望まぬロボパイロットは死にたくない   作:第616特別情報大隊

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南雪見峠の戦い

……………………

 

 ──南雪見峠の戦い

 

 

 俺とアーデ、アンディとマットは南雪見峠の偵察に向かった。

 

 徒歩で南雪見峠に近づき、峠を見れる森の中から偵察を実施。

 

「クソ。戦車がいる。対戦車自走砲もいやがるな」

 

 峠はすっかり敵によって陣地化されており、巧妙にカモフラージュされた陣地には、機関銃や対戦車砲が据えられており、戦車もその砲塔だけを出して布陣していた。

 

「けど、敵は北側に戦力を重点的に置いている。南から攻撃されることにはあまり備えていないみたいね」

 

「ああ。それだけいいニュースだな。連中は解囲が行われるとは思ってない」

 

 敵は峠に北から迫る敵への反射面陣地を構築しているが、南から攻撃を受けることはアーデの指摘通りあまり考えていない様子だった。

 

「敵の規模は戦車1個中隊、歩兵2個中隊程度か。やれると思うか?」

 

「火砲の支援があればいいのだけれど」

 

「こっちが装備しているのは迫撃砲程度だ。包囲下にある友軍も撤退の際に重装備は放棄したとウィンターズ少佐が言っていた」

 

「じゃあ、頑張るしかないわね。敵を踏みつぶしてでも進みましょう」

 

「そうなるな……」

 

 俺たちは巡回中の敵に遭遇するようなこともなく、無事に偵察を終えて、ウィンターズ少佐に報告しに向かった。

 

 すると、司令部にはお客さんがいた。敷島国の連中だ。

 

「少佐殿。偵察は完了しました」

 

「ご苦労。こちらは敷島国警察予備隊の栗山少佐だ。以前、君たちとは釧岳の戦いで共同している」

 

 ウィンターズ少佐はそう言ってお客さんを紹介した。

 

 そう言えば見覚えがある。山岳部隊を指揮していた将校だ。

 

「栗山です。今回は友軍救出に向かわれるということで、我々もお手伝いできればと思い、参じました。雪見村の包囲下には我々の同胞たちも多くいますので」

 

「それはありがたいのですが、第8軍の許可はあるので?」

 

「ありません。独断で動いております」

 

 わお。マジかよ。今の国連軍は平気で命令違反を銃殺するような状況だぞ。

 

「我々が第8軍司令部に喋らなければいいだけの話だ、大尉。ここは力を借りよう」

 

「了解です、少佐殿」

 

 こいつは助かる。シェルは対装甲戦闘はともかく対歩兵戦にはさほど強くない。

 

「栗山少佐は歩兵大隊と砲兵中隊を指揮下に有している。作戦はまずは砲撃による準備射撃後、シェルによる強襲で敵装甲部隊を撃破を実施し、それから歩兵が峠の占領を実施する。では、詳細を詰めよう」

 

 ウィンターズ少佐が主導し、南雪見峠攻略作戦が立案された。

 

 シェルは可能な限り道路を避け、山岳地帯を前進することで敵に早期に捕捉されることを避ける。その後、十分に距離を詰めたら砲兵が砲撃を実施し、シェルは突撃。それからすぐに歩兵が突撃して峠を占領する。

 

「時間との勝負になる。我々が1分でも峠を占領するのが遅れれば、峠に敵の増援が現れて峠の占領維持が不可能になる。そうなれば友軍は脱出できない」

 

 それに敵の空軍だって爆撃に来るだろう。そうなればみんなお終いだ。

 

「君たちが無事に作戦を成功させてくれることを祈る。以上だ」

 

 

 * * * *

 

 

 アルカディア陸軍がいう雪見ポケットの解囲作戦が開始された。

 

 俺たちが死なずに勝利するには、奇襲が重要。

 

 移動は夜間に開始され、夜のうちに可能な限り進んだ。敵の空軍が空を握っている今、安全に移動するには十分にカモフラージュしたうえで夜間に進むしかない。

 

 で、栗山少佐の部隊は車両をほとんど喪失しており、貴重な車両は砲兵に割り当てられていた。だから、大勢の歩兵たちが徒歩で移動していた。黙って、文句を言わずに。タフな兵隊どもだ。

 

 夜間の移動で起きるのは、シンプルに道を間違える事態だ。恐らく俺たち第666装甲戦闘団だけならば大いに道を間違っていただろう。

 

 しかし、幸いにも栗山少佐の部隊に地元人間がおり、彼らが道案内をしてくれた。こいつらが命令違反を犯してでも助けに来てくれなかったら、作戦は大失敗だっただろうな。ありがてえ限りだ。

 

 そして、敵の空軍や巡回に発見されることなく、無事に俺たちは攻撃開始位置に到着した。砲兵が展開を始め、俺たちは地図を見て侵入経路を再確認する。

 

 よし。行けるぞ。

 

「メタル・ツーより全機。作戦開始だ。派手にかませ!」

 

『了解!』

 

 俺たちは峠の周囲にある森の中を駆け抜けて峠に迫る。かなり険しい山肌でも、シェルならば平気で突破できる。俺たちは走り、走り、走り、駆け抜けた。

 

『砲撃開始、砲撃開始!』

 

 そして、友軍の砲撃から数秒後に峠に布陣している敵を襲撃した。

 

「くたばりやがれ、共産主義者(コミー)!」

 

 俺は背を向けているT-34中戦車に向けて口径76ミリライフル砲から砲弾を叩き込む。戦車は爆発炎上し、それが合図となって他のシェルも射撃を開始し、次々に戦車が爆発していった。

 

 俺たちが最優先で狙ったのは戦車だ。歩兵は砲撃の衝撃から立ち直っていないし、対戦車自走砲は方向を北に向けていて、車体ごと向きを変えなければ俺たちお照準できない。だから俺たちを殺せるのは敵の戦車だけだった。

 

「全員、動きながら撃て! 止まるな!」

 

 俺たちが敵のダグインした戦車に対して優位なのは機動力だけだ。俺たちは敵戦車に照準されないように素早く動きながら撃ちまくる。

 

 シェルは精神リンク技術で俺の思うように動く。今の俺は巨大な戦争機械だ。神話に出てくるような巨人だ。アトラスやグレンデル、ゴリアテ、ヨトゥン、だいだら法師。そういう化け物どもだ。

 

 俺は巨人となり、巨大な砲を握り、敵の戦車を玩具のように吹っ飛ばす。

 

 そうやって戦う中で、不思議な全能感が俺の中に芽生えていた。俺は死ぬことはないというような、そんな妄想じみた考えだ。

 

 不思議とシェルに乗っている間はそれを信じられた。俺は生身の人間などではなく、鋼鉄の塊だと思えたのだ。俺は鉄に宿った魂であると、誰にも破壊できない無敵の兵士だと思えたのだ。

 

 そんな万能感の中で俺は戦車を吹っ飛ばし、対戦車自走砲を吹っ飛ばす。

 

『ニッケル・ワンよりニッケル小隊。火力は分散させて。同じ目標を狙わない』

 

『了解!』

 

 T-34中戦車相手にM1001の口径90ミリライフル砲は過剰とも言えた。第二次世界大戦中の重戦車でも吹っ飛ばせる火力なんだから当然だろう。

 

 戦闘は俺たちに優位に推移していき──。

 

『敵装甲戦力を全て撃破! 繰り返す、敵装甲戦力は全滅した! やったぞ!』

 

「オーケー! メタル・ツーよりグリズリー・ワン! 装甲戦力は片付けた! 繰り返す、装甲戦力は片付けた! 突入しろ!」

 

 アンディが叫び、俺は栗山少佐に向けて指示。

 

「突撃!」

 

 突撃と万歳の声が響き、栗山少佐の歩兵大隊が峠に向けて突撃してきた。その気迫に押されたのか、敵の一部は逃げ始めていた。

 

 戦車を失い、俺たちシェルが援護する中で、共産主義者(コミー)をぶち殺そうと気合の入った歩兵の突撃を受ければ、敵が瓦解するのは当然だとも言えた。間抜けな共産主義者(コミー)の連中は瞬く間に戦意を喪失したわけだ。

 

「メタル・ツーよりジャンクヤード。目的地を占領した。繰り返す、目的地を占領した。友軍の脱出を始めさせてくれ!」

 

『ジャンクヤードよりメタル・ツー。よくやった。友軍の脱出はすぐに始まる』

 

 俺たちはそれから1日と3時間、南雪見峠を占領していた。

 

 包囲されていた友軍が疲労困憊の様子で長蛇の列を作って脱出するのを見届け、敵の砲撃や爆撃が襲ってこないことを祈った。

 

 幸い、天候悪化によって友軍も敵も空軍部隊は活動できず、さらには濃霧も発生したせいで友軍が撤退しているという事実すら敵はつかめていなかった。

 

 そんな幸運が合わさって、撤退の際の死者はごくわずかにとどまった。

 

 だが、まだクソみたいな戦争は進行中だ。

 

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