処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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爪熊戦です。ハジメが遂に左腕をなくしてしまいます。


第2章 奈落の底に落とされたので、吸血姫を見つけてトータスの真実を知ろうと思います
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ザァーと水の流れる音が響き渡った。

 

冷たい微風が頬を撫で、ハジメの冷え切った体がガタガタと震えた。

 

頬に当たる硬い石の感触と、下半身を刺すような冷たい水の感覚に「うっ」と呻き声を上げ、彼は目を覚ました。

 

頭がボーとし、全身がズキズキと痛んだ。

 

眉根を寄せながら両腕に力を入れ、上体を起こそうとしたが、左腕に微かな違和感を感じて顔を歪めた。

 

「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

ふらつく頭を右手で押さえ、記憶を辿りながら辺りを見回した。

 

周りは薄暗く、緑光石が微かに発光し、完全な闇ではなかった。

 

視線の先には幅五メートルの川が流れ、ハジメの下半身が浸かっていた。上半身は川辺の突き出た岩に引っかかり、乗り上げていた。

 

濡れたズボンが膝まで重くまとわりつき、冷たい水滴がポタポタと滴り落ちた。

 

 

すぐ近くで、同じように岩に体を預けたアリナが目を覚ました。彼女の黒髪が濡れて顔に張り付き、両サイドのリボンが乱れていた。

 

「ハジメ…?」

 

アリナは掠れた声で呟き、彼を見つけた瞬間、瞳を大きく見開いた。

 

「ハジメ!」

 

アリナは大声で叫びながら、冷たい水をかき分けて這うように近づいた。

 

「生きてる…私のハジメが生きてる」

 

アリナの心臓が早鐘を打ち、安堵が胸を満たした。

 

だが、すぐに香織と檜山の顔がアリナの脳裏に浮かび、「アイツらがハジメをこんな目に…」と憎悪が沸き上がった。

 

 

ジェイド、ルルリ、ロウも同じ場所に落ちていた。銀髪のジェイドが「くそっ」と呻きながら起き上がり、剣を手に周囲を見回した。

 

ルルリが「痛いのです…」とピンクのショートボブを揺らし、ロウが「ったく、運が悪いにも程があるぜ」と赤髪を掻きながら立ち上がった。

 

 

五人は落下の衝撃で散らばったが、奇跡的に同じ川辺に流れ着いたのだ。

 

「そうだ……橋が壊れて落ちたんだ。誰かの火球が僕を…それで…」

 

ハジメの霧がかかった頭が徐々に回転を始めた。

 

落下途中の崖の壁に穴が開いており、そこから鉄砲水のように水が噴き出していた。

 

無数の滝が五人を吹き飛ばし、壁際の横穴へ流し込んだ奇跡だった。

 

「誰が僕を狙ったんだ…?」

 

ハジメの脳内では疑問が浮かんだが、混乱の中で答えは見つからなかった。

 

アリナは悔しさで唇を噛み、黙った。

 

「ハジメが知ったら…傷つくわ…。香織と檜山…アイツらが私からハジメを奪おうとしたのよ…。絶対に許さない…。」

 

アリナの心の中は憎しみで燃えていた。

 

「よく思い出せないけど…とにかく、助かったんだな。はっくしゅん! 寒い…」

 

地下水の低温に長く浸かっていたため、ハジメの体が芯から冷え切っていた。唇が紫色に震え、低体温症の危険を感じて慌てて川から這い上がった。

 

「ハジメ、大丈夫?」

 

アリナがと手を差し伸べ、彼を支えた。

 

「私が守らなきゃ…もう二度と離さない」

 

彼女の心はハジメを守る決意で固まった。

 

「みんな…無事で良かった」

 

ハジメがと呟くと、アリナが抱きついた。彼女の瞳が涙で潤み、ハジメの頬に温かい涙が落ちた。

 

「私はハジメとずっと一緒に戦うと決めたもん。ハジメが奈落に行こうともついていく覚悟でいたわよ。」

「アリナ…そして「白銀の剣」の皆も…ありがとう」

 

ハジメはそう呟き、胸が熱くなった。

 

この時、アリナの心は愛情で溢れた。しかし、同時に檜山大介や白崎香織への憎悪が渦巻いた。

 

(「ハジメが生きててくれるなら…それだけでいい…。でも、香織と檜山のあの歪んだ笑み…そしてあの卑怯な火球…絶対に許さない」)

 

そしてジェイド、ルルリ、ロウが笑いながら言った。

 

「リリアーナには申し訳ないが、君たちをを見捨てるわけにはいかないからね。ちゃんと、帰ってきたらリリアーナに会いに行くよ。」

「白銀の剣は仲間を見捨てないのです!」

「まぁ、俺は流れでな。ってか、ジェイド、お前いつリリアーナ姫と付き合ったんだよ!」

 

ロウはジェイドがリリアーナと付き合っていたことに地味に驚いていた。

 

ジェイドは「口外厳禁な」とロウに口添えした。

 

そしてハジメが質問した。

 

「どうやって生き延びたの?」

「私が巨神の破鎚で落下を緩めたのよ。みんなを巻き込んで奈落に落ちたけど、なんとか無事だったよ。ハジメを守るためなら命だって捨てる覚悟はある。」

 

アリナはハジメが生き延びた経緯を説明し、ハジメのための覚悟を新たにしていた。

 

「火球を放った奴は誰なんだろう…?」

 

ハジメが呟くと、アリナの表情が一瞬硬直した。彼女は香織と檜山が犯人だと知っていた。

 

(「あの火球…香織が私を、ハジメを奪うために…檜山がハジメへの嫉妬で…。でも…、ハジメに今は言えない…アイツらがどれだけ汚いか知ったら、ハジメが壊れるかもしれない」)

 

アリナの記憶が鮮明に蘇り、怒りが抑えきれなかった。しかし、その怒りを押し殺した。

 

「ハジメ、私がそばにいるから大丈夫よ。だから、今は気にしないで。ハジメには私だけでいいよね?」

「うん、アリナとみんながいるなら…」

 

アリナは微笑み、ハジメがアリナの言葉に頷いた。

 

 

五人が再会を喜ぶ間もなく、視界の端で白い毛玉がピョンピョンと跳ねた。

 

中型犬ほどの大きさで、後ろ足が異常に発達し、赤黒い血管のような線が脈打つウサギだった。

 

ロウがウサギを見て呟いた

 

「あれ、ヤバそうだな」

「隠れよう!」

 

ハジメの提案で5人は岩陰に身を潜めた。

 

そしてアリナが巨神の破鎚を握り、ジェイドが剣を構えた。

 

「ハジメを守るわよ」

(「ハジメを傷つけるものは何だって排除する」)

 

アリナの心は燃えていた。

 

「グルゥア!」

 

唸り声と共に白い二尾狼がウサギに飛びかかった。

 

「捕食か…?」

 

さらに二体が現れ、ハジメは観察した。

 

だが、ウサギが「キュウ!」と鳴き、空中で回し蹴りを放った。

 

ドパンッ!と衝撃音が響き、狼の首がゴギャ!と折れた。

 

かかと落としで二体目をベギャ!と粉砕し、回転蹴りで残りを壁に叩きつけた。

 

血が飛び散り、グシャと潰れる音が響いた。

 

「何!?」

「強すぎる…」

 

ハジメが硬直し、アリナが思わず呟いた。

 

しかし彼女の心はある決意を固めていた。

 

(「こんな化け物でも、ハジメを守るなら叩き潰す」)

 

「トラウムソルジャーより厄介だな」

「怖いのです…」

「冗談じゃねぇなおい」

 

ジェイドが剣を握り直し、ルルリが震えた。

 

ロウが黒炎を準備していたところ、ウサギが最後の狼にサマーソルトキックを決め、「キュ!」と勝利を宣言した。

 

ハジメは「嘘だろ…」と恐怖で心臓が締め付けられた。

 

「見つかったら死ぬ」

 

ウサギを恐れて全員が息を潜めたが、ハジメの足が小石を蹴り、カランと音が響いた。

 

「まずい!」

 

ハジメが顔を青ざめさせると、ウサギが赤黒い瞳でハジメを捉えた。

 

「ハジメ!」

(「またハジメが危険に…!」)

 

アリナが叫んだ。ウサギが突撃し、地面が爆発した。

 

ハジメが横に飛び込み、砲弾のような蹴りが地面を抉った。

 

ウサギが再度突撃し、ハジメが「錬成!」と石壁を作ったが、蹴りが貫通した。

 

左腕を庇う形で受けた衝撃に吹き飛び、「ぐぅっ!」と呻いた。

 

左腕が不自然に曲がり、骨が砕けた音が響いた。

 

「ハジメ!」

 

アリナはハジメのことを呼びながら駆け寄ったが、二メートルの爪熊が現れた。

 

「グルルル」と唸り、ウサギが怯えて逃げたが、風の刃がウサギを真っ二つに切り裂いた。

 

ジェイドが剣を構え、ロウが「黒炎!」と放ったが、爪熊には届かなかった。

 

爪熊がハジメに近づき、前足を振り下ろした。

 

「ハジメ、逃げて!」

 

アリナが叫んだが、間に合わず、風の刃が左腕を肘から切断した。

 

血が吹き出し、ハジメが「がはっ!」と叫んで壁に叩きつけられた。

 

左腕が地面に転がり、爪熊がそれを咀嚼した。

 

「あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

ハジメの絶叫が奈落の底で響いた。

 

ハジメの顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった。

 

「腕が…ない…?」

 

ハジメはそう呟いた。アリナが「ハジメ!?」と駆け寄り、切断された腕を見て瞳が燃えた。

 

「お前…ハジメの腕を…!許さないッ!」

 

アリナ巨神の破鎚を握りながら叫んだ。

 

(「香織がハジメを奪い、檜山が火球を放ち、この熊が腕を…私とハジメの全てを傷つけた奴らは全員死ね!」)

 

アリナは憎悪で爆発した。

 

「ハジメと私の邪魔をする奴はクソだ!全員死ね!」

 

アリナは巨神の破槌を振り下ろした。

 

ズドォン!と衝撃波が爪熊を吹き飛ばし、地面が陥没した。

 

熊が「グゥゥ!」と唸り、壁に叩きつけられたが、毛皮に浅い傷がついただけだった。

 

(「まだ倒せない…私の力が足りない!」)

 

アリナの心が焦燥に駆られた。

 

「不死の祝福者!」

 

ルルリがとハジメの傷口を塞いだ。

 

「ハジメ、ごめん…私が守れなかった…」

 

アリナが涙を流した。

 

「グゥルアアア!」

「ハジメは私が守る!」

 

爪熊が咆哮し、アリナが構えたが、ジェイドが制止した。

 

「アリナさん、無理だ! 逃げるぞ!」

 

アリナの心は「ハジメの仇を…!」と葛藤したが、その時ハジメが呻いた。

 

「アリナ…生きて…」

「ハジメ…」

 

アリナが頷き、「アイツらに復讐する」と決意した。

 

「黒炎!」

「不死の祝福者!」

 

ロウとルルリが援護し、ハジメが「錬成!錬成!錬成!錬成!」と穴を開けた。

 

五人が闇に逃げ込み、爪熊の咆哮が遠ざかった。

 

 

ハジメは錬成のし過ぎで魔力が尽き意識を失いかけていた。

 

「僕とアリナを落とした奴らを見つけ出す」

 

ハジメはそう呟き、意識を失った。

 

「ハジメ、私がそばにいるよ。だから大丈夫。」

(「ハジメを守り、香織と檜山を地獄に叩き落とす」)

 

アリナはそういいながら涙を流した。彼女の心は復讐の炎で燃えていた。




書いてて思ったのですが、この作品の主題歌はナナヲアカリの「明日の自分に幸あれ!」をイメージしていました。
この曲は「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います」のEDテーマです。
感想、評価のほどお願いします。

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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