望まぬロボパイロットは死にたくない 作:第616特別情報大隊
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──停戦合意
今度こそ本当に戦争が終わった!
首脳部が壊滅した敷島人民共和国では、なんとか将軍っていう軍人が臨時政府の設置を宣言し、国連軍との停戦にすぐさま合意した。それからあっという間に北辰州で繰り広げられた戦争は終わっていった。
敷島人民共和国に派遣されていたソヴァークの義勇軍や軍事顧問は国外追放され、停戦に伴う非武装地帯が設置され、敷島人民共和国は敷島国との統一に向けた話し合いを始めている。
俺たち第666装甲戦闘団も帰国することになった。
「お前ら、ついに国に帰れるぞー!」
「イエーイッ!」
俺が歓声を上げるのに部下たちがアンディもマットも喜びを叫んだ。
「でもよ、アーサーの兄貴。これから部隊はどうなるんだ?」
「知らねえ。聞いてない。ウィンターズ少佐から何か話があるんじゃないか?」
所詮は実験部隊だしな。実験が終わったら解散じぇねえの? と俺は思っている。
しかし、ジョン・スミスのやつの言葉が気になる。戦略諜報省でもひときわ性質の悪い
「諸君」
そこでウィンターズ少佐が姿を見せ、俺たちはびしっと整列する。
「戦争は終わった。諸君らの祖国への貢献に感謝する」
ウィンターズ少佐はそう俺たちに感謝を示した。言葉数少なく、大げさにでもなく、ただ確かな信頼を込めてそう言っていた。
「我々はこれよりアルカディア連邦に帰国する。今後の予定はまだ決まっていない。だが、
「以上だ。それぞれ帰国の準備を」
こうして俺たちの敷島での戦争は終わった。
俺たちは空軍の輸送機に詰め込まれ、海軍の輸送艦で運ばれるシェルより先に祖国であるアルカディア連邦へと帰国した。
「よう、英雄!」
「釧岳じゃあ、お前らのおかげで助かったぜ!」
帰国した俺たちは軍の仲間たちからは英雄として扱われた。俺たちが釧岳や南雪見峠で助けた連中は大勢いるからだ。
「飲み行こうぜ! 盛大に勝利を祝おう!」
「おう! 今日は俺たちが奢るぞ!」
陽気な海兵や幸運にも生き延びた陸軍の連中と俺たちは待ちに出る。
けど、街に出るとそうでもない。
依然として敷島系アルカディア人は肩身が狭いし、アンディやマットのような黒人は区別という名の差別を受けている。1950年代はまだまだ公民権運動も盛り上がっていない時代なのだ。
「おい。見ろよ、
「どうせ便所掃除でもしてたんだろ」
酒場でふたりの白人が俺たちに向けて聞こえるような声でそう言う。
俺は無視したが、海兵たちは無視しなかった。
「てめえら! 聞こえてんだぞ!」
海兵たちは男たちの胸倉をつかんでぼこぼこにしちまった。
「いいか! こいつらを馬鹿にすることは俺たちが許さねえ! こいつらは俺たちの命の恩人なんだ! 分かったか、クズども!」
海兵たちにそう言われてふたりに白人は逃げ出した。
「飲みなおそうぜ」
「ああ」
俺たちは浴びるほど酒を飲んだ。これまでの戦時下のでの禁酒生活に別れを告げて、へべれけに酔っぱらった。
だが、俺の中にはある感触があった。
俺がシェルに乗っていたのときに感じた万能感。あれに勝るものはないのではないかという感触。酒をどれだけ飲んでも、あの万能感は忘れられない。
あのとき俺は敷島系アルカディア人でも、被差別階級である
俺の中で次第に軍を辞めて、真っ当な生活をするという意志は、弱まっていた。
俺はまた鋼鉄の巨人に戻りたかった。
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きりのいいところで一応終わりです。
お付き合いいただきありがとうございました!