ゴーティス使い俺、呪術の次元は禁止カードが多すぎる【復刻版】   作:月日は花客

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☆6:ゴーティスの逃亡者

 遊海が去った後、高専の夜蛾や七海は頭を抱えていた。

 

「まさか逃げられるとは…………」

「夜蛾先生、なんで狙われるなんて脅したんですか…………」「いや、近頃不可解な死亡事件が増えているだろう」「ああ、死者はみんな水の無いところで溺死してたんですっけ」

「あの魚の式神……がな」

「彼を疑っていると?」

 

 逃げたとはいえ、リアクションや受け答えはあまりにも普通。ただの善良な一般人だと、七海はこれで確信を持っていた。そんな彼が、連続殺人を犯すなんて考えられないのだが。

 

「お前たちはそう思っても、疑う奴は山ほどいるだろう。それこそうちの上層部もだ。だからこそ、こちらで確保して成否の確認を急ぎたかったのだが…………」

「言葉が足りないですよ.……それで逃げられてどうするんですか」

 

 すまん。と夜蛾は自分にしては珍しいミスを詫びる。

 しかし、明らかな術式による殺人事件、それを連想させる術式、そしてまだ見つかっていない新しい人材……。

 呪術師側は怪しみ、呪詛師側は欲しがるだろう。そして呪霊側は…………彼は三つの勢力からその身を狙われることになってしまったのだ。

 

 高専としては生け捕りにして真偽を確認するのが優先されるが、それ以外の組織はわからない。

 あの人の良さそうな…………少し世間を知らなそうな青年が、無惨な最期を遂げないように、計画を練ることしかできないだろう。

 

「それにしてもあの術式、よくわかんねーな」

「カードって言ってましたけど、タロットのようなものなんでしょうか」

「タロットにタコが描いてあるわけないだろ」

「あんなタコが描かれてるカードってなに? もしかしてあいつのオリジナルとか?」

「なるほど、好きな効果をカードに封じ込める術式の可能性があるのか…………」

 

大真面目に考察しているが、彼らは正解に辿り着くには大人しく遊海に聞くしかない。

 なぜならこの世界に遊戯王は存在しないのだから、ゴーティスやペイシスがなんなのか知るよしもないのだ。

 

「やっぱいい人そうだったけどなぁ」

「……………………それは同感しますが」

「いやー? 意外とああ言うやつがサイコパスだったりすんのよ」

 とゆーかさ、と五条は夜蛾に向き直った。

 サングラス越しの蒼生の瞳は、いつだって全てを見透かしているように輝いている。

 

「あいつが狙われてるのなんて、どうせ腐った上層部共がビビってるだけだろ? 一級呪霊を一撃で祓ったなんて明らかに危険だもんな。肝の小さいあの腐り蜜柑達が考えそうなことだ」

「…………」

 

 当たっているのだろう。夜蛾は何も言わない。

 七海と灰原が遭遇してしまった、二級呪霊に間違われた産土神。五条レベルなら簡単に一撃だろうが、規格外を基準にするのは致命的な間違いだろう。

 

 故に、彼の未知数のレベル…………等級は、相当低く見積もって準二級。祓った呪霊のことを考えると一級は確実にある。

 そんな男が野放しになっているのが、上は相当怖いらしい。

 ましてそれが伸び代のある新米だとしたら…………どこまで上り詰めるかは、そしていつこちらに刃を向けるかは測れなくなる。

 

 出る杭は打ってしまえ…………そんな考えが簡単に出てきてしまうこの世界、その杭はあまりにも頭を出しすぎた。

 

「ま、知識も無いみたいだし、どっかでやらかすだろうね、アイツ」

 

 彼が呪術の世界であまりに無知なこと。

 それは彼にとって幸運で、そして不幸なことでもある。

 腐り切った呪術の世界に絶望しなくて済むが、無知故に過ちを犯したり命の危険に晒されることになるだろう。「知らなかった」で済まされる世界では無いことを、彼は知らないのだ。

 力を持った人間は、遅かれ早かれ人格に歪みが生じる。

 あのひたすら「普通」を生きてきたらしい彼の目が濁るのはいつになるだろうか。

 

 七海は、自分の澱んだ瞳を擦ってそう考える。

 

「てかさ、アイツ21なんだってね? 見えねー」

「五条さんの背が高すぎるんですよ」

「そりゃ五条さんはグッドルッキングガイ殿堂入りだし?」

 

 消えた青年の話もだんだんと消えていき、次の任務やこの前食べたラーメンの話に移っていく。それが彼らにとっての日常だ。

 

 連続殺人疑惑の、消えた青年。

 少し関わっただけの、負けず嫌いそうな人間がもし本当に犯人だったとしても、彼らは殺せるだろう。そんなやわなメンタルをしてたら呪術界でやっていけない。

 彼らにできることは、真相究明。

 尻尾を出したら叩くだけだが、悪趣味な殺し…………しかも一般人を巻き込んだ以上そこに無罪は無いのである。

 

「あ、あの人たちの名前まともに知らねえまま出てきちゃった」

 

こいつだけは呑気にデッキを触っているわけだが。

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