東方備忘録   作:電子の妖精になりたい

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二次創作と原作でイメージが違うキャラで、五指に入ると思う。もしかしたら、一番狙えるのでは?

錦上京からずっと気になっているのが、妖精の存在…お前はなんなんだ???情報の塊???この世界のバグ(羽虫)みたいなものだったりして…


第124季/春 魔法の森with最も美しいボク

 巫女が魔界にいることは確定しました。あそこは私の友人が治める世界。最悪の場合は、彼女が配慮してくれるでしょうし、死にはしないでしょう。ですので、私が神社の裏山に行く必要はありません。むしろ必要なのは、もしもの場合のための、彼女に対する手土産…そうですね、決めました。

 

 となると、手土産の用意を自分でやるか、文に任せるかの選択に移ります。そうですね…今回は私がやりましょう。時折、人間の里で見かけるとはいえ、久しぶりに、私も彼女に会いたいですし。

 

 私は、昔、にとりに作ってもらったカメラを懐にしまい、彼女への手土産にとっておきのお酒を一本携えて、魔法の森に向かうことにしました。

 

 

⋈◀「昔はよくこのカメラで霊夢のことを撮影したもんです」▶⋈

 

 

 魔法の森は、夜になると、その表情を一層、深くします。

 昼間はただ鬱蒼としているだけの木々が、今は、まるで意思を持った生き物のように、月明かりを遮り、複雑な影を地面に落とし、あちこちで、幻覚作用を持つという化け物茸が、青白い燐光を放ちます。常人ならば、一歩踏み入れただけで、二度と戻ってはこれないでしょう。ですが、私にとっては、このどこか浮世離れした静寂がむしろ心地良い気が…しませんね。普通に茸が出す胞子が不快です。下に小さな胞子を回して。鱗粉を集めます。

 

(さて、あの子は、元気にしているでしょうか)

 

 これから会いにいく彼女は、この幻想郷では、かなり特殊な部類に入ります。人間が妖怪となった、幻想郷でも珍しい存在なのですから。

 

『幻想郷において、里の人間が

         妖怪になるのは一番の大罪』

 

 

 一見、単純そうなこの規則、ですが、案外解釈が難しく、抜け道が多い物です。

 

 まずは、「幻想郷」について。この言葉が指すのは、この結界の内側の物理的な空間だけなのか、それとも、この地の裏側の旧地獄、冥界での妖怪化も含まれるのか。まぁ、対象の「里の人間」が後者に行くのは、かなり珍しいケースですし、殆どが前者として捉えられ、私たち賢者も後者は考慮していませんでした。

 

 次に「里の人間」という部分。外から迷い込んだ人間はそれに該当しません。今から会いに行く彼女も、元々は外の世界からの来訪者。しかも、妖怪になったのは幻想郷ではなく、魔界です。

 

(見事なまでに、この規則の抜け道を通っているのですよね)

 

 私もどちらかと言うと、彼女に加担した側なので、なんと言うか…あまり強く言えないのですよね。まさか幻想郷に迷い込んだ盗賊団が、いつのまにか全滅しているなんて思いもしませんよ。とりあえずの応急処置で、レイラのいた館に誘導したと言うのに、一週間も経たずにあの子を除いて全滅していました。

 

 館は血で汚しまくりますし、変な人形は打ち捨てたれるしで、ほんと散々でした。まぁ、すぐに戻しましたけど。

 

 …などと考えているうちに、目的地に着いたようです。

 鬱蒼とした木々が途切れ、月明かりの下に、ぽつりと一軒家が佇んでいました。窓からは、暖かな光が漏れています。

 

 私は懐のカメラにそっと触れ、手に持った酒瓶を握り直しました。これから為すことは、巫女のため、そして幻想郷のため。…ついでに、久しぶりに彼女の顔が見たい、という私の我儘のためでもあります。時折、里で人形劇をやっているのは見かけますが、彼女と面と向かって、話すのは久しぶりです。

 

 さあ、覚悟を決めて、扉を叩きましょうか。

 

 彼女の淹れる紅茶は、今も美味しいままでしょうか。そんなことを考えながら、私は洋館の扉をコンコンと軽くノックしました。

 

「…どちら様?こんな夜更けに、何の御用かしら」

 

 そこに立っていたのは、美しい金髪を揺らし、どこか眠たげな、しかし、警戒を解いてはいない瞳で、こちらを見つめる、一人の少女。

 

「こんばんは、夜分に、申し訳ありませんね」

 

 私がそう言って微笑むと、彼女は、私の顔を認め、少しだけ、驚いたように、目を見開きました。

 

「…夕雲さん?どうして、貴女がここに…?」

 

「ええ、少し、貴女に、お願いしたいことがありまして。…それと、これはお土産です」

 

 私が、懐から日本酒の瓶を差し出すと、彼女の警戒心がほんの少しだけ、解けたように見えます、

 

「…まあ、立ち話もなんだわ。入りなさいな」

 

 そう言って、私を招き入れる彼女は、アリス・マーガトロイド。人間から魔界人、魔界人から魔法使いとなった、人形をこよなく愛する少女です。

 

⋈◀「確か、私が羅万館を開いた時ぐらいに幻想郷に戻ってきたんですよね。なんで戻ってきたんでしょ?魔界の方が良い材料多いですし、魔法も上手くなるのに…」▶⋈

 

「お邪魔します」

 

 一礼して、アリスさんの後に続いて家の中へと足を踏み入れます。外から見た印象と同じく、室内は西洋風の落ち着いた調度で整えられていました。壁一面の本棚には、魔導書らしき分厚い本がずらりと並び、部屋のあちこちには、作りかけの手足や、様々な色の布地、糸巻きなどが整然と置かれています。まるで、人形職人の工房ですね。暖炉の火がぱちぱちと音を立て、木の香りと、どこか甘い魔力の匂いが混じり合った空気が、部屋を暖めています。

 

「とりあえず、適当に座ってて。紅茶を淹れるわ」

 

 アリスさんはそう言うと、客間のテーブルを指し示し、キッチンのある奥へと向かいます。その傍らでは、上海人形と呼ばれる小さな人形が、まるで生きているかのようにてきぱきと動き、戸棚からティーカップを取り出していました。いつ見ても彼女の人形は見事です。

 

 勧められるままにソファに腰を下ろすと、ふかふかとした心地良さに、少しだけ体の緊張がほぐれるのを感じました。テーブルの上には、作りかけの小さなドレスが針の刺さったまま置かれています。私が来るついさっきまで人形を作っていたのでしょう、それほどにまで彼女は人形を愛しています。

 

 やがて、アリスさんが紅茶の入ったポットと二つのカップをトレーに乗せて戻ってきました。私の目の前に、ことり、とカップが置かれます。湯気と共に、ベルガモットの爽やかな香りが立ち上りました。

 

「それで、話を聞かせてもらえるかしら。夕雲さんがこんな時間に、手土産まで持って私を訪ねてくるなんて、ただ事ではないのでしょう?」

 

 カップを口に運びながら、アリスさんの真っ直ぐな青い瞳が私を捉えます。彼女の言う通り、世間話をしに来たわけではありません。小細工は、この聡明な魔法使いには通用しないでしょう。

 

「ええ…。単刀直入に申し上げます。アリスさん、貴女の写真を撮らせてはいただけないでしょうか」

 

「…写真?」

 

 私の言葉に、アリスさんは意外そうな顔で首を傾げました。警戒している、というよりは、純粋に意図が分からない、という表情です。

 

「ええ、今度、あの魔界の創造神を自称する友人に会いに行く予定でして、ほら貴女もお世話になったでしょう?」

 

 私が少しぼかして言うと、アリスさんは「はぁ…」と、天を仰ぐように長いため息をつきました。その反応だけで、私の言う「友人」が誰なのか、正確に伝わったようです。

 

「…あの人のことだから、どうせ『最近のアリスはどうしているのかしら?久しぶりに顔を見たいわ』とでも言っているのでしょう?それで、夕雲さんが代わりに私の顔写真を持っていく、と。なるほど、そういうわけね」

 

 なんか勝手に勘違いしていますが、その方が私にとって事が簡単に進みそうです。私が曖昧な表情を浮かべて頷くと、アリスさんは呆れたように、けれどどこか仕方なさそうに微笑みました。

 

「分かったわ。撮ればいいんでしょう、撮れば。全く、あのお母様はいつまで経っても過保護なんだから…」

 

 ぶつぶつと文句を言いながらも、協力してくれるようです。その優しさ(チョロさ)に、私は心の中で感謝しました。

 

「ありがとうございます。では、失礼して…」

 

 私は懐から、カメラを取り出します。文から直々に鍛えられた撮影技術を持つ私が、久々に腕を振るう機会です。なんだか、ワクワクしますね。錆びついてないといいのですが。

 

「場所は、どこが良いかしら。どうせなら、あの方が喜びそうな写真が良いでしょう?」

 

 アリスさんの提案に、私は辺りを見回します。暖炉の暖かな光、壁一面の魔導書、そして何よりも、この部屋の主である彼女自身と、彼女の作り上げた美しい人形たち。

 

「でしたら、まずはそちらの椅子に座っていただけますか? 傍らに、上海人形さんも一緒に」

 

「ええ、分かったわ。…上海、おいでなさい」

 

 アリスさんは暖炉の前のロッキングチェアに腰を下ろし、その膝の上に、ちょこんと上海人形を座らせました。まるで、本物の親子のような、微笑ましい光景です。

 

「…こんな感じで良いかしら?」

 

「はい、とても…。では、一枚、撮りますね」

 

 カシャッ、と乾いた音がして、レンズから放たれた光が一瞬、アリスさんを白く照らし出します。

 

「ありがとうございます。とても良いです。…もしよろしければ、違うポーズもお願いできますか? 一枚だけでは、きっと満足してくれないでしょうから」

 

 私の厚かましいお願いに、アリスさんは一瞬呆れた顔をしましたが、すぐに「どうせなるなら、徹底的にやらないとね」と立ち上がってくれました。

 

「次は、魔法使いらしく、本でも読んでいましょうか」

 

 アリスさんはそう言うと、本棚から一際古びた魔導書を抜き取り、ソファに腰掛けて静かにページをめくり始めました。真剣な眼差しで難解な術式を追うその横顔は、先程とは打って変わって、知的で近寄りがたい雰囲気を纏っています。私は息を呑み、その姿を慎重にファインダーに収めました。

 

「素敵です…。では、最後に…アリスさんの、一番『らしい』姿を」

 

「私らしい姿?」

 

「はい。人形たちと、普段通りに接しているところを、撮らせていただけませんか?」

 

 私の言葉に、アリスさんは少し戸惑ったようでしたが、やがて諦めたように小さく笑いました。彼女が部屋の隅の作業台に向かうと、そこにいた他の人形たちが、まるで主人の帰りを待っていたかのように、一斉に生き生きと動き出します。ある人形はアリスさんの肩に乗り、ある人形は新しいドレスの生地を差し出し、彼女は、その一体一体に優しく声をかけながら、慣れた手つきで針と糸を動かし始めました。

 

 それは、他の誰にも見せることのない、人形たちだけに許された、彼女の素顔。私は、その邪魔をしないように、そっとカメラを構えました。特別な演出は何もない。けれど、これ以上に彼女の愛情が伝わる光景はないでしょう。

 

 何度かシャッターを切った後、私は深々と頭を下げました。

 

「…ありがとうございます、アリスさん。これ以上ないほど、素晴らしい贈り物ができました」

 

 私がカメラの液晶画面を見せると、そこには、少しはにかみながらも幸せそうに人形と戯れる、一人の魔法使いの姿が写っていました。

 

「……ふん。まあ、悪くないんじゃないかしら」

 

 アリスさんは、少し照れくさそうにそう言うと、そっぽを向いてしまいました。ですが、その耳がほんのりと赤くなっているのを、私は見逃しませんでした。

 

 これも、撮っておきましょ。

 

 

⋈◀「今度、なんか良い材料とかあげましょうか。フェムトファイバーの組紐とか良い気がしますね」▶⋈

 

 

 さて、旧友に対する手土産は手に入りました。この後の行動ですが、まずは様子見、といったところでしょうか。

 博麗の巫女が、自力で魔界から無事帰ってくるなら、それでよし。私や、この写真が出てくる幕はありません。ですが、もしも彼女が帰ってこられないようならば、その時は、旧友に頼まなければならなくなる。この写真を持って、私が魔界へ赴くことになるでしょう。

 

(出来れば、今度の親バカ会で自慢するのに使いたいですし、まぁ、大丈夫でしょう)

 

 巫女はどんな逆境にあろうと、どんな理不尽に直面しようと、最後には全てを解決して、けろりとした顔で縁側でお茶をすする。そういう人間であることを、私は知っています。

 

 だって、彼女は博麗の巫女(わたしのいとしご)なのですから。

 

 羅万館の自室に戻り、私は一人、静かに月を見上げました。

 魔界で、巫女が戦っているとは思えないほどの、静かな時間。

 

「…異変の後始末が終わったら、ミスティアの屋台で一杯ひっかけますか」

 

 私は巫女の顔を思い浮かべながら、ゆっくりと瞼を閉じます。手の中には、まだあのカメラの冷たい感触が、確かに残っていました。

 

 

 

 

 








蓬莱人形、普通に解釈が難しいです。ピエロ=妖怪って事?それとも最も美しいボク?二つの混在型?まぁ、美しいボクがアリスという設定にしております。作者の脳みそだと蓬莱人形に出てくるピエロがわからない。なんで蓬莱の玉の枝持ってるのかわからない…何らかの比喩?
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