マフィアのボスは元シスターフッド 作:茄子与一
「──
「ムー! ムー!!!」
︎︎仄暗い廃ビルの一室、雲に遮られた月明かりで僅かに照らされたその空間には、六人ほどの姿があった。スーツを着込み、黒い手袋をはめているその集団の鋭い視線の先には、パイプ椅子に麻縄で縛り付けられた少女がジタバタと暴れていた。
︎︎口にはガムテープ、しかもその内側には布を詰めている。音が籠ってしまい、助けを求める悲鳴をあげようにもあげられず、彼女は目元に涙を溜めていた。
︎︎そんな彼女の零れた涙をすくって、三つ揃いの上に黒いチェスターコートを羽織る少女はクックックと不敵な笑みを浮かべる。
「そんなに怖がらなくても、別に君を殺すつもりはないさ。人を殺してしまえばヴァルキューレの目も更に厳しくなるからね。今度はSRTの連中が来る可能性だってあるし……つまりは単なる雑談だよ、これは」
「───!!!!」
︎︎縛られている少女には、自らに近付くその少女の顔は影で見えなかった。しかし、ただ顔を合わせているだけで感じる圧倒的な恐怖……蛇に睨まれた蛙とはまさにこの事であった。何か根本的な所で格が違うと、そう感じざるを得ない異様な雰囲気に呑まれ、もはや悲鳴さえも彼女の口からは出てこない。
「さて、お嬢さん。そろそろ本題に入ろうか──君たちが我々の情報をコソコソと探っていたのは誰の差し金によるものだ? 正確に、嘘偽りなく答えてくれるのであれば、君を解放することを約束しよう」
︎︎産まれたての子鹿の如くガクガクと震える少女の額に、拳銃が押し付けられる。
︎︎学園都市キヴォトスの生徒にとって、銃弾は決して致死のものではない。中には仮にミサイルが直撃しても気絶さえしないような、頑丈な生徒だって存在するくらいだ。だからこそ、この街では銃撃戦やテロが日常茶飯事であり、故に犯罪発生率は何年も横ばい状態である。
︎︎だが、それは少し攻撃の工夫をすれば、ヘイローという神秘を身に宿すキヴォトスの生徒であっても、銃を使って死に至らせることは可能である。とはいえ、基本的にそれも気を失った無防備な生徒に多数の機銃で掃射するとか、そのような脳筋的手法に限られてしまうが。
︎︎なので、この場において彼女が目の前の少女を殺す手段はない。そもそも彼女が予備で携帯しているブローニングハイパワーの9ミリパラベラムでは、生徒ひとりを殺害に至らせる火力を有していないのである。
︎︎よって銃を向けたのは単なる脅しに過ぎなかったが、強い不安と恐怖で不安定な精神状態の少女には、実際の銃の威力はともかく、自らの死を幻視するには余りある行為であった。
︎︎ビリビリと口を塞いでいたガムテープが乱雑に剥がされ、内側に込められていたヨダレまみれの布が床に落ちる。過度な緊張からか、少女は涙を流しながら肩で息をしていた。
「答えてくれるか?」
「っ……! は、はいぃ! こっ、答えるから殺さないで……!」
「殺さないと言っただろ? ……誰に依頼された?」
「そっ、それは……その……っ、」
︎︎答えるつもりはある。
︎︎そう判断していた彼女は答えを急かすことはなく、ただ銃を向けたまま待った。平常心とは程遠い状態にある少女は、暫し目線をキョロキョロさせたあと、深く息を吸って呼吸を整える。
︎︎そうして数十秒が過ぎた頃、少女は意を決したかのようにキュッと目を開いた。
「──か、カイザーグループです! アジトを監視して、構成員の顔を撮影したものを渡せば金をやると言われて……」
「む……そうか……しかしだね、君。カイザーといっても様々な業種で分かれているのは知っているだろう? 具体的にどこの者かは知らないのか?」
「い、いえ、知りません!」
「…………」
︎︎銃を向けたまま黙った彼女の後ろで控えていた他の者たちの表情は、その名前を聞いて一段と険しさを増していた。
︎︎カイザーコーポレーション──キヴォトス有数の大企業であり、工業から不動産、更には民間軍事会社まで担っている連中だ。明確に違法な行為をしているという証拠があるわけではないが、キヴォトスの市民や生徒からの印象はあまり良くない。
︎︎そんな相手が、ヘルメット団を使って自分たちの情報を集めている。そこから色々と推察出来ることはあるが、何よりも先に彼女たちが思ったのは、甚だ不愉快であるということ。
︎︎そして正にそう言わんばかりの感情が、ありありと全員の顔に浮かんでいる。一瞬にして変わった雰囲気に、少女はひっと小さな悲鳴を漏らした。
「カイザー、それにヘルメット団……ああ、確かに奴らが使いそうな手ではあるが……」
「ボス、どうしますか。マーケットに浸透している下っ端連中程度なら、今すぐにでも仕掛けられますが」
「気持ちは分かるが、先に手を出させるなら向こうからだ。……とはいえ、ヘルメット団如きをけしかければどうにかなる、と奴らに思われたままなのも癪だね」
︎︎僅かに苛立ちの混じった視線が、少女に向けられる。彼女がゆっくりと引き金に指をかけると、少女はジタバタと暴れ出した。
「な、なんでっ!? ち、ちゃんと答えたじゃないですか!!」
「私は解放するとは言ったが、具体的なタイミングなど言ってはいないよ。なに、君にはしばらく寝てもらうだけだから安心しなさい」
︎︎何かを叫ぼうとした少女の脳天に向けて、十数発の弾丸が放たれた。ただの人間に対してならば死体撃ちといえただろうが、生徒相手ならやはり気を失うだけの結果に終わる。
︎︎火薬の臭いが鼻腔をくすぐる。はあ、とため息をついて彼女は拳銃を懐にしまった。気絶して項垂れた少女を見下ろしながら、背後に控える部下に命令を下す。
「この子をアジトに運べ。彼女はまだ色々と使える……あと下の階に転がっている他の団員は、ヴァルキューレに引き渡せ。撤収前にビルへ手榴弾でも投げておけば、音に気づいて勝手に連れていくだろうよ」
「分かりました。そのように致します」
︎︎そそくさと、椅子ごと少女を持ち上げる力持ちな部下を横目に、彼女は携帯を取り出した。顔認証で開かれたホーム画面、その時計のウィジェットに表示される現在の時刻は午前二時半を指している。
︎︎いつもなら寝ている時間帯……という訳では無かったが、流石に深夜ともなれば眠たいものは眠たい。今日やらなくてはいけない仕事は既に済ませている。大きな欠伸をしながら、彼女は散らばったガラス片を踏みしめた。
「私はもう帰るよ。あとは任せた」
「了解です」
︎︎残っていた部下にそう声をかけると、彼女は部屋を出て薄暗いビルの廊下を独り歩く。廃材が散乱している廊下には、ヘルメット団の少女たちが至る所に倒れていた。気を失っていてピクリとも動かないが、彼女は気にせず通り過ぎる。
︎︎ポケットからタバコを取り出し、咥えて火をつけた。ゆっくりと吸い込むと肺にニコチンが染み渡る。
︎︎学園都市キヴォトスに在住する者のうち、生徒の割合は過半数以上を占めている。加えて数千からなる自治区を運営しているのが大人ではなく学園の生徒であることから、主に健康上の理由によりタバコや酒は基本的に禁止されているのだが──多数の犯罪組織が活動するブラックマーケットに限れば、かなりの数が域内で流通している。
︎︎彼女が吸っているタバコも、マーケットで購入したものだった。メンソールや香料などの余計な混ざりものが入っていない、古き良き両切りタイプの所謂”重い”銘柄。
︎︎部下たちは「体に悪いですよ」と常日頃から注意をしているが、彼女がそれを聞き入れたことは殆どなかった。一般的マナーとして副流煙に気をつける程度だ。
︎︎そもそも未成年喫煙であることを指摘するような者は、ブラックマーケットにはあまり居ない。資金洗浄や違法武器の売買が横行するあの街では、そこらの不良がタバコを吸う程度何とも思われないのである。
──とは言ったものの、彼女を不良と呼べるかはかなり怪しいだろう。
「お疲れ様です、ボス。どうぞお乗り下さい」
「ありがとう。安全運転で頼むよ」
「もちろんです」
︎︎何故ならば彼女は、類まれなるカリスマと、キヴォトスでも上から数えた方が早いほど高い戦闘能力を併せ持つ実力者として、僅か二年でブラックマーケット有数の勢力を築き上げた大物犯罪者だからだ。どこにでも居るような不良とは、”悪”のジャンルも格も次元が違っている。
︎︎ゲヘナ・ミレニアム・トリニティを始めとした主要校や、ヴァルキューレ警察学校などからも指名手配を受けている彼女の名は──〈赤城リナ〉。
︎︎近年、各自治区から危険視されているマフィア組織”オラトリウム”を率いる首領にして、かつては神に仕えるシスターとしてトリニティ総合学園に在籍していた稀有な経歴の持ち主である。
■■■■
︎︎リナの朝は早い。
︎︎毎日、日の出が上がる前には目を覚まして、テキパキと着替えやメイクを済ませている。7時前には既に朝食を取って、就寝中にあった出来事の報告や組織各員への指示を出す。喫煙を初めてから生まれた目覚めの一服というルーティンさえなければ、リナはかなり健康的な生活を十年は続けている。
︎︎ブラックマーケットの外郭区に建つ地下一階地上五階建てのビルが、彼女が率いる組織〈オラトリウム〉の本拠地だ。建築様式は、トリニティではよく見られる古典主義に基づいている。
︎︎実際、このビルはトリニティ在籍中にリナが知り合った業者によって建てられたものだった。しかし建築様式などに特別な拘りを持たない者が多いブラックマーケットにおいては、かなり周囲の景観から浮いている。
︎︎完成当初も、街の景観に合わないという声が組織の内外から少なからず合ったが──組織の財力と権威を誇示する意味合いとしては、このビルの存在は最適だっただろう。
︎︎元々は小さな薄暗いオフィスビルだったこの土地を、組織の急成長に際して周辺の土地ごと買い占めて、更には区画整理までやり出した。
︎︎それ故に一時的にマーケットの建設業界がかなり潤い、以後彼女との繋がりを重視するようになったのは余談であるが……このとき財政的に無理をした甲斐もあり、今ではブラックマーケットのいちエリアながら、D.U.に勝るとも劣らない綺麗な街並みが完成していた。
︎︎周辺の住民から”オラトリウム城”とも揶揄される荘厳なビルの最上階に、リナの私室はあった。
「ブラックコーヒー、そしてタバコ。うむ、この組み合わせこそまさに至福だろうね」
︎︎寝巻きからスーツに着替えて、簡単なメイクを済ませたリナは、部下が運んできた朝食を取っていた。本日のメニューはシンプルに、二枚のトーストとゆで卵にサラダのセット。傍にはリナ自らが厳選した豆をブレンドした暖かいコーヒーがある。
︎︎完食したのち、コーヒーカップを片手にタバコの煙を燻らすその姿は、とても十七歳の少女には見えないだろう。だがブラックマーケットで多種多様な犯罪者と渡り合う彼女にとって、日々の生活はストレスが溜まる一方である。
︎︎体に悪いと理解しつつも、火をつける手が止められないのだ。一本、二本、三本と吸い、ニコチンとタールという有害物質のタッグが彼女の体を侵していく。これだけタバコを吸っていれば、空気清浄機はもはや単なる飾りだろう。
︎︎僅かに残ったコーヒーを飲み干して、リナは近くに置いてあるリモコンを手に取り、天井に付けられた換気システムを起動する。凄まじい勢いであっという間に部屋の空気が入れ替わるこの代物は、ミレニアムの業者から購入した最新の空調設備だ。
︎︎犯罪組織ということもあって当初は設置を渋られたが、通常より多い額の金を払ったら、手のひらを返したように意気揚々としだしたのは記憶に新しい。品質や性能にはとても満足しているので、呆れる以外に感想はなかったが。
︎︎しばらく換気を続け、部屋を漂っていた煙が無くなったのを感じたリナは、そうして四本目のタバコに手を伸ばしたが、その瞬間部屋の扉が叩かれた。
︎︎自分はもう手遅れだが、部下の健康を害す訳にはいかない。リナが諦めて箱をしまうのと同時に、ガチャリと扉が開かれる。
「ボス、先週に捕らえた例のヘルメット団のリーダーについて報告があるのですが……よろしいですか?」
「うん、いいよ」
「彼女の携帯電話の記録を全て洗い出したところ、カイザーとのやり取りと思しき通話記録が複数残っているのが確認できました。非通知だったので番号までは分かりませんでしたが、時間帯と発信場所については割り出しが終わっております」
︎
︎︎ほー、と間延びした声が出る。
︎︎機密情報や暗号資産の獲得のために、企業や学校へ毎日のようにサイバー攻撃を仕掛けているが故に、オラトリウムにはクラッキングに長けた構成員が多い。リナは割とアナログな人間なのでサイバー方面には門外漢だったが、流石に必要性も有用性も重々理解しているので、いつも予算は多めに割り振ってあった。
︎︎おかげでこのように、たった一つの携帯電話から重要な情報を得てくれる。優秀な部下を持って私は幸せです……なんて三文芝居をするつもりはないが、後で労いに行こうとリナは決めた。
「それで?」
「はい。時間に関してはバラバラだったのでそこに特別な意図があるとは思えませんが……しかし発信場所からすると、ヘルメット団に我々の情報収集を依頼したのはカイザーPMCの可能性が高いかと」
「カイザーPMC……か。なるほどね、理解した。アビドス関連で邪魔に思われたのかね」
「はい、恐らくですが」
︎︎カイザーグループの潤沢な資金を投じて育てられた軍事力の塊、それが民間軍事会社カイザーPMCである。
︎︎銃撃戦が日常のキヴォトスでは、行政としても犯罪組織としても傭兵は常に需要がある。
︎︎それこそゲヘナを始めとする三大校や、レッドウィンター等その他の有力校クラスならお抱えの治安維持組織で事足りるだろうが、傭兵に頼らないと治安が維持できない自治区も多い。故にブラックマーケットに限らず、傭兵ビジネスを専門にする企業は数多く、また腕っ節に自信のある生徒のバイト先としても人気の職種だった。
︎︎リナが設立したオラトリウムも、当初は資金集めのために傭兵をやっていた事もあったが──それも今では過去の話だ。
︎︎それはともかく、カイザーグループのうちPMCの部門が自分たちの情報を収集しているとなれば、事は重大だろう。オラトリウムは、カイザーPMCと正面からまともにやり合って勝てるほどの武力は有していないからだ。
︎︎リナの戦闘能力の高さからして、ゲリラ戦に限定すれば負けない見込みはあるだろうが……果たしてそれをやったとして、組織に利があるかと言われれば否定材料ばかりが思い浮かぶ。
︎︎いかに急成長を続けるオラトリウムといえど、マーケットでは新参者の部類に入る。古くから活動している有力組織とも顔が効くカイザーと敵対すれば、否応なしにそんな老獪な連中とも火種を抱えることになりかねない。そうなれば、待っているのは自分たちの破滅だ。
︎︎とはいえ──、
「……今更アビドスから撤退するっていうのもな」
「同意します。仮に我々がアビドスに投じた資金を全額補填する、というのであれば話は変わりましょうが、カイザーをそんなことをするとは到底思えません」
︎︎かつてはキヴォトス随一の勢力を誇ったアビドス自治区だが、度重なる砂嵐によって衰退し、今では廃校寸前の零細自治区と化している。市民や生徒の転出によって、砂に塗れた街はゴーストタウン化しているが、おかげで土地の価格はかなり安い。
︎土地が安く、人が居ないという所に目をつけたリナは、自身のセーフハウスとしてアビドスに隠れ家を建てようとしていた事があった。しかし色々と調べている最中にリナは、数十年前のアビドスの砂漠から金が産出されていたという記録を偶然見つけた。
︎︎よってセーフハウス云々は後回しにして、広大な砂漠から金鉱床を探すこと一年近く。紆余曲折を経て去年の冬頃にようやくお目当ての金鉱床を探し当てたので、現在は採掘場の建設や金の加工といった事業の用意をしている段階だ。
︎︎部下が口にした通り──カイザーPMCが相手だからといって、大人しくアビドスを去るには、オラトリウムはもう既にかなりの資金を投じてしまっている。
︎︎彼らが昔からアビドスで何かをやっているのはリナも知っていたし、大規模な軍事基地の存在も複数確認している。また、何故か自治区の大半の土地をカイザーが所有しているこも知っているが──幸いにして採掘ポイントのある土地は、カイザーではなくアビドス高校がまだその権利を有していた。
︎︎故に、オラトリウムは既にアビドス高校との間で正式かつ公平な土地取引を完了している。アビドスの土地をアビドスから購入している以上、カイザーPMCに横槍を入れられる筋合いはないし、仮に武力で対抗しても正当性はこちらにあるだろう。
︎︎だからこそカイザーPMCも、ヘルメット団を介して情報収集を行っていたのだろう。既に自分たちの情報はある程度知っているだろうに、わざわざオラトリウムに倒されるとわかっているヘルメット団を使うあたり、これは情報戦の一種として見るべきだ。
︎︎つまるところ、カイザーはこう言っているのだろう。
︎︎アビドスから去れ──と。
︎︎目に見えぬ警告が発せられていたことに気づいたリナの目には、怒りが宿っていた。
︎
「カイザーがあそこで何をやっていようがどうでもいいし、こちらとしては彼らの邪魔をするつもりは無かったんだが……あのクソッタレ共に下に見られたままなのは良くないね。私の精神衛生的に」
「どうされますか?」
「アイツらが暴挙に出ないとも限らない。後回しにしていたけど、採掘場の防備を固めるべきだな。戦車と榴弾砲をアビドスに移してくれ。弾薬類は多めに」
「分かりました。ただちに取り掛かります」
︎︎スピーディに去っていく部下の背中を見送り、リナはため息をついた。改めてタバコを吸い始めた彼女の心中は、決して穏やかではない。
︎組織というのは、どのような形態であれ面子を重んじる。彼女のようにマフィアを率いる者なら尚のことだ。仮にカイザーPMCに直接アビドスから撤退しろと言われて、「はいそうですか」と大人しく従ってしまえば、この2年間ブラックマーケットで築き上げてきたモノの大半が意味を無くす。
︎︎裏社会の金の亡者たちに死肉を食らうハイエナの如く貪られ、搾取され、奪われて──泣く子も黙るオラトリウムの名が地に落ちるのは想像に難くない。
︎︎故に、今後もブラックマーケットで活動する以上は、強大なカイザーPMC相手であろうが、手を出されたら徹底的にやり返すという姿勢を盛大に見せなくてはならなかった。パフォーマンスであってもだ。
︎︎だが現実問題、オラトリウム単体ではカイザーPMCには正面からでは勝てないのも確かである。
︎︎いかに採掘場一帯の防備を固めたところで、報復するに足る戦力を用意するには、あまりにも時間や資金が足りなかった。今すぐに用意できるのは精々が戦車や榴弾砲といった兵器を十数門と、いくつかの攻撃ドローン、あとは戦闘員くらい。
︎︎資金源のために利権の獲得を重視して、組織単位の武力を育ててこなった弊害が思わぬ形で現れたわけだが──リナの脳内には、ちょっとした考えが浮かんでいた。
「……アビドスといえば、あの子が居たか」