望まぬロボパイロットは死にたくない   作:第616特別情報大隊

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白狼郷の戦い

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 ──白狼郷の戦い

 

 

 攻勢に出た共産主義者(コミー)どもは膠着していた前線を突破し、一気に複数の部隊の後方連絡線を遮断。それによって友軍を包囲し始めている。

 

 例によって俺たちの仕事はその包囲が完成することを阻止すること。

 

 第8軍は内線作戦を展開し、大規模に展開した敵機動戦力の撃破を目指している。いわゆる機動防御であり、機動する敵が疲弊したところを叩こうって話だ。マンシュタインがやった後手からの一撃の親戚を目指してるらしい。

 

 確かに敵は既にこっちの後方数十キロにおよんで機動しており、燃料も弾薬もたっぷりと消費しただろう。そこを俺たちが襲えばあっさり敵を片付けられるかもしれない。

 

 いや。でも、この作戦を考えたのはクソの中のクソ将軍のリード中将だぜ? 本当に上手くいくと思うか?

 

 文句を言いたいが言えない俺たちは命令に従って機動し、友軍の後方連絡線を脅かしている敵装甲部隊の撃破に向かう。兵は神速を貴ぶというが、今回は本当に時間との勝負なのは間違いない。

 

「最新の情報では」

 

 ウィンターズ少佐が放棄された民家に司令部を設置して、俺たちに地図を見せる。

 

「有力な敵装甲部隊が、この白狼郷という村まで進出している。それによって第8軍の大部隊が後方連絡線を遮断された。諸君らはこの白狼郷を奪還し、敵装甲部隊を撃破することで友軍の撤退を支援してもらう」

 

「有力な敵装甲部隊と言いますが、規模は?」

 

「1個師団」

 

「マジかよ」

 

 ウィンターズ少佐の言葉に俺が呻く。

 

「もちろん諸君だけに任せる仕事でないことは分かっている。こちらには臨時に編成された海兵隊と敷島国警察予備隊の混成部隊が援護に当たる。友軍には1個大隊の戦車部隊も含まれている」

 

 友軍の戦車はM4中戦車かM26重戦車だとウィンターズ少佐。

 

「航空支援は?」

 

「現在航空優勢はどちらも握っていない。そのため空軍の支援はないだろうが、敵の航空攻撃もほぼないと第8軍司令部は結論している」

 

「了解」

 

 いつもの戦場じゃないか。航空支援なしで、こっちは寡兵。最悪だぜ!

 

「友軍が到着し次第、攻撃を開始する。待機せよ」

 

 それから5分程度で友軍は到着した。

 

「ハスフォード戦闘団のユージン・ハスフォード中佐だ。よろしく頼む」

 

 やってきた援軍の指揮官はウィンターズ少佐より階級が上だった。マッチョな海兵隊員でクソデカい男だった。そんな大男が副官と一緒に軍用四輪駆動車で第666装甲戦闘団司令部にやってきた。

 

「どうも、中佐殿。戦車を連れてくれたのですよね?」

 

「ああ。敷島の連中だ。西少佐!」

 

 大声でハスフォード中佐が叫ぶと、ひとりの敷島人が姿を見せた。アルカディア連邦陸軍と似たような戦闘服を纏った戦車将校で、口ひげがダンディな男だ。

 

「警察予備隊第2特車大隊の西です。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、少佐殿。戦車はM4中戦車ですか、M26重戦車ですか?」

 

「M4中戦車です」

 

 頼りない方が来ちまったか。仕方がない。

 

「では、これより俺が指揮を執る。我々は第8軍司令部の命令に従って、敵装甲部隊の撃破を目指す。この地点を攻撃開始地点とし、友軍砲兵による準備射撃後に突撃し、敵を撃破する。以上!」

 

 えらくシンプルな作戦だな。まあ、こっちは策を弄しているような時間はねえけど。

 

「さあ、位置に着け! 攻撃開始は3分後だ!」

 

 ハスフォード中佐が現場を取り仕切るので、そのまま司令部にいるのかと思ったが、彼はまた軍用四輪駆動車に乗って前線に向かって行った。

 

「流石は海兵隊ってところか。連中は将校になってもライフルマンらしい」

 

「タフな連中ね。援軍としてはありがたい限りじゃない?」

 

「そう願いたいね」

 

 アーデが冗談めかして言うのに俺は肩をすくめるのみ。

 

 タフな連中がいれば戦争に勝てるってんなら誰も苦労しない。実際には兵器の性能さや戦術の優劣で勝敗は決まるんだぜ。

 

 俺たちはハスフォード中佐の指示するままに攻撃開始位置に就き、友軍による準備砲撃を待った。

 

『突撃開始、突撃開始! 全部隊突っ込め!』

 

 後方から砲声が聞こえたかと思うと無線からハスフォード中佐の雄たけびが響く。

 

「行くぞ! 各機、続け!」

 

 俺たちは大地を駆け抜け、敵装甲部隊に迫る。

 

 ここで斥候が報告していたことと報告していなかったことが分かった。

 

 敵は陣地を構築していないということは報告されていた。敵戦車は地形を利用して姿を隠していたが、塹壕などの野戦陣地を構築する時間はなかったようだ。

 

 そして、報告されていなかったのは、敵はT-34中戦車を装備しているという話だったのが、一部間違っていたということだ。

 

「クソ! マジかよ!? 各機! 敵はIS-2重戦車及びIS-3重戦車を装備している! 警戒しろ!」

 

 俺の視線の先には砲口をゆっくりとこちらに向けるIS-2重戦車とIS-3重戦車が存在した。その主砲は口径122ミリ! M4中戦車でもシェルでも食らえば一撃であの世行きだ!

 

 俺がそう認識した次の瞬間に敵重戦車の砲口が瞬いた。クソ、撃ってきたぞ!

 

 俺はすぐさま機体を捻って攻撃を回避。砲弾が空を切って飛んでいった。

 

「反撃しろ! 敵重戦車を集中砲撃!」

 

 俺は命令を叫び、敵の重戦車に向けて砲弾を叩き込みまくる。

 

 友軍戦車部隊も砲撃を行い、M4中戦車のシェルと同じ口径76ミリ砲が火を噴く。

 

『弾かれた!』

 

『効果がない! 当たったのに!』

 

 しかし、中東戦争ではM48主力戦車の口径90ミリライフル砲を弾いたやつだ。口径76ミリライフル砲じゃあ太刀打ちできねえよ!

 

 こうなったらごり押しだ。それしか手はねえ。

 

「ニッケル小隊! 前に出て指向性障壁を展開し、友軍を支援しろ!」

 

『ニッケル・ワン、了解』

 

 ニッケル小隊が装備するM1001ならば重戦車の砲撃にも耐えられる。

 

「メタル中隊! メタル・スリーからファイブは俺に続け! 他はニッケル小隊とともに前進だ!」

 

『了解!』

 

 俺はここで部隊を分けた。ひとつはニッケル小隊のM1001とともに正面から攻撃を仕掛ける部隊。それからもうひとつは俺とともに敵の側面に回り込む部隊だ。

 

 シェルの素晴らしいところはその機動力だ。それを生かさないと俺たちに勝機はないし、何よりここであの世行きだ。俺はまだ死にたくねえんだよ。

 

 ニッケル小隊が敵の戦車部隊に正面から挑む中、俺と3機のシェルは高速機動して敵の側面に向けて進む。

 

 ソヴァーク製戦車は頑丈で、攻撃力にも優れるが、光学系がダメだという話を聞いていた。それが確かなら急に視界から消えた俺たちを見失うかもしれない。その不確かな可能性に俺は賭けた。

 

 全くのギャンブルだったわけじゃない。敵の戦車兵はハッチを閉じて完全に中に籠っている。そして戦車内からの視野は極めて限定されるものだ。その点はソヴァーク製の戦車もアルカディア製の戦車も同じ。

 

 対する俺たちシェルは精神リンク技術によって機体と人間が一体化しており、索敵能力は敵よりもはるかに優れる。

 

 その差を生かせば、必ず勝てる。そのはずだ。

 

「よーし! いいぞ、いいぞ! 敵の側面だ!」

 

 俺たちは無防備な側面を晒す敵の重戦車を前に舌舐めずりした。

 

「くたばりやがれ!」

 

 硬芯徹甲弾(APCR)を装填した口径76ミリライフル砲を構え、俺は砲弾を敵重戦車の側面に叩き込んだ。他のシェルもそれに続き、砲弾を次々に重戦車に叩き込んでいく。

 

 何発かの砲弾は装甲を貫通して重戦車を吹き飛ばしたが、何発かは弾かれた。そして俺たちが盛大に砲弾でノックしたせいで重戦車の砲塔がゆっくりと俺たちの方を向き始めた。不味いぞ、畜生。

 

「怯むな! このまま突っ込め! 敵を確実に撃破する!」

 

 俺はちょっとばかりハイになっていた。重戦車が吹っ飛ぶさまを見たせいか、それとも今日の食事に何かドラッグでも混じっていたのか。あるいは俺がシェルと一体化することで得られる万能感のせいか。

 

 俺は友軍がどうなっているかを確認もせずに敵重戦車に向けて突っ込み、それから思いっきり地面を蹴って飛翔した。重力20トンの巨体は10メートルほど大きく飛び、そのまま重戦車の上に取り付いた。

 

「あばよ、クソ野郎!」

 

 そう叫んで俺はライフル砲の砲口を重戦車の上面装甲に押しつけて引き金を引いた。

 

 爆発。

 

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