処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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いよいよリリアーナが動きます!


幕間2:王国に不満よな?王女、動きます。

ハイリヒ王国の王宮、その一室で、王女リリアーナは窓辺に立ち、暗い夜空を見上げていた。彼女の瞳には深い悲しみが宿り、時折、風に揺れるカーテンのように揺らぐ感情が顔を覗かせる。

 

「ジェイド様…。帰ってくると言ってくださったのに…。」

 

リリアーナの声は小さく、まるで自分自身に言い聞かせるようだった。あの日、オルクス大迷宮で起きた悲劇から五日が経過していた。ジェイド、そしてハジメ、アリナ、ルルリ、ロウが奈落の底へと落ちたという報告を聞いて以来、彼女の心は重く沈んだままだった。

 

リリアーナはその場にいなかった。戦場である迷宮に赴くことは、王女としての立場上許されていなかったからだ。しかし、帰還した勇者一行やメルド団長から伝え聞いた話は、彼女の想像力を掻き立て、ジェイドの最後の瞬間を何度も頭の中で描かせるには十分だった。

 

リリアーナにとって、ジェイドは特別な存在だった。勇者一行の一人として召喚された彼と初めて出会ったのは、王宮での謁見の場だった。ジェイドは他の者とは異なり、落ち着いた雰囲気と威厳を放ち、その瞳には優しさと正義感が宿っていた。戦士としての強さはもちろん、彼の穏やかな笑顔と仲間を想う心が、リリアーナの心を掴んだ。

 

二人はやがて言葉を交わすようになり、王女としての立場を超えて惹かれ合うのに時間はかからなかった。ジェイドもまた、リリアーナの純粋さと芯の強さに惹かれ、二人は恋人としての絆を深めていった。短い時間だったが、その思い出はリリアーナにとって何よりも大切な宝物だった。

 

「あの時、ジェイド様は私の手を握って、『必ず戻ってくるからな』と約束してくださった…。」

 

リリアーナは目を閉じ、ホルアドの宿での彼の言葉を思い出した。そして、奈落での出来事を伝え聞いた今、彼女はジェイドの行動をこう解釈していた。

 

「ジェイド様はきっと、ハジメとアリナを守るために立ち上がったのだわ。あの恐ろしいヘビモスが襲いかかってきた時、彼は迷わず前に出て、二人を庇ったのでしょう。ルルリとロウもそれに続いたのだと…。それはジェイド様の優しさそのものだったから。」

 

リリアーナはその場にいなかった。だからこそ、彼女の想像はジェイドへの信頼と愛情によって補われていた。メルド団長の報告では、ヘビモスの攻撃と流れ弾が橋を崩し、彼らが奈落に落ちたとされていたが、詳細は曖昧だった。しかし、リリアーナには確信があった。ジェイドがそんな行動を取ったのは、彼が持つ深い優しさと仲間を守る強い意志によるものだと。そして彼はハジメ達と共に生存していると。

 

だからこそ、早々に死亡扱いした聖教教会や王国の対応には疑念を抱いており、もしジェイドと付き合ってることが王国にバレてしまえば、王国を捨ててまでジェイドに身を捧げる覚悟があった。

 

 

その夜、リリアーナの部屋にノックの音が響いた。ドアを開けると、そこには八重樫雫が立っていた。

 

「リリィ、ちょっと話があるのだけど、いいかしら?」

 

雫は部屋に入り、リリアーナに穏やかに問いかけた。彼女は迷宮で戦った一人であり、ジェイドたちの喪失を間近で感じていた。

 

「南雲くんとクローバーさん、そして白銀の剣の三人が奈落に落ちた件について、リリィはどう思う?光輝は南雲くんがクローバーさんを庇ったと言ってるし、香織は逆だって主張してて、私も混乱してるのよね。」

 

雫のため息に、リリアーナは窓辺から視線を外し、彼女の方へ向き直った。瞳には悲しみと決意が混ざり合っていた。

 

「私には…ジェイド様が南雲さんとアリナさんを庇ってくれたのだとしか思えないのです。メルド団長の話では、ヘビモスが襲いかかってきたと聞きました。きっとジェイド様は、彼らを守るために立ち向かったのでしょう。ルルリとロウもそれに続いたのだと…私はそう信じています。」

 

リリアーナの声は静かだが、確信に満ちていた。雫は少し驚いたように目を丸くした。

 

「つまり、リリィは南雲くんやクローバーさんが原因じゃないって考えてるの?王国側は彼らが白銀の剣を巻き込んだって決めつけてるけど…。」

 

「ええ、私はそうは思いません。」

 

リリアーナはきっぱりと言った。

 

「ハジメもアリナも、私たちを助けるために戦っていたと聞いています。それに…ジェイド様があんな行動を取ったのは、彼の優しさゆえだと私は思うのです。」

 

雫は少し考え込むように黙り込んだが、やがて小さく頷いた。

 

「確かに、ジェイドさんはそういう人よね。いつもみんなのことを考えて行動する…。私も戦場にいたから分かる。あの混乱の中で、彼がどれだけ勇敢に振る舞っていたか。」

 

リリアーナは目を閉じ、ジェイドの姿を思い浮かべた。彼の優しい笑顔、強い意志を持った瞳、そして仲間を守るために戦う姿。戦場にいなかった彼女だが、ジェイドへの愛と信頼がその情景を鮮やかに描き出していた。

 

「ジェイド様は素晴らしく勇敢な人です。しかも優しさに溢れた真の英雄のように思えます。オルクス大迷宮での活躍を聞いて、ますますその気持ちが強くなりました。」

 

リリアーナの声に熱がこもり、頬がわずかに紅潮した。しかし、リリアーナは王女という身分。自由恋愛は許されるわけないのだ。だからこそジェイドとの恋愛関係を誰からも悟られないようにしたい気持ちが強かった。雫はそんな彼女を見て、優しく微笑んだ。

 

「リリィがそう思うなら、私もジェイドさんの気持ちを信じたいわ。彼はきっと、南雲くんやクローバーさんを守るために全てを賭けたのね。」

 

「はい…だからこそ、私はジェイド様を救わなければなりません。」

 

リリアーナは拳を握り、決意を新たにした。

 

「彼が奈落の底で生きていると信じています。帰ってくると約束してくれたんですから。私はその言葉を信じて、彼を救うために強くなろうと決めました。たとえ王女の地位を投げ捨ててでも。」

 

雫は驚きつつも、リリアーナの瞳に宿る強い光を見て、彼女の本気を感じ取った。

 

「強くなるって…具体的にはどうするつもり?」

「メルド団長のもとで修行をしたいのです。」

 

リリアーナはまっすぐ雫を見つめた。

 

「メルド団長は厳しいけれど、信頼できる方です。私にはまだ力がないけれど、ジェイド様を救うためには剣も魔法も磨かなければならない。あなたと一緒なら、私も頑張れると思うのです。」

 

雫は一瞬言葉を失ったが、やがて穏やかな笑みを浮かべた。

 

「リリィがそこまで言うなら、私も付き合うわ。メルド団長のもとでなら、私たち二人とも強くなれるはずよ。それに…私だって、南雲くんやクローバーさん、ジェイドさんたちの真実を知りたい。あの奈落の底で何が起きたのか、ちゃんと確かめたいの。」

 

二人は互いに頷き合い、新たな決意を胸に秘めた。リリアーナの心には、ジェイドへの想いが燃え上がり、彼を救う力が自分に宿ることを願っていた。

 

 

翌朝、リリアーナと雫はメルド団長のもとを訪れた。メルドは二人を見て驚いた表情を見せたが、リリアーナの決意を聞くと、その覚悟を認めざるを得なかった。

 

「王女殿下がそこまで仰るなら、私に異存はありません。ただし、私の訓練は甘くありませんよ。それでもよろしいか?」

 

「はい、メルド団長。お願いします。」リリアーナは深く頭を下げた。

 

「私も一緒に鍛えてください。」雫も真剣な表情で続けた。

 

メルドは二人を見つめ、しばらく考え込んだ後、静かに頷いた。

 

「よし、ならば明日から始めよう。二人とも、心してかかるんだぞ。」

 

こうして、リリアーナと雫の訓練が始まった。メルドの指導は容赦なく、剣術も魔法も基礎から叩き込まれた。リリアーナは王女として育ち、戦闘経験がほとんどなかったため、最初は思うように体が動かず、何度も挫けそうになった。しかし、ジェイドを救うという強い意志が彼女を支えた。

 

雫もまた、リリアーナを励ましながら自らの剣技を磨いた。彼女は迷宮での戦いを経験していたが、メルドの訓練はそれ以上に厳しく、新たな限界に挑む日々だった。

 

 

ある日、訓練の合間に、リリアーナはメルドに勇気を出して尋ねた。

 

「メルド団長、あの時のことを…もう少し詳しく聞かせていただけませんか?ジェイド様が奈落に落ちた時の状況を。」

 

メルドは一瞬表情を曇らせたが、リリアーナの真剣な眼差しを見て、静かに話し始めた。

 

「あの時、ヘビモスが襲いかかってきた瞬間、坊主達が魔法を放ったのだが、その魔法がハジメとアリナに当たりかけた。その時、ジェイドは迷わず前に出て、ハジメとアリナを庇うように立ちはだかった。ルルリとロウもすぐに続いたが、ヘビモスの攻撃はあまりに強力で…。流れ弾が橋を崩し、彼らは奈落へと落ちてしまったんだ。」

 

リリアーナは唇を噛みしめ、涙を堪えた。やはり、ジェイドは彼らを守るために自らを犠牲にしたのだ。その優しさが、彼を奈落へと導いてしまった。

 

「ジェイド様…あなたの優しさが、私を苦しめ、そして同時に救ってくれるのですね。」

 

リリアーナは心の中でジェイドに語りかけた。彼女の決意はさらに固まり、訓練に一層の熱意を注ぐようになった。

 

 

訓練が進むにつれ、リリアーナと雫の成長は目覚ましかった。リリアーナは元々の魔力のポテンシャルの高さもあって、剣術と魔法の両方で才能を開花させ、雫もまた剣技をさらに磨き上げた。そして、香織も「雫ちゃんとリリィが参加するなら、私も参加する!ハジメくんを救いたい!」と言って参加するようになった。彼女のアリナへの火球が、リリアーナの想い人であるジェイドを吹っ飛ばしたのにもかかわらずである。

 

リリアーナはジェイドを救うため、奈落の底への救助隊を組織することを提案したが、国王やイシュタルはそれを却下した。奈落の底は危険すぎるし、彼らはすでに死んだと見なされていたからだ。

 

だが、リリアーナは諦めなかった。彼女は雫や香織、光輝、龍太郎、メルド、檜山達がいる迷宮攻略組のパーティーに参加するには足手まといにならないくらいの力をつけてきた。

 

「ジェイド様を救うためなら、私はどんな困難にも立ち向かいます。」

 

リリアーナの決意は揺るがなかった。彼女の心には、ジェイドへの愛と、彼を救いたいという強い願いが溢れていた。

 

そして香織も、ハジメを救い自分のものにするという覚悟ができていた。

 

「ハジメくんを見つけ出して、私のものにしてやる…!ハジメくんは生きてると思うけど、もし死んでたら〇〇ちゃんに頼めばいいよね♡」

 

雫はリリアーナと香織の強い気持ちで訓練に取り組む姿を見て、自分も頑張らないとと気を引き締めた。




恋する乙女は強いんです!!
感想、評価の程よろしくお願いします。
あと次回の更新は明々後日の朝7時を予定しています。

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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