東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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錦上京。すごかったです。欲しい情報がめちゃ出てきた。

一番やばいのがステージ4ボスの二つ名です。思わず真顔になりました。…なるほど、そう来たかぁ…勉強の時間です。

それはそれとして、時を操る系の人たちは名前の最後が夜なんですかね?


第124季/春 どこかにある家with神出鬼没の困ったちゃん③

 障子越しに差し込む、太陽の光に意識が浮上します。ゆっくりと瞼を開くと、そこは見慣れた羅万館の天井ではありませんでした。繊細な彫刻が施された欄間、上質な絹の掛け布団、そしてふわりと香る、どこか掴みどころのない甘い香り。紫の家です。

 

 …いや、どういうことです? 先ほど、私は確かに自分の布団でお昼寝と洒落込んだはずです。混乱する頭で上半身を起こすと、縁側に座って優雅に扇子を扇いでいる紫と目が合いました。

 

「あら、起きたの、夕雲」

 

「ええ、おはようございます、紫。ところで、なぜ私はここに?」

 

 私の問いに、彼女はぱちり、と扇子を閉じる。その音は、静かな空気にやけに大きく響きました。

 

「あら、覚えてない? 私、貴女にお説教するって言ったわよね」

 

「!!!」

 

 その言葉に、背筋が凍りつきます。そうだ、この間の異変です。博麗の巫女が、私の名前を知ってしまったことについて、お説教と、紫は確かにそう言ってました。紅魔館のメイド生活のせいで完全に、忘れていました。

 

 この場に、お酒はありません。いつものように紫を酔わせてお説教をうやむやにし、回避する手段は取れないという事です。冷や汗が背中を伝います。

 

 私が内心で必死に活路を探していると、紫はふっと息を吐いて、予想外の言葉を口にしました。

 

「とは言え、怒る気はもう無いわ。ただこれ以上に、霊夢に貴女の名前が知られないように気をつけなさい」

 

 …? 紫にしては、あまりにも珍しいです。結構なお説教に時間を取られる事を覚悟していましたが、この程度の釘刺しで終わりですか? そう考えていると、拍子抜けした私の顔を見て、紫は心底可笑しそうに目を細めました。

 

「ちょっと懐かしい夢を見てね。なんだか怒る気も無くなっちゃったわ。元々、夕雲には結構苦労かけてるし、たまには良いかなーって思ったの」

 

 紫はそう言って、悪戯っぽく片目をつぶります。そのあまりに普段と違う態度に、私は思わず本音が漏れました。

 

「…どうしたんです? 風邪でも引きましたか?」

 

「失礼ね。やっぱり、お説教が欲しいの?」

 

 途端に、いつもの調子で紫が切り返します。その方がよほど安心してしまうのは、私も大概、彼女のやり方に毒されているのでしょう。

 

「そう言えば、私も夢を見ましたよ。紫がまだ人間だった頃に私と会った時の夢です。あの時の紫は可愛かったですね…『私、死んじゃったの!?』とか、言って…」

 

「夕雲?」

 

 しまった、口を滑らせました。

 

「こほん、それより…」

 

 私は慌てて咳払いで誤魔化し、気になっていたことを尋ねることにしました。話を逸らしたとも言います。

 

「先日、ある物(宝塔)を売るために香霖堂へ寄ったのですが、その帰り道で、空に大きな舟が浮かんでいるのを見たんです。あれは一体、何だったのでしょう?紫は知ってます?」

 

 私の問いに、紫は一瞬きょとんとします。

 

「空飛ぶ舟?外の世界のような飛行機やこの間、月に行くために霊夢や紅魔館の面々が使ったロケット見たいな?」

 

「いえ、見た目は昔ながらの水に浮かぶ舟です。どこかで見たような気がしなくも無いんですよね」

 

「ふぅん、ちょっと調査が必要かしら?」

 

「脅威には感じませんでしたよ。それに何かあれば、博麗の巫女や魔理沙さんが解決するでしょう?異変解決は人間のお仕事ですよ」

 

「それもそうね」

 

 紫は、あっさりとそう言うと、優雅な仕草で、いつの間にか煎れてたお茶を一口すすりました。その、あまりにも物分かりの良い態度に、私は、逆に、少しだけ、居心地の悪さを感じます。 

 

 案の定、彼女は、ふふ、と扇子の向こうで楽しげに笑いました。その瞳は、もはや舟ではなく、目の前にいる、格好の玩具――つまり、私を、捉えています。

 

「けれどね、夕雲。貴女も、一応は人間でしょう?久しぶりに異変解決と洒落込んでみてはいかがかしら?」

 

 その、からかうような、それでいて、どこか本気の響きを乗せた提案に、私は、心底、うんざりし、首を横に振りました。

 

「えー、面倒ですよ。もう今まで散々異変解決はしましたからね。やるとしても、異変を起こす側ですよ。その時は紫も手伝ってくださいね」

 

 私がそう言って悪戯っぽく笑うと、紫はさらに楽しそうに、目を細めました。

 

「あら、それも面白そうね。けれど、今の巫女の前では、それも叶わないでしょう?」

 

「ええ、ですから。私はただのしがない人間として、今は静かに過ごすつもりです」

 

「じゃあ、こういうのはどうかしら」

 

 紫は、扇子をぱちり、と閉じると、交渉人の顔で、私に一つの取引を持ち掛けてきました。

 

「貴女には、異変の『後始末』をお願いしたいの。もちろん、調査のような面倒なことは、うちの藍にやらせるわ。貴女にお願いしたいのは、その後の交渉事や、落としどころを探るような事」

 

「…お説教の、代わり、という訳ですね?」

 

 私がそう言うと、彼女は、にっこりと、全てを見通したような笑みを浮かべました。最近、後始末することが多い気がしますが…

 

「ええ、そんぐらいなら、お引き受けしましょう」

 

 私は、差し出されたお茶を、静かに一口すすると、仕事に付き合う覚悟を決めるのでした。日記にも久しぶりに書いておきましょう。

 

 

⋈◀「…最近よく働いてますね、休みが欲しいです」▶⋈

 

 

 紫のスキマにより、私は自分の部屋に戻りました。部屋からは例の舟が浮かんでいるのが見えます。

 

 それにしても、あの舟、どこかで見たような気がするんですよね。紫にも言いましたが…うーん?あの、古風な、しかし、どこか異国情緒の漂う、独特の竜骨の形。帆の、微妙なたなびき方。しょうがないので、頭を「回して」、記憶を探ります。

 

「あぁ…」

 

 思わず、声が漏れます。そうです。あれは、私の部下が乗っていた、宝舟です。…いえ、正確には、私の部下がコスプレしていた時に乗っていた舟ですね。

 

「…宝舟、ですか」

 

 私の口から、再び、言葉がこぼれ落ちました。宝舟は、金銀財宝が積まれており、幸福の象徴とされるものです。私は、それなりの金銭は持っておりますが、映画のフィルムを買い付けるのには、先立つものが、常に必要不可欠です。ええ、お金は、幾らあっても困ることはありません。 

 

 先ほどまでの、面倒な異変への関与に対する、億劫な気持ちは、どこかへ消え失せていました。私の瞳には、今、明確な「目的」の光が宿っています。

 

 とは言え、私が動くのはまだ後。この異変が解決したらでしょう。まぁ、巫女が動くのは確実。となれば、すぐに異変も解決されるでしょう。

 

 私は力を籠めるために、大きく腕を伸ばします。

 

(さぁて、久しぶりの大仕……あれ、舟が)

 

 私が、ほんの一瞬だけ、窓の外の景色から目を逸した、その瞬間。空に浮かんでいたはずの宝舟は、まるで、最初からそこには何もなかったかのように、何の痕跡も残さず、掻き消えていました。その、あまりにも唐突な消失と、ほぼ同時。音もなく、私の背後の空間が、僅かに揺らぎました。

 

「夕雲様。ご報告が…」

 

 ゆっくり振り返ると、そこには、九本の尾を揺らた藍が、静かに控えていました。

 

「宝舟が見えなくなったことですね。私も見失いました。巫女は?」

 

「はっ。既に博麗の巫女は異変解決に出向いており、宝舟の中にいた事はわかっております」

 

「ありがとうごさいます。では、私が陰陽玉から場所を探り出しましょう。藍は、あの舟の詳細について調べ上げてください」

 

 私の言葉の真意を正確に理解したのでしょう。深々と一礼をすると、再び、音もなく、その姿を消しました。

 

「思ったより面倒な事になりましたね」

 

 意識を集中し、陰陽玉の場所を追います。……って、魔界じゃないですか、やだー。

 

 紫はこれを予期していたのでしょうか?確かに今回の後始末は私が適任なようです。




全然話変わりますが、イザナギを女の子にしたい。
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