東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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やっぱ、地霊殿編…これも書かなきゃ。
そろそろ新作ですなぁ。まぁ、大丈夫じゃろ。おそらく情報に一喜一憂してると思いますので、笑っててください。


番外 原作地霊殿Extra Stage

◆地獄のラブリービジター

 

 地底での騒動から数日。忌々しい記憶も新しい中、私は今回の異変の元凶を問い質すため、妖怪の山の頂にある、守矢神社へと向かっていた。冷たい風が木々の匂いを運び、眼下には幻想郷が広がっている。けれど、そんな絶景を楽しむ余裕など、今の私にはなかった。

 

「何処に居るのかしら、あの馬鹿神たち」

 

 悪態が漏れる。あの地獄鴉の言う事が本当なら、今回の一連の騒動は、ここに住む神様、神奈子と諏訪子の仕業に決まっているのだ。面倒事を起こしておいて、自分たちは高みの見物とは良いご身分。問い詰めて、きっちり責任を取らせないと気が済まない。そんなことを考えていると、懐の陰陽玉から、呑気な声が響いてきた。

 

(うぃーっす。霊夢ー、今日はどこで遊ぶのさ)

 

「ここは地上なのに、何でこの珠で鬼と通信してるんだろ、私…」

 

 今回の相棒は、萃香。紫を連れて行こうと思ったけど、「私は流石に疲れたわ…」と言って、一方的に通信相手をこの酔いどれ鬼に代えたのだ。確かに、最近の紫はやけに異変に関与してる。けど、諸々の後始末や宴の準備を手伝ってくれたし、今回は大目に見てあげることにする。

 

 そんなこんなで、妖怪が闊歩する山道を警戒しながら頂上を目指していると、不意に、背後から無邪気な声がかかった。

 

「あ、丁度良いところに巫女を見つけたわ。ここの神様が何処に行ったのか知らない?」

 

 振り向くと、そこにいたのは緑の髪をした、どこか掴みどころのない雰囲気の少女。その姿に見覚えはない。

 

「おん?私も捜していた所よ」

 

「え?神社の巫女さんが神様を捜しているなんて滑稽だわ。本当は隠してるんでしょ?」

 

(あれ?その声、その姿……古明地んとこのこいしちゃんじゃん?なんでこんな山に?)

 

 萃香の言葉に、私は目の前の少女を改めて見た。印象的な、固く閉じた第三の目。…そういえば、地霊殿の主と姿が似ている。ただ、言動や動き的にさとりよりは子供じみている。さとりの妹かしら?

 

「あれ?どっかで会った事あったっけ?」

 

「もしかして、さとりの妹?」

 

 私の言葉に、こいしと呼ばれた少女の目が、きらりと光った。

 

「ふーん、もしかして貴方!お姉ちゃんとおくうを倒したという人間?」

 

「そうだけど…」

 

 私が肯定すると、こいしは、ふふっ、と心底楽しそうに笑った。その無邪気さが、逆に不気味だ。

 

「それにしても、おくうを倒すなんてね。あの状態のおくうを止めるのは夕雲だと思ってたわ」

 

 夕雲どこかで聞いたことある響きね。誰かが叫んでいたような…。夕雲、それ以外にもつい最近聞いた気がする… 夕雲

 

 私が思い出している途中でも、話は進んでいく。

 

「山の神様には会えなかったけど、こんな所でそんな人と会えるなんて。なんてついているのかしら!まあ何でも良いわ。お姉ちゃんを負かせた貴方の力。私が確かめる!」

 

「何処行っても似たような奴ばかり。何で戦う羽目になるのかなぁ」

 

 全く、私の周りには、どうしてこう、好戦的な奴しかいないのかしら。

 

(霊夢、こいしは姉の弱点を補った力を持ってるよ。さとりの弱点は心を読めてしまう事さ。こいしは心の眼を自ら閉ざしたんだ)

 

「何を独り言してるの?私は姉と違って心は読めないのよ。ちゃんと聞こえる言葉でお願い」

 

「心が読める事が弱点で、それを補う為に眼を閉じた?それじゃあ、ただの妹妖怪じゃないの。楽勝ね!」

 

 私の挑発に、さとりの妹はにっこりと微笑んだ。

 

「何だか判らないけど準備できた?良いこと教えてあげる。お姉ちゃんは絶対に私には勝てないの。何故なら、私は『読む事の出来ない無意識』で行動できるから。無意識に潜む弾幕。それはお姉ちゃんも見た事ない弾幕よ!」

 

「上等じゃない!」

  

 私はお祓い棒を構え、目の前の少女――古明地こいしを睨みつける。楽勝だと思ったけど、あの妙な自信は一体何なのかしら。

 

 その疑問は、すぐに弾幕となって私に襲い掛かった。

 

表象『夢枕にご先祖総立ち』――!

 

 こいしがそう叫んだ瞬間、私の周囲、三百六十度から、無数の光の輪が出現した。

 

「何これ…!?」

 

 普通の弾幕なら、撃たれる前に予兆がある。相手の視線、力の流れ、指先の動き。そういうものを読んで、私は避ける。けれど、こいつの弾幕には、その「予兆」が一切ない。まるで、最初からそこに存在していたかのように、弾幕が空間に湧き出てくる。

 

「読めない…!」

 

 考えるだけ無駄だ。私は思考を放棄し、純粋な勘だけで、次々と出現する光の輪の隙間を縫うように飛ぶ。

 

本能『イドの解放』!

 

 次に放たれたのは、感情をそのままぶつけたような、乱雑で予測不能なハート型の弾幕。それはまるで、子供が癇癪を起こしたかのような、滅茶苦茶な軌道を描いて、私を追い詰める。追い詰めるだけじゃない…ばら撒いた弾幕は消えず、私の逃げ道を塞ぐように、回避の邪魔をする。

 

「あれ、これでも当たらない?じゃあ、次はこれね。

 

抑制『スーパーエゴ』!

 

 妙にキリッとした表情をしたこいしが、先ほどのハート形の弾幕を回収するかのように回収してくる。良かった、これで逃げ道が出来た。これで少し反撃できる。

 

「もう、ちょこまかと!」

 

 苛立ちを込めて放った私のお札は、ひらり、とまるで陽炎のように揺らいだ彼女の姿を、虚しくすり抜ける。同時に…

 

忘れられた者のフィロソフィ!

 

 こいしの姿が薔薇の形をした弾幕となる。あれじゃ、私の弾幕は当たらない。それに加え、私の周りを籠で囲むように弾幕を張り巡らせてくる。

 

「こそこそ隠れて!卑怯じゃない!」

 

 私は、こいしに向けて、ありったけの針弾をばら撒いた。光弾やお札などの弾幕じゃはじかれるかもしれないけど、貫通力の高い針弾なら!

 

 その時、視界の全てが、青と黄色の色彩に染まる。

 

「残念、そこにわたしはいないよ。

サブタレイニアンローズ!

 

 それは、美しい薔薇の形をした、弾幕の檻。地底の奥深くから咲き誇るように、こいしの周辺を回る弾幕と共に黄色と青の弾幕が私に迫ってくる!

 

 息が詰まるような、圧倒的な美しさと圧力。

 

「――甘いわ!夢符『封魔陣』!」

 

 私は、全身の霊力を込めた札を、薔薇の中心に向けて、叩きつけるように放った。私の霊力を起点として結界が展開されると同時に、その場にあった全ての弾幕が、薔薇の花弁が散り散りになるように霧散した。

 

 弾幕が晴れた先には、僅かに息を切らせながらも、実に楽しそうな顔をしたこいしが立っていた。

 

「凄い凄い!貴女、本当に強いのね!」

 

 彼女の言葉通り、その弾幕は、さとりとは全く異質だった。どこから飛んでくるか予測のつかない、まるで気まぐれな嵐のような攻撃。私は少しばかり疲れたが、疲労を隠して、見栄を張る。まだ本気じゃないけど、確かに手ごわい妖怪だ。

 

「この程度、痛くはないけど痒いわね」

 

「こりゃ、お姉ちゃんもおくうもお燐も敵わないわけだ。全く弾に当らないし。降参、降参」

 

 そう言い、こいしは腕を降ろす、どうやら私に弾幕を当てるのは無理だと考え、降参するらしい。

 

(ぐーぐー……はっ。終わったねぇ)

(終わったわよ。あんたが酒呑んで寝ている間にね)

 

 面倒な戦いが終わり、私が息をついていると、こいしが不思議そうに尋ねてきた。

 

「ところで巫女、何の為にその強い力を持っているの?」

 

「そりゃあんた。あんたみたいな迷惑な妖怪を退治する為よ」

 

「勿体ないわー。私ならもっと面白い事に使うのにー。なんで人間は自分の力を好きなように振るわないのかなぁ?」

 

「それが人間ってもんさ。こいしちゃんの知り合いの人間も、それでも幸せそうだろう?」

 

 そう、萃香が言う。

 

「まぁ、確かに。夕雲なかなか楽しそうにやってるよ」

 

 なんだか、頭が痛い…ぼんやりとした情景が思い浮かぶが、顔が見えず、はっきりしない。これは、夜の神社?

 

「ところで、霊夢?何でこの神社まで来たんだっけ?」

 

「あ、そうだ。神奈子か諏訪子に聞きたい事があったんだ」

 

 ちょうどその時。まるで、私たちの会話を聞いていたかのように、神社の奥から、早苗が姿を現した。

 

「二人とも留守ですよ。それで私はお留守番です」

 

「あ、そう。やっぱり居なかったのね」

 

「何の用件でしょう?伝えておきましょうか?」

 

「地底の鴉の話なんだけど……って言っても判るのかな?」

 

「判ります判ります。地獄鴉の八咫烏の件ですね?それは山の産業に革命を起こさせる為の神奈子様の秘策だと聞いております。クリーンなエネルギーが得られて成功すれば、神社の信仰も集まると」

 

 …何ですって?

 

「何それ」

 

「この間、地獄鴉の餌付けも成功してまず第一段階成功と言ったところみたいですよ。地獄鴉が思ったより大人しくて、何なぜか良く言うこと聞いてくれるって。もっと地上で暴れると思っていたので、何だか拍子抜けみたいですよ」

 

 つまり、なんだ。私が命がけで地底に潜って、面倒な奴らと戦って、ようやく解決したと思った、あの異変は。

 

「もしかして私が地底に潜らされてやったことって?河童の産業革命の手助けになっただけ?」

 

「え?地底に行ったんですか?何の為に?」

 

 もう、いい。

 何もかも、どうでもよくなった。

 

「もういいや。めっぽう疲れたから温泉に入って寝る!」

 

 私は、全ての思考を放棄して、背後の間欠泉へと、踵を返した。後で、あの神様たちには、絶対に何かお灸を据えてやらないと気が済まない。ただ今はとにかく、休みたかった。










前話で夕雲は凡ミスをしました。なんで、「今日」だけにしたのかなー、これから少しずつ思い出していきます。あとなんかきっかけがあれば.…

それと、ちょいちょい原作と違う挙動のこいしちゃん。そんな大した意味はありません。

最後に番外も幕間もしばらくはない予定です。作者の気紛れが起きなければ…(学パロ描きたい欲がある)
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