処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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原作ではハジメ君が魔王になるシーンですが、ここでは魔王になりません。恋人のアリナさんがいるので。


2-2

ぴちょん……ぴちょん……

 

水滴が頬に当たり、ハジメは意識が徐々に覚醒した。冷たい感触が口の中に流れ込み、かすかに甘い味が広がった。

 

ゆっくりと目を開けた彼は、暗闇の中で微かに光る緑光石を見つめた。

 

「…生きてる? …助かったのか?」

 

疑問が浮かんだ瞬間、低い天井に額をぶつけた。

 

「あぐっ!?」と呻き、錬成で作った穴の狭さを思い出した。

 

隣ではアリナが「ハジメ!」と駆け寄り、彼の肩を支えた。

 

「大丈夫? 頭打ったの?」

 

アリナは心配そうにハジメを覗き込んでいた。彼女の瞳は涙で潤んでいた。

 

(「ハジメが目を覚ました…でも、あの熊のせいで…」)

 

アリナの心は安堵と怒りが交錯した。

 

「落ち着け、ハジメ。僕達もここにいる」

「よかったのです! ハジメさんが目を覚ましてくれて!」

「しぶとい奴だな、お前」

 

ジェイドが剣を手に近づいた。ルルリがとピンク髪を揺らし、ロウが笑った。

 

五人は爪熊から逃げ込んだ穴の中で身を寄せ合っていた。

 

 

ハジメが体を起こそうとすると、左腕の不在に気づき、動揺が顔をよぎった。

 

「僕の腕…」と呟き、幻肢痛がズキンと走った。

 

「うっ…!」と顔を歪めると、アリナが手を握った。

 

「ハジメ、ごめん…私が守れなかった」

(「香織と檜山がハジメを奈落に落とし、この熊が腕を奪った…絶対に許さない」)

 

彼女の心は憎悪で燃えた。

 

だが、切断面を見ると、肉が盛り上がり傷が塞がっていた。

 

「何!? 血も…こんなに流したのに…」

 

ハジメは驚いた。

 

暗闇で気づかなかったが、周囲は血の海だった。

 

普通なら死んでいる出血量だ。

 

右手で地面を探ると、ヌルヌルとした感触が返ってきた。

 

「まだ乾いてない…でも、傷が?」

 

ハジメの中で疑問が膨らんだ。

 

 

その時、再び水滴がぴちょんと頬に落ち、口に入った瞬間、体に活力が戻った。

 

「…まさか、これが?」

 

ハジメはそう呟き、右手を水滴の方向へ伸ばした。

 

「錬成!」

 

ハジメは叫び、岩を削って進んだ。

 

「ハジメ、無理しないで!」

「何かある…感じるんだ」

 

アリナが叫んだが、彼は止まらなかった。

 

 

奥へ進むと、バスケットボールほどの青白く発光する鉱石が現れた。

 

石壁に埋まり、下方へ水滴を滴らせていた。

 

「これは…」

「綺麗…でも、何?」

 

見とれていたハジメに、アリナが尋ねた。

 

彼女の心は(「ハジメを癒すものなら…何でもいい」)と切実だった。

 

ハジメが石に手を伸ばし、直接口をつけると、鈍痛が消え、頭がクリアになった。

 

「この液体…僕を助けたんだ」

 

ハジメは確信した。

 

そして、ジェイドが呟いた。

 

「見たことない鉱石だな」

 

ルルリが目を輝かせた。

 

「不思議な力があるのです!」

 

ロウが笑った。

 

「これで生き延びたのか。運がいいぜ」

 

ハジメは知らなかったが、これは伝説の「神結晶」であり、その「神水」はどんな傷も癒す不死の霊薬だった。ただし、欠損部位は再生しない。

 

ハジメが呟いた。

 

「これのおかげで…僕達、生きてる」

 

アリナが涙を拭った。

 

「ハジメ…よかった」

 

彼女の心は安堵していた。

 

(ハジメが生きててくれるなら…この奈落でも耐えられる)

 

 

ハジメが壁にもたれ、呟いた。

 

「死ぬかと思った…」

 

ジェイドが肩を叩いた。

 

「まだ死ねないよ。地上に戻るんだろ?」

 

ルルリが笑った。

 

「ハジメさん、怖かったのです…でも、みんな一緒なら大丈夫なのです!」

 

ロウが呟いた。

 

「まぁ、泣いても仕方ねぇ。腹が減ったな」

 

アリナがハジメを支えた。

 

「ハジメ、休んで。私が何か考えるから」

 

アリナの心は葛藤していた。

 

(ハジメがこんな目に遭ったのはアイツらのせい…でも、今はハジメを癒したい)

 

彼女は巨神の破鎚を地面に置き、ハジメの頭を膝に載せた。

 

ハジメが呟いた。

 

「アリナ…ありがとう」

 

アリナが優しく微笑んだ。

 

「私がそばにいるよ」

 

ハジメは恐怖で震えていたが、仲間がいる安心感に心が落ち着いた。

 

「僕…一人じゃない」と実感した。

 

 

四日が経った。神水を飲みながら生き延びたが、空腹感が五人を襲った。

 

ロウが呻いた。

 

「腹減った…」

 

ルルリが頬を赤らめた。

 

「お腹がグーって鳴るのです…」

 

ハジメが呟いた。

 

「何か食べないと…このままじゃ」

 

アリナが立ち上がった。

 

「私が何か見つけるよ。ハジメは休んでて」

 

彼女の心は焦っていた。

 

(ハジメが弱ってる…私が何とかしないと)

 

だが、ハジメが右手を差し出した。

 

「僕も行く。アリナ一人じゃ危ない」

 

アリナが止めた。

 

「ハジメ、無理しないで!」

 

ハジメは笑った。

 

「みんなで乗り越えるんだ」

 

アリナの心が温かくなった。

 

(ハジメの優しさが…私の支え)

 

ジェイドが加わった。

 

「なら俺も行く。剣が必要だろ」

 

五人で行動を決めた。

 

 

迷宮を進むと、二尾狼の群れを見つけた。四頭が岩陰に潜み、獲物を待ち伏せていた。

 

ロウが呟いた。

 

「あいつら…食料になるか?」

 

ハジメが不安げに見た。

 

「倒せれば…でも、どうやって?」

 

アリナが構えた。

 

「私が巨神の破鎚で叩き潰すよ」

 

ジェイドが制した。

 

「待て、無駄に体力使うな。連携でいく」

 

ハジメが提案した。

 

「錬成で罠を作れるかも」

 

彼は説明した。

 

「地面を凹ませて、壁で閉じ込めるんだ」

 

アリナが笑った。

 

「ハジメ、頭いいね!」

 

彼女の心は誇りに満ちた。

 

(ハジメの知恵が頼りになる…アイツらに絶対負けない)

 

ジェイドが指示した。

 

「僕が囮だ。ルルリは回復、ロウは黒炎で援護」

 

ルルリが頷いた。

 

「みんなを守るのです!」

 

 

ハジメが錬成で地面を凹ませ、二尾狼が潜む岩陰を狙った。

 

「今だ!」

 

ジェイドは剣を振り回して狼を引きつけた。

 

一頭が飛びかかった瞬間、ハジメが地面を陥没させ、壁で閉じ込めた。

 

「錬成!」

「グルゥア!?」

 

しかし、狼は唸ったものの動くことはなかった。

 

「黒炎!」

「よくもハジメを…、許さない…!巨神の破鎚!」

 

衝撃波により狼は気絶し、ジェイドが剣で止めを刺した。

 

 

「やった…!」

 

ハジメが息をつくと、アリナが彼に抱きついた。

 

「ハジメ、すごいよ!」

 

彼女の心には希望が芽生えていた。

 

(「ハジメが戦えた…これなら地上に戻れる」)

 

残り三頭も同じ方法で仕留め、五人は食料を確保した。

 

「これで生き延びられる」

 

 

拠点の部屋に戻った五人は、二尾狼の肉を調理する準備を始めた。

 

ハジメが錬成で地面に窪みを作り、火種を起こして小さな焚き火を用意した。

 

青白い神結晶の光が部屋を照らし、微かな暖かさが広がった。

 

「ハジメ、座ってて。私が焼くよ」

 

アリナは巨神の破鎚を脇に置き、肉を切り分けた。

 

彼女の心は切実であった。

 

(「ハジメに何か食べさせたい…これで少しでも元気になってほしい」)

 

ジュウジュウと焼ける音が響き、肉を焼き終えた。

 

しかし、ハジメとアリナには異変が起きた。

 

肉を口に運んだ瞬間、硬い筋が感じられ、強烈な苦味と鉄のような味が広がった。

 

「うっ!」

 

ハジメは顔を歪めた。

続いて腹部に鋭い痛みが走った。

 

「何!? 痛い…!」

「ハジメ、私も…何かおかしい!」

 

アリナの心は焦った。

 

(「ハジメが苦しんでる…私がこんなものを食べさせたせい!?」)

 

2人が苦しむ中、ジェイドが冷静に状況を判断した。

 

「落ち着け、二人とも。魔物肉は普通の人間には毒だ。神水を飲もう。」

 

彼は慣れた手つきで肉を頬張りながら、平然と語った。

 

「まぁ、慣れりゃ悪くないね。体に痛みが来るけど。」

 

ジェイドは実はこっそりと図書館で勉強しており、リリアーナからトータスの話を聞くうちに自分も理解しなければと考えていた。

 

「そうなのです! 私達はイフールの冒険者業で慣れてるから平気なのです!」

「うめぇな、これ。腹が減ってりゃ何でも美味いぜ。体が痛むけどな。」

 

ジェイド、ルルリ、ロウは肉の不味さはほとんど感じなかった。やはり冒険者時代のサバイバル環境の時に魔物肉の類のものを食い慣れていたからであろうか。

 

 

ハジメが神結晶に手を伸ばし、水滴を口に含んだ。

 

「神水…?」

 

すると、腹の痛みが和らぎ、体が軽くなった。

 

「これで…大丈夫みたい」

 

ハジメは息をつき、安堵の表情を浮かべた。

 

アリナも神水を飲み、安堵した。

 

「ハジメ、よかった…」

 

 

五人は神水を飲みながら肉を食べ続けた。

 

ハジメとアリナは最初、不味さに顔をしかめたが、神水のおかげで痛みは多少は抑えられた。

 

「みんなと一緒なら…我慢できる」

 

ハジメはそう呟いた。

 

「ハジメ、私もだよ」

 

彼女は微笑みながら心の中で感じた。

 

(「ハジメとこうやって笑い合えるなら…どんな味でもいい」)

 

「食えよ、力になる」

「美味しいって思えば平気なのです!」

「なぁに、食ってりゃ慣れるさ」

 

豪快に魔物肉を食べるジェイド達の姿を見て、部屋に笑い声が響いた。

 

しかし、その笑い声は長くは続かなかった。

 

というのも、魔物肉を食べた後は体が変化することによる激しい痛みが伴い、しかも神水のおかげですぐに治癒してしまうという生き地獄を味わわされることとなった。

 

奈落の底で五人の断末魔が響いたのは言うまでもない。

 

こうして、五人の体に魔物肉と神水の効果による変化が現れた。

 

 

ハジメは背が数センチ伸び、細かった腕に筋肉がついた。

 

「僕…強くなった気がする」

 

ハジメは右手を握った。

 

ジェイドとロウも筋肉がさらに引き締まり、背が伸びて男らしい体つきになった。

 

「これなら爪熊とも戦えるな」

「俺、もっと食うぞ」

 

二人は意気込んだ。

 

アリナとルルリは胸が大きくなり、ウエストが細くなった。

 

「何か…服がキツい」

 

アリナは恥ずかしそうに呟いた。

 

「アリナ、綺麗だよ。スタイル良くなったね。」

 

ハジメは顔を赤らめた。

 

アリナの心は温かくなった。

 

(「ハジメにそう言われるなら…この変化も悪くない」)

 

「私も胸が大きくなったのです! 嬉しいのです!」

 

 

皆に共通していたのは、服の下に赤黒い線が走るようになったことである。

 

本来、魔力を大量に消化した人間はほぼ確実に死すら免れないが、神水のおかげで死ぬことすら許されず、魔力への耐性がついてしまうのだ。

 

なんという恐ろしい話なのだろうか。

 

 

こうして食事を終えた後、ハジメは決意を固めた。

 

「僕達、地上に戻らないと」

 

ハジメは呟くと、さらに決意を込めた。

 

「僕を奈落に落とした奴らを見つけたい」

 

「私もだよ。アイツらに復讐する」

 

アリナは頷き、心の中で燃える決意を抱いた。

 

(「香織と檜山…ハジメを傷つけた罪を償わせる」)

 

しかし、ハジメには犯人のことは知らせなかった。

 

(「ハジメが知ったら…優しいハジメが苦しむ」)

 

アリナは黙し、復讐の炎を内に秘めた。

 

「なら強くなるしかない。奈落で鍛えよう」

 

ジェイドは剣を握りしめた。

 

「みんなで強くなるのです! 地上に戻るのです!」

「まぁ、面白くなってきたな。俺もやるぜ」

 

ルルリとロウは笑った。

 

「みんながいるから…僕、頑張れる」

「ハジメ、私がそばにいるよ」

 

アリナはハジメの手を握りながら、心の中で固く決意した。

 

(「ハジメと一緒に…この奈落を抜けて、アイツらをぶっ潰す!」)




感想、評価のほどお願いします。
明日の投稿は遅くなるかもです。

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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