望まぬロボパイロットは死にたくない   作:第616特別情報大隊

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第666装甲戦闘団

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 ──第666装甲戦闘団

 

 

 俺はアーサー・キサラギ。

 

 俺は元はこんな洒落た名前じゃなくて、ごくごく平凡でダサい名前の日本人だった。それが、ある日死んだと思ったら別の世界にいた。いわゆる異世界転生ってやつ。

 

 俺は日本人としての人生に満足してたから、生まれ変わっても日本に生まれますようにって願ってたんだが、上手くいかないもんだ。

 

 俺が生まれたのはアメリカのような超大国アルカディア連邦で、そこに敷島国っていう日本みたいな国からの移民2世として生を得た。敷島系アルカディア人というわけだ。

 

 実質アメリカ人で勝ち組じゃんと思いきや、生まれた時勢は最悪。

 

 俺が12歳のときに元の世界でいう第二次世界大戦が勃発した。敷島国とアルカディア連邦は交戦状態に突入し、俺たち敷島系アルカディア人は敵性国民として内陸部の強制収容所に叩き込まれた。

 

 親父はアルカディア連邦に忠誠を示すために軍に志願し、そしてくたばった。史実のヨーロッパ戦線であるユーロニア戦線にて戦友を助けるために敵陣に突撃して、戦死したと軍から来た将校は言っていた。

 

 そして、俺が17歳のときについに戦争が終結。地球の第二次世界大戦と同じく敷島国には2発の原爆が落ちて、連合軍が勝利した。

 

 戦争が終結したおかげで俺たちは無事に強制収容所を出られたが、俺たちが開墾して作った農場は知らない連中に分捕られており、財産と呼べるものはまるでない。マジで最悪の状況になっていた。

 

 俺はゼロからスタートで、食っていくために働かなければならなかった。

 

 で、選んだのが何かって? 軍隊だよ!

 

 俺が自慢じゃないが前世でも国立大を出ており、そこまで馬鹿じゃなかった。少なくとも本当に赤ん坊から育った連中に比べれば賢い自信はある。だから、陸軍士官学校に志願したわけさ。

 

 士官学校では飯を食わせてくれるし、卒業後は将校になれる。そうなりゃ何もない俺でもそれなりの生活ができると考えた。実際、そこまで悪い計画ではなかったはずだ。戦争さえ起きなきゃ軍人は暇なはずだし、いい仕事だろ?

 

 ……と思っていたときが俺にもありました。

 

 俺が無事に少尉に任命されたとき、すぐに海外勤務が決まった。勤務先は敷島国だ。まあ、敷島系アルカディア人だから不思議じゃないけど。

 

 しかし、困ったことに史実の第二次世界大戦と違って共産圏がハッスルして、敷島国は北海道に当たる北辰州の半分が分捕られちまっていた。北には敷島人民共和国なる国家があって、敷島国は南北分断国家になっていたのだ。

 

 あー。嫌な予感がする。朝鮮戦争とか朝鮮戦争とか朝鮮戦争とか……。

 

 俺は空軍の輸送機で運ばれ、ついた先は北辰州から川港海峡を挟んで南にある東北地方の在敷島アルカディア陸軍基地だ。そこで俺が配属される部隊に合流することになっている。

 

 戦争なんて起きないでくれよ。ラブ&ピースが一番だ。頼むぞ。

 

 

 * * * *

 

 

「アーサー・キサラギ少尉、着任しました!」

 

 挨拶は重要だ。軍隊でも第一印象は大事だからな。

 

「よく来た、キサラギ少尉。私はギャリー・トンプソン大佐だ。まあ、掛けたまえ」

 

「はっ!」

 

 俺を出迎えてくれたのはなかなか感じのよさそうな白人の中年男性だ。まあ、軍人らしからぬ腹の出たスタイルだったが、大佐ぐらいになるとデスクワークばっかりで太っちまうんだろうな。羨ましいぜ。

 

「君はこれより私の指揮する第666装甲戦闘団に配属される」

 

 第666装甲戦闘団? 戦車ってことか?

 

「来たまえ。我々の扱う兵器は普通とは違っている」

 

 俺的に戦車に乗るのは歓迎だ。ただの歩兵より生き残れそうだろ?

 

 そう思いながらトンプソン大佐についていくと、憲兵がやたらと厳重に警備している格納庫に案内された。そこにあったのは──。

 

「これは!」

 

 二足歩行ロボット、そして四足歩行ロボットがそこには鎮座していた。

 

 ロボットと言ってもアニメや漫画にあるような、何の役に立っているのか分からない飾りたっぷりで目立ちまくる色とりどりの玩具みたいなものではない。オリーブドラブを基調にした迷彩に塗装された武骨な代物だ。

 

 まさに戦争機械という感じの代物がそこにあった。

 

「これが君が扱う兵器──シェルだ、キサラギ少尉。歩行戦闘車両(WFV)として開発されたものであり、我が連邦が誇る技術の結晶だ!」

 

 マジかよ。ロボットに乗るの? 俺が?

 

 

 * * * *

 

 

 マジだった。

 

 俺は訓練で早速シェルと呼ばれるロボットに乗ることになった。

 

 俺が乗るのはM901「グリフィン」と呼ばれる機体。

 

 装備は戦車砲を転用した馬鹿でかいライフルである口径76ミリライフル砲と89ミリ対戦車ロケット砲、そして口径12.7ミリ重機関銃だ。

 

 このライフル砲は歩兵が構えるみたいに、シェルの手足を使って構える。そして使用する砲弾はマガジン式になっていて、やはりシェルの手足を使って装填し、リロードを行うようになっていた。基本的にデカい歩兵って感じ。

 

 初めて乗った歩兵としての訓練しか受けていない俺でも、射撃で目標を確実に撃ち抜き、いとも簡単にリロードもできた。ただ歩くのなんて簡単すぎて訓練にもならないぐらいであった。

 

 ロボットは、シェルは俺の意のままに動く。

 

 だけど、妙な話だろ? 第二次世界大戦が終わって冷戦が始まった1950年代ってぐらいのこの世界にこういう技術があるのはさ?

 

 だけど納得の理由があった。

 

 このシェルに乗るには特殊なヘルメットを装着する。ゴテゴテといろいろな装置が付いたヘルメットだ。それが何を意味するのか?

 

「精神リンクには適応したようだな、少尉」

 

 そういうのは副司令官のエドモンド・ウィンターズ少佐だ。トンプソン大佐と同じ白人で、ウィンターズって名前が良く似合うくらいには表情を全く変えず、いつも冷淡な態度を取っている上級将校だ。愛想もこそもねえ。

 

「ええ、少佐殿。問題はなさそうです」

 

 精神リンク技術というものがこの世界にはあった。

 

 というより、この世界には代替(オルタナティブ)科学(サイエンス)っていう魔法みたいな科学系統が存在するのだ。

 

 この精神リンク技術という人の精神をシェルに一体化させ、複雑な操作システムを構築せずとも、自らの手足を動かすようにシェルを動かすことのできる技術。これも当然ながら代替科学ってやつでした。

 

「次の演習までには操縦を完全に習熟しておくように。貴官は他のパイロットより出遅れている。遅れた分を取り戻す必要がある」

 

「イエス、サー!」

 

 さあて、今日もお人形遊びを頑張りますか。

 

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