望まぬロボパイロットは死にたくない 作:第616特別情報大隊
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──空中艦
俺たちは捕虜収容所に向けて砲撃を開始。
事前の情報が確かなら、反撃してくる連中はいないはずだった。
しかし、そんなに世の中甘くはない。
『メタル・スリーよりメタル・ツー! 口径37ミリ機関砲を搭載した装甲車両と重機関銃を搭載したトラックが向かってきている! 数は10台だ!』
アンディがそう報告してきた。
クソ。恐らくは高射砲部隊だろう。口径37ミリと口径14.5ミリ重機関銃ってところだな。シェルの正面装甲をぶち抜くのには足りないが、かといっても無害でもない。何発も撃たれれば撃破され得る。
「メタル・ツーより各機! 機関砲と重機関銃を乗せた車両を叩け! 最優先だ!」
俺はそう命令を叫び、敵の車両を確認。
ふん。やはりZSU-37自走対空砲とZPU-4重機関銃を搭載したGAZの四輪トラックだ。
俺は
砲声とともに放たれた
アンディとマットも自走対空砲やトラックを相手に撃ちまくる。口径76ミリライフル砲の砲身が焼けただれそうなくらいに撃ちまくった。
しかし、一方的に撃っていられるのが許されるはずなどない。
『メタル・フォー! 被弾、被弾!』
「メタル・ツーよりメタル・フォー! 被害を報告しろ!」
『頭部カメラが被弾した! 視界がない! 何も見えない!』
「分かった! 一度下がれ! ここは俺とメタル・スリーで支える!」
クソ、クソ。このまま俺たちだけで敵を相手にしてたら、いずれ死ぬぞ!
『ハウンド指揮官よりメタル・ツー。捕虜の救出に成功した。撤退を開始する』
「了解だ、ハウンド指揮官! さっさと逃げてくれ!」
ようやく戦略諜報省の部隊が捕虜を救出した。あとは逃げるだけだ。
『ハウンド指揮官よりメタル・ツー。捕虜収容所北側から出てくる車両が友軍が乗っている。間違っても撃つなよ。いいな?』
戦略諜報省部隊は敵の車両を鹵獲し、それで脱出するつもりのようだ。捕虜収容所の北側のゲートからトラックと軍用四輪駆動車が走り出てくるのが見えた。
「メタル・ツーより各機! 友軍の車両を護衛して脱出だ! 車両についていけ!」
『了解!』
捕虜収容所の警報を聞きつけて、既に敵の部隊は集結中だろう。ヤバい送り狼がやってくる前にトンズラするに限るぜ。
俺たちは脱出地点である海岸に向かって戦略諜報省が分捕ったトラックを追って走る。捕虜収容所から脱出する海岸線までは、すぐって話だったが永遠に感じられるくらい時間がかかっている。
『メタル・スリーよりメタル・ツー! やばいぞ! 敵の空中艦だ!』
「何だって!?」
敵は夜間飛行できないんじゃねえのか!?
しかし、またしても予想は裏切られ、小型の空中艦が俺たちを追ってきた。恐らく口径57ミリ機関砲搭載のR7001級空中駆逐艦だ。空中艦としては小型だが、俺たちをばらばらに吹っ飛ばすには十分な代物だ。
「クソ、クソ、クソ! アンディ、マット! 先に逃げろ! 俺がどうにかする!」
『どうにかするってどうするんだよ!?』
「いいからさっさと行け! これは命令だ!」
『畜生! 分かった! 脱出地点で待っているからな!』
俺はアンディとマットを先に逃がし、機体の向きを変えて敵の空中艦を睨んだ。
敵の空中艦はさほど装甲が厚いタイプではない。俺の装備している口径76ミリライフル砲での抜けるだろう。だが、問題はどうやって陸戦兵器であるライフル砲の砲弾を、空飛ぶ空中艦にぶち込むのかだ。
シェルにはレーダーなんて積んでねえ。全部手動でやっている。
それなら手動でぶち込むだけだな!
「距離は十分に近づいてからだ」
俺は
「まだだ。まだ撃つな。まだ撃つな……」
俺は自分に言い聞かせ、じっとタイミングを待つ。
敵空中艦が十分に高度を落とし、俺の放つ砲弾が届く距離になるまでは、どれだけ狙って撃とうと無駄弾だ。今は一発も無駄にはしてられない。
敵は高度を落とし続け、艦首の口径57ミリ機関砲が火を噴いた。
「クソ、クソ、クソッタレ!」
俺の周りに機関砲弾が叩き込まれ、何発かはシェルの車体に命中して嫌な音を立てた。だが、まだ距離が遠い。俺が撃っても当たらない。
敵はさらに高度を落とし、次はロケット弾で俺を狙おうとする。
「ははっ! このときを待ってたぜ!」
そこで俺は空中艦に装備されているロケット弾を狙ってまずは撃った。砲弾は重力に逆らって上空に向けて飛翔し、ロケット弾の束に命中。大爆発が起きて、空中艦の姿勢が大きくよろめき、高度ががくりと落ちる。
「そのまま落ちやがれ、クソ野郎!」
俺はそれからありったけの
ガン、ガン、ガンと金属の砕ける音が俺のところにまで聞こえるぐらいには、砲弾は命中しまくっていた。
そして、ついにそのまま空中艦は地面に向けて落下していく。
「よっしゃー! ざまあみろ! ははっー!」
俺は大笑いした。爆笑した。笑えるだけ笑った。
俺は自分が生きてるってことが一番笑えたんだ。
シェルの損傷はそこまで大きなものではなく、俺は自走して脱出地点に急ぐ。
予定地点には既に海軍の輸送艦と駆逐艦がおり、部隊を回収していた。俺は乗り遅れないようにそれに急ぎに急いだ。
「待ってくれよ。俺を置いていくなよ!」
俺はそう願って全力で駆けた。
すると、顔をドーランで黒く塗ったジョン・スミスが俺に手を振っているのが見えた。あの野郎、自分たちだけで逃げるつもりだったろ。
『ハウンド指揮官よりメタル・ツー。遅いお着きだな。置いてくところだったぞ』
「クソが。俺のおかげで空中艦の追撃が躱せたんだぞ」
『それについては感謝しているさ。いつかこの借りは返す。絶対にな』
「期待せずに待ってるよ」
ジョン・スミス。戦略諜報省の人間が借りなんて気にするものか。この任務が終わったら忘れちまうにきまってる。
俺はそう思いながらも海軍の輸送艦に乗り込み、海岸を離れた。
今はこのクソみたいに揺れる輸送艦にいることが嬉しくてたまらない。俺は死なずに済んだんだって思えるから。
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