望まぬロボパイロットは死にたくない   作:第616特別情報大隊

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捕虜収容所襲撃

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 ──捕虜収容所襲撃

 

 

 あとで聞いた話だが、俺たちがフェアヘブン級空中巡航艦で白楡にある捕虜収容所を目指しているとき、空軍はちゃんと陽動作戦を行っていたらしい。

 

 国連側の空軍がぼろくそに負けていたのは前に話したよな? その原因がある。それはジェット戦闘機の開発と反重力炉の小型化で連邦が著しく遅れていたからだ。

 

 連邦は第二次世界大戦後から大型の空中艦の開発に力を入れてきた。口径356ミリ砲を乗せた空中戦艦が開発がいい例だ。そいつは巨大な戦略爆撃機の代わりになり、空飛ぶ要塞になるはずだった。

 

 が、そうはならなかった。

 

 デカい空中艦と言うのは敵の戦闘機のいい獲物だった。この戦争で初陣を飾った空中戦艦は共産圏の戦闘機によってぼこぼこにされ、そそくさと後方に逃げ帰っていたのが現実であった。

 

 その役立たずの空中戦艦が、今回の陽動のために展開された。

 

 俺たちが密かに迫る白楡の捕虜収容所とは別の方向にある、敷島人民共和国の後方兵站基地の砲撃に空中戦艦による空中艦隊は動員されていた。

 

 そのせいかそっちに敵は迎撃に急いだらしく、俺たちの方には向かってこなかった。ここまでは作戦通りだな。

 

「間もなく降下だ! 準備しろ!」

 

 空軍の連中が騒ぎ始め、俺たちもシェルに急ぐ。

 

 普通、空挺戦車とかそう言うやつは無人で投下して、あとで人間が乗り込むようになっている。だが、今回はそういうわけではない。シェルは有人で、俺たちを乗せて、投下されちまう。

 

「アンディ、マット。準備はいいか?」

 

「ばっちりだ。やってやろうぜ、兄弟!」

 

「ああ!」

 

 俺たちはシェルに乗り込む。

 

 今回の俺たちの降下はかなり大胆……というより何も考えてねえんじゃねえかって代物だ。空中巡航艦は高度を落とさず、戦略爆撃機の高度──1万メートルから俺たちを投下することになっている。

 

 これがどれくらい無茶苦茶な話かと言うと、特殊作戦部隊を降下させことで有名な高高度降下低高度開傘(HALO)降下でも、高度9000メートルからの降下だってことからやけくそ加減が分かるだろう。

 

 まして、俺たちは人間じゃなくてシェルに乗って降下するんだぞ?

 

 しかし、流石に俺たちシェルが地面でパンケーキにならないようにする準備は行われていた。俺たちのシェルに一時的にではあるが、試作品の小型反重力炉が設置されたのだ。何でも鹵獲した敵の空中艦の反重力炉をリバースエンジニアリングしたとか。

 

 だから、俺たちは空から落とされるが、いい感じに反重力炉を使って着地の衝撃を緩和することになる。上手くいかなければ、俺たち敵地でパンケーキだ。クソが。

 

『降下40秒前!』

 

 減圧が行われてから空中巡航艦の後部ランプが開かれ、俺たちシェルが前に出る。

 

『降下30秒前!』

 

 シェルの中の酸素はこの高度でも保たれている。

 

『降下20秒前!』

 

 俺たちが降下してから、次に戦略諜報省の連中が降下する。

 

『降下10秒前!』

 

 地面は見えねえ。ひたすらな雲が広がっている。

 

『降下開始! 神のご加護を(ゴッドスピード)!』

 

 クソ!

 

 俺は射出されたように空中に放り出された。

 

 大急ぎでシェル内に設置された高度計を見ながらパラシュート展開と反重量炉の使用のタイミングを計る。空挺降下自体は以前にもやったことがあるので、全くの未経験という話じゃない。

 

 でも、こいつは怖えよ! マジで怖い!

 

「クソ、クソ、クソ!」

 

 俺は悪態をつきながら必死に高度計を睨み続ける。

 

 高度はぐんぐん落ちていき、ついにパラシュート展開のタイミングが来た。

 

「メタル・ツーよる各機! パラシュート展開だ!」

 

 俺はアンディとマットに向けて命令を叫び、パラシュートを展開。ぐんという衝撃とともにパラシュートは開き、降下する速度が低下してきた。だが、それでもビルから飛び降りた人間ぐらいの速度が出ている。

 

 このまま落ちたら俺たちはエレベーター事故のようにシェルの中でミンチになる。

 

 あとは反重力をうまい具合に展開することだけが頼りだ。

 

 落下は続き、次第に地面が見てきた。雪に覆われた北辰州の大地だ。少し離れた場所にはサーチライトの光が見えた。あそこが捕虜収容所だろう。

 

「各自、自身の判断で反重力炉を起動しろ!」

 

 俺はもう自分のことだけで精いっぱいだ!

 

 3、2、1で反重力炉を起動。ふわりとまるでプールに浮かぶような感触がして、降下速度が瞬く間に減速していく。こいつはすげえな。

 

 そして俺たち3機のシェルは天使の羽根のようにふわりと大地に降り立った。

 

 だが、クソッタレな本番はここからだ。

 

『こちらハウンド指揮官。メタル・ツー、聞こえるか?』

 

「聞こえるよ、ハウンド指揮官。そっちに合流したい」

 

『こっちから合流する。そっちは見えているからな』

 

 それからばらばらに降下した戦略諜報省の特殊作戦部隊が俺たちの下に集結した。

 

 まずは俺たちは作戦を最終確認するために、シェルを降りてジョン・スミスたちと地面に広げた地図を見下ろす。

 

「俺たちが降下したのは、この地点だ。捕虜収容所はここ。警備は軽歩兵が1個大隊という情報が得られている。あくまで連中は看守だ。重装備は持っていないし、戦車の類もいない」

 

「ああ。そいつはいい知らせだ。俺たちはあんたらの援護だろう?」

 

「いや。作戦変更だ。敵の警備を引き付けるのに派手に暴れてくれ。その間に俺たちは静かに捕虜を救出してくる」

 

「随伴歩兵なしで暴れろってか? 死ねって言いたいなら素直に言えよ、クソ野郎」

 

「まさか。言っただろう。敵は軽歩兵だ。無反動砲の類もない。一方的にぶん殴れる相手だ。殺しを楽しんで来いよ、ブリキの人形(ティンマン)

 

「くたばりやがれ」

 

 マジでむかつくクソ野郎だな、こいつ。

 

「アンディ、マット。俺たちは陽動をやるぞ。適当に敵の警備施設を砲撃すりゃそれいいだろ。間違っても捕虜を収容している建物は撃つなよ。いいな?」

 

「どうやってそれを見分けりゃいいんだ?」

 

「地図を見ろ。書いてある」

 

 戦略諜報省の連中はどういう経緯か知らないが、捕虜収容所の見取り図を得ていた。そこには捕虜が収容されている場所や、警備詰め所などが記されている。

 

「まあ、俺についてくれば間違いはない。離れるなよ」

 

「ああ。あんたについていけば生き残れる気がするよ、兄弟」

 

 俺はそんな大層な人間だとは思っていないが、部下を死なせたくないという気持ちはある。部下が死ねば、次は俺が死ぬことになるんだからな。

 

「じゃあ、やるぞ。派手にかませ!」

 

 俺たちはシェルに乗り込み、捕虜収容所に向けて駆ける。俺たちの乗ってるM901は改造されて脚部にローラーが装備された。それによって俺たちは平地ではローラーで素早く移動することが可能になった。

 

 捕虜収容所はぐんぐんと近づき、警備塔からのサーチライトが俺たちに方を向いた。それと同時に口径76ミリライフル砲で榴弾(HE)を、その警備塔に向けて叩き込む。

 

 大爆発。そして、警報が鳴り響き始めた。

 

 楽しい、楽しいパーティタイムだ、クソッタレ。

 

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