職員室の隣にある応接室。そこに、小さく縮こまって席に座るキノと、二人の大人がいた。
一人は、何故か一組の担当教師であるはずの千冬。そして、千冬の向かいには長い白髪を一つにまとめた老婆がいた。
「お忙しい所すみませんでした」
老婆が千冬に向け頭を下げる。千冬は「気にしなくていい」と答え、キノは額に汗を流しながら視線をそらし、隣に座る老婆を恐れていた。
老婆…キノを鍛えた女性こと師匠は、キノの学園での生活態度や成績などを聞き時折うなずく。
ただの三者面談にしては、まるで戦場のような空気が流れ。キノと指輪のエルメスは沈黙を続ける。
「そうですか…弟子がお手数をおかけして…」
「まぁ、最近では私のクラスの者と…」
千冬は一瞬。悪い笑みを浮かべ最近、箒達と少しもめた事に触れると師匠は横目でキノをにらみ、キノは背筋を伸ばした。
そんな会話を、扉の向こうで聞き耳を立てる人影が8つ。
突然現れた、キノの保護者を名乗る師匠と千冬の会話が気になっている一夏達。
「うわっ…千冬姉ぇ…絶対楽しんでるよ…」
一夏は、千冬がわざわざ四組のキノの面談に入った理由を察した。
一つは悪戯心だがもう一つは、おそらくキノが料理した物を口にして、死にかけたことへの仕返しだろう(この事件は学園の伝説にもなった)
「変だ。教官、の声が楽しんでいるように聞こえる…」
「えと、あいつ死なないよね?」
ラウラがいつもと違う千冬に身を震わせ、鈴達がキノの身を心配した。
(あの子の師匠ね…)
一人、一夏達と交じりキノと師匠について調査していた楯無。師匠から感じる普通ではない気配に警戒しいつもの笑みはなかった。
と、突然部屋の中から声が聞こえなくなり、何があったのか耳を見ると、突如扉が開かれる。
「何をしているこの馬鹿どもが」
「「「「「「「「あっ!!」」」」」」」」
開かれた扉から千冬が姿を現し、8人は逃げる暇もなく部屋の中に連行されるのであったーー
「改めまして、私がキノの保護者です。名前は…師匠とお呼びください」
部屋の隅に立たされた8人に向け師匠が丁寧にあいさつを告げる。一夏達は、師匠を前にして千冬と同じ空気を、強者の雰囲気を持つ師匠に緊張した。
「…」
キノは一夏達と目を合わせず無言を続け、師匠と千冬の会話が再開される。
時折、一夏達の不祥事やキノの話になるたびにそれぞれが気まずい表情をうかべ数分が経つ。
今度は学友からの普段のキノの様子を聞かれ、一夏は射撃の先生。箒は前までは気に入らなかったが今は仲間であると答える。他の少女達も、よきライバル。大切な友人・後輩と言い師匠は頷いた。
「…キノ」
師匠がキノの前に立ち、キノの肩に優しく触れる。
「どうやら、旅だけでなくこの学園の方もうまくいっているみたいですね。私も安心しました」
「師匠…」
師匠の優しい目にみつめられ、肩の力を抜くキノ。旅に出る際、あらゆる物を勝手に持ち出して、この世界で再開した時はゴム弾を額に受けた。この後、撃ち殺される事を覚悟したがそれが杞憂だと感じ息を吐く。
「まだまだ未熟な弟子ですが、どうか皆さんよろしくお願いします」
師匠の言葉に、一夏も慌てて返事する。さっきまでの緊張が解け、9人は安心するが
「さて、面談を盗み聞きした分と中断させた罰がまだだったが…」
「ちょうどいいですわ、キノの実力も見たかったので」
「私も、こいつらの実力が知りたくてな…」
二人の最強(最凶)が何やら物騒な事を言いだし、キノや一夏達の顔が青ざめる。
「ちょうど、体育館が空いてまして、そこならぞんぶんに…」
「あら、それはちょうどいいですわね…」
数時間後、貸し切り状態の体育館にて銃声と複数の悲鳴があがる。
9人の生徒達は、二人の女性と生身での戦闘訓練との事で模擬弾や竹刀の餌食となり
翌日ボロボロの姿で教室に姿を現すのであったーー