ダウナー刺青褐色お兄さんパパとアジアンビューティー眼鏡お姉さんママとトラウマを抱えた美少年息子の疑似家族が見たいっつってんだよ!   作:b畜農家

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まだまだファビウスのターン。これだとファビウスがパパだよ。


二話:歴史の忘れ物との邂逅(後編)

 

 ナタとヴァルーは、ひとまずハンターズギルドの客人用の部屋に預けられることとなった。

 何もかも初めての事例であるため、受け入れ態勢が整うまでそうしたほうがいいということで決定された。

 ナタ少年は相当疲れていたのだろう。身を清めてベッドに潜り込んだら、そのまま食事もとらずに眠りこんでしまった。

 

 そうして事態が一応落ち着いた今、わかったことであるが…

 ヴァルーの説明した『制御装置』というのはナタが首に提げていたペンダントだったのだ。

 一見つるりとした乳白色の石にしか見えなかったが、調べた結果未知の物質でできていることがわかった。

 ペンダントの調査については、それをいやがった二人とひと悶着あったものの、この話は蛇足でしかないため省こう。

 今ファビウスが気になるのは、素手でリオレウスを倒した彼の力についてなのだ。

 

 ドアがノックされる。

 学者と一緒に書類へ目を通していたファビウスは、目頭を揉んだあとそちらへ向けて返事を出した。

 扉が開き、清潔なシャツとズボンを履いたヴァルーが入ってきた。油断のない目をしたギルドナイトが、そのあとに続く。

 べっとりとこびりついていた血を落としてこざっぱりとさせれば、彼は割と精悍な印象の男性だった。

 

 伸び放題の銀髪といい、異様な瞳と言い、人間離れした外見だ。

 相変わらず、自分からは何も喋らず無表情で立っている。

 生気をいっさい感じさせないその佇まいは、生ける屍──

 

「〇四七号機、只今到着致しました」

 

 はっとしたファビウスは、彼に対する失礼な言葉を頭の中から追い出した。

 

「ああ。夜分遅くに呼び出してすまないね、ヴァルー」

「何かご用件がありますでしょうか」

「君にいくつか質問をしたくてね。時間を少しもらえないだろうか」

「了解しました」

 

 学者が素早くメモを取った。

 

「君の能力についてだが…… 君はどんな武器を使ってリオレウスを倒したのだね?」

 

 あの戦場から少し採取してきたのだが、やはりあれは金属であるようだ。

 金属を液体のように操る能力。それについてファビウスは心当たりがあったが、そんな(ことわり)に反した力を使うことができる生き物は限られている。本人の口から確証をもらわないとおよそ信じられない仮説だ。

 その仮説が本当だとしたら、学術院が揺らぐほどの事案であるとも。

 ヴァルーは、淡々とした口調で返答した。

 

「当機は司銀龍の力を使用しています」

「………」

 

 

 

 学者とギルドナイトが一様に目を見開いている。ファビウスは言われた言葉をしばらく反芻し、言葉を返した。

 

「それはつまり、ハルドメルグの力を使っているということかな?」

 

 ヴァルーは疑問を呈した。

 

「それは、現代における司銀龍の正式名称で宜しいのでしょうか」

「そうだ」

「はい、『情報を更新しました』。当機は司銀龍ハルドメルグをベースとしたガーディアン兵です」

「ふむ……」

 

 提供された突拍子の無い情報に脳をジリジリ焼かれているような頭痛に襲われながら、ファビウスはハルドメルグという『古龍』に関して思考を巡らせた。

 

「もう一つ質問をするが、君はハルドメルグの脅威に関して知っているのか?」

 

 ヴァルーは、何千回も喋ってきたような流暢さで説明を始めた。

 

「主に雪山地方で見られる古龍種で、地中の鉄分を液体に変換し操作する能力を備えたドラゴンです」

「ドラゴン?」

「当機の思考素子に記録されている古龍種の旧名称です。鋼鉄と同硬度の爪を持ち、液体金属により身を守ります。当機はハルドメルグの心臓部を使用し、司銀龍の力をある程度再現しています」

「再現ということは、能力を完全に使えているわけではないのだね」

「『肯定します』。当機は竜大戦後守人の里に再配備されましたが、現在に渡るまでのメンテナンス不備により、能力に多少の劣化が見られています」

 

 ヴァルーは指を一本突き付けた。そこから銀色の金属がひとりでににじみ出て、長い爪めいた一本のナイフに変わった。

 前に出ようとしたギルドナイトを手で制して、ファビウスは事の顛末を黙って見守っている。

 

「このように小規模な量なら自由に操れますが、現在のメンテナンス状況で大規模に金属を操作する場合ある程度の土壌汚染は避けられません」

「あまり多い量の液体金属は引っ込めることが難しいという意味だと解釈するよ」

「『肯定します』」

 

 時間を逆戻しにするように指先に戻っていく液体金属を注視しながら、ファビウスは切り込んだ。

 

「最後にもう一つ質問させてもらう。──今、君は()()()と言ったのか?」

 抑えきれなかった動揺が、同じ言葉を繰り返させた。「竜大戦?」

 

「はい」

「……」

 

 ファビウスは口を覆い、椅子にゆるゆると座りなおした。

 無意識に机に置かれた書物、それから、ペンを動かすのすら止めて愕然とした顔をした学者へと目が流れる。

 永遠に近い沈黙の後、ファビウスはどうにか言葉を絞り出した。

 

「…ガーディアンとは何なのだ」

「はい、ガーディアンとは汎用人造兵器の正式名称です。当機は文明末期にロールアウトされた人型ガーディアン兵になります」

 

 汎用人造。人型。

 胸を蝕むいやな感覚を飲み下して、ファビウスは冷静を取り繕った。

 

「失礼なことを訊くが、君は生粋の人間ではないのかね?」

「『否定します』。当機は人体ベースに竜化手術を施して鋳造されたガーディアン兵です」

 

「人間を道具に改造したわけだな」わずかに鼻白んでファビウスは言った。たとえ彼が首を振ることがわかっていても、他の二人の気持ちを代弁してやりたかったのだ。

 

「当機たちは志願した上で手術を受けました。任意の上です」

「ああ、すごいな。それで、守人の里とはどうやって連絡が取れるだろうか」

「《思考中》…《回答》。避難に使用したリュウヌ循環用通路は現在ガーディアン八二〇号機の暴走に伴い崩落し、通ることは難しい状況にあります。ですが、他循環通路はまだ利用できる可能性があると推測します」

「君は通路がどこにあるか把握してるのか?」

「『肯定します』。ただ、元来通路は機構保全のために人が通ることのできる状態に整えたものであるため、避難用として作られたわけではありません。たどり着くには労力がかかると思われます」

「うむ……」

 

 彼が言いたいのは、現在守人の里に続いている通路はたどり着くには距離がある。ということなのだろう。

 ファビウスはよく考えたうえで発言した。

 

「貴重な情報を開示してくれてありがとう。あれこれと長く話をさせてすまないが、この問題に関してまだ結論を出すのは難しいんだ。君はひとまず部屋に戻り、休憩してくれ」

「了解しました」

 

 一礼したヴァルーが部屋から出ていったあと、ファビウスは長い長いため息をついた。こんなに緊張したのは、新米時代初めて狩りに挑んだ日以来だ。

 

「今の情報は、どこまで信頼されるでしょう」

 

 学者は不安げにささやいた。ファビウスが実績のあるハンターだと周囲に認識されていたとしても、今彼が発言した情報はあまりにも現実味がなかったからだ。

 

「君はとにかく、すべてを包み隠さず上に伝えてやれ」ファビウスは唸った。「仮に信じられないと言う者が現れたら、ヴァルー君の前にご足労を願い出ればいい」

 

「竜大戦。……イコール・ドラゴン・ウェポン」低くつぶやいたギルドナイトは、今のやり取りの中で少し痩せたように見えた。

 

「普通なら、こんな話酔っぱらいのたわごと以下です」

「普通なら、ね。まったく、人の愚かしさというものには底が無いのだろうかね」

 

 ファビウスは笑った。笑うしかなかった。

 

「疲れたろう、君たちも下がりなさい。私はもう少し書庫にこもるとしよう」

「ほどほどにしてくださいね」

 

 二人は彼へ微苦笑を向けた。「かの筆頭ランサーが寝不足で倒れたなんて末代までのお笑い種です」

「ああ、まったくだ」

 

 

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