GO AHEAD!プリンセス×プリンセスプリキュア 作:F・K・ネクスト
一言で言うなら、リイマジ版GOプリと言う感じです。
本家の設定・世界観を元に自分なりに再構築しているので一部本家と異なる設定や描写も出てきますがご了承ください。
黒い闇【ディスダーク】が、世界へと侵攻を始める。
「ゼツボーーーーーグ!」
鍵穴に光る目を頭部に持った巨大な怪物【ゼツボーグ】が、咆哮を上げる。
「シツボーグ!」
「シツボーグ!」
更にその周囲には成人男性ほどの背丈をした戦闘員【シツボーグ】が大勢構えていた。全身真っ黒な外見に赤く光る一つ目がなんとも言えない不気味さを醸し出している。
ゼツボーグとシツボーグの前に、花の国【スプリングガーデン】に住む人々は悲鳴をあげて逃げ惑う。
ブレイク『ディスダーク三銃士』
「オラオラ! 叫べ、絶望しろ! てめえらの悲鳴が俺たちディスダークにとって最高の贈り物だ!」
ゼツボーグの頭上に立ちながら、ディスダーク三銃士の一人ブレイクが高らかに笑う。シツボーグに捕まり、穢されていく人々。最早、この世界に未来は無いのか…
「はあああああああっ!!」
…かに思われたその時、雄々しい叫びと共に桃色の閃光がシツボーグを一斉に吹き飛ばした。
「…来やがったな」
ブレイクの視線の先には、桃色のドレスに金髪のロングヘアの少女が立っていた。
「美しき、花のプリンセス! キュアフローラ!」
「待ってたぜ! 今日こそてめえの息の根を止めてやるよ!」
「その言葉、そっくりお返しするわ!」
「フン。やれ、ゼツボーグ!」
「ゼツボーーーーーグ!!」
ブレイクがその場から離れると同時にゼツボーグがキュアフローラに襲いかかる。
「はあっ!」
フローラはゼツボーグのパンチをかわし、背後に回り込んで力強い蹴りをお見舞いする。蹴りが炸裂した箇所から桃色の花吹雪が舞い散り、不意打ちに近い一撃を食らったゼツボーグの巨体がその場に倒れる。
「ゼツボーーーーーグ!!」
しかしゼツボーグもこれくらいでダウンするほど柔ではない。すぐに再び立ち上がり、キュアフローラを見下ろす。それだけでなく、いつの間にかシツボーグたちも数十人でフローラを取り囲んでいた。
「来るなら来なさい。全員まとめて相手してあげるわ」
フローラは目の前のゼツボーグに向けて言い放つ。
「お覚悟は、よろしくて?」
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私立ノーブル学園。全寮制の男女共学の学校で、夢を抱く少年少女が日々ここで学び、成長している。
夢咲こはな
「うわあ〜! ついに来たんだ…ノーブル学園…!」
この少女、夢咲こはなは今日からノーブル学園に入学する中学1年生。大きなキャリーバッグを引きながら、夢にまで見たノーブル学園の校舎に見惚れている。
泉彼方
「おいおい、もう何度も下見に来た学園だろ」
こはなの幼馴染で親友である泉彼方が、呆れたように笑う。
「だって、本当に私ここに入学したんだよ!? 憧れだったノーブル学園の生徒になったんだよ!?」
「わかったから少しは落ち着け。ったく、そんなんで寮のルームメイトや他の生徒さんに迷惑かけるなよ?」
「大丈夫! 同じ夢に向かって努力する人なら、絶対仲良くできるもん!」
「…そうか。じゃあ頑張れよ。たまには親御さんに電話してやるんだぞ」
「わかってるって! じゃあね、彼方!」
「おう」
そうして彼方と別れたこはなは、学園内の自然に見惚れながら女子寮の前までたどり着く。
「ここが女子寮…今日からここで暮らすんだ…」
女子寮へ入り自分の部屋へ向かうと、『107-A 夢咲こはな 107-B 香村なつみ』と書かれたプレートが貼られた部屋へ辿り着く。
「素敵なお部屋〜! ホントに私、ノーブル学園にいるんだ…!」
早くもノーブル学園の虜になっていると、誰かが扉をノックしてきた。
「はーい」
「失礼します…」
紺色のショートヘアーが特徴的な、こはなと同い年ほどの少女が入ってきた。
「…もしかして、香村なつみさん?」
香村なつみ
「はい。あなたは、夢咲こはなさん? 初めまして。香村なつみです。ルームメイト、よろしくね」
「初めまして! 夢咲こはなです。元気いっぱい、今日から中学1年生! こちらこそよろしく!」
こはなとなつみは早くも意気投合し、荷物を片付けると二人で学園内を見て回ることにした。
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「ふんっ! はああっ!!」
スプリングガーデンでは、キュアフローラがディスダークを相手に一人奮闘を続けていた。シツボーグは一人一人は弱いが、数が多くキリがないため、フローラも連戦で少しずつ疲労が蓄積していた。
「なかなかの粘りだが、その程度で疲れてるようじゃ話にならねえな。サザンクロスとスターライトのプリンセスは助けに来ないのか?」
「…」
「へっ、やっぱり見捨てられたか」
「黙れ! この国は絶対に貴方達には渡さない! その為なら…どんな無茶でもしてみせる!」
そう言い放つと、フローラはドレスを模した鍵【ドレスアップキー】と、変身に使用する【プリンセスパフューム】を取り出す。
海の国『サザンクロス』
ミナミ・テティウス
「…」
「よっ」
スプリングガーデンの南に位置する海の国・サザンクロスでは、プリンセスであるミナミが、黒雲に覆われたスプリングガーデンを不安げに見つめていた。そこに、星の国・スターライトのプリンセスであるキララがプリンセスらしからぬ振る舞いで訪ねてきた。
キララ・アストレイア
「スプリングガーデン、ちょっとヤバいかもね」
「…はい」
浮かない表情をしているミナミを見て、キララが溜息をつく。
「そんなに心配なら、助けに行ったら?」
「それはそうなのですが…」
「ま、行きにくいよね。あんな噂聞いちゃったら。スプリングガーデンのプリンセス、ディスダークと戦うために国民を徴兵しようとしてるらしいじゃん」
「…」
「あたし達より年下の子がプリンセスになったからどんな感じかと思ったら、そんなにメチャクチャだったなんてね」
「まだ、噂の段階です。本当にそうだと決まったわけではありません。私たちが彼女を信用するかどうかは…この戦いが終わった時に決まることです」
「…終わった時に、生きてたらいいんだけどね」
二人のプリンセスの不安を示すかのように、スプリングガーデンを覆う黒雲は更に大きくなっていた。
「この一撃で決める! プリキュア! フローラル・トルビヨン!!」
フローラが両手を構えると、そこから無数の花びらがまるで竜巻のように勢いよく放たれ、ゼツボーグやシツボーグたちを巻き込んでは消滅させていく。
「てめえ正気か!? そんなに勢いよくぶっ放して時空を歪ませる気かよ!」
「言ったでしょう! 貴方達を倒すためならこれくらい構わないわ!」
「冗談じゃねえ! 俺はまだ命が惜しくないからな!」
そう言ってブレイクは春歌にどうでその場を去った。その間にもフローラの放った花吹雪は更に勢いを増していく。その最中、ブレイクの言った時空の歪みが発生したのか、虚空に小さな穴が空き、その中に花吹雪が勢いよく吸い込まれていった。しかし、フローラ本人はそれに気がついておらず、やがて花吹雪が収まった時、あれだけいたシツボーグやゼツボーグの姿はなく、フローラだけが残されていた。
「はあ、はあ…」
膝をつくフローラ。変身が解けて、幼い少女の姿に戻る。
ハルカ・スプリングフィールド
「流石に、今度ばかりはやりすぎたわね…」
ハルカはドレスアップキーをじっと見つめると、それを懐にしまって城へ戻ろうとする。すると、どこからか子供の鳴き声が聞こえてきた。
「ママあ…どこ〜?」
声のする方には、小さな少女が茂みの影にしゃがみ込んで泣いていた。どうやら先の襲撃の際に母親とはぐれてしまったようだ。
「もう大丈夫よ。一緒にママを捜しましょう」
「うん…」
そう言ってハルカは少女を抱き上げる。
…が、彼女は気づいていなかった。必殺技の直撃を免れた一人のシツボーグがいたことを。そしてそのシツボーグが、満身創痍になりながらも彼女に近づいていたことを。
「とにかく、街の方へ戻らないと…」
そう呟きながら彼女を抱いて振り返った刹那、ハッと目の前の敵の存在に気がつく。そして、シツボーグが鋭い爪を勢いよく振り下ろすのを見て咄嗟に少女を庇う形で敵に背を向けた。
「うぐっ…!!」
その瞬間、鈍い音が彼女の背中に聞こえた。
「っ…うう…」
思わずその場に崩れるハルカ。激痛が彼女を襲うが、そんな彼女にシツボーグがトドメを刺そうと構える。
「お姫様!」
「ああっ…」
シツボーグが動けない彼女に再度爪を向ける。が、次の一撃が放たれることはなかった。
「はあああっ!!」
眩い光と共に、白い衣装を纏った青年が現れ、手にした剣でシツボーグを一撃のうちに切り裂いた。シツボーグは断末魔を上げることもなく消え去った。
カナタ・スプリングフィールド
「ハルカ!」
彼こそスプリングガーデンの王子にしてハルカの兄である、カナタ王子であった。カナタは吐血しながらその場にうずくまるハルカの元へ駆けつける。
「おい、しっかりしろ!」
「兄さん…私はいいから、この子を…」
「わかってる。お前も一緒に来るんだ! すぐに手当てしてやる!」
「私なら大丈夫…ちょっと休んだらすぐ追いつくから…」
「馬鹿言うな!そんな怪我で動けるわけがないだろ! 今すぐ城へ戻るぞ!」
カナタは乗ってきた馬に少女を乗せると続いてハルカも背負おうとするが、彼女はカナタが差し伸べた手を払いのけてしまう。
「なっ…」
「もういいよ、兄さん…ディスダークを撃滅するためとはいえ、国民を巻き込もうとした罰が当たったのよ…私がいなくなったら、この国の信頼も回復するわ」
「ふざけるな! 確かにお前のことを悪く言う奴はいたが、それだけじゃないだろ! お前がその手で助けた人達は、皆お前のことを想っている! その人たちを残して死ぬってのか!」
「…でも、もう身体が動かないの……お願い兄さん、スプリングガーデンを…ホープキングダムを…守っ…て……」
それだけ言うと、ハルカの瞳がゆっくりと閉じていく。
「…!? ハルカ!? おい、ハルカ…ハルカああああああああああああああっっ!!!」
黒雲が晴れてようやく青空が見えたのと同時に、カナタの叫びが響き渡った。
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「あっちこっち見て回ったけど、本当に素敵な学園だね!」
「うん。明日の入学式が待ち遠しいね」
学園内を一通り見て回ったこはなとなつみは、学生寮へと戻ってきていた。
「そろそろ戻ろっか。荷物も整理したいし」
「うん」
そんな他愛のない会話をしながら二人が寮の階段を登っていた、その時だった。
「え?」
階段を登り終えたところで、こはなは、少し見上げた先の空間に小さな穴が空いたのに気がつく。そして次の瞬間、その中から轟音と共に花吹雪が竜巻のように飛び出してきた。
「危ない!」
「きゃっ!?」
こはなは咄嗟になつみを押しのけた。それと同時に花吹雪が彼女を襲い、その衝撃でついよろけてしまう。
「あっ…」
刹那、こはなの身体が宙に浮いた。その後は一瞬であった。重力によって彼女の身体は階段へと投げ出され、その勢いのまま嫌な音を上げながら転がり落ちていった。
「イタタ……こはなちゃん?」
その場に尻餅をついていたなつみがようやく立ち上がる。彼女は何が起きたのもわからないまま階段の下へと視線を向けた。
「こはなちゃ……きゃあああああああああっ!!」
階段下で倒れたままピクリとも動かないこはなの姿を見て悲鳴を上げる。
「だ、誰かあ! 救急車!」
パニックになりながらもなつみは人を呼ぶべくその場を離れていった。こはなは床に倒れたまま、その声を聞いていた。
ーーあれ…変だ…身体、が、動かない…早く、部屋に、戻って…明日の、準備しなきゃ…お父さんと、お母さんにも電話…しなきゃ、いけないのに…おかしい、な…まだ夕方なのに、眠く、なって……ねえ…………ーー
彼女の意識はそこで消えた。
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「…あれっ?」
目が覚めると、こはなは辺り一面真っ白な空間に立っていた。
「ここは…? 確か私、階段から落ちて…」
すると、目の前に一人の女性が立っているのに気がつく。金髪に白い肌、白いドレスを纏った、今までに見たことのないような美人だ。
「貴方は…?」
「私はイヴ。遥か空の高くから、貴方たちを見守っている存在です」
「空高くって…天国!? じゃあまさか、貴方は神様…!」
そこまで言ったところで、こはなは気がついた。
「待って…天国ってことは…」
イヴの方を見ると、彼女はひどく落ち込んだ表情に変わった。
「ええ。残念ですが、貴方がここにいることがそれを示しています」
「そ、そんな……」
こはなはその場に崩れ落ちた。
「あ…憧れのノーブル学園に来たばっかりなのに…入学式もまだなのに…この学園でやりたいこといっぱいあったし、友達だって…いっぱい作りたかったし…私の夢だって、まだ見つけてないのに…うっ、ううっ……!」
悔しさからか、あるいはやるせなさからか、こはなは泣き崩れてしまう。そんな彼女を見かねてか、女神イヴが口を開いた。
「どうか泣くのをやめてください。私が貴方の前に現れたのは、一つのチャンスを与えようと思ったからです」
「ちゃ…チャンス?」
「はい。実を言うと、貴方は本当は今ここで死ぬべきではありませんでした。ただ、別の世界とこちらの世界が偶然繋がってしまった結果、あのような不測の事態が起きたのです。私にとっても、大変痛ましいことです」
「じゃ、じゃあ私は手違いで死んだってこと? だったら早く生き返らせてよ!」
しかし、イヴは首を横に振った。
「それはできません。経緯はどうであれ貴方が命を落としたのは事実です。いかなる理由があろうとも、死んだ人間を生き返らせることは禁じられています」
「何それ…そんなのおかしいよ! 本来無かったはずの事故を起こされて、その癖もう生き返れないなんて!」
「ですから、チャンスを与えると言っているのです。私は貴方に、別の方法で生きてほしいのです」
「別の方法…?」
すると、イヴの真後ろに巨大な鏡が現れ、そこにどこかの大きな城が映る。やがて、寝室と思しき場所で、傷だらけの少女が眠っており、それを王様や王妃、王子と見受けられる人々が絶望の表情を浮かべながら囲んでいた。
「彼女は、貴方の世界とは別の世界に住む一人のプリンセス。貴方が命を落とすきっかけを作ったのは彼女です」
「この子が…」
「ですが、彼女の命もまた、間も無く尽きようとしています。ですが、彼女が生きる方法が一つだけあります」
そう言ってイヴがこはなの方を見る。
「貴方の魂を彼女の身体に移すのです」
「…へ?」
「ですから、貴方が彼女の身体に入り、この少女…ハルカ・スプリングフィールドとして生きるのです」
「…ちょっと待って。全然意味がわかんない。私の魂をこの子に? 私がこの子の体に入る? ハルカ・スプリングフィールド? それじゃあ私の意識はどうなるの?」
「大丈夫です。魂を移しても意識は貴方のものです。身体はハルカ・スプリングフィールド。精神は夢咲こはな。納得していただけましたか?」
「わけわかんない! なんで自分を死なせる原因を作った人に乗り移るの!? 魂は私でも身体はこの子って、それって結局私が生き返ったことにはならないじゃん! 見ず知らずの他人の人生を歩むなんて、意味がわかんない!」
全く納得ができない様子のこはなをしばらく見ていたが、イヴはやがて口を開いた。
「…そうですね。確かに、いきなり命を落として、全く違う人の体で生きろと言われても、理解が追いつかないでしょう。だから、先ほども言ったようにこれはあくまでもチャンスです。選ぶのは貴方の判断なのです」
「…」
「少し言い方を変えましょう。生き返った身体は確かに貴方のものではありませんし、ハルカ・スプリングフィールドとしてやらなければならない使命もあります。ですが、それ以外は全て貴方の自由なのです。ハルカ・スプリングフィールドのまま、貴方の本来生きるはずだった人生を生きるのです」
「そんなこと、出来るの…?」
「彼女の分まで生きるとなると、簡単ではありません。ですから、私も無理にとは言いません。貴方達二人が共に新たな人生を歩むか、それとも…共にここでその生涯を閉じるか。それだけです」
「……」
「…一つ付け加えるなら、このハルカと言う少女は決して貴方が思うような人ではありません。むしろ、貴方と同じ、真っ直ぐな心を持った優しい人です。貴方なら、きっと彼女の意志を継ぐことができるかと思いますよ」
こはなはしばらく悩んでいたが、やがて答えた。
「…わかった。やるよ。この子の身体で、私はもう一度生きる。どんな未来が待ち受けてるかわからないけど、私の人生をこんな形で終わらせたくないもん!」
その言葉を聞いたイヴはふっと微笑み、先端に宝石のついた短めの杖を取り出した。
「では、貴方とハルカの身体を一つにします。最後に一つ、約束事があります」
「約束?」
「生き返っても、貴方が夢咲こはなであることは誰にも明かしてはなりません。貴方はあくまでハルカ・スプリングフィールドとして生を受けるのです。もし約束を破ってしまったなら、私が再び貴方の前に現れ然るべき対処を取ります。それだけはお忘れなきよう」
「…」
自分が夢咲こはなであることを明かしてはいけない。それはつまり、家族や友達、勿論彼方にも、自分が生きていることを伝えられないと言うことである。皆に再会したときのことを考えると、こはなは複雑な心境になった。
「…それでも。それでも行くよ」
その答えを聞いたイヴは満足げに頷き、何やら呪文を唱え始めた。すると、杖の先端に着いた宝石が青く輝き出し、やがて辺り一面が眩い光に覆われたーーーーー
ーーーん
どれくらい時間が経ったのか。こはなは目を覚ました。徐々に視界がはっきりしていくと、自分がベッドの上に横たわっているのに気づく。
「ここは…?」
見渡すと、学生寮よりも遥かに広い部屋だ。ここは天国で見たお城の中にある部屋なのだろうと即座に察していると、ガチャリとドアが開く音が開いた。身体を起こすと、水を持って入ってくるメイドの姿があった。直後、メイドと視線が合う。
「ど、どうも…」
「ぷ、プリンセス……王様!王妃様!」
こはなが小さく会釈すると、メイドは水差しをその場に落とし、慌てながら駆け出していった。やがて城内が慌ただしくなってきたかと思うと、国王と王妃が真っ先に入ってきた。
「ハルカ!」
「ハルカ!」
国王と王妃は同時にこはなを抱きしめ、嬉しさのあまり涙を流す。ここでこはなは、このハルカと言う少女がこの二人の娘で、更にメイドから「プリンセス」と呼ばれていたことから、自分の立場を徐々に理解してきた。
「あ、あの…」
「ハルカ!」
こはなが二人に声をかけようとすると、カナタ王子が慌てて入ってきた。
「え…?」
その顔を見てこはなは呆気に取られた。なぜならその顔は、自身の幼馴染である泉彼方と瓜を二つに割ったようにそっくりであったからだ。
「か、彼方…?」
「ハルカ…?」
こはなが呆然としていると、更にカナタ王子の後ろから犬と鳥に似た2匹の動物が出てきた。
「パフ〜!」
「プリンセスがやっと目覚めたロマ〜!」
2匹は勢いよくこはなに飛びついてきた。
「こら、パフ! アロマ! ハルカはまだ傷が癒えてないんだ」
「だって、ハルカがもう起きないと思ったパフ〜」
「た、タヌキと鳥が喋ったあ!?」
「パフはタヌキじゃないパフ〜!」
「おいらは鳥じゃなくてアロマだロマ〜!」
「ハルカ、大丈夫か? まだ休んでた方がいいんじゃ…」
兄であるはずの王子を呼び捨てにしたり、従者をタヌキと鳥呼ばわりと、妹の様子がおかしいことに気づいたカナタ王子はパフとアロマを引き剥がす。するとこはなベッドから起き上がり、一目散に窓の方へと向かった。
「ハルカ? どうした」
カナタ王子の言葉は彼女の耳には届いていなかった。窓の外を見たこはなは、その見たことのない景色に唖然としていた。まず彼女がいる桃色の城の周囲は一面を花畑に囲まれており、地平線の向こうには海の真ん中に浮かぶ青い城が見え、また別の方向には夜のように星空が見え、その下に黄色い城があった。少なくともここが日本ではないことは明らかである。
「こ…ここはどこなのおおおおおおおお!?!?!?!?」
城内にこはなの叫びが響き渡った。
次回予告
「私が伝説の戦士プリキュアって…」
「この国を救えるのは君しかいないんだ。頼む…!」
「そんなこと言われても…」
第二章 ドレスと王国
目覚めよ、キュアフローラ!