?止めときな止めときな。あいつは危ない奴さ!ここらで一番危険な地底の鳥だ)

(ここまできて引き下がる訳にいかないでしょ?自分だって危ない猫の癖に)

 

 私の隣で、紫がふと、関係のないことを呟きました。

 

「そうそう、うちの猫は何処に行ったっけ?すぐ居なくなって困るのよねぇ。自分の式神なら自分でちゃんとプログラムして欲しいわね。バグの無いように」

 

「困りますよ、紫。後で、橙をモフモフしに行くので、藍に…いえ、藍をモフモフするのもいいですね」

 

「その前に、夕雲はお説教だけどね」

 

 …どうにか、逃げたいところ、、、酔わせましょうか。

 

 右目の先では、お燐さんと霊夢の問答が、弾幕ごっこへと発展していました。

 

(ま、そんな危険な鳥を相手にする位なら私とやるよ!)

(望むところ!あんたもその鳥も倒して、私はさっさと帰るわ)

(人間の貴方を殺して、業火の車は重くなる~♪あー死体運びは楽しいなぁ!)

 

 陽気な歌と共に、怨霊たちが弾幕となって巫女に襲い掛かります。しかし、それも長くは続きませんでした。

 

(お見事!最近の人間はみんな強いわね、この間のお姉さんだけが例外だと思ってたよ)

(あー、暑くてやってらんないわ。さっさと終わらせよう)

(あんたならきっとあいつもやってくれるわね!期待して待ってるわ)

(変な感じねぇ)

(霊夢、ここまで来たら後は一本道。もう行くしかないわよ)

 

 巫女は、紫とお燐さんに促されるまま、灼熱地獄のさらに奥へと進みます。

 

(その、この先にいるペットってどんな奴なの?)

(うちらと同じでさとり様のペットなんだけどね。最近、果てしなく強大な力を手に入れたのよ。それで誰の手にも負えなくなって……。うちら動物は長く生きながらえたり、怨霊や魑魅魍魎を飲み込んだりする事で力を得るの。でもあいつは……ご主人様が言うには、神の力を飲み込んだとか)

 

 その言葉を聞いた瞬間、私の左目に映る紫の表情から、いつもの笑みが、すっと消えました。

 

「夕雲、今の聞いた?」

 

「もちろん聞きましたよ。私がこの間行った時に見たさとりさんの鳥のペットはハシビロコウと地獄鴉…ハシビロコウは力が弱かったので、恐らくは地獄鴉です。となると…」

 

「八咫烏よね。夕雲、私が分離した後、あれどうしたの?」

 

「神奈子さんに返しました。おそらく、彼女が今回の異変の元凶…最悪、巫女が負けたら、私が出向きます」

 

(うん。神様って消化に良いのかなぁ)

 

 道理で、さとりさんが私に助けを求めていた訳です。

 

 巫女の呑気な返事とは裏腹に、私と紫の間に、これまでとは比較にならないほどの、重い緊張が走ったのを、私は肌で感じていました。

 

 

 

 

 

 

 

◆Stage 6 荒々しき二つ目の太陽

 

 巫女がお燐さんに見送られ、灼熱地獄のさらに奥へと進んでいくのを、私は固唾を飲んで見守っていました。隣に座る紫は笑みは消し、賢者としての冷徹な光だけを宿らせています。

 

 私の右目に映る光景は、もはや灼熱というよりは、全てを融解させるほどの熱の奔流でした。まるで、二つ目の太陽が、この地の底に生まれてしまったかのよう…

 

(だー、もう駄目!こんな所にいたら目的の鳥を見つける前に焼け死んじゃうわよ。焼け巫女よ焼け巫女)

(大丈夫、もう見つかる寸前よ)

(何の根拠があって言ってるのか判らないけど私もそう思う)

 

 その時、熱の奔流の中心から、一人の少女が姿を現しました。その身に、およそ不釣り合いな制御棒と化した禍々しい右足に、胸に真紅の瞳を飛び出させ、背後の黒い太陽とともに、圧倒的な力を周囲に撒き散らしています。おそらくは彼女が間欠泉の原因。

 

(やっと見つけたわ!私の名前は、霊鳥路空(れいうじうつほ)!貴方が噂の地上から来た変わり者ね?私に会いに来るって噂を聞いて、いてもたってもいられなかったわ)

(ほらね。そろそろ見つかると思った。私の勘に間違いは無いんだから)

(貴方の目的は間欠泉を止める事ですって?遥か遠くの地上からわざわざ来てくれたのにこんな事言うのも心苦しいんだけど……間欠泉は止まらないわよ。もう遅い、遅すぎたわ)

 

 その言葉に、私の隣にいる紫の空気が、張り詰めました。

 

(何ですって?)

 

 紫の声に、空さんはその身に満ちる力に酔いしれるように、誇らしげに胸を張ります。

 

(間欠泉は私が手に入れた究極の力の余剰分を地上に逃すためだけの穴。私はもう究極の力を手にしてしまった。その力を使う度に間欠泉が湧くの。だから止める事が出来ない)

(究極の力だって?使う度に間欠泉が湧くって、湯沸かしの力かしら)

(霊夢、貴方なら見える筈。目の前の鳥は、何の神を喰らったと思う?)

 

 紫の問いは、巫女を通して、私にも向けられているかのようでした。

 

(うーん……お湯を沸かす神様?謎ね。何にしてもここまで来たらこいつを倒せば間欠泉が止まる筈)

(ふふふ、そうこなくちゃね!貴方を倒した後は地上にこの力を試しに行くつもりよ。うふふ、哀れ地上は新しい灼熱地獄に生まれ変わる)

(ほんと、良かったわね。地上に行く前に私に会えて。地上に住む究極の巫女の力で倒されて、貴方は地上侵略を諦める事が出来るんだもん)

 

 二人の間で、最後の問答が交わされます。そして、空さんは、その身に宿す力をついに解き放ちました。

 

(黒い太陽、八咫烏様。我に力を与えてくださった事に感謝します。地上に降り注ぐ太陽の光。それは新しい原子を創る核融合の熱。究極の核融合で身も心も幽霊も妖精もフュージョンし尽くすがいい!)

 

 八咫烏――その力は『核融合を操る程度の能力』と言ったところでしょうか。

 

 私の右目の先で、地獄鴉の背後に、全てを焼き尽くす黒い太陽が出現しました。その圧倒的な熱量と光は、鴉の目を通した私の視界さえも白く染め上げ、私たちのいる神社の縁側まで、その揺らぎが伝わってくるかのようです。

 

 博麗の巫女と、地獄の太陽との、決戦が始まりました。

 

 

 

 

 目の前の、黒い翼を持つ鴉が忌々しげに私を睨みつけている。その身に宿す途方もない熱量が、肌を焼くようにビリビリと伝わってきた。地底にこんな厄介な奴がいたなんて、聞いてないわよ。

 

「覚悟はいい?博麗の巫女!」

 

 鴉――霊烏路空と名乗ったか――が右足を掲げると、凝縮された灼熱のエネルギーが足元に集束していく。馬鹿げた火力。まともに相手にするだけ無駄だ。

 

核熱【ニュークリアフュージョン】

 

 空がスペルを宣言すると同時に、太陽の如き熱球が私目掛けて放たれた。また、逃げ道を塞ぐように青色の弾幕をばら撒いている。確かにあの恒星のような弾幕に直撃してしまえば、骨も残らないだろう。だが、そんなものに当たってやるほど、私はお人好しじゃない。

 

「――そこじゃないわよ」

 

 熱球が私を飲み込む寸前、私は瞬時に移動して、空の背後を取る。しかし、空は振り返りもせずに左腕を薙ぎ払った。

 

爆符【メガフレア】

 

 今度のスペルカードは、赤みを帯びた極大の弾幕を放つもの。さっきよりも範囲が広く、速い。…範囲は大きいけど、実際の威力はそこまでのようね。それより、視界を覆う弾幕に隠れて、放たれる弾幕の方が脅威だ。

 

「逃げてばかりね! その程度の力で、地上の平和を守れるのかしら!」

 

 挑発に乗るつもりはないけれど、このままではジリ貧なのも事実。懐に飛び込む隙も、お札を当てる間合いもない。空が勝ち誇ったように笑みを浮かべ、両腕を大きく広げた。その背後に、十の凶星が赤黒く輝く。

 

焔星【十凶星】!

 

 十の星が、空の周囲に円の軌道を描きながら私に殺到する。ワープで一つを避けても、残りの九つが即座に追ってくる。それに、放射状に放たれる弾幕のせいで、避けるのが困難。攻められてばかりで、反撃をする事さえ難しい。

 

「くっ…!」

 

 避けきれない。そう判断した瞬間、私の意識とは関係なく、身体の周囲の空間がぐにゃりと歪んだ。

 

『非常識の裏側』

 

 紫ね。助かるわ。

 あらゆる物理法則が通用しない世界に一時的に身を置くことで、私は無敵と化す。十の凶星は私の身体を通り抜け、虚空に消えていった。だが、この力は長くは続かない。無敵時間が終わると同時に、空は待っていましたとばかりに次のスペルを構えていた。

 

地獄極楽メルトダウン!

 

 これまでとは比較にならない、二つの禍々しいまでの熱量を持つ太陽が周囲の空気を歪ませる。歪んだ太陽から放たれる高密度な弾幕が、あらゆる逃げ道を塞ぐように、全方位から私を圧し潰しにかかる。ワープも間に合わない。非常識の裏側ももう使えない。ちぃ、被弾は覚悟しないと。

 

 そう覚悟を決めた、その時だった。

 

 どこからともなく、無数の光弾が出現した。それはまるで意思を持つかのように回転し、巨大な渦を形成していく。渦は、私に迫っていた空の弾幕を、まるで竜巻のように吸い込み、相殺してしまった。

 

「廻符【万物流転】」

 

 知らないスペルカード。私のじゃない。紫のものでもない。一体、誰が…?

一瞬、脳裏に記憶にない…けど、確かに見覚えのある女性の姿がよぎったけれど…誰なんだろう。

 

 とにかく、誰かのおかげで絶好の好機が生まれたわ。このチャンスを逃す手はない!

 

「少しは楽しませてあげる!」

 

 私は懐からお札を取り出し、空に向かって突きつける。

 

「霊符【夢想封印】!」

 

 ありがたい七色の光を放つ封印の弾が、空を追尾する。不意を突かれた空は、先ほどの勢いが嘘のように回避に追われる。さらに私は、霊力を込めたお札を周囲に展開する。

 

「夢符【二重結界】」

 私の周囲に張られた二重の結界が、空の散発的な反撃を許さない。攻守は完全に逆転した。

 

「おのれ…! 小賢しい真似を!」

 

 追い詰められた空の全身から、これまでとは比較にならないほどの神々しい光が放たれ始めた。まるで、地底に偽りの太陽を創り出すかのように。馬鹿げた熱量と光が、私の視界を白く染め上げる。

 

Caution!!

 

【サブタレイニアンサン】

 

 地底の太陽が、その姿を現す。

そして、その本質は熱や光ではなかった。

 

「なっ…!?」

 

 私の身体が、抗いようのない力で前方へと引かれる。まるで巨大な磁石に引き寄せられる砂鉄のように、足が地面を擦り、身体が前のめりになる。それだけじゃない。私が放った夢想封印の追尾弾も、その軌道を大きく捻じ曲げられ、渦を巻くようにして偽りの太陽へと吸い込まれていく。

 

「無駄よ! 私の太陽が創り出す重力からは、光さえも逃れられない!」

 

 空の叫びが響く。結界が重力で軋み、空間そのものが歪んでいくのが見えた。このままでは、弾幕も、結界も、そして私自身も、あの灼熱の塊に引きずり込まれ、圧し潰されて融けてしまう。

 

 もはや、これしかない。

 

 私はそっと目を閉じ、意識を研ぎ澄ませる。全ての雑念を払い、あらゆるものから解き放たれる。

 

「……」

 

 再び紫の気配を感じ、一瞬だけ『非常識の裏側』が発動し、私に思考の時間を与える。

 そして、私は究極のスペルを解き放つ。

 

【  夢想天生  】

 

 私の身体は浮遊し、あらゆる攻撃の対象にならない無敵の存在と化す。そして、ありったけの霊力を込めた光の弾が、偽りの太陽に向かって放った。

 

 それは、幻想郷の全てを司る博麗の巫女の、絶対的な力の顕現。

 地底の太陽は、私の放った光にいとも容易く貫かれ、霧散していく。凄まじい爆風と衝撃が吹き荒れる中、私は静かに地上に降り立った。

 

 目の前では、疲れ果てた空が、信じられないといった表情で私を見上げていた。

 

「…私の勝ちね。ふぅ、異変解決っと」

 

 

 




霊夢書いてて楽しかったですね。空のスペルカードが多くて、潤沢に使えたのもあるけど、オリジナルスペルカードを作らなくて良いのが、すごい楽。

霊夢(と紫)はね。いくら強さを盛ってもいいの。というか、盛らせて。後、今回はフォントで遊びました、楽しかったです。

EDは…ケーネが食べちゃいました。
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