東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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サブタイトルを憧れたか、恋したで永遠に迷っていました。最初に考えた人間普通白黒魔法使いよりはいいでしょう…

紅魔館編、はよ終わらせたいので、今日めっちゃ投稿します。いつもしてる確認のための読み直し少ないけど…まぁいいでしょう。何とでもなるはずさ!


第123季/冬 紅魔館with星に恋した普通の魔法使い

 どうして、こんな事になったんでしょう。

 

 目の前の惨劇。窓ガラスが叩き割られ、破片が床にそこらかしこに散らばっています。大図書館の蔵書はあちこちに散乱し、パチュリーさんの使い魔である小悪魔さんは目を回して気絶しており、様々な弾幕が室内に降り注いでいます。本棚の一部は水浸し、火がついたり、しっちゃかめっちゃかな状態です。

 

「おい!レイボ!早く逃げるぞ」

 

「待ちなさい、魔理沙。絶対に流さないわ」

 

 人間の魔法使い、霧雨魔理沙さんの焦った声と、この図書館の主である、パチュリー・ノーレッジさんの、喘息混じりながらも、怒りに満ちた声が響き渡ります。

 

(メイドになって、まだ数時間。…なぜ、私は窃盗の片棒を、担がされたのでしょう)

 

 七色の弾幕が、魔力の奔流となって、図書館内を縦横無尽に駆け巡りました。火、水、木、金、土、日、月。七つの属性を操る、パチュリーさんの大魔法。対する魔理沙さんも、箒に乗ってそれをひらりひらりと躱しながら、白黒のレーザーや、星形の弾幕で撃ち返しています。

 

「だから、借りてるだけだって!読み終わったら、ちゃんと返すぜ!」

 

「その『ちゃんと』が、一度でも為されたことがあった?」

 

「あぁ、私が死ぬまでには読み終えるだろうさ!レイボ!あんたも手伝ってくれ!早く逃げるぞ!」

 

 

 ほんと…どうして、こんな事に…

 

 私は事の発端の数時間前にまで、現実逃避を始めました。

 

 

⋈◀「ちょっと死ぬまで借りるだけさ。あんたらは長命だからいいだろ?」▶⋈

 

 数時間前。

 

「夕雲、貴女。メイドをしなさいよ」

 

「え?」

 

 穏やかだったお茶会の空気が、レミリアの唐突な一言で、ぴしりと凍りつきました。私がその真意を測りかねていると、レミリアは扇子で口元を隠し、悪戯っぽく、しかし真剣な瞳で、私を見つめていました。

 

「言葉通りよ。貴女、その格好、似合うと思うわ。咲夜とは違う、古風で、曰く付きのメイド…というのも一興じゃない?」

 

「光栄ですが、私に咲夜のようなメイド仕事は務まらないと思いますが…それに、私は羅万館の店主。店を長期間、留守にするわけにも…」

 

「あら、そんなこと?」

 

 レミリアは、私の言い訳を、まるでつまらない冗談を聞いたかのように、軽く一蹴しました。彼女の赤い瞳が、楽しげな光を宿します。

 

「ねえ、夕雲。貴女が最近、全然顔を見せないせいで、フランが退屈して、私にまで構ってくれってうるさいのよ。どうしてくれるの?」

 

「…それは、申し訳ないことをしました」

 

「そうよ。だから、責任を取ってもらわないと。貴女がフランの遊び相手になれば、私も静かに過ごせるわ」

 

 子供のような理屈ですが、フランの名前を出されると、こちらとしては弱いです。私が言葉に詰まっていると、レミリアは、さらに畳み掛けてきました。

 

「そもそも、貴女の言う『監査』って、一体何なのかしら?たまにこうして顔を見せて、お茶を飲んで、それで私たちの何が分かるっていうの?」

 

「……」

 

「本気で私たちの『幸福』を監査するつもりがあるなら、もっと良いやり方があるでしょう?例えば…そうね」

 

 彼女は、まるで今思いついたかのように、ポン、と手を打ちました。

 

「メイドになって、この館の内側から、私たちの生活を、四六時中、その目で見てみる、とか?」

 

 その、からかうような、それでいて、一切の逃げ道を塞ぐ完璧な提案。…やれやれ。私はどうにもこの吸血鬼に弱いです。私は、天を仰いで、深くて、長いため息をつきました。

 

「……はぁ。分かりました、分かりました。降参です。その、からかうような顔、やめてくださいな」

 

 私の降参宣言に、レミリアは、満足そうに、今日一番の、悪戯っぽい笑顔を見せました。

 

「ふふん、決まりね!じゃあ、夕雲、貴女は今日から…そうね、一ヶ月間!紅魔館のメイドよ!」

 

 こうして、私の奇妙なメイド生活が、幕を開けることになったのでした。

 

 

⋈◀「このメイド服、結構可愛いですね」▶⋈

 

 

「咲夜。いま人手が足りないところはどこかしら?」

 

「大図書館が足りないかと。あそこは貴重な書物が多く、妖精メイドでは対応が難しいため、常に人手を欲しがっています」

 

「じゃあ、夕雲。貴女は、図書館の方に向かってちょうだい。時々、図書館で本借りてるし、貴女なら十分業務を熟せるでしょ?」

 

「…そうですね、わかりました。それでは、早速」

 

 私がそう返事をし、執務室を出ようとすると、いつの間にか控えていた咲夜が、どこからともなく、彼女自身が着ているものとよく似た、しかし、どこか古風なデザインのメイド服を差し出してきました。私の身体に合わせてあつらえたかのように、完璧な寸法です。

 

(…いつの間に、私の寸法を…?)

 

 そんな疑問はともかく。私は早着替えを敢行します。私ほどの技量となると、瞬きする時間程度で早着替えをする事が出来ます。永い時の中で身についた、他愛もない早業です。

 

 ふと、執務室にある鏡を見て、苦笑が漏れます。鏡に映ったのは、私であって、私でないような、奇妙な姿でした。普段の和服とは違う、瀟洒なメイド服。案外様になっているのではないでしょうか?レミリアもうんうんと頷いています。

 

 メイド服に着替えた私は、今度こそ執務室を後にします。向かう先は図書館。レミリアの親友であるパチェリー・ノーレッジさんが根城にしている部屋です。パチェリーさんとはあまり顔を合わせた事がありません。時折、監査の際に偶然目が合えば、会釈する程度の仲でしょうか。

 

 場所がわからなかったため、近くにいた妖精メイドを捕まえ、先導してもらいながら、私は自らの新しい職業について思考を巡らせます。

 

 それにしても、メイドですか。お茶を淹れ、掃除をし、主の我儘に付き合う。私の知る…というより、咲夜を見る限り、そういう仕事のはずです。まあ、この館のメイドは、それ以外にも、侵入者を撃退したり、弾幕ごっこの後片付けをしたりと、中々に物騒な業務も含まれるようですが…

 

 とは言え、侵入者なんて命知らずが、吸血鬼が住む紅魔館に入ってくるわけありませんし、弾幕ごっこなんて起きないでしょう。

 

 図書館に到着した私は、この空間の主である、パチュリーさんを探します。小悪魔さんでも良いのですが、見当たりませんね。静寂に満ちた書架の間を歩いていると、不意に、背後から声をかけられました。

 

「あんた、新入りメイドか?」

 

 普段と違う服を着て、少し浮かれていたのかもしれません。誰かの視線には気づいていましたが、てっきり、咲夜さんが私の働きぶりを監視しているのだとばかり思っていました。

 

 私は振り返り、声を掛けてきた相手を――いえ、その前に、まずその出で立ちに、目を奪われます。そこに立っていたのは、黒いとんがり帽子に、黒い服を纏った、金髪の女の子。いかにも、「魔法使い」といった格好です。

 

 彼女が私のことを知らずとも(忘れていても)、私は彼女のことをよく知って(覚えて)います、普通の魔法使い…霧雨魔理沙。

 

「ん、私の顔に何かついてるか?」

 

 私が驚きのあまり、まじまじと見つめていたことに気づいたのでしょう。魔理沙さんは、少し訝しげに、自分の顔をぺたぺたと触りました。いけません、メイドとして、これでは不審です。私は慌てて、にこやかな表情を取り繕いました。

 

「あ、いえ、失礼いたしました。あまりにも、その…いかにもな格好でしたので」

 

「いかにも、とはなんだ、いかにもとは!」

 

 ぷりぷりと効果音が聞こえそうなほど、彼女は頬を膨らませます。どうやら、私の言葉選びは、少しばかり、まずかったようですね。

 

「私は本物の魔法使いだよ。まぁ、いいや、それで、あんたの名前は?」

 

 とは言え、彼女の怒りは演技だったようで、ころりと態度を変え、名前を尋ねてきました。私は改めて、自己紹介をします。…本名は、伏せておきましょう。魔理沙さんは、博麗の巫女と親しい人間。彼女から、あの巫女に私の名前が渡るリスクは、紫の術により、無いとは思いますが、万が一にでも避けたいですから。

 

「レイボと申します。本日より、こちらでお世話になっております」

 

 咄嗟に名乗った名前は、最近会った私の娘である霊暮の名前。私は彼女と瓜二つ。今は、この名前を借りるのが、ちょうど良いでしょう。

 

「そうか、レイボ。悪いな、驚かせちまって」

 

 彼女――魔理沙さんは、にひひ、と悪戯っぽく笑いました。

 

「私はパチュリーの友達でな、少し調べ物をしてるんだが、広すぎてどこに何があるか、さっぱりでな。丁度良かったぜ」

 

(パチュリー様のお友達…なるほど。でしたら、ご案内するのが、メイドの務めですね)

 

 私は、メイドとしての初仕事に、少しだけ胸を躍らせました。

 

「左様でしたか。それは失礼いたしました。どのような本をお探しですか?お手伝いいたしますよ」

 

「本当か!助かるよ」

 

 魔理沙さんは、待ってましたとばかりに、目を輝かせます。

 

「そうだな…水の魔法に関する、古い魔導書を探してるんだ。特に、威力の高いやつがいいんだが…」

 

「…威力の高いもの?まぁ、水魔法と言うと…あちらの区画かと…」

 

 私は、何回か図書館に訪れただけのうろ覚えの知識を頼りに、図書館の奥へと彼女を案内します。薄暗く、埃っぽい書架が、迷宮のようにどこまでも続いている中、彼女の嬉しそうな鼻歌だけが、やけに大きく響いていました。

 

 しばらく歩き、ようやく水の魔法に関する本が納められている本棚に到着しました。

 

「ありがとうな!助かったぜ!」

 

 魔理沙さんに、書架の案内を終えたところ、視界の隅に赤い髪に、特徴的な頭と背中に生えた蝙蝠の羽が横切ります。おそらくは小悪魔さんです。

 

「あっ、小悪魔さーん!少しの間、図書館の手伝い…え?」

 

 私が小悪魔さんに駆け寄り、そう話しかけようとした、その瞬間です。

 

 私のすぐ背後から、眩い光が、凄まじい速度で放たれました。私のすぐ横を通り過ぎていったのは、見紛うことなき、星の形をした魔力の光弾。それは、ちょうどこちらを振り返った小悪魔さんの顔面に、寸分違わず、吸い込まれるように着弾しました。

 

「……ぶげぇ」

 

 汚い声をあげた小悪魔さんは、糸が切れた人形のように、くたりと床に崩れ落ちます。私は、目の前で起きた出来事が理解できず、呆然と、その場に立ち尽くしました。

 

「レイボ、ダメじゃないか。敵を呼ぶなんて、それだと、パチェリーに見つかっちまう」

 

 ゆっくりと、震える体で振り返ると、そこには、八角形の魔導具を構えた、魔理沙さんが立っていました。その脇には、私が先ほど案内した書架から抜き取ったのであろう、数冊の分厚い魔導書が抱えられています。彼女の顔からは、先ほどまでの人懐っこい笑みは消え、目的を果たしたとばかりに、不敵な笑みを浮かべていました。

 

「魔理沙さん…!貴女、一体、何を…!」

 

「悪いな、レイボ!こいつを眠らせておかないと、すぐにパチュリーに告げ口されるからな!」

 

 彼女は、悪びれる様子もなく、そう言い放ちます。

 

「さて、目的の本は見つかったし、お暇するぜ!」

 

「いや、そうはさせ「小悪魔の反応が途切れたからなんだと思えば…魔理沙、またあんたね」」

 

 声の主――パチュリー・ノーレッジさんの登場に、魔理沙さんは、「げっ」と分かりやすく顔を引きつらせます。

 

「早く盗んだ本を返しなさい!火符『アグニシャイン』」

 

 パチュリーさんの詠唱が終わると同時、彼女の周囲に浮かんだ魔法陣から、灼熱の炎が、まるで生き物のようにうねりながら、魔理沙さん目掛けて殺到しました。

 

「うおっ、いきなり撃ってくるか、普通!?」

 

(いや、不意打ちで小悪魔さんを気絶させた貴女が言います?)

 

 そんな事を考えていると、魔理沙さんは、悪態をつきながら、箒にまたがり、間一髪で炎の渦を回避します。しかし、避けられた炎は、そのまま容赦なく背後の書架へと着弾しました。うわぁ、書架ごと本が燃えてます。

 

 パチュリーさんは火魔法を避けられたとみるや否や、すぐに別の魔法に変更し、魔理沙さんを狙います

 

「ちまちま逃げないで!水&木符『ウォーターエルフ』!」

 

「ええい、まどろっこしい!魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

 魔理沙さんも、パチュリーさんの攻撃を迎え撃つように、箒を旋回させながら、星屑のような無数の光弾を放ちました。

 

 水と星の弾幕が激しくぶつかり合い、凄まじい水蒸気を発生させます。威力を殺しきれなかったいくつかの星弾は、あらぬ方向へと飛び、大図書館の壁や、美しいステンドグラスの窓を、容赦なく破壊していきました。

 

 そうして、彼女たちこと、魔女娘たちは、スペルカードを片手に図書館の破壊に勤しみ始めました。

 

 

 

 

 私としては、彼女らを止める術はなく、小悪魔さんの方に移動し、時折やってくる弾幕を、片手で軽く、はじくだけです。そして、弾幕ごっこから数分経った頃、魔理沙さんが、にやりと、悪魔なんかよりも悪魔らしい笑みを私に向けてきました。

 

 まずい、何かを企んでいます。そう思った次の瞬間、魔理沙さんは箒を急旋回させ、私の方へと突っ込んできました。

 

「おい!レイボ、逃げるぞ!」

 

 彼女はそう叫ぶと、私のメイド服の襟首を、ひょいと軽々しく掴み上げます。

 

「なっ…!?何を…!」

 

 抵抗する間もなく、私の体は宙に浮き、彼女の箒の後ろに、まるで荷物のように担ぎ上げられてしまいました。

 

「レイボ?そんなやつ、メイドにいたかしら?」

 

 パチュリーさんが、訝しげな声を上げています。

 

「悪いなパチェリー!この新入りは、ちょっと借りてくぜ!」

 

 魔理沙さんは、私を自分の盾にするように、器用に箒の上で体勢を入れ替えると、そのまま、先ほど自分が開けた壁の大穴目掛けて、一気に加速しました。

 

「待ちなさい、魔理沙!月符『サイレントセレナ』!」

 

 パチュリーさんの怒声と共にスペルカードが唱えられます。何発かは私に向かってきますが、メイド服を汚したくない私は、思わず何発かを逸らしてしまいます。

 そうして、魔理沙さんは破壊された壁の穴を抜け、紅魔館の敷地の上空へと、悠々自適に飛び出していました。

 

 私のメイドとしての初仕事は、どうやら、泥棒の片棒を担がされた挙句、そのまま誘拐される、という、最悪の結末を迎えたようです。




以下、言い訳。

作者の考える魔理沙像の一側面です。勿論、努力家だったり、お嬢様だったり、負けず嫌いでひねくれ者…けど、どこか憎めない子。なんですけど、第三者(夕雲)目線から見た、魔理沙の「盗人」という側面を抽出するとこうなるのでは…と。てか、原作もこんな…(ここで言い訳は途絶えている)

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