処刑人と白銀の英雄は世界最強   作:改革結集の会

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ユエが仲間になる回です。本作のネタバレが含まれてるので注意!


2-6

ジェイドは立方体の中に封印されている少女を助けると言ったものの、彼女の封印を解くには多大な困難を伴うものであった。

 

まず、ジェイドが物理攻撃で破壊しようとしてもびくともせず、次にロウの超域(シグルス)スキルである「永増の愚者」を用いても何も変化しなかった。そしてアリナの神域スキルである「巨神の破槌」を使ってもびくともしなかった。

 

どうしたものかとジェイド達が考えていると、ハジメが立方体に手を触れ、錬成を開始した。「魔力さえあれば、構造を変えられるかもしれない」と呟きながら、立方体をドロドロにするような錬成を試みたが、魔力が足りずはじき返されてしまった。ただ、少しずつ立方体は変形し始めていた。ハジメは目を細め、仲間たちの魔力の流れを感じながら、ある大胆なアイデアを思いついた。

 

「アリナ、ジェイドさん、ルルリさん、ロウさん、皆で魔力を流し込んで立方体を変形させよう。」

 

ハジメの提案に皆驚いた。

 

「え?魔力の受け渡しってできるの?流石に無理でしょ」

「アリナさんの言う通りだ。魔力の受け渡しなんて無茶だ。」

「そうなのです!ハジメさんなら錬成できるかもしれませんが、私たちには錬成する力がないので厳しそうなのです。」

「確かになかなか難しそうだな。というか、ハジメも大胆な提案してきたな。これやってみる価値あるんじゃねぇの?」

「「「ロウ!?」」」

 

皆が無理だと思う中、ロウがハジメの提案に賛意を示した。それに皆が驚いたのは言うまでもない。皆のイメージではロウは無理だと一番言いそうな感じであったからである。しかし、ロウにはロウなりの理由があった。

 

「というか、他の方法がなさそうな以上、これやるしかないだろ。現実的には考えてみれば。」

 

たしかにこれは一理あると、アリナ、ジェイド、ルルリは納得し、ハジメの提案に乗ることにした。

 

こうして、5人は少女の前に集まり、少女を封印している立方体に手をかざした。

 

「皆、立方体を変形して溶かすことをイメージして魔力を入れよう。実際の錬成は僕がやるから、皆はできる限りの魔力を出して。」

「わかったわ。」

「わかった。」

「わかったのです!」

「わかったぜ。」

 

5人が魔力を最大限に注入した。すると突然、少女の周りの立方体がドロッと融解したように流れ落ちる。少しずつ、彼女の枷が解かれていった。

 

それなりに膨らんだ胸部が露わになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。一糸纏わぬ彼女の裸体はやせ衰えていたが、それでもどこか神秘性を感じさせるほど美しかった。そのまま、体の全てが解き放たれ、女の子は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。どうやら立ち上がる力がないらしい。

 

ハジメ達も座り込んだ。肩でゼハーゼハーと息をし、すっからかんになった魔力のせいで激しい倦怠感に襲われる。

 

ハジメは荒い息を吐き震える手で神水を出して、皆に飲ませた。ジェイドが神水を飲んだとき、その手を女の子がギュッと握った。弱々しい、力のない手だ。小さくて、ふるふると震えている。

 

ジェイドが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにジェイドを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

「……助けてくれてありがとう…。」

 

その女の子の表情は固まったままだった。それに違和感を抱いたアリナは女の子に聞いた。

 

「そういえば、ここは奈落の底で人里から離れているけど、なんで封印されていたの?」

「私、裏切られたの…。私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

「あー、なるほど。もしかして王族だったり…?」

「……(コクコク)」

「殺せないってどういうことかしら?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

「……そ、それは凄まじいわね。……すごい力ってそれなの?」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

アリナは前図書館で見た本の内容を思い出す。確か吸血鬼族は竜人族とともに300年程前に滅んだはずだと。

 

たしかに300年間奈落の底に封印したのは酷い話ではあるが、もしかしたら何か事情があるのかもしれない。とアリナは考えた。

 

女の子は続けて言った。

 

「名前、教えて…?」

「僕は南雲ハジメ。」

「私はアリナ・クローバーよ。」

「俺はジェイド・スクレイド。」

「私はルルリ・アシュフォードなのです。」

「俺はロウ・ロズブレンダ。」

 

5人はそれぞれ名前を答えると。女の子はまた質問してきた。

 

「⋯救ってくれたの、ジェイド達だよね?名前、つけてほしいな…」

「難しい質問だな…」

 

女の子からの名前をつけて欲しい要求にジェイドは困惑していた。そんな中、ジェイドの頭の中にひらめきが走った。

 

「なら、「ユエ」はどうだ?俺たちの世界での月という意味。俺には太陽のような恋人がいる。だから美しい君には月がふさわしい。」

 

ジェイドのキザな発言にみな苦笑いしたものの、当の女の子はその名前にご満悦だったようである。

 

「ユエ…、いい名前。私はユエ。よろしくね、ジェイド、ハジメ、アリナ、ロウ、ルルリ。」

 

こうして女の子の名前はユエとなった。

 

しかしこの時、空から突如として巨大な影が落ちてきた。ハジメ達が顔を上げると、そこには体長五メートルほどのサソリのような魔物が現れていた。四本の長い腕には巨大なハサミが備わり、八本の足がわしゃわしゃと不気味に動き、二本の尻尾の先端には鋭い針が鈍く光っている。ユエを解放したばかりで疲弊していた5人にとって、これは予想外の脅威だった。

 

「皆、気をつけて!」ハジメが叫ぶと同時に、ロウが素早く反応し、遠距離火魔法を放った。炎の矢が魔物の体に命中し、小さな爆発を引き起こしたが、魔物はわずかに体を震わせただけで勢いを止めなかった。ジェイドが盾を構え、前線に立つ。「俺が引きつける!攻撃の準備を!」と叫びながら、魔物の注意を引き付けるべく突進した。魔物はジェイドに向き直り、巨大なハサミを振り下ろすが、ジェイドは盾で受け止めつつ、巧みに動きを誘導していった。

 

だが、次の瞬間、魔物の二本の尻尾が不気味にうねり、鋭い針から紫色の毒の霧が噴き出した。「まずい!」ジェイドは咄嗟に盾を構えたが、霧の一部が盾を越えて彼とロウを襲う。毒が肺に染み込むような感覚に襲われ、二人は顔を歪めて膝をついた。「くそっ、息が…!」とロウが呻いた。「ジェイド!ロウ!」ルルリが叫び、すぐさま「不死の祝福者(シグルス・リバイブ)」を発動。青白い光が二人を包み、毒を浄化し、体力を回復させた。二人は立ち上がり、再び戦闘態勢を取った。

 

その隙に、ハジメは事前に「錬成」で用意しておいた落とし穴を活用する時が来たと判断した。「ジェイドさん、今だ!」と指示を出すと、ジェイドは魔物を引きつけたまま落とし穴の真上へと誘導。魔物が足を踏み外し、深い穴へと落下した。地面に叩きつけられた魔物は這い上がろうともがいたが、ハジメはすかさず「ドンナー」を構え、魔物の頭部を正確に狙って発砲。弾丸が脳を貫き、魔物の動きがピタリと止まった。

 

「アリナ、トドメを!」ハジメの声に応え、アリナが「巨神の破槌」を振り上げた。彼女が渾身の力を込めて放った一撃が魔物の体を直撃し、硬い甲殻を粉々に砕いた。魔物は断末魔の叫びを上げることなく息絶えた。

 

戦闘が終わり、5人は息を整えながら互いの無事を確認し合った。ユエは驚いた表情で彼らの連携を見つめ、小さな声で「…すごい、皆…ありがとう」と呟いた。疲れ果てていたにもかかわらず、5人はユエを守り抜いたことに安堵の表情を浮かべた。

 

その時、ハジメ達は床に板があることに気がついた。その板には何かしらの文字が書いてあったが、文字化けしていたので、皆は読めなかった。

 

ハジメがその板を拾い上げると、強い魔力の流れと欠損を感じた。その魔力の欠損が読むための鍵ではないかとハジメは考えた。そしてルルリに提案した。

 

「ルルリさん、「不死の祝福者(シグルス・リバイブ)」をこの板に使ってみて。」

 

ハジメの提案に怪訝そうな顔をしたルルリだったが、先程のハジメの提案はうまくいったので取りあえず信じることとした。

 

不死の祝福者(シグルス・リバイブ)!」

 

ルルリのスキルによって板の文字が蘇り、突然映像が浮き上がった。

 

「おじ、さま…?」

 

ユエは呟いた。なんとこの人物は、ユエの叔父である、ディンリード・ガルディア・ウェスペリティリオ・アヴァタールその人だった。外見は女の子と同じ深紅の瞳と美しい金髪であった。

 

「アレーティアには申し訳ないことをした。だけどこれは必要なことだったのだ。アレーティア、君の体はトータスの神、エヒトルジュエに狙われているものだ。彼の目的までは詳しくは分からないが、恐らく碌でもないことに使うであろう。最悪の場合、トータスの滅亡もありうる。だから私はエヒトに対抗できるような人間にのみ封印が解けるようにした。そして「解放者」が作った迷宮に封印した。このオルクス大迷宮は一番最後に攻略する迷宮だから、アレーティアを解放する君達は今頃、エヒト打倒の準備をしていることであろう。もしエヒトを打倒したいならさらに奥にある「解放者」オスカー・オルクスの隠れ家にいけ。そこで最後の神代魔法を手に入れろ。そしたら地上に戻れるから、エヒトに立ち向かってくれ。トータスをどうか君達の力で守ってくれないか。」

 

ハジメ達が見る限りは、ディンリード氏はユエが言っていたような非道な人物とは思えないほど穏やかで荘厳な佇まいであった。彼の言葉によって奈落の脱出に明確な目的意識を皆持てるようになったのは言うまでもない。

 

「おじ、さま…、わたしっ…、おじさまの遺志を果たすっ…!」

 

ユエは嗚咽を漏らしながら泣き続けた。300年の孤独、裏切りの痛み、そしてやっと得た自由への喜びが混じり合い、彼女の小さな体を震わせていた。紅い瞳からは涙が溢れ、地面にポタポタと落ちる。ジェイドは言葉をかけるでもなく、ただ静かにユエのそばに座り、その想いをそっと受け止めていた。

 

そしてアリナとハジメはふと恐怖を覚えた。オルクス大迷宮は「反逆者」が作った迷宮である。それなのにディンリード氏はオルクス大迷宮を「解放者」が作った迷宮と言っていた。そう、これはつまりハイリヒ王国が宗教に完全支配されていた国だということ。現代で言うならイスラム原理主義のアルカイダやイスラム国みたいな、宗教のためなら非人道的行為も辞さないような国でもおかしくはない。

 

アリナは「ある意味天之河光輝にはこのハイリヒ王国お似合いなのかもね。」と肩をすくめた。そしてアリナは呟いた。

 

「私たちの平穏な日常を邪魔したハイリヒ王国のクソ王族、貴族、神の使徒、聖教教会の奴らをブッ潰す!」

 

 

しばらくしてユエがジェイド達に質問した。

 

「どうしてジェイドとアリナ、ハジメ、ロウ、ルルリはここにいるの?」

「僕とアリナは地球というトータスとは別世界から召喚されたけど、その地球で同じ学校だったクラスメイトによる魔法が当たって落下しちゃったね…。まぁ僕はクラスメイトから嫌われてたから仕方ないけど」

「ハジメと同じくよ。魔法は偶然ではなく意図的だったわ。あんなクラスメイトなんか嫌われたほうがマシよ。」

「俺はアリナさんとハジメを守る時に魔法によって吹き飛ばされて落下した。恋人のリリアーナと離れ離れなのはきついけど、いつか地上に戻ってリリアーナと会いたい。」

「私とロウはジェイド達を追いかけてここに来たのです!」

 

それぞれが理由を答える中、またユエが泣き出した。

 

「……ぐす……ジェイド⋯アリナ⋯ハジメ⋯ルルリ⋯ロウ……つらい……私もつらい……」

 

そしてジェイドが慰めた。

 

「まぁ泣くなって、ユエ。共感してくれたのはありがたいけど、奈落に落ちて強くなれたし、世界の真実を少しでもしれたし、何より君に出会えたからよかったよ。君にはものすごい魔力を感じるし再生力もすごい。だから俺たちのパーティー、「白銀の剣」に入らないか?」

 

ジェイドはユエを勧誘し、ユエはその勧誘に乗っかった。このとき、ユエの心がジェイドでいっぱいになったのを、ジェイドはまだ知らない。

 

こうして、新生「白銀の剣」はジェイド、ルルリ、ロウだけではなく、アリナ、ハジメ、ユエが入る形で再始動し、一行は神代魔法を手に入れて地上に戻るために、オルクス大迷宮の最深部に向かうことにした。

 

彼らがこのトータスに伝説を生み出すことになるとは、まだ誰も知らない。

 

(おまけ)

王宮の一室。そこにはリリアーナがいた。

 

「なんか私のライバルらしき人が出現したわね…」

 

リリアーナは心の中でつぶやいた。

 

「ということは、ジェイド様は生きてるってコト…!?」

 

自分にとって恋のライバルの出現はジェイドの生存を意味していた。ライバル出現による動揺よりもジェイド生存を喜ぶのはある意味リリアーナらしさかもしれない。

 




新生「白銀の剣」、正式にトータスで始動します!
感想と評価の程よろしくお願いします。

セリフと地の文分けると時間がかかるのですが、次話更新が数週間程度遅くなってでも分けるべきですか?

  • 更新優先でお願いします。
  • セリフと地の文分けるの優先で。
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