望まぬロボパイロットは死にたくない   作:第616特別情報大隊

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盟主の介入

……………………

 

 ──盟主の介入

 

 

 ペイルホース作戦は成功したとステュアート大将は宣言した。

 

 奇襲上陸には失敗したが、その失敗は海兵隊が血で代償を支払った。夥しい血によって間違いは訂正された。

 

 俺たちは天塩崎に上陸し、そのまま敷島人民共和国の後方連絡線遮断を開始。元より大した兵站を持っていなかった敵はこの攻撃によって完全に補給を失い、大急ぎで撤退を開始した。

 

 空軍も航空優勢を奪還し、海軍は制海権を維持。そんな中で俺たちは前進する。

 

 ここまでくればもう勝ったも同然だろうと、そう思っていたんだ。

 

 俺たちは北へ、北へと前進し、敵の首都に迫った。

 

 しかし、困ったことに敵は諦めてなどいなかったわけである。

 

「クソ、クソ、クソ! 敵の空中艦だ! 爆撃が来るぞ!」

 

「空軍は何してやがる!」

 

 奪ったはずの航空優勢は奪還され、敵の戦闘機──MiG-15ジェット戦闘機だ──が友軍の空中艦や爆撃機をどんどん撃ち落としていく。そして、敵の攻撃機が代わりに飛んできて、俺たちに爆弾を叩き込んでは飛び去っていく。

 

 敷島人民共和国が急にジェット戦闘機を供与されて装備したわけじゃない。共産圏の盟主であるソヴァーク社会主義国が介入しやがったのだ。

 

 そう、これまで武器供与に留めてきたソヴァーク社会主義国が、武器供与のみならず軍事顧問や義勇軍の派遣を決定し、ソヴァーク赤軍の陸海空軍部隊が北辰州に展開したのである。

 

 意気揚々と北に進軍していた国連軍は激しい反撃に遭遇し、あちこちで戦線が崩壊し始めている。このままだとまた川港辺りにまで押し戻されるかもな。畜生め。

 

 そんな中で俺は第666装甲戦闘団の司令部に呼び出された。

 

「キサラギ大尉、出頭しました」

 

「よく来た、キサラギ大尉!」

 

 で、出迎えたのはウィンターズ少佐だけではなく、忌々しいクソ野郎──アレクサンダー・リード中将も一緒だった。

 

「キサラギ大尉。君たちに任務がある。重要な任務だ」

 

「はっ!」

 

 勘弁してくれ。川港で散々戦わされて、次はペイルホース作戦に放り込まれ、次は何だってんだよ? これ以上やりたきゃてめえがシェルに乗って出撃しやがれってんだ!

 

「地図を見てくれ。ここに雪見村という村落がある。現在、ここに第8軍に所属するアルカディア陸軍と敷島国警察予備隊部隊が包囲されているのだ。君たちにはここに包囲されている部隊を救出してほしい」

 

 ふうん? あちこちで同じようなことが起きてると思うが、ここの連中は特別ってわけか? 政治家の息子とかお偉いさんの子弟がいるのかね。

 

「ここには現在8000名の将兵が包囲されており、多くはこれまでの撤退で重装備を喪失している。そして、現在敵に航空優勢を奪われたため、空中艦を使って救出することも難しいのだ」

 

「閣下。具体的な救出プランは?」

 

「うむ。カギとなるのは、この地点──南雪見峠だ」

 

 リード中将はそう言って地図を指さした。雪見村の南にある狭い道路の走る峠。そこが今回の作戦のカギになるらしい。

 

「この地点は現在敵によって占領されている。脱出しようとする部隊は、ここに構築された陣地に阻まれて、脱出できずにいる。君たち第666装甲戦闘団にはこの南雪見峠を奪還し、解囲を実行し、友軍救出を果たしてほしい」

 

「我々の他に救出部隊は?」

 

「いない。第8軍は現在各地で敵に対する遅滞戦闘を実施しており、余力はないのだ」

 

 クソが。こっちはたったの1個中隊程度の戦力なんだぞ? 絶対『所詮有色人種部隊だから使い潰してもいいだろ!』って思ってるだろ。この畜生が。

 

「了解しました。全力を尽くします」

 

「釧岳の英雄である貴官たちならば成し遂げられるだろう!」

 

 くたばれ、クソ野郎!

 

 しかしながら、俺たちはまたしても抗議することができず、友軍救出作戦に動員されてしまった。それも本当に動員されたのは俺たちだけだぜ。

 

「なあ、アーサーの兄貴。俺たちどんどん死にそうな作戦に叩き込まれてないか?」

 

「そうだな、マット。本当にうんざりだぜ。負けても勝ってもいいから、さっさと戦争が終わってくれないと本当に国に帰れないぞ」

 

 最近、マットが俺のことを兄貴と呼ぶようになった。マットの尊敬する兄であるアンディと同じ扱いをしてくれているらしい。こういう友情は素直に嬉しいね。

 

「俺はもう国に帰りたいよ。戦場で病気とか怪我をすれば帰れるって聞いたけど……どうなんだ?」

 

「この戦況では手足が吹き飛ばない限り無理だろうな。後方の病院に送られるだけで、すぐに前線に戻されるぞ。それに下手に怪我や病気をすれば、それが原因で死ぬってこともあり得るんだ」

 

「ひでえぜ。お偉いさんにとって俺たちは死んでもいいのかよ……」

 

「そうみたいだな」

 

 親父も手紙で友軍救出に動員されたって話してたっけ。具体的に作戦がどうなったか検閲されていて分からなかったけど。

 

 俺も親父とを同じように戦場でくたばっちまうんだろうか。生き残りてえ。

 

 

 * * * *

 

 

「まずは偵察を実施しておきたい」

 

 ウィンターズ少佐は前線に設置された司令部で俺にそう言った。

 

「下車しての偵察となる。キサラギ大尉、部下を3名連れて南雪見峠の敵部隊についての情報を得てきてくれ。友軍偵察機は残念なことだが飛行できない」

 

「了解です、少佐殿」

 

「すまないな。今はこの部隊も人手不足だ」

 

 ウィンターズ少佐はやや疲れた様子でそう言った。

 

 第666装甲戦闘団は働きっぱなしだが、トンプソン大佐の後任は来ないし、部隊の出した損耗は補充されていない。任務は増えても人手は減っていくばかり。

 

 ウィンターズ少佐は上級将校としてあらゆる仕事を抱えており、このままじゃあ過労死しちまうんじゃないかと心配だ。少佐がくたばったら、次は俺が指揮を執ることになっちまう。それはごめんだ。

 

 俺は部隊の集結地点でシェルパイロットどもを集めた。、

 

「アーデ、アンディ、マット。これから偵察を行う。ついて来てくれ」

 

「了解。武器は?」

 

「RJが準備してくれるはずだ。あいつ、かなりため込んでたからな」

 

 シェルパイロットが装備しているのは自衛用の45口径のクソ重たい自動拳銃とM3短機関銃──グリースガンだけだ。それでは流石に戦闘になったときに不味い。

 

 なので、俺たちはまずは武器を調達しに向かった。

 

 入手先は後方支援の補給部隊。例の横流し野郎が指揮している部隊だ。

 

「RJ! 武器をくれよ!」

 

 俺がそう言って呼び掛けるのは無駄に濃い顔立ちをしたヒンドゥスターン系アルカディア人。名前はラージ・マリック中尉──通常RJだ。

 

「やあ、大尉殿。歩兵に転職するんで?」

 

「笑えねえ冗談はやめろよ、ボケ。とっとと武器を寄越せ。まともな小銃と弾薬、それから手榴弾もほしい。スモークグレネードもほしいな。あるんだろ?」

 

 にやにや笑いでRJが言うのに俺はそう言ってやつの指揮下にある補給部隊のトラックを叩く。RJは撤退する友軍部隊や全滅した敵部隊から装備を回収しているのを、俺は知っていた。どうせあとでどこかに横流しするつもりだったんだろ。

 

「あるにはあるよ。けど……」

 

「何だよ?」

 

「これは正規の装備じゃないから、いざってとき故障しても文句は言わないでほしい。故障しないって保証はできないんだ」

 

「はあん? そう言って俺たちにガラクタを渡して、まともな装備は温存しようって腹か? ああ? もし、お前の渡した武器が弾詰まり(ジャム)ったりしたら、シェルでお前をゆっくりと踏み殺してやるからな」

 

「分かった、分かった。負けたよ、大尉。飛び切りいいのを準備させる」

 

 RJは両手を上げて降参し、やつの部下が武器を抱えてきた。

 

「M1ガーランド、M2カービン、BAR──M1918自動小銃、それからSKSカービン。さあ、好きなのをどうぞ」

 

「BARは重たすぎる。全員M1ガーランドで十分だ。SKSカービンは友軍にうっかり敵に間違われちゃ困るしな」

 

「いい判断だね、大尉殿。弾薬も今準備するよ」

 

 RJはどこからくすねてきたのか手榴弾もスモークグレネードもしっかり準備した。

 

「オーケー。上出来だ、RJ。助かったぜ」

 

「感謝の気持ちを忘れないでくれると嬉しいよ」

 

 RJはそういってにやにや笑いで俺たちを見送った。

 

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